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出会い
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若干癖毛でオレンジのショートヘヤ。
猫の獣人、恵麻は空中散歩を楽しんでいた。
暫く普通に跳んでいたが、
慣れてくる遊び出す。
進行方向に線を通し、それを軸に回転したり、
急上昇や急下降をしたりと試した。
「うぃ~うぃ~♪」
彼女は一通りはしゃぐと一気に疲れを感じた。
寝不足なので、そろそろ試運転を終えて帰ろうと思い、
とある小さな山を通りかかると、
小さな音が一瞬だけ聞こえた。
気になって下を確認すると人がいる。
彼女は正面の隅にある半透明のホログラムをズームインした。
すると一人が崖から落ちそうになっていたのが見える。
「ッやばっ!」
中央のスイッチをパチンパチンと素早く動かすと、
機体の周りの空気の層に変化が現れる。
左の親指をスライドさせ、左足を動かす。
機体の底、後方だけのブースターから出力され、
前方に大きく傾いた。そこから一気に急下降をする。
さらに右親指、アクセル、
そして右足をスムーズに動かし、
ターボファンエンジンの出力を調整する。
そこで子供は手の平からスルリと滑り、
落下していく。その中の彼を支えていた少女が、
名前を叫んでいた。
少女は驚いた。手が離れた直後、すぐ傍を轟音が通り過ぎた。
そして、男の子より速く動くそれは、彼を掴むとそのまま低速の低空飛行をした。
陽葵は混乱しながらも、彼が助かった事だけは理解出来た。
それを見た男の子が興奮気味に叫んだ。
遅れてその状況が分かった男子たちが歓喜の声を上げる。
だが次の瞬間、それは木の枝に引っかかりそうになる。
「不味ッ。MS再起動忘れてた!!」
それを避けると、次は大きな木が目の前に現れた。
体を倒しながら、ブレーキブースターを片方だけ起動させて、
水平に円を描く様に180度の急旋回をした。
しかし、旋回後にコントロール出来ずに機体が大きくブレる。
そのまま大きくバランスを崩し、制御を失った。
そして皆は驚愕する。獣人が子供をしっかりと掴んだまま跳んだ。
ハラハラとしたが、彼女は空中でしっかりとバランスを立て直して、
地面に着地する。その後わざと転がって力を分散させた。
低速低空なのが幸いだった。
だが助かった恵麻は世界の終りを目の当たりにした表情で叫んだ。
「ヴあ”あ”ぁぁあああ!! ヴェロチッシモちゃっーん!!!!」
操縦者を失った機体が奇妙な動きを見せた後、最終的に急上昇する。
恵麻は目を見開く。崖の上にいる少女が、暴れて反転したそれに乗り移ろうとしていたからだ。
「危ないから離れなさい!」
しかし、誰も止める事も出来ず、
彼女はそれに飛び移った。
それを見た恵麻は素直にイカれていると感じた。
動体視力、もしかしたら彼女にはゆっくりと見えているのかもしれない。
その完璧なタイミング、その動体視力に容易に付いて来る身体能力。
さらに一瞬の判断力とそれを実行する度胸。
そして何よりも、凄まじい集中力。
彼女は必死に男の子を離すまいとしていた。
失敗が何を意味するかを理解していたはずだ。
陽葵はハンドルをしっかりと掴んだ。
そして、その引っ張られるエネルギーを利用して、
機体に跨る。
「確か……ッ」
秘密基地で日頃から見ていた操縦を見様見真似で再現する。
しかし、上手く行かずに機体が暴れ回る。
出来る事は少し高めに飛んでぶつからないようにするだけだ。
ある時、偶然に見つけた。
左親指のスライドと左足でホバー制御が出来た。
進行方向を軸に回転する。
ゆっくりと左足を踏み、少しづつ正常の向きに戻していく。
推進力が何故か一定低速なのが幸いした。
同時にやることが少なかったので、徐々に安定し始める。
恵麻はそれを見てさらに唖然とする。
何というバランス感覚。凄まじいセンス。
獣人は元々身体能力が高い。
しかし、彼女は人族でありながらも高い能力を持っている。
獣人ばかりの界隈。
トップ選手にも稀にしかいないかもしれない人族の逸材。
陽葵には一つだけイメージ出来ない事があった。
停め方が分からない。見たことが無い。
そんな時、獣人が手を振っていた。
正確には両手でカモンっと大きくジェスチャーをしていた。
いつの間にか木々が少ない場所に移動しており、
男子もかなり離れていた。
「低空飛行……左足で調整すれば……」
しばらく飛び回り、調整を軽く練習する。
彼女と眼を合わせると、徐々に機体を近づけていく。
お互いが手を伸ばすとがっしりと掴む。
彼女もまた、凄まじい身体能力とバランスでシートに跨った。
そして中央のスイッチをパチンと入れる。
すると空気が変わった気がした。
恵麻は機体をスリスリしていた。
「ふぅー……良かったぁぁヴェロチッシモちゃ~ん。あ、私の後ろに行ける?」
「やってみる」
恵麻がハンドルの制御を奪う。
そこで陽葵がコアラの様に恵麻にしがみ付きながら後ろに移動する。
交代したらお互いしっかりと座り直す。
「ヴェロチッシモちゃんを救ってくれてありがとね」
「ううん。私たちも助けてもらったから! ありがとうございました!」
「VH2に乗った事はある?」
「さっきのが初めてだよ」
それを聞いて恵麻は複雑な表情をした。
「私は恵麻。あなたのお名前は?」
「陽葵ー」
「じゃあ、陽葵。お礼に良いモノを見せてあげる」
「いいもの?」
恵麻はその瞬間、急上昇する。
しがみ付きながらそこから見える辺りを見渡した。
その幼い瞳に沢山の情報が流れ込み、
普段では決して味わえない美しい光景が脳を刺激する。
高揚感、幸福が一気にあふれ出る。
先ほどは余裕がなかった。
しかし今は、その絶景に感嘆の声しかでない。
そして、恵麻はアクロバットな動きで陽葵を楽しませる。
水平に180度の急旋回、細かく連続で曲がったり、
垂直に上昇、そこから180度の回転して機体を捻ったり、
空中を縦横無尽に駆けまわる。
ここまで自由に動かせるのかと陽葵は終始興奮していた。
恵麻はその時、陽葵に提案をした。
それを聞いて彼女は衝撃を受ける。
VH2に乗ってレーズに出ないかと誘われた。
陽葵は眼を見開いた。
しかし、すぐに下を向いた。
そして、家の事情を話す。すると彼女は言う。
大きな大会に勝てば賞金も出ると。
日が暮れそうになり、
子供たちと少し離れた場所に着陸する。
男の子たちが元気に近づいてきて、
これに乗った陽葵に沢山質問をする。
羨ましそうにしていた。
しかし、それよりも。
まるでヒーローに会った時のように喜んでいた。
子供たちは先ほどのお礼も忘れない。
しっかりと、何度も言っていた。
獣人を珍しがって質問をしていたが、
誰かがそれを止めた。
家に帰ると、お姉ちゃんが忙しそうにしていた。
手伝いをしていると、体調が悪いのかと聞かれた。
それを否定する。少し考え事をしていただけだ、と。
就寝になり、電気を消す。
ずっと口から出かかっていた事を言葉にしようと決意する。
「あのね、お姉ちゃん……」
「ん?」
「……ぁっ……いや! や、やっぱり何でも無い!」
「なに……? 気になるじゃない」
「ほんとうに何でも無いよ!」
「……」
そのまま布団に潜り込む。
姉はそれ以上、何も訊いて来なかった。
【新福岡】
助手はご機嫌な恵麻を見て、
寝なさいと無理やりベッドに押し込んだ。
若干ボディーに傷が付いているのに気が付いた。
何故機嫌が良いのか尋ねる。
「見つけたっ! 私が作る最高のVH2を乗りぃ」
「え?」
笑顔のまま眠りについた。
昔から恵麻と咲希は仲が良い。
VH2をいじりながら毎日のように言っていた。
世界一の機体を作りたいと。
十時間以上経った時、恵麻は設計室にいた。
白衣をしっかりと着ている。
チョコ味の携帯食や炭酸飲料水が散乱している。
ヴェロチッシモとは違う設計図を作っていた。
それを見て咲希が一言。
「足短くなった?」
「今成長期だから後から調整する」
奇妙な答えが返って来た。
こういう時はまともな返事が返って来ない。
当分は動かないと思われたその時、
時計を見るや否や慌てて支度を始める。
「どっか行くと?」
「うん、迎え行く」
そこでなるほどと理解した。
VH2で移動する。AMプールへVH2を駐める。
旧新都市を繋ぐ、エレベーターに乗って、
地上へと降りた。
丁度その頃、少し遠くから、
柱を囲む鉄格子そっと覗いている陽葵が居た。
誰だと大声で言われ、慌てながらも出て来る。
「あの! ここに来いって言われて!」
「なんだ子供か。まさか最近いたずらしている子じゃ……」
警備員が機械を陽葵に向けると、
驚いた後に納得した様子を見せた。
「この子、ちゃんと申請されてる」
「控室に案内しろ」
「はい。さあ君、こっちへ」
昨日、VH2に搭載されたカメラでちゃっかりと
写真を撮っていた。
陽葵が控室でドキドキ、キョロキョロしていると、
見覚えのある獣人がいた。
オーバーオールの裾が長いこと以外は特に変り無い服装。
ウキウキステップで近づいて来た。
何人かは耳と尻尾を目で追っていた。
「恵麻っ!」
「お待たせ陽葵! やっぱり来てくれたんだね」
「う、うん!」
挨拶をした後にカードを貰った。
これを見せれば一人でもここに入れるそうだ。
仮発行書なので一か月が期限である。
エレベーターは何基かあって、
陽葵はガラス張りのエレベーターを選んだ。
地上がどんどん小さくなっていく。
VH2に乗っているのとはまた別のワクワクがあり、
中でずっと喜んでいた。
慣れて来た頃。「もし、割れたら終わりだ」と口走った。
すると「大丈夫、パラシュート付けてるから」と言って来た。
冗談かと思ったら本当に背負っていた。
「何メートルくらいある?」
「1023メートルあるよ。
ここでは新都市を基準にゼロメートルって表現を使ってる」
陽葵から感嘆の声が漏れた。
そうでありながら、色々な思いが頭をよぎる。
レースはどんな感じだろうか。自分が居なくなれば家族はどうするのだろう。
VH2に乗るのは楽しい。もしかしたら、お金持ちになれるかも。
母の顔や、姉の言葉が脳裏を何度も行き来する。
そんな中、最上階へと到着した。
新都市に到着するとまるで異世界に迷い込んだかのようだった。
口をポカリと開けながら当たりを見渡すと、恵麻が歩き出す。
車、バイク、電車、空中バイク、飛行機が流れる様に往来する。
付いて行くとVH2があった。
「わー昨日と違う機械だぁっ。プロペラが付いてるっ!」
「省エネと安全性に定評がある二人乗りバイクよ」
シートに座り、恵麻にしがみ付く。
昨夜とは違い、低速で安全運転をしていた。
ふと遠くの巨大な映像に目が引き込まれた。
「気になる?」
恵麻がパネルを操作をすると、
後部席の近くにホログラムが出現した。
音声が聞こえる。
難しい字もあるので陽葵は嬉しそうだ。
それはVH2の大会の映像だった。
銀髪で狼の耳を持つ、小柄の獣人が歩いていた。
驚いた事に自分と同じ年齢に見える。
緊張する様子はまるでなく、凛としていた。
フランスで生まれた幼き才女、エレオノール。
画面が切り替わり、別の都市が映される。
次は金髪、人族の豊満な美女。未来視のマートル。
イギリス出身だと紹介がある。
歳は五歳くらい年上に見える。
コミカルな動きでカメラに笑顔を向ける。
先ほどの子はは正反対だ。
次はドイツ。カール。
黒い猫耳を持つ筋肉質のクールな男だ。
隣に整備士らしき人族、クールな金髪の女性が付き添っていた。
そして、日本の東京。
人族、小林小雪と呼ばれている一流の女性選手だ。
少し長めの黒髪、茶色い瞳。爽やかな感じだった。
その他にも福岡の山下亜里沙や田中月乃など紹介があった。
この二人は獣人である。
次にダイジェスト映像に切り替わる。
紹介された人物がVH2に乗っているシーンが流れる。
どれも個性的な機体だった。
福岡勢が気になったが、見ている途中で目的地へと着いた。
恵麻の家兼整備室。咲希が優しく歓迎してくれた。
来て早々、身長と体重、手足や座高など色々と正確に計測する。
それが終わると、最初に冷蔵庫とトイレの場所を案内する。
好きに使っていいと得意気に話した。
それを見ていた咲希は呆れて、
家の中を全体的に案内する。
危険な場所や行為をしっかりと教える。
筋肉トレーニングをするためだけに作った部屋があったのに驚く。
整備室や廊下では従業員が数人、仕事をしていた。
汚れていたので、シャワー室で汚れをおとす。
黒ベースの素材、橙が混じったライダースーツを着せる。
材質がしっかりしており、それだけで暖かく感じる。
耐Gも意識して作られている。
「ごめんなさいね。恵麻は集中するとああなの」
「何してるの?」
「陽葵ちゃんのVH2を作っとるんよ」
「私の!?」
出費が痛いのだが、子供に言っても仕方ないので、
そこは黙っていた。後から恵麻に叩きつければいいだけ。
「三週間後のレースに出ると?」
「恵麻はそう言ってたよ」
「あーね……」
それなら基本的な事は教えないといけない。
だてに長年一緒に居ない。
この計画には既に自分も入っているのを察した。
咲希が教える事にした。
シミュレーションルームに案内する。
機材をみて喜ぶ陽葵。
VH2乗って良いかを聞いて来たので、快く了承する。
トグルスイッチではなくボタンのスイッチであった。
「あ、ボタンが違う」
「あれは恵麻の趣味。
今はボタンの方が主流で、最近はタップ式も人気よ」
ホバーやターボファンエンジンの使い方、
可変式でそれを使う状況。特にWABMの使い方。
ブレーキブースター、エアブレーキ。サイドブースター。
基本的な旋回、急旋回の方法や停止や急停止のやりかた。
高度計や速度計、レーダー等の見かた。MS、ベイルアウト方法。
などを丁寧に教えていく。
何度も根気強く教えて体に覚え込ませる。
慣れると実際に想定される事が定期的に起こり、
それを回避するための指示が出る。それを瞬時に行う。
これを作った者が中々意地悪なようで難しい。
異世界と混じわる事で開発されたMS、マギシールド。
これを展開する事で衝撃を抑えられる。
枝や小石、熱を弾くことも可能である。
旧型がガラスとガチガチのボディーを捨てたのもこれの功績が大きい。
その他にも色々応用が効き、VH2には必須の技術だ。
WABMは簡単に言えば超加速させる装置で、MSの技術も関連している。
特定の場所には近づけず、
色の付いたMSで守っている。
そして、それ等を支えているのがPMS-OE、というシステムだ。
初代がATSが発明され、その後に新しくPMSが開発された。
さらに恵麻が独自に改良したものである。
レース。大会は様々あり、基本男女別れている。
小さな大会だと男女が混じっている事が多い。
種類は持久力、耐久を競うもの、
単純に速度を競うもの、
障害物が多いとこでのテクニックや旋回を競うもの。
そして、それらを総合したものを競うジャンルがある。
出場するのは総合である。
操作に夢中になっていたが、時間が時間なので帰ることになった。
帰り際にあるものを見るけた。
隅の方にポツンとあるシミュレーション用と思われる機体。
ボディーにラムラムゼロ号と書かれていた。
「ねぇ咲希。あれは?」
「ん? あ~、気にしないで……あれは乗り物に見える、
ただのミサ……一応ロケットだから」
翌日も仕事を終わらせて訪れる。
三日ほどみっちりこなすと、次は耐G訓練をするという。
カプセル型のシミュレーションルームに入った。
様々な訓練をしていみるとその適正の高さに咲希は驚く。
残り一週間、陽葵に一番近いサイズ、
かつ二人乗りの機体で一緒に練習に行く。
教習用の機体で、咲希も機体を制御できる。
動き始めから着陸、停止からのホバーや低速。
緩やかな旋回、急旋回、急停止、上昇下降などを実践を通して基礎を叩きこむ。
慣れてきたら、一人用でチャレンジする。
これも彼女の才能なのだろう。
普通はここまでモノにするのに三か月はかかる。
覚えが良いので軽い筋肉トレーニングをする時間まであった。
大会のコースは広い。
通過地点(チェックポイント)が幾つも設けられていて、
そこを必ず通らなければならない。
マップ情報は運営から配られたものをインストールしている。
旧福岡県の外周、約350キロメートルを二周。
飛行距離が700キロを超える大会となる。
チョックポイントはリングの様なゲートになっており、
通り抜けずに進もうとすると、
予めつけている検知機器の音が鳴る。
周回するとチェックポイントが微妙に変わる。
超低空飛行や、急旋回などテクニックが必要となる。
地形や自然現象も敵となるが、
チャックポイントを必ず通る事になり、
それがコースの役割をしており、中々難しい位置に配置されている。
速度を落とせば安全に通れるが、これはレースである。
VH2の競技はプロ、アマチュアに別れている。
プロとは言っても広く深い。
力の差が開き過ぎている事から、
プロの中でもセミプロとトッププロという言葉が出来るほどだ。
使用可能な機体の最大推力や規格は大会によって、
それぞれ決まっている。
今回は総合ジャンルのプロとほぼ同じ条件の大会で、
推進力や機体形状に殆ど制限が無い。
大会の三日前に機体を完成させた。
機体の色は青緑系統のメタリックで、
オレンジのラインが入っている。
陽葵はVH2に抱き着く様に跨る。
余程嬉しかったのだろう。
試運転や微調整をする。
出来る事を全て行い、大会当日となる。
猫の獣人、恵麻は空中散歩を楽しんでいた。
暫く普通に跳んでいたが、
慣れてくる遊び出す。
進行方向に線を通し、それを軸に回転したり、
急上昇や急下降をしたりと試した。
「うぃ~うぃ~♪」
彼女は一通りはしゃぐと一気に疲れを感じた。
寝不足なので、そろそろ試運転を終えて帰ろうと思い、
とある小さな山を通りかかると、
小さな音が一瞬だけ聞こえた。
気になって下を確認すると人がいる。
彼女は正面の隅にある半透明のホログラムをズームインした。
すると一人が崖から落ちそうになっていたのが見える。
「ッやばっ!」
中央のスイッチをパチンパチンと素早く動かすと、
機体の周りの空気の層に変化が現れる。
左の親指をスライドさせ、左足を動かす。
機体の底、後方だけのブースターから出力され、
前方に大きく傾いた。そこから一気に急下降をする。
さらに右親指、アクセル、
そして右足をスムーズに動かし、
ターボファンエンジンの出力を調整する。
そこで子供は手の平からスルリと滑り、
落下していく。その中の彼を支えていた少女が、
名前を叫んでいた。
少女は驚いた。手が離れた直後、すぐ傍を轟音が通り過ぎた。
そして、男の子より速く動くそれは、彼を掴むとそのまま低速の低空飛行をした。
陽葵は混乱しながらも、彼が助かった事だけは理解出来た。
それを見た男の子が興奮気味に叫んだ。
遅れてその状況が分かった男子たちが歓喜の声を上げる。
だが次の瞬間、それは木の枝に引っかかりそうになる。
「不味ッ。MS再起動忘れてた!!」
それを避けると、次は大きな木が目の前に現れた。
体を倒しながら、ブレーキブースターを片方だけ起動させて、
水平に円を描く様に180度の急旋回をした。
しかし、旋回後にコントロール出来ずに機体が大きくブレる。
そのまま大きくバランスを崩し、制御を失った。
そして皆は驚愕する。獣人が子供をしっかりと掴んだまま跳んだ。
ハラハラとしたが、彼女は空中でしっかりとバランスを立て直して、
地面に着地する。その後わざと転がって力を分散させた。
低速低空なのが幸いだった。
だが助かった恵麻は世界の終りを目の当たりにした表情で叫んだ。
「ヴあ”あ”ぁぁあああ!! ヴェロチッシモちゃっーん!!!!」
操縦者を失った機体が奇妙な動きを見せた後、最終的に急上昇する。
恵麻は目を見開く。崖の上にいる少女が、暴れて反転したそれに乗り移ろうとしていたからだ。
「危ないから離れなさい!」
しかし、誰も止める事も出来ず、
彼女はそれに飛び移った。
それを見た恵麻は素直にイカれていると感じた。
動体視力、もしかしたら彼女にはゆっくりと見えているのかもしれない。
その完璧なタイミング、その動体視力に容易に付いて来る身体能力。
さらに一瞬の判断力とそれを実行する度胸。
そして何よりも、凄まじい集中力。
彼女は必死に男の子を離すまいとしていた。
失敗が何を意味するかを理解していたはずだ。
陽葵はハンドルをしっかりと掴んだ。
そして、その引っ張られるエネルギーを利用して、
機体に跨る。
「確か……ッ」
秘密基地で日頃から見ていた操縦を見様見真似で再現する。
しかし、上手く行かずに機体が暴れ回る。
出来る事は少し高めに飛んでぶつからないようにするだけだ。
ある時、偶然に見つけた。
左親指のスライドと左足でホバー制御が出来た。
進行方向を軸に回転する。
ゆっくりと左足を踏み、少しづつ正常の向きに戻していく。
推進力が何故か一定低速なのが幸いした。
同時にやることが少なかったので、徐々に安定し始める。
恵麻はそれを見てさらに唖然とする。
何というバランス感覚。凄まじいセンス。
獣人は元々身体能力が高い。
しかし、彼女は人族でありながらも高い能力を持っている。
獣人ばかりの界隈。
トップ選手にも稀にしかいないかもしれない人族の逸材。
陽葵には一つだけイメージ出来ない事があった。
停め方が分からない。見たことが無い。
そんな時、獣人が手を振っていた。
正確には両手でカモンっと大きくジェスチャーをしていた。
いつの間にか木々が少ない場所に移動しており、
男子もかなり離れていた。
「低空飛行……左足で調整すれば……」
しばらく飛び回り、調整を軽く練習する。
彼女と眼を合わせると、徐々に機体を近づけていく。
お互いが手を伸ばすとがっしりと掴む。
彼女もまた、凄まじい身体能力とバランスでシートに跨った。
そして中央のスイッチをパチンと入れる。
すると空気が変わった気がした。
恵麻は機体をスリスリしていた。
「ふぅー……良かったぁぁヴェロチッシモちゃ~ん。あ、私の後ろに行ける?」
「やってみる」
恵麻がハンドルの制御を奪う。
そこで陽葵がコアラの様に恵麻にしがみ付きながら後ろに移動する。
交代したらお互いしっかりと座り直す。
「ヴェロチッシモちゃんを救ってくれてありがとね」
「ううん。私たちも助けてもらったから! ありがとうございました!」
「VH2に乗った事はある?」
「さっきのが初めてだよ」
それを聞いて恵麻は複雑な表情をした。
「私は恵麻。あなたのお名前は?」
「陽葵ー」
「じゃあ、陽葵。お礼に良いモノを見せてあげる」
「いいもの?」
恵麻はその瞬間、急上昇する。
しがみ付きながらそこから見える辺りを見渡した。
その幼い瞳に沢山の情報が流れ込み、
普段では決して味わえない美しい光景が脳を刺激する。
高揚感、幸福が一気にあふれ出る。
先ほどは余裕がなかった。
しかし今は、その絶景に感嘆の声しかでない。
そして、恵麻はアクロバットな動きで陽葵を楽しませる。
水平に180度の急旋回、細かく連続で曲がったり、
垂直に上昇、そこから180度の回転して機体を捻ったり、
空中を縦横無尽に駆けまわる。
ここまで自由に動かせるのかと陽葵は終始興奮していた。
恵麻はその時、陽葵に提案をした。
それを聞いて彼女は衝撃を受ける。
VH2に乗ってレーズに出ないかと誘われた。
陽葵は眼を見開いた。
しかし、すぐに下を向いた。
そして、家の事情を話す。すると彼女は言う。
大きな大会に勝てば賞金も出ると。
日が暮れそうになり、
子供たちと少し離れた場所に着陸する。
男の子たちが元気に近づいてきて、
これに乗った陽葵に沢山質問をする。
羨ましそうにしていた。
しかし、それよりも。
まるでヒーローに会った時のように喜んでいた。
子供たちは先ほどのお礼も忘れない。
しっかりと、何度も言っていた。
獣人を珍しがって質問をしていたが、
誰かがそれを止めた。
家に帰ると、お姉ちゃんが忙しそうにしていた。
手伝いをしていると、体調が悪いのかと聞かれた。
それを否定する。少し考え事をしていただけだ、と。
就寝になり、電気を消す。
ずっと口から出かかっていた事を言葉にしようと決意する。
「あのね、お姉ちゃん……」
「ん?」
「……ぁっ……いや! や、やっぱり何でも無い!」
「なに……? 気になるじゃない」
「ほんとうに何でも無いよ!」
「……」
そのまま布団に潜り込む。
姉はそれ以上、何も訊いて来なかった。
【新福岡】
助手はご機嫌な恵麻を見て、
寝なさいと無理やりベッドに押し込んだ。
若干ボディーに傷が付いているのに気が付いた。
何故機嫌が良いのか尋ねる。
「見つけたっ! 私が作る最高のVH2を乗りぃ」
「え?」
笑顔のまま眠りについた。
昔から恵麻と咲希は仲が良い。
VH2をいじりながら毎日のように言っていた。
世界一の機体を作りたいと。
十時間以上経った時、恵麻は設計室にいた。
白衣をしっかりと着ている。
チョコ味の携帯食や炭酸飲料水が散乱している。
ヴェロチッシモとは違う設計図を作っていた。
それを見て咲希が一言。
「足短くなった?」
「今成長期だから後から調整する」
奇妙な答えが返って来た。
こういう時はまともな返事が返って来ない。
当分は動かないと思われたその時、
時計を見るや否や慌てて支度を始める。
「どっか行くと?」
「うん、迎え行く」
そこでなるほどと理解した。
VH2で移動する。AMプールへVH2を駐める。
旧新都市を繋ぐ、エレベーターに乗って、
地上へと降りた。
丁度その頃、少し遠くから、
柱を囲む鉄格子そっと覗いている陽葵が居た。
誰だと大声で言われ、慌てながらも出て来る。
「あの! ここに来いって言われて!」
「なんだ子供か。まさか最近いたずらしている子じゃ……」
警備員が機械を陽葵に向けると、
驚いた後に納得した様子を見せた。
「この子、ちゃんと申請されてる」
「控室に案内しろ」
「はい。さあ君、こっちへ」
昨日、VH2に搭載されたカメラでちゃっかりと
写真を撮っていた。
陽葵が控室でドキドキ、キョロキョロしていると、
見覚えのある獣人がいた。
オーバーオールの裾が長いこと以外は特に変り無い服装。
ウキウキステップで近づいて来た。
何人かは耳と尻尾を目で追っていた。
「恵麻っ!」
「お待たせ陽葵! やっぱり来てくれたんだね」
「う、うん!」
挨拶をした後にカードを貰った。
これを見せれば一人でもここに入れるそうだ。
仮発行書なので一か月が期限である。
エレベーターは何基かあって、
陽葵はガラス張りのエレベーターを選んだ。
地上がどんどん小さくなっていく。
VH2に乗っているのとはまた別のワクワクがあり、
中でずっと喜んでいた。
慣れて来た頃。「もし、割れたら終わりだ」と口走った。
すると「大丈夫、パラシュート付けてるから」と言って来た。
冗談かと思ったら本当に背負っていた。
「何メートルくらいある?」
「1023メートルあるよ。
ここでは新都市を基準にゼロメートルって表現を使ってる」
陽葵から感嘆の声が漏れた。
そうでありながら、色々な思いが頭をよぎる。
レースはどんな感じだろうか。自分が居なくなれば家族はどうするのだろう。
VH2に乗るのは楽しい。もしかしたら、お金持ちになれるかも。
母の顔や、姉の言葉が脳裏を何度も行き来する。
そんな中、最上階へと到着した。
新都市に到着するとまるで異世界に迷い込んだかのようだった。
口をポカリと開けながら当たりを見渡すと、恵麻が歩き出す。
車、バイク、電車、空中バイク、飛行機が流れる様に往来する。
付いて行くとVH2があった。
「わー昨日と違う機械だぁっ。プロペラが付いてるっ!」
「省エネと安全性に定評がある二人乗りバイクよ」
シートに座り、恵麻にしがみ付く。
昨夜とは違い、低速で安全運転をしていた。
ふと遠くの巨大な映像に目が引き込まれた。
「気になる?」
恵麻がパネルを操作をすると、
後部席の近くにホログラムが出現した。
音声が聞こえる。
難しい字もあるので陽葵は嬉しそうだ。
それはVH2の大会の映像だった。
銀髪で狼の耳を持つ、小柄の獣人が歩いていた。
驚いた事に自分と同じ年齢に見える。
緊張する様子はまるでなく、凛としていた。
フランスで生まれた幼き才女、エレオノール。
画面が切り替わり、別の都市が映される。
次は金髪、人族の豊満な美女。未来視のマートル。
イギリス出身だと紹介がある。
歳は五歳くらい年上に見える。
コミカルな動きでカメラに笑顔を向ける。
先ほどの子はは正反対だ。
次はドイツ。カール。
黒い猫耳を持つ筋肉質のクールな男だ。
隣に整備士らしき人族、クールな金髪の女性が付き添っていた。
そして、日本の東京。
人族、小林小雪と呼ばれている一流の女性選手だ。
少し長めの黒髪、茶色い瞳。爽やかな感じだった。
その他にも福岡の山下亜里沙や田中月乃など紹介があった。
この二人は獣人である。
次にダイジェスト映像に切り替わる。
紹介された人物がVH2に乗っているシーンが流れる。
どれも個性的な機体だった。
福岡勢が気になったが、見ている途中で目的地へと着いた。
恵麻の家兼整備室。咲希が優しく歓迎してくれた。
来て早々、身長と体重、手足や座高など色々と正確に計測する。
それが終わると、最初に冷蔵庫とトイレの場所を案内する。
好きに使っていいと得意気に話した。
それを見ていた咲希は呆れて、
家の中を全体的に案内する。
危険な場所や行為をしっかりと教える。
筋肉トレーニングをするためだけに作った部屋があったのに驚く。
整備室や廊下では従業員が数人、仕事をしていた。
汚れていたので、シャワー室で汚れをおとす。
黒ベースの素材、橙が混じったライダースーツを着せる。
材質がしっかりしており、それだけで暖かく感じる。
耐Gも意識して作られている。
「ごめんなさいね。恵麻は集中するとああなの」
「何してるの?」
「陽葵ちゃんのVH2を作っとるんよ」
「私の!?」
出費が痛いのだが、子供に言っても仕方ないので、
そこは黙っていた。後から恵麻に叩きつければいいだけ。
「三週間後のレースに出ると?」
「恵麻はそう言ってたよ」
「あーね……」
それなら基本的な事は教えないといけない。
だてに長年一緒に居ない。
この計画には既に自分も入っているのを察した。
咲希が教える事にした。
シミュレーションルームに案内する。
機材をみて喜ぶ陽葵。
VH2乗って良いかを聞いて来たので、快く了承する。
トグルスイッチではなくボタンのスイッチであった。
「あ、ボタンが違う」
「あれは恵麻の趣味。
今はボタンの方が主流で、最近はタップ式も人気よ」
ホバーやターボファンエンジンの使い方、
可変式でそれを使う状況。特にWABMの使い方。
ブレーキブースター、エアブレーキ。サイドブースター。
基本的な旋回、急旋回の方法や停止や急停止のやりかた。
高度計や速度計、レーダー等の見かた。MS、ベイルアウト方法。
などを丁寧に教えていく。
何度も根気強く教えて体に覚え込ませる。
慣れると実際に想定される事が定期的に起こり、
それを回避するための指示が出る。それを瞬時に行う。
これを作った者が中々意地悪なようで難しい。
異世界と混じわる事で開発されたMS、マギシールド。
これを展開する事で衝撃を抑えられる。
枝や小石、熱を弾くことも可能である。
旧型がガラスとガチガチのボディーを捨てたのもこれの功績が大きい。
その他にも色々応用が効き、VH2には必須の技術だ。
WABMは簡単に言えば超加速させる装置で、MSの技術も関連している。
特定の場所には近づけず、
色の付いたMSで守っている。
そして、それ等を支えているのがPMS-OE、というシステムだ。
初代がATSが発明され、その後に新しくPMSが開発された。
さらに恵麻が独自に改良したものである。
レース。大会は様々あり、基本男女別れている。
小さな大会だと男女が混じっている事が多い。
種類は持久力、耐久を競うもの、
単純に速度を競うもの、
障害物が多いとこでのテクニックや旋回を競うもの。
そして、それらを総合したものを競うジャンルがある。
出場するのは総合である。
操作に夢中になっていたが、時間が時間なので帰ることになった。
帰り際にあるものを見るけた。
隅の方にポツンとあるシミュレーション用と思われる機体。
ボディーにラムラムゼロ号と書かれていた。
「ねぇ咲希。あれは?」
「ん? あ~、気にしないで……あれは乗り物に見える、
ただのミサ……一応ロケットだから」
翌日も仕事を終わらせて訪れる。
三日ほどみっちりこなすと、次は耐G訓練をするという。
カプセル型のシミュレーションルームに入った。
様々な訓練をしていみるとその適正の高さに咲希は驚く。
残り一週間、陽葵に一番近いサイズ、
かつ二人乗りの機体で一緒に練習に行く。
教習用の機体で、咲希も機体を制御できる。
動き始めから着陸、停止からのホバーや低速。
緩やかな旋回、急旋回、急停止、上昇下降などを実践を通して基礎を叩きこむ。
慣れてきたら、一人用でチャレンジする。
これも彼女の才能なのだろう。
普通はここまでモノにするのに三か月はかかる。
覚えが良いので軽い筋肉トレーニングをする時間まであった。
大会のコースは広い。
通過地点(チェックポイント)が幾つも設けられていて、
そこを必ず通らなければならない。
マップ情報は運営から配られたものをインストールしている。
旧福岡県の外周、約350キロメートルを二周。
飛行距離が700キロを超える大会となる。
チョックポイントはリングの様なゲートになっており、
通り抜けずに進もうとすると、
予めつけている検知機器の音が鳴る。
周回するとチェックポイントが微妙に変わる。
超低空飛行や、急旋回などテクニックが必要となる。
地形や自然現象も敵となるが、
チャックポイントを必ず通る事になり、
それがコースの役割をしており、中々難しい位置に配置されている。
速度を落とせば安全に通れるが、これはレースである。
VH2の競技はプロ、アマチュアに別れている。
プロとは言っても広く深い。
力の差が開き過ぎている事から、
プロの中でもセミプロとトッププロという言葉が出来るほどだ。
使用可能な機体の最大推力や規格は大会によって、
それぞれ決まっている。
今回は総合ジャンルのプロとほぼ同じ条件の大会で、
推進力や機体形状に殆ど制限が無い。
大会の三日前に機体を完成させた。
機体の色は青緑系統のメタリックで、
オレンジのラインが入っている。
陽葵はVH2に抱き着く様に跨る。
余程嬉しかったのだろう。
試運転や微調整をする。
出来る事を全て行い、大会当日となる。
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