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四月篇

第20話  勝者の命令

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 現在、レースポイントにおいて——

 三位・咲弥・三十八ポイント

 四位・敦也・三十六ポイント

 二人の差はたったの二ポイント差である。

 そして、最終レースの前に咲弥が口を開いて言う。

「ああ、そう言えば、これ、負けた方が相手に何でも言うこと聞かせられる罰ゲームがあるから」

「はぁ⁉ 聞いてねぇーぞ!」

「別にいいじゃない。ポイントもそこまで差が開いているわけではないんだし、あっくんが勝てばいいだけの話」

「まぁ、二点差なら俺が一位になればいいだけの話か……」

 敦也は、納得する。

(かかった!)

 咲弥は、ニヤリ、と笑みを浮かべる。

「じゃあ、最終レーススタート!」



「ま、負けた……」

 敦也は、最後の最後で、咲弥が持っていたアイテムに倒され、五位でフィニッシュした。

 トータル成績で、咲弥が二位になり、敦也は六位で終わったのだ。

「さて、勝者の権限を私」

 と、敦也の前に立つ。

「くっ……」

 悔しそうな表情をする敦也。

 負けは負けでも、咲弥の罠に気づいていればと思うと、悔しい。

「そこで横になって」

 ベットの方を指す。

「はい?」

「いいから、早く」

「はい……」

 言われるままに、ベットの上で仰向けになる敦也。

「それから右腕を体から九十度に広げる」

「こうか?」

 敦也は右腕を寝せたまま、九十度、広げた。

「そのまま、動かない」

 そう言って、咲弥は、敦也の横に寝て、右腕を枕代わりにして、敦也に抱きつくのだ。

(なるほど、これが勝者の命令ね。あまり、いつもと変わらないな。本当に、この姉妹は、なぜ、俺がいいのかね。姉弟なのに……)

 悪い気はしないが、高校生になったから、早く、弟離れをして欲しいと、敦也は思った。

 咲弥は、嬉しそうに顔を埋めて、敦也の成分を堪能する。

 他の二人が、帰ってくるまでの間、ずっと、この大勢が続いたのであった。
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