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第1章 復讐の始まり
第12話 報せ
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□アルムスフィア聖王国 ウォーデン城:《死霊魔術師》一ノ宮和樹
今、とある1つの報せがこのウォーデン城を騒がせていた。俺は書庫に引きこもっていたため、騒ぎに気づいたのは幾らか後のだった。書庫から出るといつも城で働く人達が忙しそうに行き交っているが、今はいつもよりもその人通りは更に多く見える。気になった俺は通りがかりの疲弊して顔色の悪い青年を呼び止めた。
「やたらと城内が騒がしいけど、何かあったんだ?」
「国境付近の獣の討伐へ向かった《聖騎士団長》のアルデラ様や《勇者》である秀一様方が亡くなられたとの報せが届いたんだよ。まさかあのアルデラ様達がやられるとは思ってもなかったよ。とても強くて優しい憧れの人だったんだけどね」
話を聞いて俺はそれを質の悪い冗談だと思い、おもしろおかしく笑う。だって秀一達が死んだなんてそんなことがあるはずないと信じている。
「まったく。質の悪い冗談はやめてくれよ。あいつらが死ぬわけないじゃないか。みんなは《勇者》とそのパーティーなんだぜ」
「その勇者様達がやられたって言ってるのに信じたくないならいいけどさ」
青年はそう言葉を残すとその場を力なく歩いて去って行った。そして気づけば人が行き交っていた廊下も俺以外は誰もいなくなっていた。あの秀一達が死んだなんてそんなことがあるはずがないと俺は自分に言い聞かせながら書庫へと戻って行った。
その日の夜、ティファニーの部屋にてティファニーといつものように喋りながら夕食を食べているときに、ふと昼間の青年の話が結局気になってしまいティファニーとの会話中もそのことが頭から離れず、思い切ってティファニーに話してみることにした。
「今日城内でアルデラさんや秀一達が亡くなったとかいう質の悪い冗談を聞いたんだが、いったい何だったんだろうな?」
それを聞いたティファニーは驚いたように目を見開く。そして顔に手を当てて、少しの間考える素振りを見せた後に大笑いし始めた。
「アハハハハハハ! まさかここのところ何故こんなことになっていても全く反応がないのかと考えていましたが、そういうことでしたのね」
ティファニーは笑いながら出てくる涙を拭う。俺はその様子に妙に怒りが湧いてきたためティファニーを思い切り睨み付ける。
「どういうことだ。説明してくれ」
少し暗めの灯りの点いたこの部屋でティファニーはその中を舞い踊り始める。そして最後に部屋のベッドに座ると残虐な笑みを浮かべた。
「まず結論から言うとアルデラを含めて全員の死亡は確定ですわ」
ティファニーは冷たく重い声で俺にそれを告げる。最初は何を言っているのかわからなかった。ゆっくりと脳内でティファニーの言葉を繰り返し再生してその言葉の意味を理解した瞬間、俺は顔から血の気が引くのを感じた。そして全身に力が入らなくなりその場に崩れ落ちる。だがティファニーの言葉を聞いた今でも俺は諦めきれなかった。
「なんで確定だって言えるんだ?」
「それはアルデラ達が戦っていたレイメイの丘にて大きな魔力の波動が観測された後、討伐対象だったグレートマンムートが去っていくのが確認されており、更に緊急時の合流地点に誰もたどり着いていなかったからですわ」
嫌でもそれは秀一達が全滅したことを指すのだと分かってしまった。そして一度理解してしまったものはどう頑張ってもそれを嘘だと自分に言い聞かせるのは無理があるとわかっていた。
「そうか。だが俺は絶対にそんなものは認めない。絶対にみんなは生きているに決まっている」
「ここにきてそんな子供のようなことを言うのですね。いい加減に現実を受け入れればよろしいのに」
ティファニーはため息をつくと呆れた顔で俺を見る。実際にはティファニーの言うことも理解しているつもりだ。現実的に考えればみんなの生き残っている確率なんて0に等しいことも。だが俺は意地でもそんな現実は認めないし認めたくない。
「はぁ。今日は何だか興が冷めてしまいましたわ。今夜はもういいですわ。帰ってくださいな」
「あ、あぁ」
この後また暴行を加えられるものと思っていたのだが、よくわからないまま追い出されてしまった。俺はティファニーの部屋の扉を見つめる。
「絶対に認めさせてやるからな」
俺はそう呟くと夜になり薄暗くなった廊下を歩いて、その場から立ち去った。自分の部屋に戻った俺は部屋の扉に寄りかかると、拳を強く握りしめる。
「俺がみんなの死体をこの目で確認するまでみんなが死んだなんて絶対認めないからな」
そして俺はとある計画を練り始めた。
今、とある1つの報せがこのウォーデン城を騒がせていた。俺は書庫に引きこもっていたため、騒ぎに気づいたのは幾らか後のだった。書庫から出るといつも城で働く人達が忙しそうに行き交っているが、今はいつもよりもその人通りは更に多く見える。気になった俺は通りがかりの疲弊して顔色の悪い青年を呼び止めた。
「やたらと城内が騒がしいけど、何かあったんだ?」
「国境付近の獣の討伐へ向かった《聖騎士団長》のアルデラ様や《勇者》である秀一様方が亡くなられたとの報せが届いたんだよ。まさかあのアルデラ様達がやられるとは思ってもなかったよ。とても強くて優しい憧れの人だったんだけどね」
話を聞いて俺はそれを質の悪い冗談だと思い、おもしろおかしく笑う。だって秀一達が死んだなんてそんなことがあるはずないと信じている。
「まったく。質の悪い冗談はやめてくれよ。あいつらが死ぬわけないじゃないか。みんなは《勇者》とそのパーティーなんだぜ」
「その勇者様達がやられたって言ってるのに信じたくないならいいけどさ」
青年はそう言葉を残すとその場を力なく歩いて去って行った。そして気づけば人が行き交っていた廊下も俺以外は誰もいなくなっていた。あの秀一達が死んだなんてそんなことがあるはずがないと俺は自分に言い聞かせながら書庫へと戻って行った。
その日の夜、ティファニーの部屋にてティファニーといつものように喋りながら夕食を食べているときに、ふと昼間の青年の話が結局気になってしまいティファニーとの会話中もそのことが頭から離れず、思い切ってティファニーに話してみることにした。
「今日城内でアルデラさんや秀一達が亡くなったとかいう質の悪い冗談を聞いたんだが、いったい何だったんだろうな?」
それを聞いたティファニーは驚いたように目を見開く。そして顔に手を当てて、少しの間考える素振りを見せた後に大笑いし始めた。
「アハハハハハハ! まさかここのところ何故こんなことになっていても全く反応がないのかと考えていましたが、そういうことでしたのね」
ティファニーは笑いながら出てくる涙を拭う。俺はその様子に妙に怒りが湧いてきたためティファニーを思い切り睨み付ける。
「どういうことだ。説明してくれ」
少し暗めの灯りの点いたこの部屋でティファニーはその中を舞い踊り始める。そして最後に部屋のベッドに座ると残虐な笑みを浮かべた。
「まず結論から言うとアルデラを含めて全員の死亡は確定ですわ」
ティファニーは冷たく重い声で俺にそれを告げる。最初は何を言っているのかわからなかった。ゆっくりと脳内でティファニーの言葉を繰り返し再生してその言葉の意味を理解した瞬間、俺は顔から血の気が引くのを感じた。そして全身に力が入らなくなりその場に崩れ落ちる。だがティファニーの言葉を聞いた今でも俺は諦めきれなかった。
「なんで確定だって言えるんだ?」
「それはアルデラ達が戦っていたレイメイの丘にて大きな魔力の波動が観測された後、討伐対象だったグレートマンムートが去っていくのが確認されており、更に緊急時の合流地点に誰もたどり着いていなかったからですわ」
嫌でもそれは秀一達が全滅したことを指すのだと分かってしまった。そして一度理解してしまったものはどう頑張ってもそれを嘘だと自分に言い聞かせるのは無理があるとわかっていた。
「そうか。だが俺は絶対にそんなものは認めない。絶対にみんなは生きているに決まっている」
「ここにきてそんな子供のようなことを言うのですね。いい加減に現実を受け入れればよろしいのに」
ティファニーはため息をつくと呆れた顔で俺を見る。実際にはティファニーの言うことも理解しているつもりだ。現実的に考えればみんなの生き残っている確率なんて0に等しいことも。だが俺は意地でもそんな現実は認めないし認めたくない。
「はぁ。今日は何だか興が冷めてしまいましたわ。今夜はもういいですわ。帰ってくださいな」
「あ、あぁ」
この後また暴行を加えられるものと思っていたのだが、よくわからないまま追い出されてしまった。俺はティファニーの部屋の扉を見つめる。
「絶対に認めさせてやるからな」
俺はそう呟くと夜になり薄暗くなった廊下を歩いて、その場から立ち去った。自分の部屋に戻った俺は部屋の扉に寄りかかると、拳を強く握りしめる。
「俺がみんなの死体をこの目で確認するまでみんなが死んだなんて絶対認めないからな」
そして俺はとある計画を練り始めた。
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