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第三章 鉱山都市マリザン
3-13 嬉しくない再会2
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「はて、お二人は知り合いで? じゃあセインくんもロルシー家と、なにか縁があるのかね」
ベンとセインの反応を見て、ボダンは首を傾げた。けれど、それまでの仕事の成果が良かったのか、ベンが嘘をついているとは夢にも思ってない様子だった。
「……いえ、僕は知りません。では、その人が例の?」
セインはあえてすぐに暴露はしなかった。
今回の仕事は自分にとっても初仕事である。ベンが恥の上塗りをしようが、身分詐称で訴えられようが、できれば一切関わりたくなかった。
もちろん見逃すつもりはないので、しっかりギルドには報告するし、ロルシー家としても黙ってはいない。あとは、少しの良心でもあるなら、自分で決着をつけるなり、自己申告で罰を受けるなりするだろう。
「なんでも侯爵の公子様方とともに修業をされたということで……」
「いやっ! あ、あの……そうでは、そうとは言ってなくて、ロルシー侯爵家に居たと言っただけで、俺はなにも……」
「は? 何を言っているんだ、君は」
ベンは言い訳に忙しいが、セインはそんな茶番に付き合っているわけにはいかなかった。
「それよりも、ボダンさん。この鉱山では、あのように瘴気が蔓延することがよくあるのだろうか? 今まで問題は?」
ほんの入り口付近をチェックしただけで、すでに五か所穢れ払いが必要だったと、セインが報告すると、ボダンは驚いた顔で首を振った。
「そんなことが……? いや、確かに最近は事故が多かったが」
「一番上の階層を処理したが、瘴気が下から湧き上がってきている様子だった。この分じゃ、下はもっとひどいかもしれない」
「なんてことだ、定期的な穢れ払いを半月前にしたばかりだというのに」
そこでボダンが、はっと思いついたようにベンを見た。
「そうだ、こんな時こそロルシー家で修業を積んだベンさんの出番ですな。略式で構いませんので、穢れ払いの祭事をお願いしたいのですが。いやいや、心配なされるな、報酬は弾みますぞ」
これは術式による穢れ払いをしてくれということだ。
札の効力は暫定的で、しかも範囲が著しく狭い。小さい穢れ程度なら滅することができるが、深刻な穢れや広範囲の場合、当然ながらそれでは追いつかない。
これをロルシー家に正式に依頼すると、結構な費用が掛かる。ピンキリではあるが、利益を出す商業鉱山なら、数年に一度はそれなりの規模で祭事を行うものだ。
この地へ来てまだ日の浅いブノワ商会は、まだロルシー家とのつながりが無いので、ベンを特に持ち上げていたのだろう。
縁を繋ぐための潤滑油として。
――ま、そのロルシー家を追い出されたので、無理なわけだが。
それと、ベンに穢れ払いの術は使えない。
もちろん人間でも、多少なら穢れ払いの術が使える者もいるし、なにより聖魔法を使えれば同等のことが可能だが、魔法の素質がなかったからそっちも考えられない。
そんなことは微塵も知らないボダンが、ベンに金額の交渉をしている。
「こ、困ります。契約では、札による穢れ払いと、鉱内点検のみで……」
「だからこうしてお願いしておるのだ。ああ、そうか、もしかしてロルシー家の決まりとか? それなら、申し訳ないが、口をきいてもらえんかね」
矢継ぎ早にまくしたてられて、ベンは視線を泳がせている。時折、セインの方へ視線をやって、なにやらアイコンタクトを取りたい様子だっだが、当然ながら完全にシカトだ。
というか、どうして助けてもらえると思ったのか、セインは呆れて物が言えなかった。
ベンとセインの反応を見て、ボダンは首を傾げた。けれど、それまでの仕事の成果が良かったのか、ベンが嘘をついているとは夢にも思ってない様子だった。
「……いえ、僕は知りません。では、その人が例の?」
セインはあえてすぐに暴露はしなかった。
今回の仕事は自分にとっても初仕事である。ベンが恥の上塗りをしようが、身分詐称で訴えられようが、できれば一切関わりたくなかった。
もちろん見逃すつもりはないので、しっかりギルドには報告するし、ロルシー家としても黙ってはいない。あとは、少しの良心でもあるなら、自分で決着をつけるなり、自己申告で罰を受けるなりするだろう。
「なんでも侯爵の公子様方とともに修業をされたということで……」
「いやっ! あ、あの……そうでは、そうとは言ってなくて、ロルシー侯爵家に居たと言っただけで、俺はなにも……」
「は? 何を言っているんだ、君は」
ベンは言い訳に忙しいが、セインはそんな茶番に付き合っているわけにはいかなかった。
「それよりも、ボダンさん。この鉱山では、あのように瘴気が蔓延することがよくあるのだろうか? 今まで問題は?」
ほんの入り口付近をチェックしただけで、すでに五か所穢れ払いが必要だったと、セインが報告すると、ボダンは驚いた顔で首を振った。
「そんなことが……? いや、確かに最近は事故が多かったが」
「一番上の階層を処理したが、瘴気が下から湧き上がってきている様子だった。この分じゃ、下はもっとひどいかもしれない」
「なんてことだ、定期的な穢れ払いを半月前にしたばかりだというのに」
そこでボダンが、はっと思いついたようにベンを見た。
「そうだ、こんな時こそロルシー家で修業を積んだベンさんの出番ですな。略式で構いませんので、穢れ払いの祭事をお願いしたいのですが。いやいや、心配なされるな、報酬は弾みますぞ」
これは術式による穢れ払いをしてくれということだ。
札の効力は暫定的で、しかも範囲が著しく狭い。小さい穢れ程度なら滅することができるが、深刻な穢れや広範囲の場合、当然ながらそれでは追いつかない。
これをロルシー家に正式に依頼すると、結構な費用が掛かる。ピンキリではあるが、利益を出す商業鉱山なら、数年に一度はそれなりの規模で祭事を行うものだ。
この地へ来てまだ日の浅いブノワ商会は、まだロルシー家とのつながりが無いので、ベンを特に持ち上げていたのだろう。
縁を繋ぐための潤滑油として。
――ま、そのロルシー家を追い出されたので、無理なわけだが。
それと、ベンに穢れ払いの術は使えない。
もちろん人間でも、多少なら穢れ払いの術が使える者もいるし、なにより聖魔法を使えれば同等のことが可能だが、魔法の素質がなかったからそっちも考えられない。
そんなことは微塵も知らないボダンが、ベンに金額の交渉をしている。
「こ、困ります。契約では、札による穢れ払いと、鉱内点検のみで……」
「だからこうしてお願いしておるのだ。ああ、そうか、もしかしてロルシー家の決まりとか? それなら、申し訳ないが、口をきいてもらえんかね」
矢継ぎ早にまくしたてられて、ベンは視線を泳がせている。時折、セインの方へ視線をやって、なにやらアイコンタクトを取りたい様子だっだが、当然ながら完全にシカトだ。
というか、どうして助けてもらえると思ったのか、セインは呆れて物が言えなかった。
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