上 下
38 / 119
第六章 邪神の欠片を旬滅せよ

第36話 思惑

しおりを挟む
ミャーギ地方の野営地で
星を眺めながら歩哨に立つハサン。

あー、綺麗だな。
昔自衛官時代も、
同じような夜空見上げていたな。

あの頃は固形燃料の暖かさに、
今回は焚き火の火の暖かさに
心を奪われ、いつしか
うつらうつらと眠かけしてしまった瞬間。

対面から、「ハサン殿」と呼びかける声。

そう、その声の主とは、
邪神アドヴァンの配下であり
センダー国の隠密でもあるシローヌである。

シローヌは話す。

実は、シローヌの心はアドヴァンの核と共に
ブローチに囚われていたのだと。

よってカンデンブルグ国王にも、
邪神アドヴァンこと宰相マンデリンにも
逆らうことが出来なかったと。

そして、シローヌは邪神アドヴァンこそが
魔王スマターを操る真の敵であると告げた。

シローヌとアドヴァンは元はトッポイ国の
海岸近くの村に住んでいた。

ところが遊び心で洞窟を探検していた矢先に、
封印されていた邪神を解放してしまったのだという。

アドヴァン少年は、邪神の依代よりしろとなりアヤカシと魔王を生んだのだと。

狼狽するハサンに、ロシーヌは畳み掛ける。
「かつて、存在した亜人の国
トッポイに邪神を倒す謎があります。
今は名を変えたシッポリ国に
向かってください。
あなたの長い旅が終わる重要な手がかりが、
そこで見つかるでしょう」

ロシーヌ、おまえは!
ハサンはロシーヌに語りかけようと
顔を上げようとした瞬間、
彼女の姿はそこには無かった。

邪神を倒せば、スマターも解法されるのか?
そして、アヤカシも聖騎士も、
この陰我から解法されるのか?

ロシーヌは最早邪神の支配下から
逃れているようであり、
嘘をついているとは思えなかった。

夜は空ける。
神々しい朝日と共に。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
魔王城でも、ハサンがシッポリ国の首都、
シケコム方面に向かっていることが
情報として掴んでいた。

魔王スマターは、アスタロットに命ずる。

「そなたに、聖騎士ハサン討伐を命ずる。
場合によっはトッポイの時と同じように、
シケコムも壊滅させても構わない」

きたー!やったー!
ついに私にハサン討伐を命じてくれた!

魔将軍ザンでもなく、
ダロムでもなく、私に勅命が下された。

よーし、頑張るわ。

「はは!スマター様に
ハサンの首を献上します!」
意気込むアスタロット。

邪神の欠片ではあったが
アドヴァンを退かせた
アスタロットに勝機はあるのか?

魔将軍ザンは訝しげに思う。

奴は、武力と言うより
魔法力で勝負に出るだろう。
しかし、何故だ?
何故、俺ではなくアスタロットに?

事態は少しずつ動き始めていく。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

時は戻る。
ヤマゲータ地方に入ったハサン一行。
もうここからは、シッポリ国である。

シッポリ国のヤマゲータ地方は
農作物が豊富で、
今はパンレン(梨のような果物)や、
栗や、米や小麦、サクランボ、
ブドウ等が取れる。

唯一自国の生産物のみで暮らせる国ということで
吉里吉里国きりきりこく
なんて言う別名もあるくらいだ。

シケコムまでの道中にある里で、宿を借りる。

その時里長が神妙な顔持ちでこう言った。
『聖騎士様にお願いの儀があります。
この付近にある洞窟に、
最近人狼が出て旅人や、
里の者を襲うようになりました。
どうか、聖騎士様で
人狼を倒して頂けぬでしょうか』

セシアどうする?
ハサンは尋ねる。

「ハサンが承諾するなら、
アタイは従うわ。」
セシアは返答する。

人狼討伐が急遽始まるのである。

次回へ続く
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...