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第二章 十二王家の目覚め

21話 飛竜

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 噴水の近く。陽のあたる芝生でレティシアが少し丸まり、幼い飛竜フィーと一緒に寝ていた。余りにも穏やかな顔だったので起こさずにいた。心地よい風が吹く。精霊が集まってきているのかもしれない。お返しに癒しの魔法を発動させる。

「ぅぅ……ぅみゃ……」

 暫くすると慌てて起きたレティシアが恥ずかしそうにしていた。近くの水で顔を洗うと小さな布を取り出して顔を拭いていた。

「もぉー! いるなら起こしてくれればいいのに!」

「余りにも気持ちよさそうだったから。起こしたら何か悪いなって」

「……ぅ~」

「ははは、ごめんごめん」


 目を覚ましたフィーが寄って来たので頭を撫でる。レティシアもそれを見て背中を撫でる。

「風の魔法使えそう?」

「前よりは断然良くなった。けど当分は戦闘では使えないと思う」

「そっか。頑張ってね」

「嗚呼、きっとモノにしてみせる」


 そんな時、レティシアはフィーから手を放す。驚いている様子だ。少しした後に言う。どうやら飛竜が数体ここに向かっているらしい。この島を占拠しようとしていると。まだまだ遠い距離はあるようなので、今のうちに皆を集めよう。

 迎撃を考えつつも出来れば仲間にしたい。騎乗できなくても、居るだけである程度、他の飛竜の牽制にもなるだろう。

 クライヴはきっと仲間にするのに協力してくれるだろう。マックスさんは焼き尽くしそうだから危険か。ロイクさんは空気を呼んでくれそうだ。エルナは最近王女として頑張っているから保留。ディアナ嬢、空の戦いになるからグリフォンの操作は必須。ユイさんは説明すれば分かってくれる。

 レティシアと一度別々に探しに行く。一番近いのはディアナ嬢。

 宿の様な構造の建物。部屋が無数にあり、その一室に姉妹はいる。部屋の中は部屋が三つあり、広い。いずれは屋敷に建て替える予定があるようだ。


 名前を呼びながら部屋の扉を開けると、エルナが踊りながら着替えている最中だった。顔を真っ赤にしてモノを投げて来たので、謝罪を即入れて、隣の部屋をノックするとドアが開いた。

 少し眠そうなディアナが出て来た。客人を見るなり、慌てて髪を直した。

「ア、アルフィー殿ぉ! 急にどうしたのだっ? そうだ。さ、最近良い茶葉が手に入ったのだ。とりあえず座ってくれ。く、散らかっててすまない!」

「あ、ごめん。それはまた今度で」

「え……そうか……こ、今度だな。分かった」

 ディアナに事情を話すと来てくれることとなった。その時に、顔つきがキリっとなった。流石だと思った。メリハリがある。次はクライヴだ。

 そう思っていると、いつの間にか着替えたエルナが背後に居た。槍の柄で背中に何かを書いていた。

「あ、さっきはごめん。急いでたから……」

「違うわよ。なんでディアナなの? 私は?」

(そこか)

 ディアナが諭すように言う。

「エルナ、すまんな。そういう事だ」

「む! 姫を付けなさいよ」

「悪いがこれは姉妹の問題だろ」

「ぐぬぅ……」


(時間はあまりないから簡単に言っておこう)

「エルナは忙しいと思って。今はディアナ嬢が最適かと判断した」

「なに! 話しが違うじゃ無いかアルフィー殿!」

(なんの話だろう?)

「ふーん。私は全然忙しくないよ。丁度戦闘準備してたし!」


 二人を連れて、飼育所に行くとクライヴと女性飼育員が楽しそうに話していた。こちらに気が付くと少し離れ、しどろもどろになっていた。そこには何か照れているおっさんがいた。


「ど、どうしたんだお前等ぁ?」

「手を貸して欲しい」

「なるほどな」


「へー、マール。やるじゃない」

「な、何ですかエルナ様!」


「お待たせネ」

「皆さん。遅れて申し訳ございません」

 事情を話すとユイとロイクも集まって来た。小さくて見えにくかったのだが、背後にテオも居た。少し機嫌が悪い。耳と尻尾と顔ですぐに分かった。


「……へ、陛下は何故ここに?」

「アルフィー! またそうやってとぼける気か!」

「? ……っと言いますと?」


「余をのけ者にして、飛竜を独占するつもりだろぉ!」

「あ……そういうつもりでは」

「あ! っとは何だ、あ! っとは! 絶対忘れていただろう!」

「慌てていたので……」


「あーー、折角この前魔法の心得を教えたのになぁー」

(あれはお礼だったんじゃ……とはいえ、申し訳ないと思ってる。人が増えた。そして、これからも増える。慌てていたとはいえ、それは言い訳になるな。気を付けていかないと)


「それでは一緒に行きましょう」

「うむ。当然だ」

「いってらっしゃいませ。テオ様」

「手柄を楽しみに待つがいい。それでは行って来るぞ」

 アルフィーたちはグリフォンに騎乗し、飛竜を迎え撃つ。


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