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四月篇

第26話  嫉妬する二人

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 新入生は、後十分後には、下校しなければならない。

 仮入部期間中は、午後五時半までとなっている。

「ほー、やってる、やってる。唯ちゃん、来て良かったね。時間ギリギリで、間に合ったよ」

 と、夏海が先頭に立ち、テニスコートを眺めていた。

 後ろには、唯と咲弥がいる。

 彼女たちは、一通りこの学校の部活動を見学しながら、最後にテニスを見学しに来た。

 おそらく、二人はここにいるのだろうと、思っていたのだ。

 どうやら、現在、二人共、先輩のラケットを借りて、試し打ちをしている。

「それにしてもあの二人、うまいじゃん。唯ちゃん、二人共、強かったの?」

 と、夏海は敦也と里菜が、ボールを打っている姿を見て、関心していた。

「そうですね。あっちゃんは、県大会でベスト16位が最高です。里菜は……。あの子、全国レベルの実力はあるのですが、いつもの癖で、九州大会ベスト32位が最高なんですよ」

「弟君はともかく、里菜ちゃんは凄いんじゃないの? それだったら、普通にスポーツが有名な高校から声がかかっても、おかしくはないと思うけど……」

 夏海は、唯の話を聞いて、疑問に思う。

「簡単な事、私達と離れたくないだけ」

 咲弥が言った。

「どういう意味?」

「一人だけ、仲間外れにされるのが、気に喰わないのよ」

「なるほど?」

 夏海は、理解しているようで、理解しきれていなかった。

「まぁ、その話は、いずれ、その日が来た時に、夏海に話してあげる」

 三人は、柵の外からテニスの見学をする。

 すると、ボールが目の前に飛んでくる。

 パンッ!

 ボールが、柵にめり込んだ。

「ごめんなさい。大丈夫です……あれ? 唯と咲弥、それに夏海も……。三人共、どうしたの?」

 ボールを取りに来た里菜が、三人に気づく。

「見学ですよ。見学」

「私も」

「面白そうだから!」

 唯、咲弥、夏海がそれぞれ言う。

「もうすぐ終わるから待ってて!」

 と、里菜は戻ろうとする。

「里菜!」

「何?」

「楽しいですか?」

 唯が、里菜に訊く。

「うーん、どうかな? でも、敦也と一緒だから楽しいかも」

 と、里菜はニヤッと唯たちの方を見て、笑った。

「イラッ!」

「ムカッ!」

 唯と咲弥は、なぜか、里菜に嫉妬する。

「えっ⁉」

 と、間に立っていた夏海が、交互に二人を見る。

「ねぇ、咲弥。私、ちょっと、考えがあるのですが……」

「同じだね。私もたぶん、唯と同じことを考えていた」

 二人の笑みは不気味だ。

「ふふふ……」

「くくく……」

 二人の嫉妬心は尋常じゃない。

(何この二人? さっきから怖いんですけど!)

 夏海は、この二人に挟まれたまま、残り時間、最後までこの状況が続いた。
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