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聖女と魔王と魔女編
護衛騎士は暗躍する5
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皆を呼んだはずが、この部屋にやってきたのはウィリアムと兄様だけだった。その他お付きの人もいないというのは少し不審である。好都合だけど、どうやって置いてきたのだか。
その後、訓練場での顛末を聞いてため息が出た。
「この砦の掌握はしていない、ということだね?」
「申し訳ない。
前はもっとちゃんとしてたんだ。不在の間に不具合が出ていたようだ。それから追加の人員も選別したはずが、王弟派と先代派が入り混じっていたらしい。
俺の前ではお行儀よくしていたのは、水面下の争いを知られたくなかったからということのようだ」
神妙な顔でウィリアムは言う。しかし、昨日はそんなこと言っていなかった。今日のことで確信したということだろうか。妙に鈍いところもあるから誰かの入知恵かもしれない。ただ、ここの面々を見ているとそこに視点が行きそうな人がいないのが問題。
そのあたりは後でつついてみるとして、私も気がついていなかった点は痛い。王都にいたころの書面でも変なところは感じなかったし、ついてからのよそよそしいさは私が外のものだからだということもあるだろうしと流してしまった。
ただ、まあ、ため息は出てしまう。
「面倒なことを。この辺境で派閥争いしている余裕あると思ってるのかな」
魔女が気を変えない限り、王は変わらない。これは魔女と王の契約によって魔王を飼殺していることによる。
こんなところで派閥争いをしたところで、なんら役にも立たない。魔女に幻の酒や眉唾でも惚れ薬の一つでも献上したほうがまだマシだ。
その実態を知らないのは、先々代の王が魔女との契約の件を徹底的に消しまくったせいらしい。そのために、先代の王が継ぐころには必須であると認識されていなかった。ある時期から徐々に魔女に関する話が減っていき、自然なように消滅させた。
魔女はおとぎ話でいるわけもないと。
魔王はそこに残っているのに。
つまりは先々代の王は魔女も魔王の脅威も正しく認識していなかった。と話が進めばまだましだった。愚かな誰かがというには周到に準備されていた。
破滅へと先導していて、それを気取らせなかった。
それを望む理由を私は知らないが、共犯者を作っていなそうなところから個人的なほかの誰かと共感を得るのが難しいことではないかと思える。
私は転がったまま沈黙しているモノを見下ろす。ちょっとばかり揺さぶったら気絶しちゃったんだよね。そんな強くしてないんだけどなぁと周囲に同意を求めてもそっと目をそらされたんだけど。
なお、兄様たちはそのことを気に留めているようでもなかった。
兄様はともかく、ウィリアムはなんか言うかと思ったけど、安否すら聞かなかったな。そう言えば。
「まあ、とりあえずは砦の状況をどうにかしましょ。
これ、撒き餌になるかな」
「もう一度逃げたらさすがに俺の立場がない」
「大丈夫。この砦は外に逃げるのに向いてない。ねえ? ウィリアム殿」
「そうだな。念入りに閉じておこう。
魔物が入り込んで女王陛下に危害を加えてはしまうかもしれないから」
という建前なのだが、なぜそこで兄様は怪訝な表情をしたのか。
「妹はそんな軟弱じゃ……」
「兄様は黙っててね!」
もう全力で言葉を遮った。
女王陛下はそんな強くない。設定、大事。どこかで別にぽろっと言われそうで気が気じゃない。
兄様はぱちぱちと瞬きをして、お、おぅと一応は返事をした。
「……ひとまず準備するから、兄様もちゃんと手伝って」
「構わないが、どうするんだ?」
「夕食まではここで見張っていてください。一応、女王様のお仕事してこないといけないから。夕食は部屋で一緒にということにしてここに合流します。
おそらく、私たちがいない間に接触しようとするでしょう」
「そんなに早くこれがいることが伝わるだろうか?」
「兄様はそれほどちゃんと隠してこなかったんですよね? それに同行してきた兵たちの中にも先々代の派閥はいたんじゃないかと思うんです」
ただ、王都に残すほどに有能ではないはずだ。女王の不在で権力の奪い合いがやりやすくなっているのだ。有能なものを女王側につけるはずもない。
なにかあったら事故に見せかけて屠ってこいくらいの指令を受けていてもおかしくはないと想定はしていたんだけど。
こっちのこれがわかっていればもうちょっと人員を選んだ。
そもそも青の騎士団の独立性を思えば政治的にも独立しているであろうと推測していたのは間違いだったのだろう。ウィリアムはそれなりにまとめていたであろうが、その片腕になるような立場の人がいない。
今は目が届かないというのは仕方なかったのかもしれないが、失態でもある。
もちろん、私の失態でも。
後で反省会しよう。他の地域でもちゃんと見ていかないと田舎からクーデター来そう。魔女の重要性の伝承が失われているなら容易く扇動されそうだし。
こうなってくると先々代の意志なんて全く関係なくなってくる。
「同行していたものにはわかるかもな」
「なので、この状況がわかればすぐに助けに来るんじゃないかなと思いますよ」
すぐに死にそうに見えるし。意外と死なないのはユリアの処置が的確なのと場慣れしまくっている兄様のおかげ。本人としてはどうかは知らない。
「一応、聞いておくけどウィリアム殿はどうしたいの?」
「ここを元の状態に戻す。難しければ総入れ替えだな」
「これについてなんだけど」
「そちらの裁定に従う」
そっけないほどの反応。これは色々あるけど言わねぇぞというやつかも。最後の最後にやらかすかもしれないから注意は必要だろう。
「使い道があるなら使い潰して捨てればいい、とあいつなら言うだろうから」
……。
まあ、そうね。
そういう人でなしなところある。人のことは全く言えない。
それにしても温厚なウィリアムがそう口にしてしまうくらいには怒ってるんだ。やっぱり、いなくなってよいなんてことなかったじゃないか。
「じゃ、他のご家族にも聞いて処断するわ。
さて、そろそろユリアも着替えを終えているでしょうし、迎えに行ってくる」
「あとでオスカーをこっちに寄こすように」
「ユリアと一緒に行くように言っておくわ。ただ、ジニーにさせるけどいいの?」
「構わん。ユリアもオスカーがいるとちょっと大人しい」
「……そーねー」
つまりは怒られたくないってことですかね? 兄様。
その後、訓練場での顛末を聞いてため息が出た。
「この砦の掌握はしていない、ということだね?」
「申し訳ない。
前はもっとちゃんとしてたんだ。不在の間に不具合が出ていたようだ。それから追加の人員も選別したはずが、王弟派と先代派が入り混じっていたらしい。
俺の前ではお行儀よくしていたのは、水面下の争いを知られたくなかったからということのようだ」
神妙な顔でウィリアムは言う。しかし、昨日はそんなこと言っていなかった。今日のことで確信したということだろうか。妙に鈍いところもあるから誰かの入知恵かもしれない。ただ、ここの面々を見ているとそこに視点が行きそうな人がいないのが問題。
そのあたりは後でつついてみるとして、私も気がついていなかった点は痛い。王都にいたころの書面でも変なところは感じなかったし、ついてからのよそよそしいさは私が外のものだからだということもあるだろうしと流してしまった。
ただ、まあ、ため息は出てしまう。
「面倒なことを。この辺境で派閥争いしている余裕あると思ってるのかな」
魔女が気を変えない限り、王は変わらない。これは魔女と王の契約によって魔王を飼殺していることによる。
こんなところで派閥争いをしたところで、なんら役にも立たない。魔女に幻の酒や眉唾でも惚れ薬の一つでも献上したほうがまだマシだ。
その実態を知らないのは、先々代の王が魔女との契約の件を徹底的に消しまくったせいらしい。そのために、先代の王が継ぐころには必須であると認識されていなかった。ある時期から徐々に魔女に関する話が減っていき、自然なように消滅させた。
魔女はおとぎ話でいるわけもないと。
魔王はそこに残っているのに。
つまりは先々代の王は魔女も魔王の脅威も正しく認識していなかった。と話が進めばまだましだった。愚かな誰かがというには周到に準備されていた。
破滅へと先導していて、それを気取らせなかった。
それを望む理由を私は知らないが、共犯者を作っていなそうなところから個人的なほかの誰かと共感を得るのが難しいことではないかと思える。
私は転がったまま沈黙しているモノを見下ろす。ちょっとばかり揺さぶったら気絶しちゃったんだよね。そんな強くしてないんだけどなぁと周囲に同意を求めてもそっと目をそらされたんだけど。
なお、兄様たちはそのことを気に留めているようでもなかった。
兄様はともかく、ウィリアムはなんか言うかと思ったけど、安否すら聞かなかったな。そう言えば。
「まあ、とりあえずは砦の状況をどうにかしましょ。
これ、撒き餌になるかな」
「もう一度逃げたらさすがに俺の立場がない」
「大丈夫。この砦は外に逃げるのに向いてない。ねえ? ウィリアム殿」
「そうだな。念入りに閉じておこう。
魔物が入り込んで女王陛下に危害を加えてはしまうかもしれないから」
という建前なのだが、なぜそこで兄様は怪訝な表情をしたのか。
「妹はそんな軟弱じゃ……」
「兄様は黙っててね!」
もう全力で言葉を遮った。
女王陛下はそんな強くない。設定、大事。どこかで別にぽろっと言われそうで気が気じゃない。
兄様はぱちぱちと瞬きをして、お、おぅと一応は返事をした。
「……ひとまず準備するから、兄様もちゃんと手伝って」
「構わないが、どうするんだ?」
「夕食まではここで見張っていてください。一応、女王様のお仕事してこないといけないから。夕食は部屋で一緒にということにしてここに合流します。
おそらく、私たちがいない間に接触しようとするでしょう」
「そんなに早くこれがいることが伝わるだろうか?」
「兄様はそれほどちゃんと隠してこなかったんですよね? それに同行してきた兵たちの中にも先々代の派閥はいたんじゃないかと思うんです」
ただ、王都に残すほどに有能ではないはずだ。女王の不在で権力の奪い合いがやりやすくなっているのだ。有能なものを女王側につけるはずもない。
なにかあったら事故に見せかけて屠ってこいくらいの指令を受けていてもおかしくはないと想定はしていたんだけど。
こっちのこれがわかっていればもうちょっと人員を選んだ。
そもそも青の騎士団の独立性を思えば政治的にも独立しているであろうと推測していたのは間違いだったのだろう。ウィリアムはそれなりにまとめていたであろうが、その片腕になるような立場の人がいない。
今は目が届かないというのは仕方なかったのかもしれないが、失態でもある。
もちろん、私の失態でも。
後で反省会しよう。他の地域でもちゃんと見ていかないと田舎からクーデター来そう。魔女の重要性の伝承が失われているなら容易く扇動されそうだし。
こうなってくると先々代の意志なんて全く関係なくなってくる。
「同行していたものにはわかるかもな」
「なので、この状況がわかればすぐに助けに来るんじゃないかなと思いますよ」
すぐに死にそうに見えるし。意外と死なないのはユリアの処置が的確なのと場慣れしまくっている兄様のおかげ。本人としてはどうかは知らない。
「一応、聞いておくけどウィリアム殿はどうしたいの?」
「ここを元の状態に戻す。難しければ総入れ替えだな」
「これについてなんだけど」
「そちらの裁定に従う」
そっけないほどの反応。これは色々あるけど言わねぇぞというやつかも。最後の最後にやらかすかもしれないから注意は必要だろう。
「使い道があるなら使い潰して捨てればいい、とあいつなら言うだろうから」
……。
まあ、そうね。
そういう人でなしなところある。人のことは全く言えない。
それにしても温厚なウィリアムがそう口にしてしまうくらいには怒ってるんだ。やっぱり、いなくなってよいなんてことなかったじゃないか。
「じゃ、他のご家族にも聞いて処断するわ。
さて、そろそろユリアも着替えを終えているでしょうし、迎えに行ってくる」
「あとでオスカーをこっちに寄こすように」
「ユリアと一緒に行くように言っておくわ。ただ、ジニーにさせるけどいいの?」
「構わん。ユリアもオスカーがいるとちょっと大人しい」
「……そーねー」
つまりは怒られたくないってことですかね? 兄様。
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