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第四章 ハンター
4-4 双子
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デオルの用件は、ロルシー家に直接来た依頼の事だった。
稀にあるギルドマスターが扱う、特殊な案件である。
ギルドマスターが扱う依頼は、ほとんどが個人ではなく、例えば大きく言えば国、町などで、小規模なら村、集落などの長からの依頼だ。
ギルドは国家間の争いには参加しないが、そうでなければ国単位の依頼にも応じることはある。たとえば、大規模な魔物の襲撃に国だけで対応できないときに、各国のギルドから精鋭が送られたり、街道に出没する盗賊の拠点を叩く戦力など、大がかりな捕り物に協力したりと、一つの国や町だけでは対処できない案件を、各地域に点在するギルドという組織を利用するのだ。
そのため、国や町はギルドを設置するのに積極的だし、彼らに通行税などの免除や優遇割引なども適用する。
もっとも、今回のそれはそんな大事ではなく、鉱山都市内の農村地帯での穢れ払いが依頼だったようだ。これくらいの依頼なら、村や集落からの依頼でも掲示板に出されることがある。そして、今回も例にもれず掲示板で依頼をかけていたらしい。
けれど、いくつかのパーティが挑戦したが解決できなかったらしく、依頼主がギルドマスターに相談したのだという。その内容が穢れ払いだったこともあり、ロルシー家に協力を頼んだという経緯だった。
「先日の事件も解決したセインなら、任せても大丈夫だと思ってね。それでギルマスに伝言しておいたんだけど……無駄足踏ませて悪かったね」
デオルは訪ねてきたセインに、開口一番そういって申し訳なさそうに謝った。兄の反応から、他に当てが出来たということなのだと、すぐさま理解した。
「いえ、わかりました。僕が行かなくてもよくなったということですね」
「ああ、なにしろ彼らが来たこと自体が急なことだったし、まさか依頼を受けるとは思わなかったんだ」
セインからすれば自分で受けた依頼のこともあったし、よっぽどのことがなければ断ろうとおもっていたので、まったくもって問題なかった。
デオルが言う彼らというのは、セインの兄たちであり、デオルの弟にあたる双子のことだった。
先日いきなり突撃してきて、デオルのところに転がり込んだということだ。セインがあのまま滞在していたら、ひどく面倒なことだっただろうと、心の中で胸を撫でおろした。
三男ビゼーと、四男ビソン。
鏡写しのように瓜二つで、二人とも髪の色は金茶色だ。能力も似たり寄ったりで、それほど穢れ払いは得意ではないが、それはロルシー家直系の中では、との注釈が付く。術による祓い行事もできるし、高度な札も作ることができる。
それでも兄弟の中では「普通」の域を出ない。
彼らのコンプレックスは、そんな普通で真ん中であることだ。兄弟のなかでも真ん中、能力も真ん中。それが嫌で、人を押しのけてでも、より目立とうと必死なところがある。
向上心をはき違えたそのやり方は、あまり褒められた方法でないことも多く、父である侯爵も、たびたび頭を悩ましていたようだ。
「なんでも今回、お前が外へ出してもらったことで、彼らが父上に猛抗議したらしくてね」
――あ、やっぱりだ。なんか、もう面倒くさい感じになってきた。
稀にあるギルドマスターが扱う、特殊な案件である。
ギルドマスターが扱う依頼は、ほとんどが個人ではなく、例えば大きく言えば国、町などで、小規模なら村、集落などの長からの依頼だ。
ギルドは国家間の争いには参加しないが、そうでなければ国単位の依頼にも応じることはある。たとえば、大規模な魔物の襲撃に国だけで対応できないときに、各国のギルドから精鋭が送られたり、街道に出没する盗賊の拠点を叩く戦力など、大がかりな捕り物に協力したりと、一つの国や町だけでは対処できない案件を、各地域に点在するギルドという組織を利用するのだ。
そのため、国や町はギルドを設置するのに積極的だし、彼らに通行税などの免除や優遇割引なども適用する。
もっとも、今回のそれはそんな大事ではなく、鉱山都市内の農村地帯での穢れ払いが依頼だったようだ。これくらいの依頼なら、村や集落からの依頼でも掲示板に出されることがある。そして、今回も例にもれず掲示板で依頼をかけていたらしい。
けれど、いくつかのパーティが挑戦したが解決できなかったらしく、依頼主がギルドマスターに相談したのだという。その内容が穢れ払いだったこともあり、ロルシー家に協力を頼んだという経緯だった。
「先日の事件も解決したセインなら、任せても大丈夫だと思ってね。それでギルマスに伝言しておいたんだけど……無駄足踏ませて悪かったね」
デオルは訪ねてきたセインに、開口一番そういって申し訳なさそうに謝った。兄の反応から、他に当てが出来たということなのだと、すぐさま理解した。
「いえ、わかりました。僕が行かなくてもよくなったということですね」
「ああ、なにしろ彼らが来たこと自体が急なことだったし、まさか依頼を受けるとは思わなかったんだ」
セインからすれば自分で受けた依頼のこともあったし、よっぽどのことがなければ断ろうとおもっていたので、まったくもって問題なかった。
デオルが言う彼らというのは、セインの兄たちであり、デオルの弟にあたる双子のことだった。
先日いきなり突撃してきて、デオルのところに転がり込んだということだ。セインがあのまま滞在していたら、ひどく面倒なことだっただろうと、心の中で胸を撫でおろした。
三男ビゼーと、四男ビソン。
鏡写しのように瓜二つで、二人とも髪の色は金茶色だ。能力も似たり寄ったりで、それほど穢れ払いは得意ではないが、それはロルシー家直系の中では、との注釈が付く。術による祓い行事もできるし、高度な札も作ることができる。
それでも兄弟の中では「普通」の域を出ない。
彼らのコンプレックスは、そんな普通で真ん中であることだ。兄弟のなかでも真ん中、能力も真ん中。それが嫌で、人を押しのけてでも、より目立とうと必死なところがある。
向上心をはき違えたそのやり方は、あまり褒められた方法でないことも多く、父である侯爵も、たびたび頭を悩ましていたようだ。
「なんでも今回、お前が外へ出してもらったことで、彼らが父上に猛抗議したらしくてね」
――あ、やっぱりだ。なんか、もう面倒くさい感じになってきた。
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