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楽園
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【12日目の朝】
俺たちは粘土を採取していた。ここは何時もとは違う場所だ。先日、狩猟組が上流方面で狩りをしている時に偶然見つけた。こっちの方が少しだけ近い。佐久間が安心した様子で言う。
「だいぶ体調が戻ったようだな」
天羽は僅かに照れながら言う。
「佐久間君が看病してくれたからね」
あの事件後、二人は仲良くなったみたいだ。何かというか、物理的にも前より僅かに近い気がする。今泉莉々衣が若干不機嫌に言う。
「はいはい、凪ちゃん。いちゃついてないで仕事する!」
「違うって! そんなつもりじゃ!」
内藤と田中がそれに賛同する。
「そうですよっ。お礼を言ってるだけですって」
「そうね~。というかそれくらいでいちゃついてるとか……リリってもしかして……」
「う、うるさいな! 私の事はいいでしょ!」
(余裕が出て来たな。良い事だ。ちょっと前までは恐怖に怯えながら作業してたしな)
疲れて少し休んでいると、大神が小声で話かけて来た。
「ねぇ、宮本君って五鬼継さんと付き合ってるってほんとぉ?」
「うん、そうだけど? なんで?」
「い、いや! ちょっと噂を聞いてね! そっか、そっか」
「要たちって前から結構仲良くてさー……」
話しを途中止めた。女性の大きな声が聞こえて来た。
「佐久間っ。今叫び声みたいなのが……」
「ああ、俺にも聞こえた」
他の者には聞こえなかったようだ。
「こんな所に? 気のせいか鳥とかなんじゃ?」
「確かにその線もあるけど、誰か襲われてたら大変だ……警戒しながら行こうッ」
その場に荷物を残し、二人で先陣を切る。それに彼女等が付いて来る。しばらく走っていると開けた所に出た。そこに居た人を見て俺は驚いた。
「みーちゃん? なんでこんな所に?」
特に襲われた形跡もない。不死原も無事だった。それを見て皆ホッとため息を吐く。しかし、彼女は興奮していた。
「見て見て見て見て!!!」
「なに?」
「……あれって……」
「湯気……まさか温泉か……」
その言葉を聞いた女子は歓喜の声を上げて近づこうとしていた。俺は思わず大声で叫んだ。
「ちょっと待って、離れて! 危険が無いか調査をしないと!」
「えー! なんでー? こんなに良い温泉だよ?」
(近くの植物は枯れてない……硫黄の匂いは無い……いや、下に溜まっているかもしれない)
佐久間が皆に向けて話す。
「嬉しいのは分かるが、命に関わる。一回帰って報告をしよう」
「はーい!」
不死原がいつの間にか背後に居た。全てを見通すかの如き鋭い眼差しをして、こそっと耳打ちをしてくる。
「城詰……その真剣な表情から察するに、何か思いついたようだな?」
「これだ、って言うのはまだだ……ひとまず思いつくのは獣や昆虫かな……」
先に生物が入れるかを確認しないといけない。湯を綺麗に、収集も整備もしないとな。
「はぁ……? どうやってそれで混浴が出来るんだ? 分からんから詳しく頼む……」
「……違う事考えてるんだよなー」
俺たちは粘土を採取していた。ここは何時もとは違う場所だ。先日、狩猟組が上流方面で狩りをしている時に偶然見つけた。こっちの方が少しだけ近い。佐久間が安心した様子で言う。
「だいぶ体調が戻ったようだな」
天羽は僅かに照れながら言う。
「佐久間君が看病してくれたからね」
あの事件後、二人は仲良くなったみたいだ。何かというか、物理的にも前より僅かに近い気がする。今泉莉々衣が若干不機嫌に言う。
「はいはい、凪ちゃん。いちゃついてないで仕事する!」
「違うって! そんなつもりじゃ!」
内藤と田中がそれに賛同する。
「そうですよっ。お礼を言ってるだけですって」
「そうね~。というかそれくらいでいちゃついてるとか……リリってもしかして……」
「う、うるさいな! 私の事はいいでしょ!」
(余裕が出て来たな。良い事だ。ちょっと前までは恐怖に怯えながら作業してたしな)
疲れて少し休んでいると、大神が小声で話かけて来た。
「ねぇ、宮本君って五鬼継さんと付き合ってるってほんとぉ?」
「うん、そうだけど? なんで?」
「い、いや! ちょっと噂を聞いてね! そっか、そっか」
「要たちって前から結構仲良くてさー……」
話しを途中止めた。女性の大きな声が聞こえて来た。
「佐久間っ。今叫び声みたいなのが……」
「ああ、俺にも聞こえた」
他の者には聞こえなかったようだ。
「こんな所に? 気のせいか鳥とかなんじゃ?」
「確かにその線もあるけど、誰か襲われてたら大変だ……警戒しながら行こうッ」
その場に荷物を残し、二人で先陣を切る。それに彼女等が付いて来る。しばらく走っていると開けた所に出た。そこに居た人を見て俺は驚いた。
「みーちゃん? なんでこんな所に?」
特に襲われた形跡もない。不死原も無事だった。それを見て皆ホッとため息を吐く。しかし、彼女は興奮していた。
「見て見て見て見て!!!」
「なに?」
「……あれって……」
「湯気……まさか温泉か……」
その言葉を聞いた女子は歓喜の声を上げて近づこうとしていた。俺は思わず大声で叫んだ。
「ちょっと待って、離れて! 危険が無いか調査をしないと!」
「えー! なんでー? こんなに良い温泉だよ?」
(近くの植物は枯れてない……硫黄の匂いは無い……いや、下に溜まっているかもしれない)
佐久間が皆に向けて話す。
「嬉しいのは分かるが、命に関わる。一回帰って報告をしよう」
「はーい!」
不死原がいつの間にか背後に居た。全てを見通すかの如き鋭い眼差しをして、こそっと耳打ちをしてくる。
「城詰……その真剣な表情から察するに、何か思いついたようだな?」
「これだ、って言うのはまだだ……ひとまず思いつくのは獣や昆虫かな……」
先に生物が入れるかを確認しないといけない。湯を綺麗に、収集も整備もしないとな。
「はぁ……? どうやってそれで混浴が出来るんだ? 分からんから詳しく頼む……」
「……違う事考えてるんだよなー」
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