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第一章

第2話 はじめてのおでかけ

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「まおーしゃ!まおーしゃ!、おーきーて!」

   朝7時  まだ、寝ている俺の真横で、元気な声が響く。
   普段なら、この時間には余裕で起きているのに、昨日の疲れが取れてないらしく、起きれない。それもそうか。

   ドシッ!

「まおーしゃ!おぉーきぃーてぇー!!」

   俺のお腹に衝撃走り、目が覚め、お腹を見た。そこにはヨツバがちょこんと座っていた。幾ら小さな子供でも俺が細いからか、吐きそうてか、折れそう、そんな衝撃で起きた。

「まおーしゃ!おはよ!」
「うん、おはよ、よく寝た?」
「うん!」

   ヨツバは、昨日から元気ではあったが、寝たからかな、その100倍元気にくるっと回ったり、ぴょんと跳ねたりしている。

   グゥ~

「おなかしゅいたみたい、」
「俺も空いてるみたい 、朝ごはん行こっか 」
  (2人同時にお腹がなるとか、幸せすぎる )

   キッチンに着き、まずは冷蔵庫を開ける。
   やっぱりヨツバが食べれる物は何もない。俺は幼い時、余りにも貧しすぎてそこら辺にいた吸血鬼を食べてしまった時から、吸血鬼や悪魔、狼男のような魔物と呼ばれる生き物や、此処魔界の育ったものしか食べれなくなった。食べても死にはしないけど、1回だけショートケーキを食べた時に倒れてから、まったく食べなくなった。
   そんな感じなので、材料を買いに行って作るという手もあるが、ヨツバも結構お腹が空いているようなので、外食に行くことにした。

「まおーしゃ、まだ?おなかすいたぁ!」
「ヨツバ、お出かけだよ 」
「お出かけ!行くぅ!」

   お出かけに対し、わくわくしてニコニコしながら、鼻歌を歌うヨツバの手を握り魔王城の外に出た。
   魔王城の外に出ると、紫の花々に囲まれた綺麗な石造りの道が続いてるので基本的に安全だけど、たまに魔物が迷い込む。基本襲って来ないから放置だけど、今はヨツバがいるので、追い返すつもり、まぁ出ないのが1番だけど。

「そーいえばさ、ヨツバ食べたいものはある?何でもいいよ 」
「たべたいもの?う~ん、えっーと、」
  (すごい悩んでるみたい、この辺お店とかないし、たくさん悩んでいいよ)
「あ!くえーぷたべたい!」
「ぼくね、いつもおねーさんたちがたべてるとこみて、たべたいっておもってたの!いーい?」

   ヨツバは思いつくと、俺の方を期待するようなキラキラな目で向いた。
  
「良いに決まってるじゃん!そんなかわいいもの頼まれて断る訳ないでしょ 」
「くえーぷたのしみだなぁ!るんるん!」
  (はぁ、やっぱりかわいいなぁ、わんこみたい )

   俺とヨツバは、魔王城の城下町の商店街もあるが、そっちは怖い魔族や魔物がうじゃうじゃいて、中には人間を食べる者もいる。俺が倒したり、食べたりする事もできるが。
   でも、それだと、ヨツバに怖い所を見せてしまうかもしれないし、過激なので教育にも悪ぃ。それに、魔族や魔物が急に死ぬのも可哀想だし。
   俺は『理想』の優しい魔王でありたいから。
   そんな事もあり、人間界にある東京の渋谷に来た。
   こっちには、怖い魔族も魔物もいなくて、安全っていうのが主な理由。
   ただ、ヨツバが人混みでクラクラし始めているので、そこを何とかするために、早めにクレープ屋に入った。

「ヨツバ、何たべる?」

   パステルカラーのハートや星が散りばめられたいかにも、可愛いメニューを見る。

「ばななちょこ?もおいしそうだし、すとろべりーちょこもたべてみたい!あ、これ!こいぬさんくれーぷ!これにする!」
「まおーしゃは、なににするの?」
「俺はいいよ、」

   その後、カウンターに行き、ヨツバの分のクレープに加え、久しぶりにホットコーヒーも頼んだ。体調を崩してツラい思いをするぐらい分かってるのに、意思が弱いって実感する。食べれない、飲めないのに口にしようとして、また口にする。ほんとバカ。
   体調を崩して、モニウに看病させるかもしれない。もしかすると、ヨツバに心配させて、看病させてしまうかもしれない。
   それは絶対に嫌だ。まだ、まともにヨツバをお世話出来てないのに、ヨツバに看病させるのは、兄兼親になった俺の下らないプライドが傷つく。
   でも、もうどうにもならない、

「ヨツバ、ごめん 」
「ん?なぁに?まおーしゃ 」
「え、あ、いや、!何でもないよ~!」

   近い未来、起こるかもしれない事で、 小声で謝ってしまい、きょとんとしているヨツバにとりあえず愛想笑いしている間にヨツバのクレープと俺のホットコーヒーが来た。

「くれーぷおいしぃ!る~んるんっ!」

   可愛い。こんなに喜んでくれるなら毎日クレープにしたくなるよ。

「ね、!まおーしゃもたべよ?ね?ね?!」

   クレープを差し出して来た。
   さっき頼んでしまったホットコーヒーでさえ、耐えようと汗がびっしょりになっている時にズルすぎる。ヨツバごと食べてしまいたいぐらい可愛い、いやいや、今これを食べたら、倒れてヨツバに迷惑をかけるかもしれない。
   でも、ヨツバに事情を話して断るのもツラい。
   昨日まで、ほぼ何も知らなかったヨツバに、この事を説明するのは難しい。アレルギーって言えばいいのかもしれないけど、俺はバカだから、俺には食へると倒れてしまう物があるとしか説明できない。

「まおーしゃ、どーしたの?」
「え、?あ、顔にでてた?」
「まおーしゃ、かちかちしてたの、」
「そう?それならごめんねぇ~ 」
「ねね!まおーしゃ、たべよ、たべよ!」

   ヨツバは、クレープをちぎり、一口サイズにして渡してくれた。ここまでされたら、食べるしかないでしょ、ショートケーキで倒れたのは、偶々だったのかもしれない。

   パクッ

「うわっ!うま、?!ふつーにもっと食べたいんだけど?!」
  
   これは俺のじゃない、ヨツバのクレープ、なのに何で『もっと食べたい 』とか言っちゃったんだろう。

「まおーしゃ?、もっとたべよ?」
「こほん、ヨツバ、俺にくれなくていい、いいんだよ、もっと食べてね 」
「これ、おいしーからいっしょにたべてほしいの ~ 」
「いいから!いいからね!俺は食べたいなんて思ってないからね!」


   ひと息つこうとホットコーヒーを飲んだ。

「あつっ!?いった!!」

   やけどした。
   ヨツバが、また不安そうな目で見つめ、俺の口元にクレープを持ってきた。

「まおーしゃ?」
「たべよ、?」

   ヨツバの優しくて、可愛い目線とおいしいクレープ、さっき食べて今の所大丈夫。コーヒーのやけどは関係ない。
   しかも、俺はもうクレープを食べてる。 それならヨツバが食べるべき。たぶん。

「心配しないで、ヨツバはクレープ食べな、」
「んー!!まおーしゃ、やなの?!」
「別に、嫌ではないけど、これはヨツバのだから、」
「ん?これ、よつばとまおーしゃのだよ?」
「くれーぷたべて、にこにこするのたのしかったの!」
「だから、まおーしゃも、たべて?」

   パクッ!

「うわぁ…やっぱ上手すぎ、これとろけそう、 」   

   俺は、またクレープを食べた。
   これはしょうが無い事。ここまで言われたら、きっと誰だって食べちゃうはず。 しかも、隣には、クレープを笑顔で頬張るヨツバを親バカになりながら見守っている間にクレープを食べ終わり、袖でクリームやチョコを拭いているため、口元をハンカチで拭ってあげた。

「ヨツバ、おひげとってあげる 」
「ん、?」
「おひげなくなったよ 」

   ヨツバはほっぺたを触りながら、おどおどしている。おひげって分かりにくかったかな?

「ヨツバ、おひげって知ってる?」
「さっきのふわふわのしろいの?」
「そ、それもそうだね、」
「あ、あのおじさんの口んとこにある黒いのだよ 」

   とりあえず、近くの席にいたおじさんを小さく指差してヨツバに説明したけれど、はっきり言って失礼すぎた。

「ヨツバは、俺みたいに指さしちゃダメだからね 」
「ん、?わかった!」
  (素直なのも、 可愛いし良い子すぎる)
「あ!そうだ!お買い物にでも、行かない?」
「おかいもの?いきたい!」
「まおーしゃとおでかけたのしくて、すきなの!」
「じゃあ行こっか 」

   俺とヨツバは、クレープ屋を出て、洋服屋やおもちゃ屋のある道へと、向かった。

「おでかけたのしいの~!るんるん!」
   (はぁ、さすがヨツバ好きすぎる、大好き。可愛いなぁ)

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