20 / 84
第二十話 なんかもうどうにでもなってくれ
しおりを挟む
「まずクライヴ、フロアボスはどんな見た目をしていたか覚えているか?」
まずはクライヴからフロアボスの特徴を聞き出す。
ゲーム内でもフロアボスはランダムに決まっていた。
だからRTAをやり込んだ僕でも今回のフロアボスが何か知らない。
「ああ。フロアボスは巨大で、見上げるほどの大きさだった。あんなデカいのはフロアボスだってすぐに分かった。巨大すぎてよく分からなかったが、皮膚の硬そうな四足獣だったと思う」
なるほど、今回のフロアボスはグレートベヒモスのようだ。
頭の中のフロアボス一覧表からすぐに答えを導き出す。
「それならば敵は地属性、弱点は風属性だな」
「えぇっ、今の情報だけで分かったのか!?」
冒険者たちがざわつく。
「地耐性装備を持つ者は地耐性装備を、風属性武器を持つ者は風属性武器を装備していくように」
そうは言っても最初のフロアボスを倒す前の浅い階層しか探索できていないのだから、属性装備はあまりドロップしていないだろう。
基本的に属性武器は貴重なもので、深い層ほどドロップする確率が高くなる。
「……そうだな。グロスマン商会の者に地耐性リングをいくつか持ってきてもらえるように頼んでみるとしよう」
僕はエーミールの名刺を取り出し、エーミールにメッセージを送った。支店はまだ建ってないが商品を持ってくることぐらいはできるだろう。
流石に数日ではフロアボスがダンジョン外まで上がってくることはない。エーミールが商品を持ってきてくれるのを待つ時間はある。
「それからこのフロアボスの特徴的な攻撃方法は大まかに二つある。一つ目。前足を上げて後ろ足だけで立った時が攻撃のタイミングだ。前足を振り下ろし、地震のような衝撃を発生させる。だからフロアボスが後ろ足だけで立った瞬間に攻撃を中止してなるべく遠くまで退避し対衝撃魔術を張ること」
冒険者たちは真面目に聞いている。
「二つ目。角が光って辺りに魔術を放つ。だから角が光ったら対魔術防壁を張らなければならないのだが、フロアボスが巨大すぎて見上げるだけでは角を目視するのが難しい。だから飛行魔術を行使できる者が一名か二名ほど常に飛んで角の様子を確認するのがいい」
あまりにも子細に対策を語る僕に疑問に思ったのか、冒険者の一人が口を開く。僧侶風の男だ。
「あの……失礼だとは思うんですが領主様には何故そんなことが分かるのでしょう? 疑っている訳ではないのですが、フロアボスは何処も違う種類のものが出てくると聞いたので」
「確かに毎回同じ種類のフロアボスが出てくる訳ではない。だが古い文献をあたれば、あの村とこの村のフロアボスが実は同じだった……などという例はいくつかある。過去の記録を読み込んでおけばある程度の予想は付くのだ」
本当はゲームでやり込んでいるから知っているのだが、本を読んで知ったということにしておいた。
「なるほど……! 過去の文献から推測するとは盲点でした」
「それって領主様が俺たちの為にいっぱい本を読んでくれてたってことかよ……」
「ひょっとして凄い良い人なのかも……!」
攻略法を伝えただけなのに何故だかざわついている。
首を傾げていたら、ロベールが一歩前に進み出る。
「そうだ、私の伴侶は常にこの村のことを考えて少しでも多くの情報を集めようと努力している! アンほど自分の村のことを考えている領主は他にはいないだろう!」
いきなり何を言い出すんだロベール!?
ロベールの目には僕がそのように見えていたのか。
僕がダンジョン村について何でも知っているから、たくさん調べものをしているとでも思っていたのだろうか。
「頼りになる領主様だ……俺たちの領主様……」
何だか変な感じにざわついている。
ええいロベールめ、一体どう落とし前を付けてくれよう。
「とにかく、まだ数日準備に時間を割ける。その間に装備を整え、道具を整理し、休んで体調を整えておけ! 犠牲者ゼロでの討伐を目指そう!」
僕は破れかぶれに叫んだ。
「うおおー!!!」
冒険者たちは鬨の声を上げる。
えーい、もうどうにでもなれー!
まずはクライヴからフロアボスの特徴を聞き出す。
ゲーム内でもフロアボスはランダムに決まっていた。
だからRTAをやり込んだ僕でも今回のフロアボスが何か知らない。
「ああ。フロアボスは巨大で、見上げるほどの大きさだった。あんなデカいのはフロアボスだってすぐに分かった。巨大すぎてよく分からなかったが、皮膚の硬そうな四足獣だったと思う」
なるほど、今回のフロアボスはグレートベヒモスのようだ。
頭の中のフロアボス一覧表からすぐに答えを導き出す。
「それならば敵は地属性、弱点は風属性だな」
「えぇっ、今の情報だけで分かったのか!?」
冒険者たちがざわつく。
「地耐性装備を持つ者は地耐性装備を、風属性武器を持つ者は風属性武器を装備していくように」
そうは言っても最初のフロアボスを倒す前の浅い階層しか探索できていないのだから、属性装備はあまりドロップしていないだろう。
基本的に属性武器は貴重なもので、深い層ほどドロップする確率が高くなる。
「……そうだな。グロスマン商会の者に地耐性リングをいくつか持ってきてもらえるように頼んでみるとしよう」
僕はエーミールの名刺を取り出し、エーミールにメッセージを送った。支店はまだ建ってないが商品を持ってくることぐらいはできるだろう。
流石に数日ではフロアボスがダンジョン外まで上がってくることはない。エーミールが商品を持ってきてくれるのを待つ時間はある。
「それからこのフロアボスの特徴的な攻撃方法は大まかに二つある。一つ目。前足を上げて後ろ足だけで立った時が攻撃のタイミングだ。前足を振り下ろし、地震のような衝撃を発生させる。だからフロアボスが後ろ足だけで立った瞬間に攻撃を中止してなるべく遠くまで退避し対衝撃魔術を張ること」
冒険者たちは真面目に聞いている。
「二つ目。角が光って辺りに魔術を放つ。だから角が光ったら対魔術防壁を張らなければならないのだが、フロアボスが巨大すぎて見上げるだけでは角を目視するのが難しい。だから飛行魔術を行使できる者が一名か二名ほど常に飛んで角の様子を確認するのがいい」
あまりにも子細に対策を語る僕に疑問に思ったのか、冒険者の一人が口を開く。僧侶風の男だ。
「あの……失礼だとは思うんですが領主様には何故そんなことが分かるのでしょう? 疑っている訳ではないのですが、フロアボスは何処も違う種類のものが出てくると聞いたので」
「確かに毎回同じ種類のフロアボスが出てくる訳ではない。だが古い文献をあたれば、あの村とこの村のフロアボスが実は同じだった……などという例はいくつかある。過去の記録を読み込んでおけばある程度の予想は付くのだ」
本当はゲームでやり込んでいるから知っているのだが、本を読んで知ったということにしておいた。
「なるほど……! 過去の文献から推測するとは盲点でした」
「それって領主様が俺たちの為にいっぱい本を読んでくれてたってことかよ……」
「ひょっとして凄い良い人なのかも……!」
攻略法を伝えただけなのに何故だかざわついている。
首を傾げていたら、ロベールが一歩前に進み出る。
「そうだ、私の伴侶は常にこの村のことを考えて少しでも多くの情報を集めようと努力している! アンほど自分の村のことを考えている領主は他にはいないだろう!」
いきなり何を言い出すんだロベール!?
ロベールの目には僕がそのように見えていたのか。
僕がダンジョン村について何でも知っているから、たくさん調べものをしているとでも思っていたのだろうか。
「頼りになる領主様だ……俺たちの領主様……」
何だか変な感じにざわついている。
ええいロベールめ、一体どう落とし前を付けてくれよう。
「とにかく、まだ数日準備に時間を割ける。その間に装備を整え、道具を整理し、休んで体調を整えておけ! 犠牲者ゼロでの討伐を目指そう!」
僕は破れかぶれに叫んだ。
「うおおー!!!」
冒険者たちは鬨の声を上げる。
えーい、もうどうにでもなれー!
74
お気に入りに追加
2,626
あなたにおすすめの小説
攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました
白兪
BL
前世で妹がプレイしていた乙女ゲーム「君とユニバース」に転生してしまったアース。
攻略対象者ってことはイケメンだし将来も安泰じゃん!と喜ぶが、アースは人気最下位キャラ。あんまりパッとするところがないアースだが、気がついたら王太子の婚約者になっていた…。
なんとか友達に戻ろうとする主人公と離そうとしない激甘王太子の攻防はいかに!?
ゆっくり書き進めていこうと思います。拙い文章ですが最後まで読んでいただけると嬉しいです。
奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。
拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ
親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。
え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか
※独自の世界線
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、騎士見習の少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる