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12話

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 授業終了後、すぐクロードの席を見ると……良かった。まだ居た。急いで帰り支度をする事、1分……!!もう居ない。流石、暗殺一家の一員だ。って関心してる場合じゃない!急いで追いかけなきゃ。私は走って校門へ向かった。

 校門を出てすぐにクロードを捕まえる事が出来た。

「話があるの」

 その告げると困ったような悲しいそうな表情を見せた。

「1度でいい、付き合って欲しいの……お願い」

 懇願すると頷いてくれた。

 ノヴァ家の馬車で一緒に二人で乗り込み、場所を変えて話す事にした。ヘルブラム家の御者に送りは要らないと伝えなくていいのかと尋ねると、そんなの無いと答えた。
 その回答に目を剥いた。何故ならどんな貴族でもほぼ馬車を使うのが一般的だからだ。ヘルブラム家は中堅貴族で財力を考えても用意出来ない筈がないからである。

 今度は何処かでお茶をしながら話さないかと提案すると、お金が無いと言って、消え入りそうなくらい縮こまるクロード。
 クロードの冷遇具合がわかってなんか泣けそう。ついごめんと言いそうになったけど、謝ったりしたら余計惨めにさせると思って堪えた。

「良かった!じゃあ家に招待するわ。本当は人目を気にしないで、ゆっくり腹を据えて話し合いたかったからちょうど良いわね。クロードがお弁当作ってきてくれてたから、私のおすすめのお菓子を用意するわね」

 クロードが気にしない様にあっけらかんと笑って言った。

「ほら、また俯いてオドオドしてる~。笑って!クロードの笑った顔見ると嬉しいから」

 歪ながら口角を上げて顔を歪ましたクロードを優しく見守った。




 ノヴァ邸の中庭にて、クロードと向かい合っているが目は合わせ貰えていない。

 何から話せば良いんだろう……やばい、手汗かいてきた。もし嫌いだとかウザいとか言われたらどうしよう、そう思えば思うほどクロードの胸懐きょうかいを尋ねる言葉が重くて喉から出てこない。

「こ、これ最近ハマっているの。レモン風味のバームクーヘンにアイシングがかかっていて、すっごく美味しいの。ただ私がアイシングのお菓子が好きなだけなんだけどね」

 クロードは一口食べて美味しいですと言った。
 意味の無い会話が#__くう__#を彷徨う。
 再び沈黙が流れたが、それを断ち切ったのはクロードだ。

「用が無いなら帰らないと行けません……」

「あの~……ど、どうして避けているの?私、何かしたかな。だったら教えて欲しい…………」

「……嫌なんです」

「何が?私が!?嫌いなら……ハッキリ言ってよ」

「エリカ様の隣は居心地が悪いんです」

 がび~ん!

「感じ悪いって事なのかな」

 偉そうに強引だったから?はっ!!それとも、悪女令嬢オーラでも出ているのかな。

「感じは悪くないです。僕はずっと一人の世界で……自分で完結する世界で生きてきました。でも貴方といると期待する自分がいるんです。明日のお昼は何を作ろうかな、エリカ様喜んでくれるかなって。こうやってずっと一緒にご飯食べられたらいいなって……そうやって期待する自分が嫌なんです。でもきっと僕なんか本当は必要じゃなくて…………要らないって言われるんじゃ無いかと………………」

 彼は唇を噛んで俯きながら、訥々と語った。

 ゲーム内で家族に使えない、要らないって言われていたことを思い出した。彼の闇は思ってたより深いかもしれない。

「ごめん、でもずっと一緒になんて調子良いこと言えない。でも明日もクロードと一緒にご飯食べたいよ。……私には誰も居ないの。一人は寂しくて心が千切れそうなのをいつも必死で繋ぎ止めてる。それが一時いっときの事でも一緒に居たいと思っちゃだめかな。私にとってクロードは必要だよ。でさ、大人になって再会した時にお互い元気にやってくる事を報告して、昔話に花を咲かせるの。きっと今日の事も2人の大切な思い出になるよ」

 そんな未来が来ればいい。

「でもエリカ様……僕みたいな欠陥品と一緒に居たら、エリカ様の価値が下がります。僕より相応しい人が居ますよ」

みんなノヴァ家の甘い汁を啜りに来る人たちが大半よ。ご機嫌取って誰も私自身を見てくれない。でもクロードはどんな人間か見てくれたのではないの?その上一緒にいてくれたんじゃないの?」

「――――それともノヴァ家目当てだった?」

「違います!僕は最初は美しく気丈に貴方を僕の世界舞い降りた女神かと思いました。でも貴方を知っていく度に完璧じゃないエリカ様が一生懸命頑張ってる姿を助けたい今は思ってます」

「じゃぁ側に居ないと助けられないじゃない。あと女神とか恥ずかしいから……」

 熱くなった頬を手で扇ぐ。

「今は女神とか思ってません……」

「…………」

 それも切ない気がする。いやわかってるよ、女神とか柄じゃないってね。でも恥ずかしいと言いつつも嬉しかったりね、あるよね……

「――――そのままのエリカ様がいいんです」

「私もクロードらしくいればいい。じゃぁ明日も何時もの所でお昼ご飯食べよ、待ってるから……あぁ、あとクロードは欠陥品じゃないよ。誰かに言われたとしてもそんな物みたいな言い方しちゃ絶対ダメ! わかったの」

 クロードはハニカミながら頷いた。

 クロードはかわいいな。不遇な境遇にも負けずに素直でクロードこそ天使だよ。私はクロードが笑って過ごせる未来にしようと決心した。




 昼休みいつものベンチでお弁当。隣にはクロード。いつもの中庭が明るい。そして頬が緩みっぱなしの私。

「今日は天気が良くて、ご飯が美味しいね」

 私が笑いかけると、少し目を伏せた後、再び私を見て恥ずかしそうに笑うクロード。こんなに穏やかな日が毎日続けばいいのに……こういう所に幸せって在ると思う。

「そういえばもうすぐ剣術トーナメントだよね。クロードは出るの? 」

 もちろん乙女ゲームのイベントである。クリフとジークが決勝で対決するんだけど……勝ったのはどっちだっけ?まぁいっか。

「僕は出ません」

 人を手にかける事が出来ないだけで、殺さない前提なら身のこなしは一流なのにな。目立って顔でも覚えられたら、諜報活動に支障がでるか。

「そっか、じゃあ一緒に見に行きましょう」

 自分の剣術の参考になるかも。最近、少しステップアップして型を練習している。この身体は筋肉付きにくく、最初はロングソードを使ってたんだけど、軽いレイピアを今は使ってる。そういえば、帝国軍でもシステマみたいな体術があるらしい。ずっと剣帯するわけにいかないし、いざというときの為、お祖父様様に言って今度教えて貰おう。
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