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第十九話 オディロン先生を攻略せよ
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大人しくポリッジを食べながら療養生活を過ごしているうちに、ぼくは気がついた。
ぼくはオディロン先生を口止めしなければならないのではないだろうか。
だってスイーツを食べ放題なんて将来がどこかに漏れたら、「けしからん!」って言ってくる大人がいるかもしれないじゃないか。
真面目な大人というものは、他人の幸せにケチをつけずにはいられないものなのだ。
スイーツ食べ放題のために、オディロン先生を口止めしなきゃ!
そのためには……やっぱり、オディロン先生を説得さなくっちゃね。
「殿下、オディロン先生がお見舞いにいらっしゃいましたよ」
考えごとをしていたら、ステラが告げてきた。
なんてタイミングのよさだ!
「ぼく、げんき! おみまいやったー!」
身振り手振りで、オディロン先生を部屋に入れていいことをステラに伝えた。
「殿下、先日は御身の限界も考慮せずに申し訳ございません」
オディロン先生は、しょんぼりとした顔で入ってきた。イケオジな顔面が形無しだ。
「こちらは、お見舞いの品でございます」
「わああ、キータの実だあ!」
先生が差し出してきたものは、見覚えのあるフルーツだった。
正確には、ドライフルーツの状態しか見たことがない。けれども、すぐにそれがキータの実だと理解できた。
柿のような大きさの、オレンジ色のフルーツだ。こうしてみると、形はリンゴに近いことがわかる。
「えへへ、オディロンせんせー、ありがとう! ぼくね、キータの実だいすきなの!」
ぼくは満面の天使の笑みを向けた!
こうかはきっとばつぐんだ!
こういうところからね、タラしていかないとね。
「お好きでいらっしゃいましたか。それはようございました」
しょぼくれた顔が、あっという間にでれでれ顔になって声も明るくなった。ぼくの愛想のよさのおかげだね!
「せんせーもいっしょに、キータの実たべよ?」
「おや、いいのでございますか?」
「うん!」
熱を出して倒れたなんて感じさせない、弾ける元気さで頷いた。
ステラがキータの実を切ってくれている間、オディロン先生がぽつりと呟いた。
「殿下は本当に愛らしい方ですね」
お、好感度上がってる?
ほだせてる?
「ふっふん。いまならとくべつに、ぼくのあたまをなでてもいいよ! ふけーなんて怒ったりしないよ!」
ぼくは胸を張って腰に手を当て、鼻息を荒くした。
「よろしいのですか?」
「うん!」
ぼくは目をキラキラとさせた。
「それでは、お言葉に甘えて」
オディロン先生の大きな手が、遠慮がちにぼくのふわふわな頭に触れた。
撫でられる感触が心地よくて、ぼくは目を閉じた。
うーん、きもちいいなあ。
「なんだかおとうしゃまになでられてるみたい……」
僕は夢見心地で呟いた。
実の父親には頭撫でられた記憶ないけれどね。転生してから、顔も見てないんだよ。
でもオディロン先生は叔父貴に顔が似ているのもあって、リラックスできる。
「殿下……」
オディロン先生が頭を撫でてくれる感触が、おずおずとしたものから、大事なものを愛でるようなしっかりとした手つきに変わったのを感じた。
「さあ、キータの実を切り分けましたよ」
ステラの声で、オディロン先生の手はさっと離れてしまった。残念。
ステラがキータの実を載せたお皿とフォークを、ぼくの前に置いてくれた。オディロン先生にも同様に手渡される。
「いっただきまーす!」
キータの実をフォークに刺して、しゃくりと音を立てて食べた。リンゴのようなナシのような味が美味しい!
ハチミツさえあれば、焼いてハチミツかけて食べるのも美味しいだろうなあ。
「どうやらご満足いただけたようで、何よりでございます」
ぼくの表情から満足度合いを察したようで、オディロン先生は目を細めている。
「オディロンせんせーも、キータの実はすき?」
「ええ、実は若い頃からの好物でして」
穏やかに笑う彼は、遠い日のことを思い出しているかのようだった。
その表情を見て、彼をタラしこむ究極の方法を思いつく。
「じゃあ、こんどキータの実をつかったスイーツをつくってあげる! げんきになったら、つくるよ!」
究極の方法とは、胃袋を掴むことだ!
好物のフルーツをつかったスイーツを食べさせれば、必ずやオディロン先生はぼくにメロメロになるに違いない。
「キータの実をつかったスイーツ? スイーツとは、果物を使うものなのですか?」
オディロン先生は驚きに目を丸くしている。
「まってね、いまレシピを書くから……!」
ぼくはベッドから起き上がって、机に座ろうとした。
床に足をつけた途端、ふわりとオディロン先生の腕に抱き上げられてしまった。
「悪戯な子ですね。はしゃいだら、また体調が悪化してしまいますよ。私がお見舞いに行ったから具合が悪くなったなんてことになれば、私は殿下の指導役から外されてしまいます」
イケオジな顔が微笑みながら、間近でぼくを穏やかにたしなめる。
「そ、それはたいへん……!」
オディロン先生が先生じゃなくなったら、それこそぼくの未来を誰かに暴露されてしまうかもしれない。
ぼくは大人しく抱っこされて、ベッドの中に戻された。オディロン先生の手がぼくの上に優しく毛布をかけ、ぽんぽんと頭を撫でた。
「えへへ」
「スイーツ作りとやらは楽しみにしておきますので、殿下は早く元気になることにご専念くださいね」
「うん、わかった!」
オディロン先生が退室したあと、眠りに落ちたぼくは新しいスイーツの夢を見たのだった。
ぼくはオディロン先生を口止めしなければならないのではないだろうか。
だってスイーツを食べ放題なんて将来がどこかに漏れたら、「けしからん!」って言ってくる大人がいるかもしれないじゃないか。
真面目な大人というものは、他人の幸せにケチをつけずにはいられないものなのだ。
スイーツ食べ放題のために、オディロン先生を口止めしなきゃ!
そのためには……やっぱり、オディロン先生を説得さなくっちゃね。
「殿下、オディロン先生がお見舞いにいらっしゃいましたよ」
考えごとをしていたら、ステラが告げてきた。
なんてタイミングのよさだ!
「ぼく、げんき! おみまいやったー!」
身振り手振りで、オディロン先生を部屋に入れていいことをステラに伝えた。
「殿下、先日は御身の限界も考慮せずに申し訳ございません」
オディロン先生は、しょんぼりとした顔で入ってきた。イケオジな顔面が形無しだ。
「こちらは、お見舞いの品でございます」
「わああ、キータの実だあ!」
先生が差し出してきたものは、見覚えのあるフルーツだった。
正確には、ドライフルーツの状態しか見たことがない。けれども、すぐにそれがキータの実だと理解できた。
柿のような大きさの、オレンジ色のフルーツだ。こうしてみると、形はリンゴに近いことがわかる。
「えへへ、オディロンせんせー、ありがとう! ぼくね、キータの実だいすきなの!」
ぼくは満面の天使の笑みを向けた!
こうかはきっとばつぐんだ!
こういうところからね、タラしていかないとね。
「お好きでいらっしゃいましたか。それはようございました」
しょぼくれた顔が、あっという間にでれでれ顔になって声も明るくなった。ぼくの愛想のよさのおかげだね!
「せんせーもいっしょに、キータの実たべよ?」
「おや、いいのでございますか?」
「うん!」
熱を出して倒れたなんて感じさせない、弾ける元気さで頷いた。
ステラがキータの実を切ってくれている間、オディロン先生がぽつりと呟いた。
「殿下は本当に愛らしい方ですね」
お、好感度上がってる?
ほだせてる?
「ふっふん。いまならとくべつに、ぼくのあたまをなでてもいいよ! ふけーなんて怒ったりしないよ!」
ぼくは胸を張って腰に手を当て、鼻息を荒くした。
「よろしいのですか?」
「うん!」
ぼくは目をキラキラとさせた。
「それでは、お言葉に甘えて」
オディロン先生の大きな手が、遠慮がちにぼくのふわふわな頭に触れた。
撫でられる感触が心地よくて、ぼくは目を閉じた。
うーん、きもちいいなあ。
「なんだかおとうしゃまになでられてるみたい……」
僕は夢見心地で呟いた。
実の父親には頭撫でられた記憶ないけれどね。転生してから、顔も見てないんだよ。
でもオディロン先生は叔父貴に顔が似ているのもあって、リラックスできる。
「殿下……」
オディロン先生が頭を撫でてくれる感触が、おずおずとしたものから、大事なものを愛でるようなしっかりとした手つきに変わったのを感じた。
「さあ、キータの実を切り分けましたよ」
ステラの声で、オディロン先生の手はさっと離れてしまった。残念。
ステラがキータの実を載せたお皿とフォークを、ぼくの前に置いてくれた。オディロン先生にも同様に手渡される。
「いっただきまーす!」
キータの実をフォークに刺して、しゃくりと音を立てて食べた。リンゴのようなナシのような味が美味しい!
ハチミツさえあれば、焼いてハチミツかけて食べるのも美味しいだろうなあ。
「どうやらご満足いただけたようで、何よりでございます」
ぼくの表情から満足度合いを察したようで、オディロン先生は目を細めている。
「オディロンせんせーも、キータの実はすき?」
「ええ、実は若い頃からの好物でして」
穏やかに笑う彼は、遠い日のことを思い出しているかのようだった。
その表情を見て、彼をタラしこむ究極の方法を思いつく。
「じゃあ、こんどキータの実をつかったスイーツをつくってあげる! げんきになったら、つくるよ!」
究極の方法とは、胃袋を掴むことだ!
好物のフルーツをつかったスイーツを食べさせれば、必ずやオディロン先生はぼくにメロメロになるに違いない。
「キータの実をつかったスイーツ? スイーツとは、果物を使うものなのですか?」
オディロン先生は驚きに目を丸くしている。
「まってね、いまレシピを書くから……!」
ぼくはベッドから起き上がって、机に座ろうとした。
床に足をつけた途端、ふわりとオディロン先生の腕に抱き上げられてしまった。
「悪戯な子ですね。はしゃいだら、また体調が悪化してしまいますよ。私がお見舞いに行ったから具合が悪くなったなんてことになれば、私は殿下の指導役から外されてしまいます」
イケオジな顔が微笑みながら、間近でぼくを穏やかにたしなめる。
「そ、それはたいへん……!」
オディロン先生が先生じゃなくなったら、それこそぼくの未来を誰かに暴露されてしまうかもしれない。
ぼくは大人しく抱っこされて、ベッドの中に戻された。オディロン先生の手がぼくの上に優しく毛布をかけ、ぽんぽんと頭を撫でた。
「えへへ」
「スイーツ作りとやらは楽しみにしておきますので、殿下は早く元気になることにご専念くださいね」
「うん、わかった!」
オディロン先生が退室したあと、眠りに落ちたぼくは新しいスイーツの夢を見たのだった。
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