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第二十話 なんかもうどうにでもなってくれ
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「まずクライヴ、フロアボスはどんな見た目をしていたか覚えているか?」
まずはクライヴからフロアボスの特徴を聞き出す。
ゲーム内でもフロアボスはランダムに決まっていた。
だからRTAをやり込んだ僕でも今回のフロアボスが何か知らない。
「ああ。フロアボスは巨大で、見上げるほどの大きさだった。あんなデカいのはフロアボスだってすぐに分かった。巨大すぎてよく分からなかったが、皮膚の硬そうな四足獣だったと思う」
なるほど、今回のフロアボスはグレートベヒモスのようだ。
頭の中のフロアボス一覧表からすぐに答えを導き出す。
「それならば敵は地属性、弱点は風属性だな」
「えぇっ、今の情報だけで分かったのか!?」
冒険者たちがざわつく。
「地耐性装備を持つ者は地耐性装備を、風属性武器を持つ者は風属性武器を装備していくように」
そうは言っても最初のフロアボスを倒す前の浅い階層しか探索できていないのだから、属性装備はあまりドロップしていないだろう。
基本的に属性武器は貴重なもので、深い層ほどドロップする確率が高くなる。
「……そうだな。グロスマン商会の者に地耐性リングをいくつか持ってきてもらえるように頼んでみるとしよう」
僕はエーミールの名刺を取り出し、エーミールにメッセージを送った。支店はまだ建ってないが商品を持ってくることぐらいはできるだろう。
流石に数日ではフロアボスがダンジョン外まで上がってくることはない。エーミールが商品を持ってきてくれるのを待つ時間はある。
「それからこのフロアボスの特徴的な攻撃方法は大まかに二つある。一つ目。前足を上げて後ろ足だけで立った時が攻撃のタイミングだ。前足を振り下ろし、地震のような衝撃を発生させる。だからフロアボスが後ろ足だけで立った瞬間に攻撃を中止してなるべく遠くまで退避し対衝撃魔術を張ること」
冒険者たちは真面目に聞いている。
「二つ目。角が光って辺りに魔術を放つ。だから角が光ったら対魔術防壁を張らなければならないのだが、フロアボスが巨大すぎて見上げるだけでは角を目視するのが難しい。だから飛行魔術を行使できる者が一名か二名ほど常に飛んで角の様子を確認するのがいい」
あまりにも子細に対策を語る僕に疑問に思ったのか、冒険者の一人が口を開く。僧侶風の男だ。
「あの……失礼だとは思うんですが領主様には何故そんなことが分かるのでしょう? 疑っている訳ではないのですが、フロアボスは何処も違う種類のものが出てくると聞いたので」
「確かに毎回同じ種類のフロアボスが出てくる訳ではない。だが古い文献をあたれば、あの村とこの村のフロアボスが実は同じだった……などという例はいくつかある。過去の記録を読み込んでおけばある程度の予想は付くのだ」
本当はゲームでやり込んでいるから知っているのだが、本を読んで知ったということにしておいた。
「なるほど……! 過去の文献から推測するとは盲点でした」
「それって領主様が俺たちの為にいっぱい本を読んでくれてたってことかよ……」
「ひょっとして凄い良い人なのかも……!」
攻略法を伝えただけなのに何故だかざわついている。
首を傾げていたら、ロベールが一歩前に進み出る。
「そうだ、私の伴侶は常にこの村のことを考えて少しでも多くの情報を集めようと努力している! アンほど自分の村のことを考えている領主は他にはいないだろう!」
いきなり何を言い出すんだロベール!?
ロベールの目には僕がそのように見えていたのか。
僕がダンジョン村について何でも知っているから、たくさん調べものをしているとでも思っていたのだろうか。
「頼りになる領主様だ……俺たちの領主様……」
何だか変な感じにざわついている。
ええいロベールめ、一体どう落とし前を付けてくれよう。
「とにかく、まだ数日準備に時間を割ける。その間に装備を整え、道具を整理し、休んで体調を整えておけ! 犠牲者ゼロでの討伐を目指そう!」
僕は破れかぶれに叫んだ。
「うおおー!!!」
冒険者たちは鬨の声を上げる。
えーい、もうどうにでもなれー!
まずはクライヴからフロアボスの特徴を聞き出す。
ゲーム内でもフロアボスはランダムに決まっていた。
だからRTAをやり込んだ僕でも今回のフロアボスが何か知らない。
「ああ。フロアボスは巨大で、見上げるほどの大きさだった。あんなデカいのはフロアボスだってすぐに分かった。巨大すぎてよく分からなかったが、皮膚の硬そうな四足獣だったと思う」
なるほど、今回のフロアボスはグレートベヒモスのようだ。
頭の中のフロアボス一覧表からすぐに答えを導き出す。
「それならば敵は地属性、弱点は風属性だな」
「えぇっ、今の情報だけで分かったのか!?」
冒険者たちがざわつく。
「地耐性装備を持つ者は地耐性装備を、風属性武器を持つ者は風属性武器を装備していくように」
そうは言っても最初のフロアボスを倒す前の浅い階層しか探索できていないのだから、属性装備はあまりドロップしていないだろう。
基本的に属性武器は貴重なもので、深い層ほどドロップする確率が高くなる。
「……そうだな。グロスマン商会の者に地耐性リングをいくつか持ってきてもらえるように頼んでみるとしよう」
僕はエーミールの名刺を取り出し、エーミールにメッセージを送った。支店はまだ建ってないが商品を持ってくることぐらいはできるだろう。
流石に数日ではフロアボスがダンジョン外まで上がってくることはない。エーミールが商品を持ってきてくれるのを待つ時間はある。
「それからこのフロアボスの特徴的な攻撃方法は大まかに二つある。一つ目。前足を上げて後ろ足だけで立った時が攻撃のタイミングだ。前足を振り下ろし、地震のような衝撃を発生させる。だからフロアボスが後ろ足だけで立った瞬間に攻撃を中止してなるべく遠くまで退避し対衝撃魔術を張ること」
冒険者たちは真面目に聞いている。
「二つ目。角が光って辺りに魔術を放つ。だから角が光ったら対魔術防壁を張らなければならないのだが、フロアボスが巨大すぎて見上げるだけでは角を目視するのが難しい。だから飛行魔術を行使できる者が一名か二名ほど常に飛んで角の様子を確認するのがいい」
あまりにも子細に対策を語る僕に疑問に思ったのか、冒険者の一人が口を開く。僧侶風の男だ。
「あの……失礼だとは思うんですが領主様には何故そんなことが分かるのでしょう? 疑っている訳ではないのですが、フロアボスは何処も違う種類のものが出てくると聞いたので」
「確かに毎回同じ種類のフロアボスが出てくる訳ではない。だが古い文献をあたれば、あの村とこの村のフロアボスが実は同じだった……などという例はいくつかある。過去の記録を読み込んでおけばある程度の予想は付くのだ」
本当はゲームでやり込んでいるから知っているのだが、本を読んで知ったということにしておいた。
「なるほど……! 過去の文献から推測するとは盲点でした」
「それって領主様が俺たちの為にいっぱい本を読んでくれてたってことかよ……」
「ひょっとして凄い良い人なのかも……!」
攻略法を伝えただけなのに何故だかざわついている。
首を傾げていたら、ロベールが一歩前に進み出る。
「そうだ、私の伴侶は常にこの村のことを考えて少しでも多くの情報を集めようと努力している! アンほど自分の村のことを考えている領主は他にはいないだろう!」
いきなり何を言い出すんだロベール!?
ロベールの目には僕がそのように見えていたのか。
僕がダンジョン村について何でも知っているから、たくさん調べものをしているとでも思っていたのだろうか。
「頼りになる領主様だ……俺たちの領主様……」
何だか変な感じにざわついている。
ええいロベールめ、一体どう落とし前を付けてくれよう。
「とにかく、まだ数日準備に時間を割ける。その間に装備を整え、道具を整理し、休んで体調を整えておけ! 犠牲者ゼロでの討伐を目指そう!」
僕は破れかぶれに叫んだ。
「うおおー!!!」
冒険者たちは鬨の声を上げる。
えーい、もうどうにでもなれー!
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