晴明、異世界に転生する!

るう

文字の大きさ
上 下
38 / 137
第二章 四神

1-19 顛末

しおりを挟む
 炎がぐるりと囲む中、いきなりどこからともなく現れた水柱が高く渦を巻きながら噴出した。周りで見ていた者が、度肝を抜かれて視線が釘付けとなったのも無理はない。

「な、なんだ。中で何が……」

 誰ともなく呟く中、しばらくするとやがて何事もなかったかのように収まり、それに伴い炎の壁も徐々に小さくなっていった。
 水と炎の温度差のせいか、視界はもやがかかったように霞んでいた。
 視界が戻ってくると、地面には件の獣人が地面に倒れていた。遠目でみてもわかるほど、大きさが縮んでいた。すっかり元の姿に戻ったのだ。
 このあたりの記憶はセインにはなかったが、その時はまだ、ちゃんとその場に立っていたらしい。
 後のことは、幌馬車の御者をしていた男が責任者となって、事件の後始末をした。護衛の二人にオークの始末を任せ、岩影に避難していたボロ馬車の乗客とも合流した。
 セインは目を開けてはいたが、かなり朦朧としていたので、大人たちの手によって奴隷獣人の子供とともに、馬車の中に放り込まれた。
 そんなふうに周囲が忙しく動いていた時、獣人の奴隷印と連動しているらしい契約の指輪を、商人の亡骸の指からこっそり抜き取った男がいた。
 それに気が付いたのは、商人の遺体を回収しようとしていた護衛の一人だ。
 懐にしまったところを確認して、現行犯で確保された。いろいろ言い訳をしたようだが、元の状態に戻った奴隷を惜しんだと思われた。
 口頭とはいえ、奴隷の所有権を放棄したことは、証人が大勢いる。
 また、それを約束させたセインは、その奴隷が穢れ落ちしそうになったところを救い、またここにいた全員を救ったも同然なのだ。
 当然ながら、乗客も御者も証言することに異論はない。

「確か、しばらく行ったところに、無人の狩猟小屋があるはずだ」

 ナイフ使いの獣人護衛の言葉に、御者は頷いた。

「狩猟小屋まで移動する。徒歩で半日もかからないから、馬車に荷物だけ乗せて徒歩で進んでほしい」

 幌馬車は大きいが全員は乗れないし、商人の亡骸と、セイン、奴隷獣人が寝かされているので乗り込むのは無理だった。多少文句を言う者もいたが、基本的には快く指示に従ってくれた。
 狩猟小屋に着くと、そこへ一旦、乗客たちと護衛を一人残して、身軽になった馬車で事件の関係者と怪我人だけを乗せて出発した。
 半日ほどかけて鉱山都市マリザンに着くと、御者はすぐに狩猟小屋への救助を依頼し、事の次第を、門番を通して報告していたという。
 ここまでが、セインが覚えてない間に起こったことのあらましであった。
 ちなみに、セインはすでに身元バレしてたので、すぐさま都市を仕切るロルシー家の屋敷に運ばれた。例の指輪はその際、セインに引き渡されたとのことだ。
 ゆらが知っているのはここまでで、その後の処理がどうなったか、奴隷がどうなったかなどは、セインが運ばれてしまったので、当然ながらわからないとのことだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。 待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。 シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。 アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。 死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

【完結】死ぬとレアアイテムを落とす『ドロップ奴隷』としてパーティーに帯同させられ都合よく何度も殺された俺は、『無痛スキル』を獲得し、覚醒する

Saida
ファンタジー
(こちらの不手際で、コメント欄にネタバレ防止のロックがされていない感想がございます。 まだ本編を読まれておられない方でネタバレが気になる方は、コメント欄を先に読まれないようお願い致します。) 少年が育った村では、一人前の大人になるための通過儀礼があった。 それは、神から「スキル」を与えられること。 「神からのお告げ」を夢で受けた少年は、とうとう自分にもその番が回って来たと喜び、教会で成人の儀を、そしてスキル判定を行ってもらう。 少年が授かっていたスキルの名は「レアドロッパー」。 しかしあまりにも珍しいスキルだったらしく、辞典にもそのスキルの詳細が書かれていない。 レアスキルだったことに喜ぶ少年だったが、彼の親代わりである兄、タスラの表情は暗い。 その夜、タスラはとんでもない話を少年にし始めた。 「お前のそのスキルは、冒険者に向いていない」 「本国からの迎えが来る前に、逃げろ」 村で新たに成人になったものが出ると、教会から本国に手紙が送られ、数日中に迎えが来る。 スキル覚醒した者に冒険者としての資格を与え、ダンジョンを開拓したり、魔物から国を守ったりする仕事を与えるためだ。 少年も子供の頃から、国の一員として務めを果たし、冒険者として名を上げることを夢に見てきた。 しかし信頼する兄は、それを拒み、逃亡する国の反逆者になれという。 当然、少年は納得がいかない。 兄と言い争っていると、家の扉をノックする音が聞こえてくる。 「嘘だろ……成人の儀を行ったのは今日の朝のことだぞ……」 見たことのない剣幕で「隠れろ」とタスラに命令された少年は、しぶしぶ戸棚に身を隠す。 家の扉を蹴破るようにして入ってきたのは、本国から少年を迎えに来た役人。 少年の居場所を尋ねられたタスラは、「ここにはいない」「どこかへ行ってしまった」と繰り返す。 このままでは夢にまで見た冒険者になる資格を失い、逃亡者として国に指名手配を受けることになるのではと少年は恐れ、戸棚から姿を現す。 それを見て役人は、躊躇なく剣を抜き、タスラのことを斬る。 「少年よ、安心しなさい。彼は私たちの仕事を邪魔したから、ちょっと大人しくしておいてもらうだけだ。もちろん後で治療魔法をかけておくし、命まで奪いはしないよ」と役人は、少年に微笑んで言う。 「分かりました」と追従笑いを浮かべた少年の胸には、急速に、悪い予感が膨らむ。 そして彼の予感は当たった。 少年の人生は、地獄の日々に姿を変える。 全ては授かった希少スキル、「レアドロッパー」のせいで。

S級【バッファー】(←不遇職)の俺、結婚を誓い合った【幼馴染】を【勇者】に寝取られパーティ追放されヒキコモリに→美少女エルフに養って貰います

マナシロカナタ✨ラノベ作家✨子犬を助けた
ファンタジー
~ 開幕バフしたら後は要らない子、それが最不遇職といわれるバッファーだ ~ 勇者パーティでバッファー(バフスキル専門の後衛職)をしていたケースケ=ホンダムはある夜、結婚を誓い合った幼馴染アンジュが勇者と全裸で結合している所を見てしまった。 「ごめん、ケースケ。あなたのこと嫌いになったわけじゃないの、でもわたしは――」 勇者と乳繰り合うアンジュの姿を見てケースケの頭は真っ白に。 さらにお前はもうパーティには必要ないと言われたケースケは、心を病んで人間不信のヒキコモリになってしまった。 それから3年がたった。 ひきこもるための資金が尽きたケースケは、仕方なくもう一度冒険者に戻ることを決意する。 しかしケースケは、一人では何もできない不遇の後衛職。 ケースケのバフを受けて戦ってくれる仲間が必要だった。 そんなケースケの元に、上がり症のエルフの魔法戦士がやってきて――。 カクヨムで110万PVを達成した不遇系後衛主人公の冒険譚!

転移ですか!? どうせなら、便利に楽させて! ~役立ち少女の異世界ライフ~

ままるり
ファンタジー
女子高生、美咲瑠璃(みさきるり)は、気がつくと泉の前にたたずんでいた。 あれ? 朝学校に行こうって玄関を出たはずなのに……。 現れた女神は言う。 「あなたは、異世界に飛んできました」 ……え? 帰してください。私、勇者とか聖女とか興味ないですから……。 帰還の方法がないことを知り、女神に願う。 ……分かりました。私はこの世界で生きていきます。 でも、戦いたくないからチカラとかいらない。 『どうせなら便利に楽させて!』 実はチートな自称普通の少女が、周りを幸せに、いや、巻き込みながら成長していく冒険ストーリー。 便利に生きるためなら自重しない。 令嬢の想いも、王女のわがままも、剣と魔法と、現代知識で無自覚に解決!! 「あなたのお役に立てましたか?」 「そうですわね。……でも、あなたやり過ぎですわ……」 ※R15は保険です。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

処理中です...