上 下
55 / 70
楽園

55

しおりを挟む
「は、はぁ? な、何だよ……それ……聞いてねぇぞ!」

「馬鹿、止めとけって! そんなに長時間の能力使用とかっ、絶対負担が大きすぎるって!」

「折角くつろぎに来たのに田中の体調が悪くなるとか、そんなの残酷だっ」

 しかしそれに対して、何時もは前に余り出て来ない田中も今回はきっぱりと言った。

「私の能力、結構燃費良いみたいだから、クラス中を巻き込んでも大丈夫」

 後藤は嬉しそうに言った。

「それじゃあ実験して大丈夫だったら、それで決まりだね」

 男子たちの大半は膝を付き地面を叩いていた。そんな中、リラックスした状態で温まってる鉄と佐野が居た。最後に不死原は言う。

「ふっ……これで喧嘩せずに入れるなっ。めでたしめでたしだ!」


 後藤はその言葉を聞いて訝しげな表情をした。

「……急に大人しくなったわね。逆に怖いんだけど」

「おいおい、この純粋な眼を見ろよ!」

「怪しいわね……まあ、佐久間君がいるし、大丈夫か」

「おい……」

 その後、木製の仕切りの様な物が現れたと皆は言っていた。その時の俺は、幻影の仕切りに背を向けて、敵を警戒している振りをした。

 皆が温泉を楽しみだした時、不死原たちがコソコソと壁に近づいて行った。何故か佐久間は止めなかった。まるで無理だと言わんばかりに気にしてなかった。もう少しで壁を超える事が出来る距離に差し掛かった時、後藤が壁の向こうから自信に溢れた口調で言う。

 その言葉には不思議な力強さがあった。手を腰に当て、仁王立ちをしているのではと感じる程、それは堂々としていた。

「さて……男子諸君。幻影など、何だかの手違いで突破すれば良いと考えてはないかね?」

「ッ……!? な、何の事かな?」

「俺たちは純粋に温泉を楽しんでるんだ! 下手な言いがかりは止めてもらえませんかねぇ……ッ!?」

(いや、多分声の距離からバレバレだぞ……)

「それなら良かったわ。あ、そうそう、ちょっと言い忘れてたけど……私の能力は《言霊ことだま》」

「……な、なんて? 今なんて言った……っ?」

「言葉に強制力を持たせる能力だって言ったのよッ。この馬鹿どもがぁ!」

 その意味を理解した彼等は叫んだ。

「てっめーッ」

 そして、後藤の力強い声が響き渡る。

「男子はこの幻影の仕切りを超える事が絶対に出来なくなるッ! 絶対にねぇ!?」

 その瞬間、男子たちの足取りは重くなった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

無人島ほのぼのサバイバル ~最強の高校生、S級美少女達と無人島に遭難したので本気出す~

絢乃
ファンタジー
【ストレスフリーの無人島生活】 修学旅行中の事故により、無人島での生活を余儀なくされる俺。 仲間はスクールカースト最上位の美少女3人組。 俺たちの漂着した無人島は決してイージーモードではない。 巨大なイノシシやワニなど、獰猛な動物がたくさん棲息している。 普通の人間なら勝つのはまず不可能だろう。 だが、俺は普通の人間とはほんの少しだけ違っていて――。 キノコを焼き、皮をなめし、魚を捌いて、土器を作る。 過酷なはずの大自然を満喫しながら、日本へ戻る方法を模索する。 美少女たちと楽しく生き抜く無人島サバイバル物語。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

異世界坊主の成り上がり

峯松めだか(旧かぐつち)
ファンタジー
山歩き中の似非坊主が気が付いたら異世界に居た、放っておいても生き残る程度の生存能力の山男、どうやら坊主扱いで布教せよということらしい、そんなこと言うと坊主は皆死んだら異世界か?名前だけで和尚(おしょう)にされた山男の明日はどっちだ? 矢鱈と生物学的に細かいゴブリンの生態がウリです? 本編の方は無事完結したので、後はひたすら番外で肉付けしています。 タイトル変えてみました、 旧題異世界坊主のハーレム話 旧旧題ようこそ異世界 迷い混んだのは坊主でした 「坊主が死んだら異世界でした 仏の威光は異世界でも通用しますか? それはそうとして、ゴブリンの生態が色々エグいのですが…」 迷子な坊主のサバイバル生活 異世界で念仏は使えますか?「旧題・異世界坊主」 ヒロイン其の2のエリスのイメージが有る程度固まったので画像にしてみました、灯に関しては未だしっくり来ていないので・・未公開 因みに、新作も一応準備済みです、良かったら見てやって下さい。 少女は石と旅に出る https://kakuyomu.jp/works/1177354054893967766 SF風味なファンタジー、一応この異世界坊主とパラレル的にリンクします 少女は其れでも生き足掻く https://kakuyomu.jp/works/1177354054893670055 中世ヨーロッパファンタジー、独立してます

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...