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第一章 空の島
マックスとロイク(2)
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アルフィーはグリフォンに跨ると去って行った。空の島に戻るとレティシアが立っていた。
「アルフィー! おかえり」
「ただいま、レティシア」
「何か、こういうの照れくさいね」
「俺は村が無くなって以来だからな……少し嬉しい」
「何かあった?」
「生きてる人たちを見つけた」
「ほんと!」
「ただ、故郷を離れたく無い感じだったから……難しい……」
「そう……疲れてると考えがまとまらないでしょう。今日はゆっくり休んで」
「そうする」
(不思議な女の子だ。何の変哲もない言葉。でもそれに触れていると、自然に気持ちが軽くなる……)
「ねぇ……アルフィー」
「ん?」
「私はね……アルフィーが選んだことを全部受け止めるよ」
「……俺がレティシアを救えたから?」
「違うよ……私がそうしたいから」
「……」
「でも……アルフィーが悪い事をしたら、ちゃんと怒って上げるんだから! だから……安心して選んでね」
アルフィーは一瞬、目を見開いた。そして、穏やかな表情になった。
「それは気を付けないとな……」
「うん。それじゃ、一緒に帰ろっか」
翌日、再び彼等に会おうとリルに騎乗する。すると違和感に気が付いた。大柄グリフォンと小柄なグリフォン。そして、背後から人の気配とピィピィと言う鳴き声が聞こえる。
「……おい?」
「お前、昨日俺が後ろに居るの忘れてただろ」
アルフィーは顔を僅かに赤らめた。
「……次からは声をかけてもらっても?」
クライヴは赤ちゃんグリフォンのために、ここに居た。彼等の背後で話に入ろうか悩んでいたのであった。
「早く行こうよ! ディアナたちが来るって! 昨日散々怒られたんだから!」
「アルフィー! 見つかると今日は飛べないかもよ?」
怖い事を言われた勢いで出発する。
【廃墟】
補修された屋根の隙間から日差しが差し込む。マックスたちは常日頃と同じ様に過ごしていた。狩りの準備をしていると、カンカンカンと金属の音が鳴り響く。皆は慌てない、慣れているからだ。
「盗賊が来たぞ!?」
マックスが憤りと共に立ち上がる。
「今度は盗賊とな!?」
「お待ちください師匠!? 今回の敵は人。知能を持っています!」
「何度も何度も皆を苦しめる者を許しておけるか!?」
「前回、攻撃に工夫が合ったのをお忘れですか!? 彼等はまた小賢しい真似をしてきます!」
「それがどうした!? 下手な小細工など力でねじ伏せてしまえばよい!? 戦いは早さが肝心なのじゃ!?」
マックスは馬に乗った盗賊を追いかける。だが、ロイクはすぐに追いかけない。疑問を覚えたからだ。
(何時もよりも人数が少なすぎる……どこかで魔獣にやられたか?)
その時、別の方角から盗賊が走って来た。ロイクは一瞬悩む。どうするべきか。
(師匠ならあの数は大丈夫。それよりも数の多い方、皆が危ないッ)
ロイクは後から来た盗賊を迎え撃つ。何人かの盗賊に傷を負わせるが、浅くいため中々数を減らせない。この集落の強い者はバレており、彼が近づくと盗賊は離れて距離を取り、矢を撃つか逃げるかで、まともに戦おうとはしない。
その隙に別の盗賊が素早く扉を壊し、子供や家畜を奪っていく。大人たちは抵抗するが、歯が立たない。
「子供を放しなさい!?」
ロイクは両手に持った短剣を投げる。盗賊に肩に当たった。そして、雷の魔法の応用。短剣に予め雷を帯電させて置き、それを手元で作った魔法とを接続する事で、素早く手元に引き寄せる。
盗賊が息を殺し、静かに剣を振り上げ、今まさに振り下ろしていた。その背後からの一撃を、手元に引き寄せた短剣で止めた。
その攻撃は凌いだが、またしても子供を攫おうとするので意識が反れる。その小賢しい戦法に、終に盗賊から一撃を背中にもらう。
「ぐっ……」
反撃に短剣を振るが、彼等は無理をせずに距離を取って様子を見る。盗賊の顔にも余裕は無い。彼の強さは痛いほど知っているので油断せずに、じわじわとダメージを与える作戦のようだ。
マックスは魔法で落馬させていた。痛みを堪えて立ち上がる盗賊。そこには盗賊のボスもいた。
「ここまでじゃ! 今までの恨みここで晴らさせてもらう!?」
「良いのか? 俺は魔法を避けるのが上手いぞ?」
「ふん! ならば疲れて動けなくなるまで魔法を放つのみじゃ」
「見ろ」
盗賊がある方角を指さした。そこには馬に乗った者が数人走って来ていた。マックスは顔を歪めた。彼等の後ろには魔獣がいたからだ。
「さあ、どれを選ぶ?」
盗賊のボスを倒すか、魔獣を倒すか、それとも集落の人を守るか。マックスは選択を迫られる。盗賊は余裕を持って、再び馬に跨った。
「貴様ぁぁああ」
「悪いが弱肉強食。俺たちも生きてぇんでな。ほら、ゆっくり考えてたら、間に合わなくなるぞ」
「生きるために人としての道を外れるか……愚かな……」
「欲しかった物は今日で全て手に入れた。長かったが、さよならだ。ここに訪れる事はもう無くなる」
「アルフィー! おかえり」
「ただいま、レティシア」
「何か、こういうの照れくさいね」
「俺は村が無くなって以来だからな……少し嬉しい」
「何かあった?」
「生きてる人たちを見つけた」
「ほんと!」
「ただ、故郷を離れたく無い感じだったから……難しい……」
「そう……疲れてると考えがまとまらないでしょう。今日はゆっくり休んで」
「そうする」
(不思議な女の子だ。何の変哲もない言葉。でもそれに触れていると、自然に気持ちが軽くなる……)
「ねぇ……アルフィー」
「ん?」
「私はね……アルフィーが選んだことを全部受け止めるよ」
「……俺がレティシアを救えたから?」
「違うよ……私がそうしたいから」
「……」
「でも……アルフィーが悪い事をしたら、ちゃんと怒って上げるんだから! だから……安心して選んでね」
アルフィーは一瞬、目を見開いた。そして、穏やかな表情になった。
「それは気を付けないとな……」
「うん。それじゃ、一緒に帰ろっか」
翌日、再び彼等に会おうとリルに騎乗する。すると違和感に気が付いた。大柄グリフォンと小柄なグリフォン。そして、背後から人の気配とピィピィと言う鳴き声が聞こえる。
「……おい?」
「お前、昨日俺が後ろに居るの忘れてただろ」
アルフィーは顔を僅かに赤らめた。
「……次からは声をかけてもらっても?」
クライヴは赤ちゃんグリフォンのために、ここに居た。彼等の背後で話に入ろうか悩んでいたのであった。
「早く行こうよ! ディアナたちが来るって! 昨日散々怒られたんだから!」
「アルフィー! 見つかると今日は飛べないかもよ?」
怖い事を言われた勢いで出発する。
【廃墟】
補修された屋根の隙間から日差しが差し込む。マックスたちは常日頃と同じ様に過ごしていた。狩りの準備をしていると、カンカンカンと金属の音が鳴り響く。皆は慌てない、慣れているからだ。
「盗賊が来たぞ!?」
マックスが憤りと共に立ち上がる。
「今度は盗賊とな!?」
「お待ちください師匠!? 今回の敵は人。知能を持っています!」
「何度も何度も皆を苦しめる者を許しておけるか!?」
「前回、攻撃に工夫が合ったのをお忘れですか!? 彼等はまた小賢しい真似をしてきます!」
「それがどうした!? 下手な小細工など力でねじ伏せてしまえばよい!? 戦いは早さが肝心なのじゃ!?」
マックスは馬に乗った盗賊を追いかける。だが、ロイクはすぐに追いかけない。疑問を覚えたからだ。
(何時もよりも人数が少なすぎる……どこかで魔獣にやられたか?)
その時、別の方角から盗賊が走って来た。ロイクは一瞬悩む。どうするべきか。
(師匠ならあの数は大丈夫。それよりも数の多い方、皆が危ないッ)
ロイクは後から来た盗賊を迎え撃つ。何人かの盗賊に傷を負わせるが、浅くいため中々数を減らせない。この集落の強い者はバレており、彼が近づくと盗賊は離れて距離を取り、矢を撃つか逃げるかで、まともに戦おうとはしない。
その隙に別の盗賊が素早く扉を壊し、子供や家畜を奪っていく。大人たちは抵抗するが、歯が立たない。
「子供を放しなさい!?」
ロイクは両手に持った短剣を投げる。盗賊に肩に当たった。そして、雷の魔法の応用。短剣に予め雷を帯電させて置き、それを手元で作った魔法とを接続する事で、素早く手元に引き寄せる。
盗賊が息を殺し、静かに剣を振り上げ、今まさに振り下ろしていた。その背後からの一撃を、手元に引き寄せた短剣で止めた。
その攻撃は凌いだが、またしても子供を攫おうとするので意識が反れる。その小賢しい戦法に、終に盗賊から一撃を背中にもらう。
「ぐっ……」
反撃に短剣を振るが、彼等は無理をせずに距離を取って様子を見る。盗賊の顔にも余裕は無い。彼の強さは痛いほど知っているので油断せずに、じわじわとダメージを与える作戦のようだ。
マックスは魔法で落馬させていた。痛みを堪えて立ち上がる盗賊。そこには盗賊のボスもいた。
「ここまでじゃ! 今までの恨みここで晴らさせてもらう!?」
「良いのか? 俺は魔法を避けるのが上手いぞ?」
「ふん! ならば疲れて動けなくなるまで魔法を放つのみじゃ」
「見ろ」
盗賊がある方角を指さした。そこには馬に乗った者が数人走って来ていた。マックスは顔を歪めた。彼等の後ろには魔獣がいたからだ。
「さあ、どれを選ぶ?」
盗賊のボスを倒すか、魔獣を倒すか、それとも集落の人を守るか。マックスは選択を迫られる。盗賊は余裕を持って、再び馬に跨った。
「貴様ぁぁああ」
「悪いが弱肉強食。俺たちも生きてぇんでな。ほら、ゆっくり考えてたら、間に合わなくなるぞ」
「生きるために人としての道を外れるか……愚かな……」
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