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通学路

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 純は数年前から、引きこもりで不登校ではあったが、時々保健室通学をしていた。不登校でも卒業できる中学とは違って、高校では下手をすれば退学になるからだ。
 実際のところ、純は一年留年して、再び一年生としてやり直している最中だ。余談だが、一歳違いの姉は、三年生になっている。
 教師魂溢れた情熱のある去年の担任が、校長に頼み込んで実現した保健室登校だったが、当時の純はあまり乗り気ではなかった。
 なぜなら、依然としていじめは続いていたからだ。
 何が気に入らなかったのか、一年の時に執拗に純を標的にしてた輩は、二年に上がってもまったく成長することはなかった。
 彼らと遭遇しないように、通常の登校時間の後に保健室に登校して、下校時間の前に帰宅する方法を取っていたが、まさか自由時間に純の乗る自転車が狙われるとは考えが及ばなかった。というか、一歩間違えれば大事故になるような真似を、平気でする阿呆どもだと思わなかった。
 実際に、打ちどころが悪かったら死んでいたかもしれないのだ。
 もっともそうなっても、彼らは驚きはするかもしれないが、それは反省や後悔ではない。そのことで、自分たちに不利益が生じるかもしれないという、身勝手な心配しかしなかったに違いない。
 そして、実際にそうだっただろうと、今まだに証明されようとしている。
 のど元過ぎればなんとやら、純が思った通りの、いやもしかしたらそれ以上の阿呆どもは、懲りずに目の前に並んでいた。

「なんだ、つまらねぇ、元気そうじゃんか」
「だから言っただろう? あれぐらいじゃ駆除できないってよ」

 げらげらと笑いながら、制服を着崩した四人の男子学生が、ガニ股で身体を不必要に揺らしながら歩いてくる。

『……くそ、なんでこいつらこんな時間に?』

 とっくに一時間目が過ぎている時間なのだ。どう見ても、純が通学する時間に合わせて待ち伏せしていたに違いなかった。誰に聞いたのか、情報が洩れていたのか、今日が純の登校日だとバレていたようだ。
 もちろん純の声が聞こえたはずもないが、相手は勝手にべらべら話し出した。

「今は授業中のはず、ってか? 心配すんな、俺は今日までお休みってやつさ。お前のせいでな!」

 純の事故については、のちに顛末が明かされ、さすがに警察沙汰になった。それで関わった生徒、とくにリーダー格の生徒には、一週間の停学の処分が下ったのだ。ちなみに金魚の糞たちは、サボりだろう。
 事故で純と接触したのがタクシーだったため、複数人の弁護士が出張って、入念な事故調査をしたため、学校側もうやむやにできなかったのだ。
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