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三章 龍の花嫁

外伝 聖なる夜に

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「マーガレット様、大変です! 雪が降ってきました!」

 いやいやいや、そんな嘘には引っかかりませんよシルフィ。夏も終わりかけとはいえ、まだまだ雪が降るなんてことが……

「ぇぇえええ、雪、降ってます!」

 窓の外を見ると本当に雪が降ってます。季節外れにもほどがありません?

 はっ。

 降るはずのない季節に雪が降る。その現象は聞いたことがあります。

「まさか……」
「やっぱり、マーガレット様もご存知ですか? 伝説の魔物……」
「「サタンクロノス!」」

 声が揃いました。

 やっぱり、その魔物のお話を思い浮かべますよね!

 サタンクロノス、子供には欲しいものをプレゼントしますが、その姿を見ようとした大人や、悪人には容赦の無い攻撃をしてくるとか。

 その姿は返り血に塗れてるなんて話も聞いたことがあります。

「本当にいるんでしょうか?」
「いるんじゃないですか? 実際に雪が降ってますし……ほんのり魔力が混ざってるんですよねこの雪」

 ……ちょっとした好奇心で、魔力の元を辿ったりしたら怒られますかね。

 姿を見ようとした大人には容赦なく攻撃してくるって聞きますしね。

 やめておきましょう。

「積もって困るということは無いでしょうから、みんなにはできるだけ家で大人しくしているよう伝えてください。特に大人、もっといえばヤニムとかマトン君とかには入念にいっておいてください」

 あの二人は好奇心が抑えられなくて、サタンクロノスを見に行こうとする可能性が高いです。

「冷たくなった2人を見つけたくはないですから」

 子供たちにはいい子にしているように伝えましょうか。

 私もいい子にしてるので、もしかしたらプレゼントがもらえるかもしれません!

 なんなら、まだ子供判定の年齢……は無理がありますか?

「マーガレット様、追加のお仕事です」

 はぁ、いやなプレゼントが来ました。いい子にしてたら私もプレゼントが貰えるかもしれないので、頑張ります。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「やっと終わりました……」

 だらだらやってたせいですごく時間がかかってしまいました。アダムには遅くなると伝えて起きましたが、もう夜も遅いです。

「はー、息が白いですね」

 うぅ、外は寒いです。雪のせいでとても静かですし、いつものノアの国とは様子が違います。

 ……様子が違うというか、あまりにも静かすぎる気がしてきました。

 家のあかりも、人の声も聞こえません。ただ、なぜか不気味な感じでは無いですね。

 何事でしょう?

 ……ラン

 ん? なんかいま音がしたような。

 やっぱり、シャランシャランという音が聞こえます。上から聞こえるようなーー。

 上を見上げた瞬間、背後からドスンという音と、何かが動く音が聞こえます。

「……サタン、クロノス?」

 真っ赤な服に、巨大な体。馬車がわりに使っているのはドラゴンの頭で、馬とて使っているのは……ベヒーモスですか?

 え、待ってください。サタンクロノスの姿を見た大人ってたしか攻撃されるのでは?!

 サタンクロノスが手を伸ばします。まずいです!   あれ? 魔法が使えない?!

 サタンクロノスの大きな手が、私の頭の上に乗りました。

 ひぃ、潰さないでください!

 ……あれ? 潰されるどころか撫でられてます? 

「メリー……クリスマス」

 地獄の底から来たんですかっていう声で謎の言葉を呟かれました。

 そして、何か渡してきます。

 まさか、プレゼントですか?!

「あけてもいいんですか?」
「メリー、クリスマス」

 よく分かりませんが多分許可を貰えたはずです。

 開けてみましょう……うわ! なんかすごい光が! 目が! 目がやられます! 

 うわぁぁぁ


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「うわぁ!」
「んー、お母さん? どうしたの?」

 あれ? アダム? なんで隣で寝てるんですか。さっきまでサタンクロノスが……あれ? まさか夢?!

 プレゼントが欲しすぎて夢にまで見たってことですか私は……ちょっと恥ずかしいですね。

「あ! お母さん! 見てこれ!」

 え? なんですかアダム。あ! それは!

 アダムの枕元には赤い包装がされたプレゼントが置いてありました。

 ほ、本当にいるんですねサタンクロノス。私が夢の中で貰ったプレゼントも同じような見た目でした。

「やったー! プレゼントもらえた!」
「アダムがいい子にしていたからですよ」

 よしよし、偉いですね。

「お母さんお母さん、もう一個あるよ?」
「へ?」

 もう一個? あ、ほんとです。私の枕元にもあります! 

「まさか貰えるとは。中身はなんでしょう?」
「一緒に開けよ!」
 
 そうですね。開けましょうか。

「「せーの」」

 ぱかっとプレゼントの箱を開けると、そこには綺麗な髪飾りがありました。

 ……綺麗です。

「見てお母さん! 僕には魔導書だよ!」
「よかったですね、アダム」

 禁断の、とかいう文字がタイトルに書いてある気がしましたが、見なかったことにしましょう。

 アダムはさっそく読むみたいですし、私も起きて髪飾りをつけてみましょうか。

 うん、我ながら似合ってます。素敵です。

 ……ふと、窓を見ていると、昨日私が夢の中でサタンクロノスと会った場所を思い出しました。

 たしかあの辺でしたね。あの雪がぐちゃっとなってる辺り……まさか、夢じゃなかったんですか?

 サタンクロノスが立っていた場所、たしかに足跡があります。

「……不思議なこともあるもんですね」

 ここは御伽の国ですから、不思議なことも案外あっさりと起きてしまうのかも知れません。

 なんにせよ、素敵なプレゼントをありがとうございます、サタンクロノス。

 また来てくださいね。次はノアの素敵な料理をご馳走しますよ。
 
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