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第二十五話 お外をお散歩るんるらん
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「リュカ殿下、最近では体調を崩すことがなくなられましたね」
朝の検診で、専属医術士のセドリックが笑いかけてくれた。
「この分ならば、外へのお出かけを許可してもよさそうでございますね」
「おそと?」
「ええ、お城の外をお散歩しても大丈夫ですよ」
「やったー!」
専属医術士が出した許可に、ぼくは歓声を上げた。
今までは城の中しか散歩できなかったのだ。
いくらぼくがスイーツにしか興味のない人間だからといっても、数ヶ月間ずっと屋内にいたのでは外の空気くらい恋しくなる。
ついに外に出られるのだ。嬉しくてたまらない。
検診が終わってセドリックが去ると、ぼくはすぐにシルヴェストルお兄様に連絡してくれるよう、ステラに頼んだ。
シルヴェストルお兄様と一緒に、初めての外への散歩に繰り出すのだ。
「ふふ、殿下はすっかりお兄ちゃん子になりましたね」
「べつにそんなんじゃないもん」
ステラが微笑んだが、ぼくは否定する。
シルヴェストルお兄様はぼくの兄貴分だ。悪だくみをするときは、いつも一緒じゃなければいけないのだ。
「あらあら、そうでございますか? では、行って参りますね」
ステラはくすくすと笑ったまま、シルヴェストルお兄様のところへ連絡に行った。
まったくもう、ぼくは次なるスイーツ作りに余念がないだけなんだからね。勘違いしないでよねっ。
それから少しして、ぼくはシルヴェストルお兄様と手を繋いで城の中庭を歩いていた。
爽やかな春の風が頬を撫で、花壇に咲く花々が目に鮮やかだ。
なんて爽やかなんだろう!
「あ、ちょうちょだー」
花の周りを飛んでいる蝶々をぼくは指差した。
この世界に蝶々は存在しているようで、ぼくは一安心した。
ついこの間ハチミツは存在しないのかとステラに聞いてみたら、そもそも蜂が存在しないと判明したばかりだから。
「蝶か、捕まえてやろうか?」
「ううん、ちょうちょはたべられないからいい」
シルヴェストルお兄様の申し出に、首を横に振った。
蝶々の存在を発見して指差したくなっただけで、捕まえたいわけではない。
「ふふ、リュカは食いしん坊だな」
「たべものならなんでもいいわけじゃないもん!」
手を繋いでくれている彼を見上げ、ぷくっと頬を膨らませてみせた。
「そうだな、リュカが好きなのはスイーツだったな。次はどんなスイーツを作ろうと企んでるんだ?」
彼はニヤリと笑ってくれた。
ぼくは少し考える。
「んーとね、あたらしいスイーツをつくるよりもね、ショートケーキのじゅんびをすすめたいんだ」
「ショートケーキか、以前言っていたな。準備とは何をするんだ?」
「クリームのつくりかたはぜんぜんわかんないけど、イチゴのかわりのフルーツなら、フルーツをたくさん探せばみつかるかなっておもったの」
「ほう、ショートケーキとはフルーツを使うのか。そのために様々なフルーツを見極めたいというのだな。よし、ならば果物商を呼ぼう。ありとあらゆる果物を持ってこさせればいい」
「くだものしょー?」
ぼくはきょとんと首を傾げた。
あんまり上を見上げていたら首が痛いなと思っていると、心を読んだかのようにシルヴェストルお兄様が跪いて視線を合わせてくれた。
なんて優しいお兄様なんだろう!
「自分の部屋に商人を呼んで、商品を持って来させるんだ。王族の買い物とは、そういう風にして行うものだ。リュカもそうすればいい」
「おお、セレブ……!」
前世でも商人を家に呼ぶなんてしたことない。ぼくは目をキラキラさせた。
「せれぶ? まあとにかく、王室費というのがあって、その金がある限りオレたちは好きな物を買えるんだ。三日後にでも果物商を来させよう」
「うん!」
こうして、セレブなお買いものをすることになったのだった。
朝の検診で、専属医術士のセドリックが笑いかけてくれた。
「この分ならば、外へのお出かけを許可してもよさそうでございますね」
「おそと?」
「ええ、お城の外をお散歩しても大丈夫ですよ」
「やったー!」
専属医術士が出した許可に、ぼくは歓声を上げた。
今までは城の中しか散歩できなかったのだ。
いくらぼくがスイーツにしか興味のない人間だからといっても、数ヶ月間ずっと屋内にいたのでは外の空気くらい恋しくなる。
ついに外に出られるのだ。嬉しくてたまらない。
検診が終わってセドリックが去ると、ぼくはすぐにシルヴェストルお兄様に連絡してくれるよう、ステラに頼んだ。
シルヴェストルお兄様と一緒に、初めての外への散歩に繰り出すのだ。
「ふふ、殿下はすっかりお兄ちゃん子になりましたね」
「べつにそんなんじゃないもん」
ステラが微笑んだが、ぼくは否定する。
シルヴェストルお兄様はぼくの兄貴分だ。悪だくみをするときは、いつも一緒じゃなければいけないのだ。
「あらあら、そうでございますか? では、行って参りますね」
ステラはくすくすと笑ったまま、シルヴェストルお兄様のところへ連絡に行った。
まったくもう、ぼくは次なるスイーツ作りに余念がないだけなんだからね。勘違いしないでよねっ。
それから少しして、ぼくはシルヴェストルお兄様と手を繋いで城の中庭を歩いていた。
爽やかな春の風が頬を撫で、花壇に咲く花々が目に鮮やかだ。
なんて爽やかなんだろう!
「あ、ちょうちょだー」
花の周りを飛んでいる蝶々をぼくは指差した。
この世界に蝶々は存在しているようで、ぼくは一安心した。
ついこの間ハチミツは存在しないのかとステラに聞いてみたら、そもそも蜂が存在しないと判明したばかりだから。
「蝶か、捕まえてやろうか?」
「ううん、ちょうちょはたべられないからいい」
シルヴェストルお兄様の申し出に、首を横に振った。
蝶々の存在を発見して指差したくなっただけで、捕まえたいわけではない。
「ふふ、リュカは食いしん坊だな」
「たべものならなんでもいいわけじゃないもん!」
手を繋いでくれている彼を見上げ、ぷくっと頬を膨らませてみせた。
「そうだな、リュカが好きなのはスイーツだったな。次はどんなスイーツを作ろうと企んでるんだ?」
彼はニヤリと笑ってくれた。
ぼくは少し考える。
「んーとね、あたらしいスイーツをつくるよりもね、ショートケーキのじゅんびをすすめたいんだ」
「ショートケーキか、以前言っていたな。準備とは何をするんだ?」
「クリームのつくりかたはぜんぜんわかんないけど、イチゴのかわりのフルーツなら、フルーツをたくさん探せばみつかるかなっておもったの」
「ほう、ショートケーキとはフルーツを使うのか。そのために様々なフルーツを見極めたいというのだな。よし、ならば果物商を呼ぼう。ありとあらゆる果物を持ってこさせればいい」
「くだものしょー?」
ぼくはきょとんと首を傾げた。
あんまり上を見上げていたら首が痛いなと思っていると、心を読んだかのようにシルヴェストルお兄様が跪いて視線を合わせてくれた。
なんて優しいお兄様なんだろう!
「自分の部屋に商人を呼んで、商品を持って来させるんだ。王族の買い物とは、そういう風にして行うものだ。リュカもそうすればいい」
「おお、セレブ……!」
前世でも商人を家に呼ぶなんてしたことない。ぼくは目をキラキラさせた。
「せれぶ? まあとにかく、王室費というのがあって、その金がある限りオレたちは好きな物を買えるんだ。三日後にでも果物商を来させよう」
「うん!」
こうして、セレブなお買いものをすることになったのだった。
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