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おうちにかえりたい編
姫様は故郷(くに)に帰る決意をする 中編
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一番鶏が鳴く頃に起きるのは昔からの習慣だった。二番目の兄様と一緒に鍛錬するのが日課。
終われば一番目の姉様と一緒にご飯の準備。終われば妹と弟たちを起こして。
一番のねぼすけの三番目の兄様を起こすのは誰か押し付け合いをしていたっけ。
「……おはようございます?」
鍛錬も終わって部屋を覗けば、見知らぬ女性が突っ立っていた。
まだまだものが散乱している部屋を呆然と見ている。お一人様ではこれが限界。あと一週間もあれば片付くだろう。
どうせ、放置されるだろうし。
「姫様を見ませんでしたか?」
「……私?」
「他に誰がいるのです。朝から、部屋を一人で出て歩くなどはしたない。どのような教育を受けてきたのでしょう」
……。
うーん。一人で自活していけるような教育を受けている、と言ったところで意味はない。付け焼き刃でお姫様教育される程度。
一人で出歩くなは、私たちには身につかなかった。兄弟全部、ふらふら逃亡する悪癖があり、護衛は諦めの境地だという。
もちろん、一人で歩いても迎撃できるほどの戦闘力を有している。
そもそも一人で嫁いできたのだから、こちらの国から誰かが付けられなければ一人で出歩くことになる。
こちらで用意してもらえると兄様は言っていたけど、どうなってるんだろう。
子供にでも言うように親しくなっても侍女や護衛には気を許すなとか、うっかりついて行ってはいけませんなど、細々と言っていた。
だから、誰もいないのはおかしい。
少なくとも兄様は、ここまで冷遇を通り越しての放置は考えていなかったように思える。
それなら冗談とちょっぴりの本気で、国をとってこいなんて、言わない。
全て本気で国を滅ぼしてこいと人材も金も投入するだろう。圧倒的に二度と刃向かわないように制裁するたちだ。
「持ち場に戻りなさい。ここはあなたのような兵がいる場所ではないでしょう」
黙って考えていたら、勘違いされている。
面倒なので新入りの振りして兵舎に潜り込もうかな。警備もだいぶゆるゆるだし。
身の振り方は後で考えるとして今は仰せのままに消えておきましょう。
「はい」
「あなた、名前は」
「ジニー」
ヴァージニア。愛称ジニー。
「覚えておくわ」
……忘れてくださいな。
ちょっと顔が赤らんでいるのがホントにイヤな予感しかしない。
侍女の一人でもつれてくれば……いや、血の雨が降る。その一席を巡り無駄に高度な情報戦が繰り広げられるだろう。
もう一度庭に出る。
どこか裏にも井戸はあるだろう。ちょっと頭から水をかぶってすっきりしたい。そう言えば風呂にも入ってなかった。
どこぞのお嬢様ならさっさと音をあげそうな……いや、他の国のお嬢様なら、か。
うちの女性はたくましい。
城自体は二階建てで石造り。冬は雪深いと聞くので雪の対策なのか屋根の傾斜がきつい。祖国は木造が多いので物珍しい。
庭木も種類が違う。
中央の国々の流行が所々入っているのが微笑ましい。
「おまえ、どこの隊だ?」
そんな風にふらふらしていたら、声をかけられた。
目線がちょうど合うくらいの男性だ。いつもの靴を履いたら見下ろすだろうなと目測してしまう。
がっしりとした体で、少し年上だろうと思う。無精ヒゲが、ちょっとワイルドだ。祖国に良くいるタイプ。
ここはわりと身綺麗な人が多いと思ったが、例外だろうか。
「配属前で、よくわかりません」
「……どっかの貴族の庶子か。ひょろいのにそんなの使えるのか」
「ああ、これは兄が餞別にくれたものでまだ練習中です」
しかし、この国では女性が兵になるのは例外的だそうだ。王家の女性につく一部を除き男性のみ。
となると、ここでも勘違いされていることになる。
身についた性別が男なんだろうか。地味にダメージが。
「迷子か?」
「井戸とかありませんか? 鍛錬後の汗を流したくて」
「兵舎にもあるだろう?」
「いや、人に見られるのはちょっと」
なんだか気の毒そうな顔で見られたんだけど?
その場所は教えてもらえた。
うーん、なにか可哀想な設定にでもされているのだろうか。首をかしげながらも礼を言い、本来の目的であった井戸を探す。
木立に隠れた良い場所だ。景観上見えない方が良いとされたのだろう。
上着だけ脱いで水を汲む。濁っていない良い水のように思える。ぱしゃりと顔を洗う。冷たい水に指先が凍える。
頭からかぶるのはやめよう。持ってきていた手ぬぐいを水につける。
「つーめーたいー」
声がつい出てしまうくらい冷たい。
我慢していろんなところを拭き拭きしていれば視線を感じた。
振り返れば、ばっちり目があった。そんな生け垣からにょっきり頭をはやさないで欲しい。ちょっとびびった。
「……少年、代償は高くつくぞ」
正確には少年たち。
真っ赤な顔で凝視されれば、なにを見たかくらい想像がつく。
「お、女が何でいるんだ!」
「ワケありでね。詳細を聞いたら後悔するけど」
まあ、聞かなくても利用はするけど。
しかしまあ、初心な少年たちですこと。上半身に下着は着けているし、下半身は膝まで捲ったくらいだ。
なぜ、脱げば胸があるのに皆勘違いするのか。ドレスにはちゃんと盛るくらいの余地はある。大平原のすぐ下の妹が、美女扱いで、私がイケメン扱いなのか解せぬ。
この話題で、下の妹とかれこれ数年の絶交をしているが、彼女は元気だろうか?
嫁いで行ってしまったので、会えない上に文通をしていた妹も嫁いだので私にとっては音信不通だ。
「きかないっ!」
一人の少年が言えばぶんぶんと他の二人が肯く。
「それで何でこんなところに?」
「メシの時間遅れるっておっさんが言うから」
ああ、あの男性の気遣いが、裏目に出た。可哀想になぁ。
軍部の中枢を覗けるという特典がついてしまった。うきうきしながら着替えていれば、あの、だの、そのう、だの聞こえてくる。
「ごめんなさい」
育ちの良い坊ちゃんたちだ。
「悪気はないんだから、黙っててくれればいいよ」
まあ、この年頃の男の子に忘れろと言うには刺激が強すぎるだろう。だから、忘れろとは言わない。
私も異性の半裸にどきどきした頃があったものだ。今は慣れた。兵舎に出入りすると慣れるものだ。
筋肉の付き方評価もし始めるのは淑女としてどうなのかと悩む。
少年たちに食堂に案内してもらう。肉体労働を好む男性向けの献立で、とりあえず、肉、ジャガイモ、おまけにゆで野菜だった。塩分濃いめだなぁと思いながらもありがたくいただく。
一日ぶりの食事は正直ありがたい。昨日の昼食は馬車の中でかじったライ麦パンだけだった。
よく考えれば、国教を越えてからは食事も馬車もろくなものではなかった。
最初からアレな対応だったのか。野営もあったし、中々の速度でおしりも痛かった。
普通のお姫様なら国に帰るな。
残念ながら収穫なくて帰る事が出来ないので、地獄へお付き合いいただくことになる。運がよいのか悪いのか、足がかりに出来る場所に出入りできそうだ。
「よく食べるね」
「ちょっと食事に不自由していてね」
同じ食卓についた少年たちがびっくりしたような顔で見てくる。神妙な顔で、そっと肉をのせようとするのを丁重に断った。
優しい子たちだ。
手下にし甲斐のある。
にこりと笑えば、顔を赤くするのがとても可愛らしい。
「さて、ちょっと姿をくらませるけど、知らないって言い張って欲しい」
終われば一番目の姉様と一緒にご飯の準備。終われば妹と弟たちを起こして。
一番のねぼすけの三番目の兄様を起こすのは誰か押し付け合いをしていたっけ。
「……おはようございます?」
鍛錬も終わって部屋を覗けば、見知らぬ女性が突っ立っていた。
まだまだものが散乱している部屋を呆然と見ている。お一人様ではこれが限界。あと一週間もあれば片付くだろう。
どうせ、放置されるだろうし。
「姫様を見ませんでしたか?」
「……私?」
「他に誰がいるのです。朝から、部屋を一人で出て歩くなどはしたない。どのような教育を受けてきたのでしょう」
……。
うーん。一人で自活していけるような教育を受けている、と言ったところで意味はない。付け焼き刃でお姫様教育される程度。
一人で出歩くなは、私たちには身につかなかった。兄弟全部、ふらふら逃亡する悪癖があり、護衛は諦めの境地だという。
もちろん、一人で歩いても迎撃できるほどの戦闘力を有している。
そもそも一人で嫁いできたのだから、こちらの国から誰かが付けられなければ一人で出歩くことになる。
こちらで用意してもらえると兄様は言っていたけど、どうなってるんだろう。
子供にでも言うように親しくなっても侍女や護衛には気を許すなとか、うっかりついて行ってはいけませんなど、細々と言っていた。
だから、誰もいないのはおかしい。
少なくとも兄様は、ここまで冷遇を通り越しての放置は考えていなかったように思える。
それなら冗談とちょっぴりの本気で、国をとってこいなんて、言わない。
全て本気で国を滅ぼしてこいと人材も金も投入するだろう。圧倒的に二度と刃向かわないように制裁するたちだ。
「持ち場に戻りなさい。ここはあなたのような兵がいる場所ではないでしょう」
黙って考えていたら、勘違いされている。
面倒なので新入りの振りして兵舎に潜り込もうかな。警備もだいぶゆるゆるだし。
身の振り方は後で考えるとして今は仰せのままに消えておきましょう。
「はい」
「あなた、名前は」
「ジニー」
ヴァージニア。愛称ジニー。
「覚えておくわ」
……忘れてくださいな。
ちょっと顔が赤らんでいるのがホントにイヤな予感しかしない。
侍女の一人でもつれてくれば……いや、血の雨が降る。その一席を巡り無駄に高度な情報戦が繰り広げられるだろう。
もう一度庭に出る。
どこか裏にも井戸はあるだろう。ちょっと頭から水をかぶってすっきりしたい。そう言えば風呂にも入ってなかった。
どこぞのお嬢様ならさっさと音をあげそうな……いや、他の国のお嬢様なら、か。
うちの女性はたくましい。
城自体は二階建てで石造り。冬は雪深いと聞くので雪の対策なのか屋根の傾斜がきつい。祖国は木造が多いので物珍しい。
庭木も種類が違う。
中央の国々の流行が所々入っているのが微笑ましい。
「おまえ、どこの隊だ?」
そんな風にふらふらしていたら、声をかけられた。
目線がちょうど合うくらいの男性だ。いつもの靴を履いたら見下ろすだろうなと目測してしまう。
がっしりとした体で、少し年上だろうと思う。無精ヒゲが、ちょっとワイルドだ。祖国に良くいるタイプ。
ここはわりと身綺麗な人が多いと思ったが、例外だろうか。
「配属前で、よくわかりません」
「……どっかの貴族の庶子か。ひょろいのにそんなの使えるのか」
「ああ、これは兄が餞別にくれたものでまだ練習中です」
しかし、この国では女性が兵になるのは例外的だそうだ。王家の女性につく一部を除き男性のみ。
となると、ここでも勘違いされていることになる。
身についた性別が男なんだろうか。地味にダメージが。
「迷子か?」
「井戸とかありませんか? 鍛錬後の汗を流したくて」
「兵舎にもあるだろう?」
「いや、人に見られるのはちょっと」
なんだか気の毒そうな顔で見られたんだけど?
その場所は教えてもらえた。
うーん、なにか可哀想な設定にでもされているのだろうか。首をかしげながらも礼を言い、本来の目的であった井戸を探す。
木立に隠れた良い場所だ。景観上見えない方が良いとされたのだろう。
上着だけ脱いで水を汲む。濁っていない良い水のように思える。ぱしゃりと顔を洗う。冷たい水に指先が凍える。
頭からかぶるのはやめよう。持ってきていた手ぬぐいを水につける。
「つーめーたいー」
声がつい出てしまうくらい冷たい。
我慢していろんなところを拭き拭きしていれば視線を感じた。
振り返れば、ばっちり目があった。そんな生け垣からにょっきり頭をはやさないで欲しい。ちょっとびびった。
「……少年、代償は高くつくぞ」
正確には少年たち。
真っ赤な顔で凝視されれば、なにを見たかくらい想像がつく。
「お、女が何でいるんだ!」
「ワケありでね。詳細を聞いたら後悔するけど」
まあ、聞かなくても利用はするけど。
しかしまあ、初心な少年たちですこと。上半身に下着は着けているし、下半身は膝まで捲ったくらいだ。
なぜ、脱げば胸があるのに皆勘違いするのか。ドレスにはちゃんと盛るくらいの余地はある。大平原のすぐ下の妹が、美女扱いで、私がイケメン扱いなのか解せぬ。
この話題で、下の妹とかれこれ数年の絶交をしているが、彼女は元気だろうか?
嫁いで行ってしまったので、会えない上に文通をしていた妹も嫁いだので私にとっては音信不通だ。
「きかないっ!」
一人の少年が言えばぶんぶんと他の二人が肯く。
「それで何でこんなところに?」
「メシの時間遅れるっておっさんが言うから」
ああ、あの男性の気遣いが、裏目に出た。可哀想になぁ。
軍部の中枢を覗けるという特典がついてしまった。うきうきしながら着替えていれば、あの、だの、そのう、だの聞こえてくる。
「ごめんなさい」
育ちの良い坊ちゃんたちだ。
「悪気はないんだから、黙っててくれればいいよ」
まあ、この年頃の男の子に忘れろと言うには刺激が強すぎるだろう。だから、忘れろとは言わない。
私も異性の半裸にどきどきした頃があったものだ。今は慣れた。兵舎に出入りすると慣れるものだ。
筋肉の付き方評価もし始めるのは淑女としてどうなのかと悩む。
少年たちに食堂に案内してもらう。肉体労働を好む男性向けの献立で、とりあえず、肉、ジャガイモ、おまけにゆで野菜だった。塩分濃いめだなぁと思いながらもありがたくいただく。
一日ぶりの食事は正直ありがたい。昨日の昼食は馬車の中でかじったライ麦パンだけだった。
よく考えれば、国教を越えてからは食事も馬車もろくなものではなかった。
最初からアレな対応だったのか。野営もあったし、中々の速度でおしりも痛かった。
普通のお姫様なら国に帰るな。
残念ながら収穫なくて帰る事が出来ないので、地獄へお付き合いいただくことになる。運がよいのか悪いのか、足がかりに出来る場所に出入りできそうだ。
「よく食べるね」
「ちょっと食事に不自由していてね」
同じ食卓についた少年たちがびっくりしたような顔で見てくる。神妙な顔で、そっと肉をのせようとするのを丁重に断った。
優しい子たちだ。
手下にし甲斐のある。
にこりと笑えば、顔を赤くするのがとても可愛らしい。
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