龍の調教師

でおりぼ

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第三話 マヂ無理。。。

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「ハリー! ハリー起きて!」

 あれ……まずい。気を失ってたのか。どれくらい寝てたんだ? それに……あのドラゴンは?

「起きたわ! よかったぁ……」

 ぐえっ。苦しい。
 そんなに強く抱き締めなくても俺は逃げないですよ……

「お、おい。そんなに強く抱き締めない方がいいんじゃないか?」

「あなたはもっとこの子の心配をして!」

「えぇ……」

 同情するぜ。パッパ。

 それにしても、さっきのあれは一体何だったんだ? 
 夢にしちゃ、リアルすぎた。
 見間違い……なのか?

 窓の外をもう一度見てみたが、あのドラゴンの姿は消えていた。

 母は心配そうに俺を見て言った。

「やっぱり治癒魔法かけてあげた方がいいんじゃないかしら」

「いや、大丈夫だろう。驚いて気を失ってただけだ」

 治癒魔法……普段なら鼻で笑うような事だが、さっきのを見せられちゃ、信じざるを得ない。

「うーん……」

 母は不服そうな顔をしたままだが、父は俺のことをそっと抱き上げた。

「ほら、ハリー。そこにいると危ないから、今日はもうベッドに行こうか」

 もし、さっきのが夢なんかじゃなく、現実のものだとするなら。

 ここは地球ではない、別の世界──
 
 異世界だ。



-----



 二歳になった。

 足腰がしっかりしてきて、歩くことが出来るようになり、普通に喋っててもおかしくない歳になった。

 異世界だとわかったがこの赤ん坊の体じゃ何もできない。いつもと変わらない平凡な毎日だった。

 昨日まではな。
 
 歩けるようになったのなら別だ。
 なにせドアが開けられるようになったからな。
 この家を探検し放題だぜ。
 
 俺はこの家の隅々まで見て回った。
 幾つかある部屋の中で一つだけ、面白そうな部屋を見つけた。

 高い本棚が部屋を囲んでおり、所狭しと本が詰め込まれている。

 おっ、こういうのだよこういうの。
 さてさて、何があんのかな。

 ワクワクしながら一冊の本を手に取り、開いてみる。

 ふむふむ、なるほど。
 ……読めん。何も分からん。

 魔法やドラゴンに胸を躍らせていたが、文字が読めなきゃどうにもならない。

 父に聞いてみるか?
 いや、こんな歳から本に興味を持ってたら変に思われるかもしれない。
 やめとこう。

 ……よし、何とか自分で頑張って読んでみるか。
 この体ならイケる気がする。
 まあ、わかんなかったら諦めればいいしな。
 とりあえずやってみよう。

 そう思い、本の解読に取り掛かった。



-----



 数日で読めるようになった。

 挿絵とかが多かったのと、やはり、日本語にかなり似ていたこともあり、何とか最後まで読み切った。

 本にはこの世界のことが載っている、いわばガイドブックのようなものだった。
 魔法や冒険者、魔物など、ワクワクする単語がいくつも書いてある。

 まさに異世界!って感じだ。
 興奮してきたぜ。

 異世界と言ったらまずは魔法だろ。
 どうやったら使えんのかな。
 とりあえずなんか叫んでみるか。

 そう思い外に手を向けて叫んだ。

「ファイアボール!」

 ……何も起きない。
 そういうもんじゃないのか。
 厨二病みたいで小っ恥ずかしいな。

 ……うーんでも使い方が分からないんじゃどうしようもないよなぁ。
 どうしようか……

 あの書斎で魔法についての本がないか探してみるか。
 あそこなら何かあるかもしれん。

 そう思い、あの部屋に行った。

 椅子を使い、それらしき本がないか探していると──

『攻撃魔法 初級~上級編』……多分これだな。

 ページをめくりながら情報を整理していこう。

 まず、魔法は大きく分けて二種類ある。
 攻撃魔法か防御魔法、この二つだ。

 どんなものかというと言葉の意味そのままで、攻撃するか守るかだ。

 治癒魔法や召喚魔法もあるらしいが、それには魔法陣やスクロールが必要になってくるので、あまりメジャーではないらしい。

 ……思ったより不便だ。
 魔法って言ったら空飛んだり、物浮かしたりするもんじゃないのか?
 あんまり日用的ではないな。

 次に、魔法を使うには詠唱や魔法陣が必要らしい。

 さっきも言ったが、治癒魔法と召喚魔法は
 魔法陣やスクロールが必須。それ以外だと、詠唱か魔法陣のどっちかで使うことが出来るそうだ。

 だが、ごく稀に無詠唱で魔法を使える者もいるらしい。

 そういうのは『天から授かりし者ケイルムキーパー』と大昔の人は呼んでいて、
 今は略されて『天者キーパー』と呼ばれるらしい。

 サッカーかよ。
 まあ存在自体はかっこいいから名前には目を瞑ろう。

 次、魔法を使うには魔力を消費する。

 まあこれはよくあるやつだな。
 いわばMPと同じだろう。
 
 体内の魔力を消費し切ると気を失ってしまうらしい。
 そのため、魔法を使うときには必ず誰か一人を隣に置いとかなきゃ危険だそうだ。

 この家の中で気を失っても特に問題はないだろう。
 俺が使う時は一人でいいや。

 最後に、魔法をうまく扱えるかどうかは生まれつきの才能で決まる。

 ……ちょっと待って?
 ここにきて俺が使えない可能性が出てきたんですけど。

 もぅマヂ無理。。。転生しょ。。。

 いやいや諦めるにはまだ早い。使ってもいないんだから。
 弱音を吐くのは俺に才能があるのか確認してからだ。

 ちなみに、この情報は最近になってわかったらしい。
 以前までは魔力量が生まれつき決まると言われていたが、アレス=ディスタスという人物が、生まれたときに決まるのは魔法の才能で、魔力量は鍛えれば増える、という事を世間に公表したそうだ。

 それにより、魔道具や魔法陣の研究が以前よりも盛んに行われることになったらしい。
 魔道具は魔力を流すだけで誰でも使えるからだ。

 こんなとこかな。
 
 よし、まずは試してみるか。

 そう思い、片手を肩の高さまであげたその時。

「ハリー? どこにいるの? 出てきて?」

 まずい。母が探しにきた。
 辺りがすっかり暗くなってしまっている。
 夢中になってて気づかなかった。
 
 今日はこのくらいにしとこう。
 続きは明日で。

 本を元の位置にもどし、母のもとへ向かった。
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