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第三十七話 冒険者ギルドを建てていく

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 十二ヶ月目。来月を迎えれば遂に領主になって丸一年である。
 雪の積もっていた村には春の訪れの兆しがチラホラと見え出している。

 村にはパン屋など店がちょっとずつ増えてきている。
 グロスマン商会の支店も開店した。
 グロスマン食堂も人気のようで、大工などがよく利用しているらしい。酒場は冒険者が、と住み分けができているようだ。

 支店がオープンした時にエーミールが菓子折りを持ってきた。
 ロベールが様子をチェックするとか言って支店を訪れたのを知っている。どうやらエーミールに色々と魔導具デバイスを勧められたらしい。

「さて、オークションで儲けられたことだしここらで施設を増やしたいと思う。ロベール、意見はあるか?」

 ロベールと二人で会議である。
 二人と言っても周りに爺やなどの従者はいるが。

「増やせる施設の候補は?」
「市壁に冒険者ギルド、何らかの娯楽施設。後は施設じゃないけれど自警団の組織など。冒険者の訓練所……はまだまだ早いかな。食事処は増えてきたから、領主自らあえて増やす必要性はないだろう」

 僕の並べ立てたものを聞いて、ロベールは考え込む。

「そうだな。自警団の組織の必要性は今のところ感じられないな。村の治安は存外に悪くない。喧嘩などをする暴れ者がいれば、冒険者たちが積極的に対処しているようだからな。ボニーも村に不満がないかどうか村民から聞いて回っているようだが、今のところ治安に関しての不安が目立っているという兆候はないそうだ」

 ロベールは意外にもボニーとよくコミュニケーションを取っているようだ。

「娯楽施設も心惹かれるが、市壁やギルドと比べると優先度は低いだろう。それにそういう施設を営む人間が向こうから勝手に移住してくるかもしれないしな」

 娯楽施設と言えばどんなものがあるだろう、と考えてぼんやりと温泉を思い浮かべる。前世日本人として温泉は喉から手が出るほど欲しい。
 今だって従者にお湯を沸かしてもらって毎日お風呂に入っているけれど、温泉のリラックス効果には及ばない。この村に温泉が湧いたらいいのにな。

「となると市壁かギルドの二択か。市壁は一度建てると村の拡張が難しくなるからなー」
「いまだ村は発展途上だ。ここは冒険者ギルドを建てるのが適切なように思える」
「冒険者ギルドを建てれば冒険者の溜まり場が酒場だけじゃなくなるし、依頼を出しやすくなるね。それに冒険者の死亡率の把握をしたりとか」

 今のところダンジョンで死者が出たという話は聞いていないが、これからは出てくるかもしれない。
 フロアボスの討伐戦では犠牲者ゼロを目指しているが、流石に普段の探索までゼロとはいかないかもしれない。もちろん死人なんて一切出ないで欲しいが。

「死亡率の把握とは? どのようにして行うんだ?」

 ロベールに説明してあげよう。

「まず冒険者をギルドで登録させる。既に他の村や街で登録している冒険者もいるかもしれないね。で、冒険者の活躍率に応じてブロンズランクから始まってシルバーランクやゴールドランクなどに上がっていく。ランクに応じて報償が出るようにするんだ。そしてその冒険者が死んだらその冒険者のタグを持って帰ってきてくれた人にいくらかのお金を上げる。もちろん、そのお金のためにわざとを人を殺す冒険者が出ない程度の低い金額をね」

 登録された冒険者が死んだとタグが届けられたら、その人の名前は死亡済リストに移す。
 そうすることで冒険者の総数と死んだ人の人数が把握できるのだ。

「ほう。なるほど」
「それに冒険者ギルドは怪我で障害などを負ってダンジョンに潜れなくなった冒険者の働き口になったりする。確かにそろそろ必要になってくるね。いいタイミングだと思う」

 もう最初のフロアボスは倒したのだし、質のいいドロップ素材や宝が出てくるようになった。
 冒険者ギルドを作っても赤字にはならないだろうと僕は判断する。

「よし、冒険者ギルドを建てよう!」

 冒険者ギルドを建てることに決まった。
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