上 下
64 / 84

第五十八話 花蜜の秘事 ⑤*

しおりを挟む
 暗闇の中で彼と目が合う。
 僕は吐息を零す。
 それを合図と取ったかのように、ゆっくりと彼が腰を引いていく。そしてまたゆっくりと挿入される。

「あぁ……」

 大きく息を吐く。
 肉壁が擦り上げられて僕の内側に快感が刻まれていく。

「ロベール……」

 僕は甘えるように意味もなく彼の名を口にする。

「アン。好きだ」

 彼は低く囁いて腰を進める。
 彼と繋がる温度に彼に愛されているのを感じる。

「僕も、好き……っ、愛してる……っ」

 ぎゅっと握る手に力を込める。
 彼が鎖骨や首筋など僕の肌に軽い接吻を落としているのを感じた。

 睦み合いながら緩い抽送が繰り返される内に、圧迫感に苦痛をほとんど感じなくなっていることに気が付いた。快楽に集中することができるようになっている。

「ロベール、平気だからもっと動いて……」
「っ」

 一瞬ピタリと動きが止まったかと思うと、すぐに律動が再開する。さっきよりも幾分か速いペースで。

 剛直が肉壁を擦り上げていく。
 僕の内側のすべてが彼の体温を持つもので愛撫されていく。

「あん……あ……っ、きもちい……っ」

 控えめに喘ぐと、僕の中で彼のモノが脈打ったような気がした。僕の声に興奮してくれているのだろうか。

「……ッ!」

 カリ首がゴリッ、と内側の性感帯を擦り上げた。
 一瞬息が止まるほどの強烈な快感が走り抜ける。

「すまん、痛かったか?」

 彼が的外れな心配をする。

「違うの、そこ、きもちいの……っ」

 おかげで恥ずかしいことをわざわざ口にする羽目になった。
 もう一度やって、と腰を揺らめかせる。

「わ、分かった」

 戸惑ったような声と共に、腰つきに合わせて抽送がなされる。
 ゴリゴリと気持ちいい場所が擦り上げられていく。

「あぁっ、イイ……っ! そこ、きもちい……っ!」

 僕が素直に喘いであげると、どんどんとピストンの速度は増していく。僕の反応から学習しているのか、的確に性感帯を突くようになっていく。

「あぁっ! あっ、あン……っ! あぁっ、ぁ、ああぁっ!」

 頭の中が快楽で埋め尽くされていき、意味のある言葉を紡ぐのも難しくなる。夢中でピストンに合わせて腰を揺らし、嬌声を上げた。
 こんなに感じてえっちになってしまうのは蜜のせい、だと思う。

 彼が僕の手を強く握っている。
 もう僕がねだらなくても強く腰を打ち付けてくれる。

「あぁっ、あ……っ! あっ、ぁ、あぁッ!」

 肉を打つ乾いた音が響く。
 もう内側のすべてが性感帯になってしまったかのように、どこを突かれても気持ちよくて堪らなかった。
 気持ち好過ぎて、頭の中が真っ白になっていく。

「――――ッ!!」

 達したのだ、とすぐに理解することはできなかった。
 反射的に背が反れて足先が突っ張る。
 感じたことのないほどの快楽の渦に意識が飲み込まれていった。

 意識を失っていた時間はほんの数分だったと思う。
 気が付けばロベールが心配そうに僕の顔を覗き込んでいた。ランプの灯りが点いている。
 身体はさらりとしていて、どうやら彼が身体の表面を軽く拭いてくれたようだった。

「大丈夫かアン?」
「ン……きもちよすぎて、意識が飛んじゃったみたい」

 幸福感を覚えながらにこりと微笑むと、彼はほうっと胸を撫で下ろした。

「目が覚めて良かった。じゃあ……」

 彼がベッドから起き上がろうとするので、僕は慌てて腕を掴んで引き留めた。

「何言ってるの? まだまだ足りないのに!」
「え?」
「ロベール、まだイってないでしょ? ナカに出して……?」

 お腹を撫で擦りながらねだる。
 瞬時に真っ赤になった彼の顔色がランプの灯の元、よく見えたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者に嫌われてるらしいので次のお相手探します

和羽椿
BL
僕には婚約者がいる。 その婚約者フィリエルは僕のことが嫌いらしい。 彼はいつも無表情で何を考えているか分からない。思えばあの無愛想な接し方も、遠回しに退屈だとか嫌いだとかって訴えていたのかな…? 本物の兄のように慕っていたこともあり、僕の気分はだだ下がりだ。なんたって婚約者の方は、僕のことを微塵も大切には思っていなかったのだから。 …彼の隣に立っている綺麗な女性がその証拠。 そっちがその気なら僕だってやってやる!アイツよりカッコよくて優しい相手を探すんだ! ――― …的な感じで暴走した受けを、逆に嫌われてると勘違いした攻めが慌てて捕まえる話です。 典型的なすれ違いモノです。受けは大分アホの子ですがそこは愛嬌ということで…。 ※メイン更新作品の息抜きで執筆しています。 ※不定期更新です、ご了承ください。

王太子殿下の小夜曲

緑谷めい
恋愛
 私は侯爵家令嬢フローラ・クライン。私が初めてバルド王太子殿下とお会いしたのは、殿下も私も共に10歳だった春のこと。私は知らないうちに王太子殿下の婚約者候補になっていた。けれど婚約者候補は私を含めて4人。その中には私の憧れの公爵家令嬢マーガレット様もいらっしゃった。これはもう出来レースだわ。王太子殿下の婚約者は完璧令嬢マーガレット様で決まりでしょ! 自分はただの数合わせだと確信した私は、とてもお気楽にバルド王太子殿下との顔合わせに招かれた王宮へ向かったのだが、そこで待ち受けていたのは……!? フローラの明日はどっちだ!?

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました

中七七三
恋愛
わたしっておかしいの? 小さいころからエッチなことが大好きだった。 そして、小学校のときに起こしてしまった事件。 「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」 その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。 エッチじゃいけないの? でも、エッチは大好きなのに。 それでも…… わたしは、男の人と付き合えない―― だって、男の人がドン引きするぐらい エッチだったから。 嫌われるのが怖いから。

モンスター娘を絶滅から救うため、俺は種付け係に任命されてしまいました

ファンタジー
 世界が滅んだ時、運良く神様に命を救われた俺は神様の命令により生き残ったモンスター娘たちのつがいとなり、新世界を繁栄させる役目を任されることになってしまった。  ハーピィ、ラミア、スライム、アルラウネ、ローレライ、ユニコーンなど続々と現れるモンスター娘たちを神様からもらった『孕ませスキル』で種付けして、異種族交尾サバイバルハーレムスローライフが幕を開ける!

【コミカライズ化決定!!】気づいたら、異世界トリップして周りから訳アリ幼女と勘違いされて愛されています

坂神ユキ
ファンタジー
 サーヤこと佐々木紗彩は、勤務先に向かっている電車に乗っていたはずがなぜか気づいたら森の中にいた。  田舎出身だったため食料を集めれるかと思った彼女だが、なぜか図鑑では見たことのない植物ばかりで途方に暮れてしまう。  そんな彼女を保護したのは、森の中に入ってしまった魔物を追ってきた二人の獣人だった。  だが平均身長がニメートルを普通に超える世界において、成人女性の平均もいっていないサーヤは訳ありの幼女と勘違いされてしまう。  なんとか自分が人間の成人女性であることを伝えようとするサーヤだが、言葉が通じず、さらにはこの世界には人間という存在がいない世界であることを知ってしまう。  獣人・魔族・精霊・竜人(ドラゴン)しかいない世界でたった一人の人間となったサーヤは、少子化がかなり進み子供がかなり珍しい存在となってしまった世界で周りからとても可愛がられ愛されるのであった。  いろいろな獣人たちをモフモフしたり、他の種族に関わったりなどしながら、元の世界に戻ろうとするサーヤはどうなるのだろうか?  そして、なぜ彼女は異世界に行ってしまったのだろうか? *小説家になろうでも掲載しています *カクヨムでも掲載しています *悪口・中傷の言葉を書くのはやめてください *誤字や文章の訂正などの際は、出来ればどの話なのかを書いてくださると助かります 2024年8月29日より、ピッコマで独占先行配信開始!! 【気づいたら、異世界トリップして周りから訳アリ幼女と勘違いされて愛されています】 皆さんよろしくお願いいたします!

【R18】ファンタジー陵辱エロゲ世界にTS転生してしまった狐娘の冒険譚

みやび
ファンタジー
エロゲの世界に転生してしまった狐娘ちゃんが犯されたり犯されたりする話。

【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで

あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。 連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。 ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。 IF(7話)は本編からの派生。

処理中です...