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8章 このゲームはこの世界のどこまで影響を及ぼしているのか
雷を防ぐには
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それから色々実験をした。
このフィールドには雷を操るモンスターが多数いる。それらのモンスターの電撃はそれほど強くはない。せいぜい痺れるくらいだ。他の階層で取得できる様々な素材がどの程度電気を通すのか、あるいは防げるのかを調べる。
「ねぇ。この雷獣は雷を撃っても痺れてる様子はないよね。さっきのウォルターの話だと電気が繋がった方もダメージを受けるんじゃないの?」
「そんならこの皮に絶縁性能があるのかな。マリー、この革で装備は作れるか?」
「作れないことはないと思うけれど」
「色々試したい。ちょっとこの階層は洒落にならん。元々はどうやってクリアしたんだ?」
「雷耐性装備を揃える?」
「そんなもの、まだ開発できない。それに雷耐性装備を揃えなくともダメージは負うがクリアできた。ダメージを負うってことは通電するってことなわけで、でも雷なんて一発食らうと死ぬぞ、まじで」
モンスター素材を剥ぎながら考える。雷獣の毛並みは電子が集まりやすいように毛が生えていて、触るとパチリと静電気が弾ける。
革にすると薄いから防具にするなら複数枚を重ねる必要があるだろう。その内側に何か絶縁できるものを張る?
ゲームでは確かに雷耐性装備というものがあった。けれどもそれがなくても大ダメージを受けつつも倒せなくはなかった。
雷が落ちても生き残るってどういう状況なんだろう。それまでゲットしたアイテムの中で、何か見落としているのかな。例えば食べれば雷耐性がつく食べ物とかがあったりするのかな、うーん。
「ゲームにあって、今の世界にないもの」
「あるいはゲームになくて、今の世界にあるもの、だ」
「ウォルター、あなたは何なの?」
「俺はウォルターだ。それ以外にはない」
ふと呟いた言葉に対するウォルターの返答は明確だった。やはりウォルターは私と同じく『幻想迷宮グローリーフィア』を知っていて、ゲーム外から訪れている。つまり地球の日本から。
ウォルターの前世を聞いてみたい。けれどもこれ以上その話をするのは適切じゃない。みんながいる。
それにしてもゲームと違うもの、か。
1番大きいのは1年を経過したことだと思う。エンディングをスキップしたのが1番大きいのだろうけれど、それはバグの起点であって、現在直面しているバグの結果とは直接結びつかない。今発生しているバグは何だろう。そのバグはどういう効果を及ぼしているのだろう。世界が割れたのはどうして?
バグの効果で本来得られる雷耐性が得られていないのだとしたら、それじゃ攻略が不可能じゃないかな。
よく考えるとゲームとは色々な違いがある。
ゲームとの違いで1番最初に不思議に思ったのは、遭遇していないソルの星空の岩場のイベントが何故か宿屋で発生したことだ。
イベント進行はかなり崩れている。深層のボスは私たちが30階層を超える前に地上に現れている。エルフの森ではエルフの森に入るイベントが異なっていた。あれがゲームに設定されたイベントなのかどうかはよくわからないけれど、私たちも25階層以降はかなり強引でわけのわからない進め方をしている。土瀝青でエルフの森が燃えたことなんてない。
戦闘関連ではソルがコルディセプスを呼んだこと。25階層で呼んだけれども、本来は42階層で開放されるスキルだ。
それから、他に何かあったっけ。そうだ、他の貴族パーティが私、主人公より先の階層に到達することもなかった。ウォルターが廃嫡されるなんてことも。そもそも廃嫡についてはゲームにはそんな設定なんてなかったはずだ。
そう考えてるとゲームとは既に大きく違う。
何が違うの?
プロポーズはそのキャラが発言するわけだから、イベントをこなさずに発生してもおかしくはないのかもしれない。階層ボスも元々地上に現れることができるのなら30階層到達以前に地上に出てくることもできるだろう。前に少し考えた、ソルはもともとコルディセプスを呼ぶ方法を知っていて、上手く使えるレベルに足りなかった。それであれば呼ぶこと自体は元々できたはずだ。普通はしないだけで。
そもそもよく考えると『イベントが発生しないと物事が進行しない』というのは現実的に考えるとおかしい話だ。
そうするとイベントとというのは本来発生しうる物事を『特定のイベントをこなすまで発生させない』というマイナス方向の制限なのかもしれないな。その制限が解除されたから、イベントのタイミングと無関係に色々な物事が発生している、可能性。
でもサンダー・ドラゴンはどうなんだろう。攻撃力が弱く設定されていたのが解除された?
けれどもそれはおかしい。だって地球には元々サンダー・ドラゴンなんていないもの。ゲームレベルは一定で、『幻想迷宮グローリーフィア』にはダンジョン攻略難易度設定なんてなかったはず。それとも難易度を上げる方法が実はあった?
それにこのフィールドの他のモンスターは適正値な気がする。けれどもゲームでわざわざ弱く設定する必要なんてない。ゲームではあの設定がサンダー・ドラゴンの強さなんだ。
そうするとどういうこと?
この世界では今のサンダー・ドラゴンが世界基準?
わけのわからないことはもう1つある。アレクだ。アレクはキヴェリアという国の出身といっていた。ゲームではバーヴァイア王国だった。これはゲームとは明らかに違う。ソルとアレクは私の推しキャラだったからその設定は全部知っているもの。それにバーヴァイア王国というのはゲームの中には存在しない、と思う。聞いたことのない国名だ。
この世界はゲームの世界、なのか、それとも。
このフィールドには雷を操るモンスターが多数いる。それらのモンスターの電撃はそれほど強くはない。せいぜい痺れるくらいだ。他の階層で取得できる様々な素材がどの程度電気を通すのか、あるいは防げるのかを調べる。
「ねぇ。この雷獣は雷を撃っても痺れてる様子はないよね。さっきのウォルターの話だと電気が繋がった方もダメージを受けるんじゃないの?」
「そんならこの皮に絶縁性能があるのかな。マリー、この革で装備は作れるか?」
「作れないことはないと思うけれど」
「色々試したい。ちょっとこの階層は洒落にならん。元々はどうやってクリアしたんだ?」
「雷耐性装備を揃える?」
「そんなもの、まだ開発できない。それに雷耐性装備を揃えなくともダメージは負うがクリアできた。ダメージを負うってことは通電するってことなわけで、でも雷なんて一発食らうと死ぬぞ、まじで」
モンスター素材を剥ぎながら考える。雷獣の毛並みは電子が集まりやすいように毛が生えていて、触るとパチリと静電気が弾ける。
革にすると薄いから防具にするなら複数枚を重ねる必要があるだろう。その内側に何か絶縁できるものを張る?
ゲームでは確かに雷耐性装備というものがあった。けれどもそれがなくても大ダメージを受けつつも倒せなくはなかった。
雷が落ちても生き残るってどういう状況なんだろう。それまでゲットしたアイテムの中で、何か見落としているのかな。例えば食べれば雷耐性がつく食べ物とかがあったりするのかな、うーん。
「ゲームにあって、今の世界にないもの」
「あるいはゲームになくて、今の世界にあるもの、だ」
「ウォルター、あなたは何なの?」
「俺はウォルターだ。それ以外にはない」
ふと呟いた言葉に対するウォルターの返答は明確だった。やはりウォルターは私と同じく『幻想迷宮グローリーフィア』を知っていて、ゲーム外から訪れている。つまり地球の日本から。
ウォルターの前世を聞いてみたい。けれどもこれ以上その話をするのは適切じゃない。みんながいる。
それにしてもゲームと違うもの、か。
1番大きいのは1年を経過したことだと思う。エンディングをスキップしたのが1番大きいのだろうけれど、それはバグの起点であって、現在直面しているバグの結果とは直接結びつかない。今発生しているバグは何だろう。そのバグはどういう効果を及ぼしているのだろう。世界が割れたのはどうして?
バグの効果で本来得られる雷耐性が得られていないのだとしたら、それじゃ攻略が不可能じゃないかな。
よく考えるとゲームとは色々な違いがある。
ゲームとの違いで1番最初に不思議に思ったのは、遭遇していないソルの星空の岩場のイベントが何故か宿屋で発生したことだ。
イベント進行はかなり崩れている。深層のボスは私たちが30階層を超える前に地上に現れている。エルフの森ではエルフの森に入るイベントが異なっていた。あれがゲームに設定されたイベントなのかどうかはよくわからないけれど、私たちも25階層以降はかなり強引でわけのわからない進め方をしている。土瀝青でエルフの森が燃えたことなんてない。
戦闘関連ではソルがコルディセプスを呼んだこと。25階層で呼んだけれども、本来は42階層で開放されるスキルだ。
それから、他に何かあったっけ。そうだ、他の貴族パーティが私、主人公より先の階層に到達することもなかった。ウォルターが廃嫡されるなんてことも。そもそも廃嫡についてはゲームにはそんな設定なんてなかったはずだ。
そう考えてるとゲームとは既に大きく違う。
何が違うの?
プロポーズはそのキャラが発言するわけだから、イベントをこなさずに発生してもおかしくはないのかもしれない。階層ボスも元々地上に現れることができるのなら30階層到達以前に地上に出てくることもできるだろう。前に少し考えた、ソルはもともとコルディセプスを呼ぶ方法を知っていて、上手く使えるレベルに足りなかった。それであれば呼ぶこと自体は元々できたはずだ。普通はしないだけで。
そもそもよく考えると『イベントが発生しないと物事が進行しない』というのは現実的に考えるとおかしい話だ。
そうするとイベントとというのは本来発生しうる物事を『特定のイベントをこなすまで発生させない』というマイナス方向の制限なのかもしれないな。その制限が解除されたから、イベントのタイミングと無関係に色々な物事が発生している、可能性。
でもサンダー・ドラゴンはどうなんだろう。攻撃力が弱く設定されていたのが解除された?
けれどもそれはおかしい。だって地球には元々サンダー・ドラゴンなんていないもの。ゲームレベルは一定で、『幻想迷宮グローリーフィア』にはダンジョン攻略難易度設定なんてなかったはず。それとも難易度を上げる方法が実はあった?
それにこのフィールドの他のモンスターは適正値な気がする。けれどもゲームでわざわざ弱く設定する必要なんてない。ゲームではあの設定がサンダー・ドラゴンの強さなんだ。
そうするとどういうこと?
この世界では今のサンダー・ドラゴンが世界基準?
わけのわからないことはもう1つある。アレクだ。アレクはキヴェリアという国の出身といっていた。ゲームではバーヴァイア王国だった。これはゲームとは明らかに違う。ソルとアレクは私の推しキャラだったからその設定は全部知っているもの。それにバーヴァイア王国というのはゲームの中には存在しない、と思う。聞いたことのない国名だ。
この世界はゲームの世界、なのか、それとも。
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