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線香をあげ、墓前で手を合わせる頃には日が暮れていた。場所の手前遠慮したが、蒼護が森の方へと走って行き鬼ごっこが始まり年甲斐もなく呆れる前に、何だか追いかけないとと安春の本能が教えた。
「ねえ、また遊ぼうね」
帰り際、危ないからと安春の家まで蒼護が送り届けることになった。繋いだ手の先の蒼護を見上げると、辺りの暗くなった道の街灯に照らされて、元々白い顔が透き通りそうに見えてギョッとするのと、今日の一日がぽっかり心に穴を開けそうで寂しくなり、安春が慌てて言う。
「またくるから!」
すると安春の予想に反して、蒼護は間髪入れずに小さく首を振る。
「明日から大学があるんだ」
「そう…なんだ。じゃあ次は?」
「んー…いつかな、神様が許してくれたらかな」
蒼護が答えにくそうに笑いながら言う。安春はがっくりと肩を落とす。
「でもまたくるからね!ぜったい!」
約束、と安春は真剣な顔をして大きな声で言った。その時、
「安春!」
と声がして、安春が目の前を振り返ると安春の母が立っていた。
「お母さん」
どうやら仕事帰りに行き合ったらしく、安春はバツが悪そうに母の下へ行く。
「こんな遅くに外に出歩いてるなんて!」
安春の母は早歩きで近づくと、手を繋いでさっさと帰ろうとする。
「あっ、お母さん、この人大学生のそーごってお兄ちゃん!」
安春が振り返って見ると、そこには誰もいなかった。
「…?」
「何言ってるの?一人で危ないでしょって言ってるのよ」
「…」
安春は訳が分からずに前を行く母の後に続く。
線香をあげ、墓前で手を合わせる頃には日が暮れていた。場所の手前遠慮したが、蒼護が森の方へと走って行き鬼ごっこが始まり年甲斐もなく呆れる前に、何だか追いかけないとと安春の本能が教えた。
「ねえ、また遊ぼうね」
帰り際、危ないからと安春の家まで蒼護が送り届けることになった。繋いだ手の先の蒼護を見上げると、辺りの暗くなった道の街灯に照らされて、元々白い顔が透き通りそうに見えてギョッとするのと、今日の一日がぽっかり心に穴を開けそうで寂しくなり、安春が慌てて言う。
「またくるから!」
すると安春の予想に反して、蒼護は間髪入れずに小さく首を振る。
「明日から大学があるんだ」
「そう…なんだ。じゃあ次は?」
「んー…いつかな、神様が許してくれたらかな」
蒼護が答えにくそうに笑いながら言う。安春はがっくりと肩を落とす。
「でもまたくるからね!ぜったい!」
約束、と安春は真剣な顔をして大きな声で言った。その時、
「安春!」
と声がして、安春が目の前を振り返ると安春の母が立っていた。
「お母さん」
どうやら仕事帰りに行き合ったらしく、安春はバツが悪そうに母の下へ行く。
「こんな遅くに外に出歩いてるなんて!」
安春の母は早歩きで近づくと、手を繋いでさっさと帰ろうとする。
「あっ、お母さん、この人大学生のそーごってお兄ちゃん!」
安春が振り返って見ると、そこには誰もいなかった。
「…?」
「何言ってるの?一人で危ないでしょって言ってるのよ」
「…」
安春は訳が分からずに前を行く母の後に続く。
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