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 最初は誰かと思った。何時もよりも高いというか、穏やかというか。ちょっと違う声だったからだ。

 彼女が入って来る。手にはベリーを持っていた。

「蛍ちゃん。来てくれたんだ」

「うん、心配でね」

(知らない間に仲良くなったんだな。色んな所が変って行ってるな)

「わざわざありがとな」

「ううん。良いよこれくらい。何時も助けてもらってるからね」

 彼女はそう言って樹皮にベリーを置く。そして彼女は座った。

「……」

 暫し時が流れた。誰も何も話さない。本当に無言だった。俺はその空気に耐えられずに口を開いた。

「あっ、巫が持って来たベリーもらおうかな」

「あ、お腹空いてた? 気が付かなくてごめん」

 そう言いながら彼女はベリーを渡して来た。それを食べる。

「何時もよりも旨い!」

「良かった~。新鮮なのを選んだの」

 彼女は嬉しそうに言う。そして、和の方を見た。ベリーを持って来るのを忘れた彼女に言う。

「もー、和ちゃんったら。栄養もとらないと早く治らないよ。おっちょこちょいなんだからー」

「ハ……ハハハ……一刻も早く楽にしてあげたかったら忘れちゃってたなー。ありがとね、蛍ちゃん」

(あれ、何か違和感が……仲良し、なんだよね……?)


「余り長くいると風邪がうつるから。そろそろ戻った方が良いよ」

「え、ええ……そうじゃあまた後でね。城詰君。和ちゃんも」

 彼女が戻ると、シーンとなった。

「和……手が痛いんだが……」

「うん、風邪を引くと体が痛くなる事って、よくあるよねー」

「あ~、あるある」

(外部からの刺激に感じる気がする)


 手の痛みが和らぎ始めた時、少し高めで心地いい声が外から聞こえて来た。

(……円城寺っぽいな)

「かなえちゃん、来てくれたんだー」

「いきなり倒れたって聞いて心配したよ」

「心配かけて悪いな」

「ほんとだよー」

 彼女は微笑をうかべてそう言う。その時、手に器を持っているのに気が付いた。

「それってもしかして?」

「そうっ。陶器第一号だよ!」

「おおおお!」

 体調が悪いのを忘れて声が出た。茶碗ほどのサイズで、直火で焼いたであろう痕跡が残っていた。ついに完成したようだ。

「あ、隙間からちょっと漏れるみたいだから早く飲んで」

 そう言われて俺はそれを手に取る。その瞬間衝撃を受けた。器が温かい。

「これはっ……お湯……」

「そそっ……ねぇねぇ。早く飲んでみて!」

 それを飲もうと口を近づけた時、俺はさらに驚いた。良い香りがする。そして、飲むとお茶に近い味がした。

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