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足音

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 そこで宝剣が獣の糞や足跡を発見した。

「さて、話は終わりだ。そろそろ狩りに集中しろ……」

「了解……」



【拠点の様子】

 拠点は守備兼雑用は16名。研究組を含めると19名となる。通常時は、主に後藤が指示を出していた。愛丘や古川先生は、様々な状況にに備えるための話し合いを常にしている。朝昼夕の三回度以外は基本建物内に籠っている。

 その三度は進捗状態を確認するためである。

 ここでは色々な事をしている。拠点周辺で木材やベリーの調達、住居や土器、網等の作成を平行して実行する。当分先になるだろうが、畑関連の知識も少しづつ蓄え、予め準備している。

 そして、今日も後藤の大声が響き渡る。

「秋元! 木材を運び終わったら組み立てる!」

「くそっ……少しは休ませろっての」

 小さい声で言ったが、彼女に聞こえてしまった様だ。

「ん~? 文句があるなら狩猟組か採取組に入れるけど?」

「いや、何でもない!」

 彼はそう言って動き出す。自身もテキパキと仕事をこなしながら、ふと全体を見ては指示を与える。明らかに人手が足りないが、寒さに備えてそれをやらなければ死んでしまう。冬があるかは不明だが、日々気温が低くなっているのを感じる気がする。

 後藤が近くを通りかかった時、粘土を捏ねていた松本が訊く。

「ねぇ、委員長。鉄君たちは?」

「え?」

 キョロキョロと辺りを見渡すが彼等が居なかった。かなり離れて粘土を捏ねていた根元がボソっと言う。

「どうせサボリだよ。サボリ……」

「あいつらぁ!」

 後藤は怒りをぶつける様にドスドスと勇ましい足取りで鉄の住居に向かう。

「くろがっきゃぁぁああ!」

 住居に入りながら説教をしようとした直前に彼女は叫んだ。

「なんだ後藤か……昼休憩に一回どうだ?」

 手で顔を覆いながら外に出ると大声で聞いた。

「なッ、んッ、でッ、裸なのよ!? ばっかじゃないの!?」

「そりゃ自分の家だからだろ」

「あー! どうでも良いから! 早く服を着なさい!」

「ったく、うるせーな……」

「うるさいじゃないッ! 何で私がこんな目にっ……」


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