上 下
28 / 38
第二章 十二王家の目覚め

24話 即興合体技

しおりを挟む
 このまま戦闘続行か、撤退か。迷っていると小柄のモノが飛んで来た。それを受け止める。テオだ。

「うむ。よくぞ受け止めた」

「……大丈夫か?」

「無論だ。ちょっと油断してしまっただけのこと」


(こうは言ってるが実際は分からない。撤退すべきか)


 テオをそのままグリフォンに乗せ、空を飛ぶ。

「アルフィーよ。迷っているのか?」

「……」

「そんな事では困る。お前はもっと上に行く義務がある!」

「え?」


「他でもない。余がそう感じたからだッ」

「テオ陛下?」


「困難の中、道を切り開くものこそが王に相応しいッ」


 テオはグリフォンから落ちると、自分のグリフォンに騎乗し直す。加速し、再び激闘に戻る。そんな時、テオが剣を抜いた。決着をつける気なのだろう。

(テオは諦めていない。ならば勝つためにはどうする? 今の状況。一体でも倒す事が出来たなら……そして、それを見た飛竜たちが少しでも動揺してくれれば……)


 実際はそれが出来ないから皆苦戦している。ここでアルフィーは覚悟を決め、一か八か。賭けに出る事にした。ユイと協力して飛竜を撃破する。


(強力な一撃がいる……ユイさんの一撃が)


 グリフォンに話しかける。正確には精霊に。レティシアじゃないと出来ないかもしれない。でも今は、伝わる事を願う。


 飛竜はユイを執拗に追いかける。怪我をしている今、長引けば不利だ。起死回生の一手を模索しているが一向に思いつかない。

 そんな時、グリフォンが体当たりをしてきた。恐らくアルフィーのだろう。

 ユイが恐らくと思ったのは、そこに彼が乗って居なかったからだ。グリフォンは鳴いて、飛竜を挑発しているようだ。それに乗った飛竜とグリフォンの追いかけっこが始まった。ターゲットから外れたユイは辺りを見渡した。

(アルフィー何処カ? 怪我なら不味いネ)

「ユイさん!」

 かすかな声のする方へと向く。真上だ。かなりの上空に彼は居た。癒しの魔法を使っている様にも見せた。さらに未熟な風の魔法で少しでも速度を上げていた。

 彼は自分の脚を指さし、下の飛竜を指さした。ユイはその意図に気が付いた。


「オオ! 良いネ」


 急いでグリフォンを加速させ、跳躍する。その間、アルフィーの乗っていたグリフォンが定位置に誘導する。

 そして、アルフィーとユイの足の裏がくっついた。ユイの凄まじい脚力を押し返し、力を逃がさない様に力を加える。その瞬間アルフィーが再び、遥か上空へと吹き飛ばされた。

 飛竜は気が付いた。超高速で落下する人の存在に。しかし、回避は間に合わない。ただ落下した物質が当たるのではない。彼女の才能を込めた最高のタイミングの一撃。一点突破の拳。

 刹那。凄まじい打撃を受け、飛竜は落下する。



 エルナはそれを見ながら笑っていた。逆にその奇妙な光景に圧倒される飛竜。ディアナたちはそれを見逃さない。二人は加速する。協力し、決定打を連続で浴びせる。

 クライヴは負けられないと気合を入れ、渾身の一撃を放つ。ロイクもそのわずかな勝機を見出し、全力の魔法を浴びせる。


 テオはグリフォンの上に立っていた。

「ハーハッハッハ! そうでは無くてはな! 余を魅せた礼だ。余がかっこよく締めるとしよう! 《業火爆龍陣》!!」

 テオが跳び、剣を振るうと、凄まじい爆発が起きた。飛竜とテオが吹き飛ばされる。


 アルフィーは痛みで気を失っていた。それに急速に接近する影があった。ユイがグリフォンを操り見事に受け止めた。衝撃で目を覚ましたアルフィーにユイは笑顔で言う。

「私とアルフィーの勝利ヨ」

「良かった……」


 そこから急いで飛竜を治療しようとレティシアを呼ぶ。安心した途端、アルフィーの意識が再び遠のく。



【数日後】

 アルフィーは見知らぬベッドの上で起き上がる。全身に激痛が走った。

「あ、アルフィー!」

「レティシア? ここは?」

「医務室。もぉー。全治一週間だって。癒しの魔法があったから良かったけど! あんまり無理しちゃだめだよっ」

(どんだけやばい脚力なんだよ……)


 フィーがお腹に乗っていて、ピィピィと嬉しそうに鳴いていた。

「あ、これ食べる?」

  地上産の果物だ。すでに半分食べられたリンゴを見ていると、心の声が分かっているかの様に言う。

「だって、何時起きるか分からなくて、腐ったら困るでしょう?」

「確かに……」


 ちょっと疲れている様子のレティシア。ずっと看病をしてくれた様だ。リンゴを受け取りながら感謝をする。

「ありがとう。おかげで良くなったよ」

 彼女は既にベッドに倒れて込んで寝ていた。彼女を近くのベッドに運びたいが、体が痛くて動かない。仕方ないのでフィーを撫でる事にした。

 窓が開いていて、心地よい風が入って来る。精霊たちも助けてくれたのかな。などと浸っていると、騒がしい声が聞こえて来た。


 エルナたちだ。クライヴの声も聞こえる。

「おい! 手伝えよ! お前のだろっ」

 入って来るなり、クライヴが真顔になる。

「取り込み中の様だ。出直すぞ」

「はぁ? 何言って」

 姉妹が口をパクパクしていた。

「先に言って置くけど、俺は怪我人で動けない」

 色々と騒がしかったが何とか落ち着いてくれた。エルナとディアナが、レティシアをベッドに寝かせる。クライヴは木製のソファーを持って来たようだ。


 どうやらエルナたちも交代で看病するらしい、事を言っていた。木製のソファーは硬く。結局ハンモックの様なものに落ち着いた。重い木材を運んで来たクライヴは激怒していた。その後に、ユイも来た。

「平気カ……うん、もうよさそうネ」

 エルナが言う。

「あ、怪我の元凶!」

「ハハ。面白いことゆネ。あの共同作業ないと倒せてないヨ。最高に相性良い一撃ネ」

「私なら怪我をさせずに倒したし」

 ディアナもうんうんと頷いていた。

「後からなら幾らでも言えるヨ。不意打ちの姫様」

「はぁー! 誰が不意打ちよ!」


 さらに変な話が白熱していく中、クライヴに訊ねる。

「飛竜はどうなった?」

「お、知らなかったのか! なんと全部仲間になったぞ!」

「おおお!」

「マールさんも頑張らないとって。興奮気味に言ってたな。実に嬉しそうにッ」

「手伝ってるのか?」

「当たり前だろっ。初の飛竜だぞ!」


 アルフィーがフィーを持ちあがる。ピィと鳴いて挨拶をする。

「……すまん。初の成竜だ。頭が良いのは分かってるが、育て方が確立するまでは油断できないって思ってな」

 フィーを撫でてながら話を聞いていた。

「あ、そうだった。炎吐く飛竜。テオが貰ったって事になったぞ」

「嗚呼、初めからそのつもりだったし。良いよ、飛竜が拒否してないなら」


「分かった……それにしても、まさか……こうなるとはなぁ。少し前までは思っても見なかった」


 クライヴが部屋の中、窓から外を見渡しながらしみじみと言った。アルフィーもレティシアを見ながらそれに同意する。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~

結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は 気が付くと真っ白い空間にいた 自称神という男性によると 部下によるミスが原因だった 元の世界に戻れないので 異世界に行って生きる事を決めました! 異世界に行って、自由気ままに、生きていきます ~☆~☆~☆~☆~☆ 誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります! また、感想を頂けると大喜びします 気が向いたら書き込んでやって下さい ~☆~☆~☆~☆~☆ カクヨム・小説家になろうでも公開しています もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~> もし、よろしければ読んであげて下さい

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜

白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます! ➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。

レイヴン戦記

一弧
ファンタジー
 生まれで人生の大半が決まる世界、そんな中世封建社会で偶然が重なり違う階層で生きることになった主人公、その世界には魔法もなく幻獣もおらず、病気やケガで人は簡単に死ぬ。現実の中世ヨーロッパに似た世界を舞台にしたファンタジー。

処理中です...