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震えて声が出ない。そんな様子に、
「…」
太羽は罰が悪そうにその手を離した。不甲斐なさに唇を噛む。手をあげるなんて、反則だ。最低な奴だ。ロクでもないやつだ。心の中で思いっきり罵るのに、声に出せない、やり返せない自分。いい年をして、そんな力の差があることが悔しくて、涙が出そうだった。物理的なものだけではなく、今の椋にはできなかった。太羽は婚約者なのだ。医者の父親から告げられた突然の提案は、18になる前の歳の椋に世襲のある所へ息子を嫁がせるというとんでもないものだった。さすが医者というか、性別も何もかも飛び越えているところが何を考えているか分からない。
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