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第十一話 フラグがバグってる
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「姫、危ない……っ!」
「え……?」
迫りくる攻撃。
オレを庇おうと抱き締めるエリクの腕。
たたらを踏んだ瞬間にガコリと音を立てて沈む床。
(あ、やべ……っ!)
何かトラップを踏んでしまったと気が付いた瞬間にはもう遅かった。
次の瞬間、オレとエリクの二人は――――通称『セックスしないと出られない部屋』にいた。
そもそも何故こんなことになったのか。
オレは姫騎士だ。
いやいや違う、王子騎士だ。
とにかく、仮にも騎士であるからには騎士団に所属しているということだし、騎士団での仕事があるのだ。
姫……王子であるオレの周りには護衛としてエリクや数名の近衛兵が付きつつも、騎士団の仕事として大々的なダンジョン攻略に乗り出したのだった。
魔物が出現し、乱戦の最中オレはエリクに庇われ、トラップを作動させてしまった。
そこに設置されているトラップの種類はゲームでやっていて知っている。
そのトラップが転移装置で、何処に飛ばされるかも。
「ここは……何処だ?」
気がついたエリクが身体を起こして周りを見回す。
オレたちは棄てられたチャペルのような空間にいた。
周囲にはボロい木製の長椅子が何列も並び、前方には異教の女神像。
外へ出られそうな出口は、後方にある両開きの扉のみ。
「姫、大丈夫か?」
エリクが手を差し伸べてくれる。
「ありがとう……」
彼の手を取ると、彼とばっちり目が合う。
何回か彼のことを思い浮かべて自慰をしてしまったことを思い出す。
「……!」
ぽっと頬が熱くなる。
赤くなった顔が見られたら自慰をしていたことまでバレてしまいそうな気がして、顔を俯かせる。
それにしても……ピンチだ。
ここは何せ、バグによって偶発的に出来てしまった『セックスしないと出られない部屋』なのだから。
「ここから出られるか……?」
エリクが後方の扉を押してみる。
もちろん開かない。
その代わり、途端に女神像が輝き出す。
「姫、後ろにっ!」
エリクが素早く前に出てオレを背中に隠し、身構える。
女神像の光はやがて収まり……女神像の前に、ちょこんと宝箱が現れていた。
「なんだ……?」
エリクは本気で困惑した顔をしている。
ちょっと面白い。いやそんなことを言ってる場合じゃないけど。
エリクが慎重に宝箱を開け、中の物を取り出す。
「どうやら古代の魔道具のようだな」
なかなかのレアアイテムだが、この空間から抜け出す手伝いになるようなものではない。
「む、何か書いてあるな」
女神像の土台に文字の書かれたプレートが嵌まっている。
エリクが埃を払ってそこに記された古代語を読む。
「『女神に背徳の涙を流させよ。さすれば財宝を得ん』……?」
エリクが首を傾げる。
「財宝とは、これのことだよな?」
そう、本当はこの部屋は仕掛けを解けば宝箱が出てくるという部屋になる筈だった。
しかしどういう手違いが起こったのか、ドアが開くフラグと宝箱が出てくるフラグが逆になってしまったのだ。
かくしてこの部屋はドアを開けようとすると宝箱が現れ、仕掛けを解くとドアが開く部屋になってしまったのだ。
「???」
エリクの顔がはてなマークでいっぱいになるのも無理はなかった。
ちなみにこの部屋の仕掛けがどんな仕掛けかというとだ。
プレートの文字を読むと、主人公たちの会話が始まる。
「背徳の涙を流させる」ってどうすればいいんだ? という会話だ。
すると主人公パーティの一人が発言する。
「女神を悲しませるようなことをすればいいのでは?」と。
そして画面は暗転し「主人公たちは女神像の前で背徳的行為に耽った……」というメッセージだけ表示される。
それが終わると宝箱が現れる筈が、バグによりドアが開く。
それがこの部屋が『セックスしないと出られない部屋』と呼ばれている所以だ。
いや、セックスしているとは限らない。
ただ意味ありげに暗転するだけだ。
だが、もしこの空間で『背徳的行為に耽る』とするならば……。
扉以外の出口を必死に探しているエリクに視線を向けた。
彼と、するしかないだろう。
「え……?」
迫りくる攻撃。
オレを庇おうと抱き締めるエリクの腕。
たたらを踏んだ瞬間にガコリと音を立てて沈む床。
(あ、やべ……っ!)
何かトラップを踏んでしまったと気が付いた瞬間にはもう遅かった。
次の瞬間、オレとエリクの二人は――――通称『セックスしないと出られない部屋』にいた。
そもそも何故こんなことになったのか。
オレは姫騎士だ。
いやいや違う、王子騎士だ。
とにかく、仮にも騎士であるからには騎士団に所属しているということだし、騎士団での仕事があるのだ。
姫……王子であるオレの周りには護衛としてエリクや数名の近衛兵が付きつつも、騎士団の仕事として大々的なダンジョン攻略に乗り出したのだった。
魔物が出現し、乱戦の最中オレはエリクに庇われ、トラップを作動させてしまった。
そこに設置されているトラップの種類はゲームでやっていて知っている。
そのトラップが転移装置で、何処に飛ばされるかも。
「ここは……何処だ?」
気がついたエリクが身体を起こして周りを見回す。
オレたちは棄てられたチャペルのような空間にいた。
周囲にはボロい木製の長椅子が何列も並び、前方には異教の女神像。
外へ出られそうな出口は、後方にある両開きの扉のみ。
「姫、大丈夫か?」
エリクが手を差し伸べてくれる。
「ありがとう……」
彼の手を取ると、彼とばっちり目が合う。
何回か彼のことを思い浮かべて自慰をしてしまったことを思い出す。
「……!」
ぽっと頬が熱くなる。
赤くなった顔が見られたら自慰をしていたことまでバレてしまいそうな気がして、顔を俯かせる。
それにしても……ピンチだ。
ここは何せ、バグによって偶発的に出来てしまった『セックスしないと出られない部屋』なのだから。
「ここから出られるか……?」
エリクが後方の扉を押してみる。
もちろん開かない。
その代わり、途端に女神像が輝き出す。
「姫、後ろにっ!」
エリクが素早く前に出てオレを背中に隠し、身構える。
女神像の光はやがて収まり……女神像の前に、ちょこんと宝箱が現れていた。
「なんだ……?」
エリクは本気で困惑した顔をしている。
ちょっと面白い。いやそんなことを言ってる場合じゃないけど。
エリクが慎重に宝箱を開け、中の物を取り出す。
「どうやら古代の魔道具のようだな」
なかなかのレアアイテムだが、この空間から抜け出す手伝いになるようなものではない。
「む、何か書いてあるな」
女神像の土台に文字の書かれたプレートが嵌まっている。
エリクが埃を払ってそこに記された古代語を読む。
「『女神に背徳の涙を流させよ。さすれば財宝を得ん』……?」
エリクが首を傾げる。
「財宝とは、これのことだよな?」
そう、本当はこの部屋は仕掛けを解けば宝箱が出てくるという部屋になる筈だった。
しかしどういう手違いが起こったのか、ドアが開くフラグと宝箱が出てくるフラグが逆になってしまったのだ。
かくしてこの部屋はドアを開けようとすると宝箱が現れ、仕掛けを解くとドアが開く部屋になってしまったのだ。
「???」
エリクの顔がはてなマークでいっぱいになるのも無理はなかった。
ちなみにこの部屋の仕掛けがどんな仕掛けかというとだ。
プレートの文字を読むと、主人公たちの会話が始まる。
「背徳の涙を流させる」ってどうすればいいんだ? という会話だ。
すると主人公パーティの一人が発言する。
「女神を悲しませるようなことをすればいいのでは?」と。
そして画面は暗転し「主人公たちは女神像の前で背徳的行為に耽った……」というメッセージだけ表示される。
それが終わると宝箱が現れる筈が、バグによりドアが開く。
それがこの部屋が『セックスしないと出られない部屋』と呼ばれている所以だ。
いや、セックスしているとは限らない。
ただ意味ありげに暗転するだけだ。
だが、もしこの空間で『背徳的行為に耽る』とするならば……。
扉以外の出口を必死に探しているエリクに視線を向けた。
彼と、するしかないだろう。
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