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第一章 空の島

9話 マックスとロイク(1)

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 今日は皆用事があるらしく、珍しくアルフィーは一人でいた。自主訓練を終え、丁度暇になった様子。

(うしっ。周囲の探索にでもするか)

 グリフォンが居るのを確認しに行くと、リルがこちらを見ていた。向こうから近づいて来た。撫でると嬉しそうに鳴く。


 早速騎乗すると、ふとスキンヘッドが目に入った。大きなグリフォンの傍でクライヴが、赤ちゃんグリフォンを抱いて寝ていた。


 昨日ここに来た時、見知ったおっさんが地面に寝そべって、高い鳴き声を頑張って発していた時には驚いたものだ。

 そこにアルフィーが近づくと、彼はスッと立ち上がり、何事も無かったかの様に、常日頃の頼もしい漢に戻って、赤ちゃんが生まれた事を報告してきた。

 少しでも離れると、それはもう我が子が生まれた時の様に喜んでいた。そんなこんなで気が休まり、急激に眠気に襲われたらしい。



 そんな事を思い出しながら、地上を探索しにリルと出発する。辺りは緑が豊富な大地。

(今欲しいのは鉱山。他には島の気候は精霊のおかげで安定しているが、地上はそうじゃない。探索する時のために暖かい服でも作れればいいんだが)

 地平の彼方。人工物があるのを発見したので、そこに向かう事にした。



 近づくとほぼ廃墟であった。しかし、人の気配、生活感を感じる。少し離れた場所にリルを待たせ、街を歩く。

(静かだな……)

 塔の傍を通りかかった時、真上から声が聞こえた。

「盗賊め!? 覚悟!?」


 上を見上げると、間入れずにその人は屋上から飛び降りた。アルフィーはその躊躇ない行動に焦る。

「ちょっと!!?」

 だが、それだけでは無い。炎の球体と共に降りて来たのだ。それを見極め、避ける。さらに落ちて来る人をキャッチしようと跳びあがる。しかし、アルフィーが受け止める前に、何者かが受け止めた。


 着地すると状況を確認した。若い細身の男が、老人を受け止めていた。黒い髪、鋭い赤い瞳の青年。しかし、不思議と不快感は無い。


「申し訳ございません。私の師が失礼をいたしました」

「ロイクか! 盗賊に情けは無用!?」


「落ち着いてください。盗賊は攻撃をしてきた者を助けません」

「……助けたのはお前じゃろ!」


「失礼。師は少しお年を……」


「いえ、お気になさらずに。このご時世、警戒するのは当然です」


 何度か説明すると老人は笑ながら謝って来た。白髪に琥珀の瞳を持つ老人の名は、マックス。この物腰が柔らかい美青年はロイクと言うらしい。

 廃墟を案内されて連れて来られたのは大きな家。ここだけが小奇麗にされていた。中に入ると、子供たちが二人に飛びついて来た。


「ロイク、お客さん?」

「はい、こちらはアルフィーさん。仲良くしてください」

「は~い」


 周りを見渡すと老若男女、様々な人が住んでいた。皆何か忙しそうだが、わざわざ一度こちらを見て、微笑んでくれた。

 共通している事は皆痩せていることだろう。だが、不思議な事に服装は意外にも清潔であった。それを察したのか青年が言う。


「最低限の食料と住居は確保出来てます。なので今は、病気が一番厄介です。清潔でないと危険ですからね」


 その時、外から金属をカンカンと叩く音が聞こえた。辺りで魔獣が来たと知らせる声が響いた。それに反応したマックスは立ち上がる。

「私にお任せ」「また魔獣か!? ワシの眼が黒いうちは村人を傷つけはさせんぞ!」


 止める間もなく、叫びながらダッシュしていった。

「大変そうですね……」

 彼は怒りと悲しみと疲れが混じった様子で言った。

「そうなんですよ……」


 アルフィーたちも駆けつける。マックスは火の球や氷の針を作り出し、それを放つ。そして自らも飛び込んで行った。

「あー! だからもう飛び込むなとッ。何度言ったら分かるんです!?」


 ロイクは猛ダッシュでマックスを助けに行く。短剣を持ち、目にも止まらぬ速さで魔獣に一撃、二撃と切りながら通り抜ける。

 ただし、彼の優先はマックスを助ける事で、止めを刺しきれて無かった。後ろから追って来たアルフィーが止めを刺す。

 それを見てロイクは微笑みかけてくれた。魔獣は難なく倒したのである。


 ロイクたちの拠点に戻ると、マックスはうつ伏せになっていた。

「ィタタタタ」


「もう年なので無理はしないでください」

 彼は体をマッサージしながら言う。

「ワシを年寄り扱いするでない! ィタタたッタ! もっと弱くしてくれ!」


「あの。俺たちと一緒に来ませんか?」

、ですか? この辺りに集落は無いはずですが……」


「そうです。俺たちは空の島から来ました」

「空の島……?」


「断る!?」

「何故ですか?」


「怪しすぎじゃ……出会って間もない男が。それに、この人数を救えるか?」

「……はい。大丈夫です」


「……口先だけなら何とでも言えるのう」

「ロイクさん……」


「申し訳ございません。私たちは……」

「ロイク……それ以上は言わなくて良い。ここはワシらの土地。さあ、お主の土地に帰るのじゃ」


「分かりました……日を改めます……」



 扉を開けてグリフォンの所に戻ると見張りをしてくれていた。

「あ、ありがとうございます。リルの見張りを」

「良いってことよ。魔獣討伐を手伝ってくれたんだろ?」


「いえ、あの二人だけで十分って感じでしたから」

「……マックスさんの事を悪く思わんでくれ」


「え?」


「俺たちは一度、教会を名乗る詐欺、強盗集団に騙されてな……年齢性別問わずに沢山失ったものさ」

「すみません。配慮が足りず……」


「知らなかったんだ。仕方ないさ……また来るのか?」

「はい……」

「何故だ?」


「死んで欲しくないからです」

「そうか」


「それでは……失礼します」


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