5 / 20
第五話 宮廷魔術師の設定が……
しおりを挟む
「おらっ!」
腕を掴まれ、無理やり部屋に連れ込まれてしまった。
腕力に差がありすぎて、抵抗なんて碌にできなかった。
オレの身体は床に転がされる。
逃げようとするが、腰が抜けて立ち上がれない。
「へへへ……」
下卑た笑みから逃げようと、懸命に後退る。
だがドスンと背が壁にぶつかってしまった。
ニヤニヤとした二対の視線が、ビキニアーマーを装着したオレの身体を舐め回す。
「いい脚してんじゃねえか」
指毛の生えた太い手が無遠慮に剥き出しの太腿を掴む。
「ヒ……ッ!?」
親指が内腿に食い込む不快感に身の毛がよだつ。
お前ら男相手に欲情するなんて頭バグってるんじゃないか、と言いたかったが、恐怖でとてもそんな勇気はなかった。
下っ端がナイフを取り出したのが見えた。
え? オレ、殺されるの? そのナイフで刺し殺されるの?
まさか異世界での生活がこんな形で終わりを迎えるなんて思わなかった。
こんなことなら近道なんてしようと思うんじゃなかった。
後悔にぽろぽろと涙を零す。
ナイフの切っ先が突き付けられる。
一思いに胸を貫かれるのだろうか、と思いきや胸部プレートを留めている革紐に刃が引っ掛けられる。
そしてブツリと音を立てて革紐が断ち切られた。
鎧の下に着ていたビキニ型の布地ごと切られ、真っ白な胸元が露出する。
「いや……ッ!!」
思わず両手で胸を隠して叫んでいた。
エリクがあんなに真っ赤になっていたのだ。
この胸を晒すことが、どんなにこのならず者どもの性欲を刺激するかありありと想像できた。
ぎゅっと目を瞑ると、カチャカチャとベルトを外している音が耳に届いた。
自分がどうなってしまうのか分かるのに、どうすればいいか分からない。
絶望のどん底に突き落とされたその時だった。
「何をしている?」
聞き覚えのある声が耳に届いた。
「物音が聞こえるから様子を見に来てみれば、何事だ」
目を開けると、そこにいたのは王城にいるはずの宮廷魔術師――――エリクだった。
「エリク……?」
何故、こんなところに?
混乱で頭の中が滅茶苦茶になる。
「え、エリク様!」
ならず者どもが慌ててベルトを締め直し、エリクに対して頭を下げる。
それでエリクがこのならず者たちを束ねる立場にあるのだということだけは理解できた。
「まったく、発情するならばせめて場所をえら……」
エリクの目がオレの姿を捉える。
彼の瞳が大きく見開かれる。
反射的にぎゅっと自分の身体を抱き締める。
彼にこんな姿は見られたくなかった、と羞恥のような恐怖のようなよく分からない感情が去来する。
「ともかく、ここから即刻立ち去れ!」
「へへぇ!」
エリクに叱咤されて、ならず者どもがオレを残して部屋から飛び出ていく。
部屋にはオレとエリクの二人きりになった。
ふぁさり、何かがオレの身体に被さる。
エリクの脱いだローブだ。
オレの裸を覆い隠してくれたのだ。
「姫、なぜ貴方が此処にいるのかは問わない」
エリクがオレに背を向ける。
その表情を窺い知ることはできなかった。
「ただ、ここで私の姿を見たことも他言しないで頂きたい」
その言葉から、彼が盗賊ギルドにいることが疚しいことであるのは明白だった。
オレの胸に赤面してた童貞みたいなエリクにまさか盗賊ギルドと繋がりがあったなんて……。
まさかゲームには実装されていなかった裏設定だろうか。
本当にエリクには裏の顔があって、国家転覆を狙っている?
だとしたら、オレは一体どうすればいいんだ……?
腕を掴まれ、無理やり部屋に連れ込まれてしまった。
腕力に差がありすぎて、抵抗なんて碌にできなかった。
オレの身体は床に転がされる。
逃げようとするが、腰が抜けて立ち上がれない。
「へへへ……」
下卑た笑みから逃げようと、懸命に後退る。
だがドスンと背が壁にぶつかってしまった。
ニヤニヤとした二対の視線が、ビキニアーマーを装着したオレの身体を舐め回す。
「いい脚してんじゃねえか」
指毛の生えた太い手が無遠慮に剥き出しの太腿を掴む。
「ヒ……ッ!?」
親指が内腿に食い込む不快感に身の毛がよだつ。
お前ら男相手に欲情するなんて頭バグってるんじゃないか、と言いたかったが、恐怖でとてもそんな勇気はなかった。
下っ端がナイフを取り出したのが見えた。
え? オレ、殺されるの? そのナイフで刺し殺されるの?
まさか異世界での生活がこんな形で終わりを迎えるなんて思わなかった。
こんなことなら近道なんてしようと思うんじゃなかった。
後悔にぽろぽろと涙を零す。
ナイフの切っ先が突き付けられる。
一思いに胸を貫かれるのだろうか、と思いきや胸部プレートを留めている革紐に刃が引っ掛けられる。
そしてブツリと音を立てて革紐が断ち切られた。
鎧の下に着ていたビキニ型の布地ごと切られ、真っ白な胸元が露出する。
「いや……ッ!!」
思わず両手で胸を隠して叫んでいた。
エリクがあんなに真っ赤になっていたのだ。
この胸を晒すことが、どんなにこのならず者どもの性欲を刺激するかありありと想像できた。
ぎゅっと目を瞑ると、カチャカチャとベルトを外している音が耳に届いた。
自分がどうなってしまうのか分かるのに、どうすればいいか分からない。
絶望のどん底に突き落とされたその時だった。
「何をしている?」
聞き覚えのある声が耳に届いた。
「物音が聞こえるから様子を見に来てみれば、何事だ」
目を開けると、そこにいたのは王城にいるはずの宮廷魔術師――――エリクだった。
「エリク……?」
何故、こんなところに?
混乱で頭の中が滅茶苦茶になる。
「え、エリク様!」
ならず者どもが慌ててベルトを締め直し、エリクに対して頭を下げる。
それでエリクがこのならず者たちを束ねる立場にあるのだということだけは理解できた。
「まったく、発情するならばせめて場所をえら……」
エリクの目がオレの姿を捉える。
彼の瞳が大きく見開かれる。
反射的にぎゅっと自分の身体を抱き締める。
彼にこんな姿は見られたくなかった、と羞恥のような恐怖のようなよく分からない感情が去来する。
「ともかく、ここから即刻立ち去れ!」
「へへぇ!」
エリクに叱咤されて、ならず者どもがオレを残して部屋から飛び出ていく。
部屋にはオレとエリクの二人きりになった。
ふぁさり、何かがオレの身体に被さる。
エリクの脱いだローブだ。
オレの裸を覆い隠してくれたのだ。
「姫、なぜ貴方が此処にいるのかは問わない」
エリクがオレに背を向ける。
その表情を窺い知ることはできなかった。
「ただ、ここで私の姿を見たことも他言しないで頂きたい」
その言葉から、彼が盗賊ギルドにいることが疚しいことであるのは明白だった。
オレの胸に赤面してた童貞みたいなエリクにまさか盗賊ギルドと繋がりがあったなんて……。
まさかゲームには実装されていなかった裏設定だろうか。
本当にエリクには裏の顔があって、国家転覆を狙っている?
だとしたら、オレは一体どうすればいいんだ……?
44
お気に入りに追加
382
あなたにおすすめの小説
BLが蔓延る異世界に転生したので大人しく僕もボーイズラブを楽しみます~愛されチートボーイは冒険者に溺愛される~
はるはう
BL
『童貞のまま死ぬかも』
気が付くと異世界へと転生してしまった大学生、奏人(かなと)。
目を開けるとそこは、男だらけのBL世界だった。
巨根の友人から夜這い未遂の年上医師まで、僕は今日もみんなと元気にS〇Xでこの世の窮地を救います!
果たして奏人は、この世界でなりたかったヒーローになれるのか?
※エロありの話には★マークがついています
悪役令息アナ゠ルゥに転生したので、婚約者を奴隷にします
三谷玲
BL
ドスケベBLゲーム『たまたま』という男がたまごを産む世界の悪役令息アナ゠ルゥ(もちろん産める男だ!)に転生した俺。主人公ひいては国を害したと断罪されたあげく没落男娼白目アヘ顔ボテ腹エンドを回避すべく、婚約者であるサンラーン王国王太子ペニ゠スゥを襲うことにした。なんでって?食べ放題の生チンがそこにあるから!ただ襲うだけのはずが、ペニ゠スゥが足コキに反応したことで、俺の中でなにかが目覚める…っ!
前世アナニー狂いの性欲旺盛主人公が転生した世界で婚約者の王太子を奴隷にして、なぜか世界が救われる話。
たまごが産める男と産めない男しかいない世界です。
このBLゲームは難易度ハードの糞ゲーです。
ムーンライトノベルズ他でも公開しています。
屈強冒険者のおっさんが自分に執着する美形名門貴族との結婚を反対してもらうために直訴する話
信号六
BL
屈強な冒険者が一夜の遊びのつもりでひっかけた美形青年に執着され追い回されます。どうしても逃げ切りたい屈強冒険者が助けを求めたのは……?
美形名門貴族青年×屈強男性受け。
以前Twitterで呟いた話の短編小説版です。
(ムーンライトノベルズ、pixivにも載せています)
異世界に転移したショタは森でスローライフ中
ミクリ21
BL
異世界に転移した小学生のヤマト。
ヤマトに一目惚れした森の主のハーメルンは、ヤマトを溺愛して求愛しての毎日です。
仲良しの二人のほのぼのストーリーです。
イケメンエルフ達とのセックスライフの為に僕行きます!
霧乃ふー 短編
BL
ファンタジーな異世界に転生した僕。
そしてファンタジーの世界で定番のエルフがエロエロなエロフだなんて話を聞いた僕はエルフ達に会いに行くことにした。
森に行き出会ったエルフ達は僕を見つけると……♡
ポメラニアン魔王
カム
BL
勇者に敗れた魔王様はポメラニアンになりました。
大学生と魔王様(ポメラニアン)のほのぼの生活がメインです。
のんびり更新。
視点や人称がバラバラでちょっと読みにくい部分もあるかもしれません。
表紙イラスト朔羽ゆき様よりいただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる