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そんな事もある

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 皆がそれを聞いて喜んでいると、遠くで睨んでいた不良男子、くろがねが別の事を指摘する。

「そいつが嘘を吐いている場合はどうすんだ?」

「へ? ……う、嘘じゃないでござるよ! ス、ステータスボードを見せても良いでござる!」

「そうじゃねぇだろ? おい、試しに俺にやってみろよ。もしも間違っていたら……殺すぞ」

「ひぃっ……」

 おおとりはその存在感に圧倒されて、それ以上は言葉が出なかった。それを察したくろがねが提案する。

「俺の能力が、水を出せる能力か質問してみろ」

 それを聞いてようやく彼は口を動かした。

「く、鉄殿の能力は、み、水を出せる力でござるか!?」

「いいや、違う」

 すると鳳の頭に、まるで最初から知っていたかのように答えが入り込む。鳳が恐る恐る一度鉄の眼を見た。彼の瞳は殺気立っていた。間違えれば……そして、それに怯えながらも声を張り上げて結果を言う。

「鉄殿は水を出す能力じゃないでござるっ」

「正解だ。何故分かった?」

「え? あ、頭に直接、嘘を言ってないって事が聞こえて? いや、まるで最初から知ってるみたいに……と、とにかく。せ、正解でござろう?」

「そうだな」

 それを聞いて鳳は心の底からホッとしていた。

「す、凄いじゃない……」

 女子の天羽あもうが、冷や汗をかきながら呟いた。しかし、鉄はまだ鳳にかみつく。

「一度の検証だが、もう十分だ。能力をこれ以上疑っても切りがねぇ。確かにお前は他人の言葉の真偽が分かるようだ。だがな……てめーの発言そのもの……その真偽は誰が保証する?」

「……え?」

(ああ、そういう事か。鳳の能力を信頼するほどに……真偽に関係なく、ある程度人の意見を操る事が出来る。使い方次第では恐ろしい……)

「はぁ? くろがね、あんたさぁ。正解を言い当てられて、思い通りにならなかったからって……悔しいのは分かるけどさー。それ以上の言いがかりはやめなさいよ」

「うるせーな、天羽あもう……馬鹿は黙ってろ」

「はぁ!? 馬鹿って何よ! あんたに言われたくないんだけどッ」

 そこで佐久間が止めに入る。

「やめるんだ鉄っ。今は争っている場合じゃないだろッ……」


「言って置くが、俺はお前が仕切る事を了承した訳じゃねーからな、佐久間」

(不味いな……喧嘩は不味いっ。何とか止めないと)

「もう、それくらいで良いだろう? 仲良くしよう、な?」

 俺が優しく言うと鉄が睨んで来た。怖っ。思わず後退りすると、愛丘まなおかがそこに割り込んでくる。

「はいはい。今は抑えて。水も食料も十分に確保出来てないのに余計なエネルギーは使わないでくれ」

 鉄が愛丘の方に視線を移す。少しすると何か納得した様に表情が僅かに柔らかくなる。

「はっ。ごもっともだな。すぐに切れ散らかす下らねー連中相手に無駄な体力を使うのはやめだ。仕切るのはもう愛丘一人で良いんじゃねぇか?」

「ッ……」

 佐久間はそう指摘されるとそれ以上言葉が出なかった。何時もは冷静なのにらしくなかった。

(お前が言うな、っていうのは黙ってよう。こじれる)

 こうして鉄は大人しくなり、俺たちから目線を外した。

(ふぅー。それにしてもスゲーな愛丘は……真正面から鉄を睨むんだもんな。肝が据わってるというか)


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