76 / 82
69話 アンネの仕業
しおりを挟む
「こらっなにしてくれたの!?」
「あれは超貴重なチョコレートなんだよ。課金アイテムで、これを食べると好感度が低くてもエッチに持ち込めるすっごい効果の媚薬で発情してんじゃないかってぐらい勢い……ぐえっ」
掴んでいたアンネの襟を締め上げた。
「ひどいよ……」
言葉も無い……。
「全部食べた?」
「3分の1ぐらい……ってそんなのどうでもいいじゃない!!」
「なんだぁ、24時間イキまくりマラソンにはならなかったんだね。すっごく気持ちいいのにもったいなっ!」
「どうでもいいよ、そんなの!アリスに合わせる顔がないじゃない!」
「なんで?」
「なんでって、あなた貞操観念どうなってるの?」
「この世界では、複数も有りでしょ。いいじゃん、いいじゃん3P……乙女の夢だよね」
--コイツ……マジで頭ぶっ飛んでる。そんな乙女がいるか!
アンネは、さらに腹黒系激甘アリスフォードと筋肉ムキムキの人当たりの良いワンコ系お兄さんなんてウラヤマなどと言っている。
「私はアリスが……好きなの。添い遂げようとおもってるんだから……」
例えばチョコレートのせいであっても許してくれるわけ無い。私だったら、きっと許せないもん。他の女性がアリスにキスした想像をするだけで、けがわらしくて腸が煮えくり返る思いだ。
罪深い咎人の私はアリスに会わせる顔がない。覆水盆に帰らず。アンネを責めてもエバンとの事は消えない。
「……私、帰るね」
「えっ」
私は公爵邸に帰宅した。
帰って来るなり、お父様の執務室へ向かった。ある決心を胸に。
「本当にいいのか?」
日が昇る前から公爵邸の玄関で使用人一同が並び、辺境の修道院へ行く私を見送っている。そこにエバンはいない。昨日からから王都郊外に魔物の討伐を申し付けたから。帰って来るのは三日後だ。その頃には王都から大分離れているだろう。
使用人達は急な出来事にとても困惑していた。しかし、明日、明後日頃にはアリスが帰ってくるから急いで出発しなければならなかった。
「はい。魔物の数も暴走も落ち着いてきましたし、王都も落ち着いてまいりました。手の届かかない辺境の援助へ行って貴族としての勤めを果たしたいのです」
「私は心配だ。よもや帰って来ぬわけではないな!?」
「ええ、落ち着けば……」
落ち着いても帰らない。アリスとエバンの二人が結婚しても、二人に合わせる顔がないから。人が私以外の誰かと結婚する想像をして厚かましくも胸が痛むなんて。二人は誰か一人に愛されるべき人だ。私みたいな二人とも好きだなんて不埒な女なんか相応しくないよ……
「お父様……愛してます」
お父様に抱きついた。馴染み深い肩とコロンの匂い……抱きしめている腕に力を込める。
「アルセナ、私も愛してる。世界で一番の私の宝物だ……なんだ、泣いてるのか?」
「今回の魔物襲来で、人はいつ死んでもおかしくないと学びました。だからお父様と再び会える保証はないのかもしれないとセンチメンタルになっているのかもしれません」
「ノブレス・オブリージュなどどうでもいい。行くな、お前より大切な者などないんだぞ」
「もう子供じゃないんです。可愛い子には旅をさせろというではありませんか」
「ああ、そうだな気をつけていけ」
「はい……失礼します」
私はもうこのクリマスタ公爵邸には帰らない。今まで育った生家が遠ざかっていく。もう一生拝めないのに涙でぼやけてよく見えない。遠ざかって行く公爵邸を見えなくなるまで見ていた。
――あっここはアリスと一緒に行ったケーキ屋さん
――私の商店……最近やっと再開店したんだよね
ここはお父様と一緒にくまのぬいぐるみを探した通りだわ。この王都には至る所に思い出が詰まっていて、胸がギリギリと締め付けられた。
アンネの家も通り過ぎる。彼女にはチョコレートの説明もせず食べさせた罰としてしばらく経ってから手紙を書くことにしよう。私はまだアンネに怒っている。だから大いに心配するがいいと思った。
最初の街に着いた。もう太陽が沈みかけていて、東の空に一番星が輝いている。今晩はこの街に泊まる予定だ。街一番の宿の一番上等な部屋に泊まった。
早々に布団に入ったけど寝付けなかった。こんな寝れない夜はスマホが恋しい。ゆーtubeが見たい。
気付くと朝になっていた。
「あれは超貴重なチョコレートなんだよ。課金アイテムで、これを食べると好感度が低くてもエッチに持ち込めるすっごい効果の媚薬で発情してんじゃないかってぐらい勢い……ぐえっ」
掴んでいたアンネの襟を締め上げた。
「ひどいよ……」
言葉も無い……。
「全部食べた?」
「3分の1ぐらい……ってそんなのどうでもいいじゃない!!」
「なんだぁ、24時間イキまくりマラソンにはならなかったんだね。すっごく気持ちいいのにもったいなっ!」
「どうでもいいよ、そんなの!アリスに合わせる顔がないじゃない!」
「なんで?」
「なんでって、あなた貞操観念どうなってるの?」
「この世界では、複数も有りでしょ。いいじゃん、いいじゃん3P……乙女の夢だよね」
--コイツ……マジで頭ぶっ飛んでる。そんな乙女がいるか!
アンネは、さらに腹黒系激甘アリスフォードと筋肉ムキムキの人当たりの良いワンコ系お兄さんなんてウラヤマなどと言っている。
「私はアリスが……好きなの。添い遂げようとおもってるんだから……」
例えばチョコレートのせいであっても許してくれるわけ無い。私だったら、きっと許せないもん。他の女性がアリスにキスした想像をするだけで、けがわらしくて腸が煮えくり返る思いだ。
罪深い咎人の私はアリスに会わせる顔がない。覆水盆に帰らず。アンネを責めてもエバンとの事は消えない。
「……私、帰るね」
「えっ」
私は公爵邸に帰宅した。
帰って来るなり、お父様の執務室へ向かった。ある決心を胸に。
「本当にいいのか?」
日が昇る前から公爵邸の玄関で使用人一同が並び、辺境の修道院へ行く私を見送っている。そこにエバンはいない。昨日からから王都郊外に魔物の討伐を申し付けたから。帰って来るのは三日後だ。その頃には王都から大分離れているだろう。
使用人達は急な出来事にとても困惑していた。しかし、明日、明後日頃にはアリスが帰ってくるから急いで出発しなければならなかった。
「はい。魔物の数も暴走も落ち着いてきましたし、王都も落ち着いてまいりました。手の届かかない辺境の援助へ行って貴族としての勤めを果たしたいのです」
「私は心配だ。よもや帰って来ぬわけではないな!?」
「ええ、落ち着けば……」
落ち着いても帰らない。アリスとエバンの二人が結婚しても、二人に合わせる顔がないから。人が私以外の誰かと結婚する想像をして厚かましくも胸が痛むなんて。二人は誰か一人に愛されるべき人だ。私みたいな二人とも好きだなんて不埒な女なんか相応しくないよ……
「お父様……愛してます」
お父様に抱きついた。馴染み深い肩とコロンの匂い……抱きしめている腕に力を込める。
「アルセナ、私も愛してる。世界で一番の私の宝物だ……なんだ、泣いてるのか?」
「今回の魔物襲来で、人はいつ死んでもおかしくないと学びました。だからお父様と再び会える保証はないのかもしれないとセンチメンタルになっているのかもしれません」
「ノブレス・オブリージュなどどうでもいい。行くな、お前より大切な者などないんだぞ」
「もう子供じゃないんです。可愛い子には旅をさせろというではありませんか」
「ああ、そうだな気をつけていけ」
「はい……失礼します」
私はもうこのクリマスタ公爵邸には帰らない。今まで育った生家が遠ざかっていく。もう一生拝めないのに涙でぼやけてよく見えない。遠ざかって行く公爵邸を見えなくなるまで見ていた。
――あっここはアリスと一緒に行ったケーキ屋さん
――私の商店……最近やっと再開店したんだよね
ここはお父様と一緒にくまのぬいぐるみを探した通りだわ。この王都には至る所に思い出が詰まっていて、胸がギリギリと締め付けられた。
アンネの家も通り過ぎる。彼女にはチョコレートの説明もせず食べさせた罰としてしばらく経ってから手紙を書くことにしよう。私はまだアンネに怒っている。だから大いに心配するがいいと思った。
最初の街に着いた。もう太陽が沈みかけていて、東の空に一番星が輝いている。今晩はこの街に泊まる予定だ。街一番の宿の一番上等な部屋に泊まった。
早々に布団に入ったけど寝付けなかった。こんな寝れない夜はスマホが恋しい。ゆーtubeが見たい。
気付くと朝になっていた。
1
お気に入りに追加
784
あなたにおすすめの小説
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
乙女ゲーム王子ルートハッピーエンド役目を終えた悪役令嬢は王太子殿下の溺愛=セックスに………
KUMA
恋愛
ルルーシェは転生者見事悪役令嬢を演じた、そして王子から婚約破棄されヒロインの男爵のマトリーヌ・ラズベリーと王子の結婚は行われた。
そこで騒ぎをお越しルルーシェはその場で、処刑され二人は幸せな生活…何て馬鹿な事は私はしない。
悪役令嬢として婚約破棄されて、自由になれただからもう貴方方は必要ない。
その判断が悪役令嬢ルルーシェのエロ殿下ルートの始まり…
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
18禁の乙女ゲームの悪役令嬢~恋愛フラグより抱かれるフラグが上ってどう言うことなの?
KUMA
恋愛
※最初王子とのHAPPY ENDの予定でしたが義兄弟達との快楽ENDに変更しました。※
ある日前世の記憶があるローズマリアはここが異世界ではない姉の中毒症とも言える2次元乙女ゲームの世界だと気付く。
しかも18禁のかなり高い確率で、エッチなフラグがたつと姉から嫌って程聞かされていた。
でもローズマリアは安心していた、攻略キャラクターは皆ヒロインのマリアンヌと肉体関係になると。
ローズマリアは婚約解消しようと…だが前世のローズマリアは天然タラシ(本人知らない)
攻略キャラは婚約者の王子
宰相の息子(執事に変装)
義兄(再婚)二人の騎士
実の弟(新ルートキャラ)
姉は乙女ゲーム(18禁)そしてローズマリアはBL(18禁)が好き過ぎる腐女子の処女男の子と恋愛よりBLのエッチを見るのが好きだから。
正直あんまり覚えていない、ローズマリアは婚約者意外の攻略キャラは知らずそこまで警戒しずに接した所新ルートを発掘!(婚約の顔はかろうじて)
悪役令嬢淫乱ルートになるとは知らない…
未亡人メイド、ショタ公爵令息の筆下ろしに選ばれる。ただの性処理係かと思ったら、彼から結婚しようと告白されました。【完結】
高橋冬夏
恋愛
騎士だった夫を魔物討伐の傷が元で失ったエレン。そんな悲しみの中にある彼女に夫との思い出の詰まった家を火事で無くすという更なる悲劇が襲う。
全てを失ったエレンは娼婦になる覚悟で娼館を訪れようとしたときに夫の雇い主と出会い、だたのメイドとしてではなく、幼い子息の筆下ろしを頼まれてしまう。
断ることも出来たが覚悟を決め、子息の性処理を兼ねたメイドとして働き始めるのだった。
転生先が羞恥心的な意味で地獄なんだけどっ!!
高福あさひ
恋愛
とある日、自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知ってしまったユーフェミア。そこは前世でハマっていたとはいえ、実際に生きるのにはとんでもなく痛々しい設定がモリモリな世界で羞恥心的な意味で地獄だった!!そんな世界で羞恥心さえ我慢すればモブとして平穏無事に生活できると思っていたのだけれど…?※カクヨム様、ムーンライトノベルズ様でも公開しています。不定期更新です。タイトル回収はだいぶ後半になると思います。前半はただのシリアスです。
【完結】なぜか悪役令嬢に転生していたので、推しの攻略対象を溺愛します
楠結衣
恋愛
魔獣に襲われたアリアは、前世の記憶を思い出す。 この世界は、前世でプレイした乙女ゲーム。しかも、私は攻略対象者にトラウマを与える悪役令嬢だと気づいてしまう。 攻略対象者で幼馴染のロベルトは、私の推し。 愛しい推しにひどいことをするなんて無理なので、シナリオを無視してロベルトを愛でまくることに。 その結果、ヒロインの好感度が上がると発生するイベントや、台詞が私に向けられていき── ルートを無視した二人の恋は大暴走! 天才魔術師でチートしまくりの幼馴染ロベルトと、推しに愛情を爆発させるアリアの、一途な恋のハッピーエンドストーリー。
悪役令嬢の許嫁は絶倫国王陛下だった!? ~婚約破棄から始まる溺愛生活~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢の許嫁は絶倫国王陛下だった!? 婚約者として毎晩求められているも、ある日
突然婚約破棄されてしまう。そんな時に現れたのが絶倫な国王陛下で……。
そんな中、ヒロインの私は国王陛下に溺愛されて求婚されてしまい。
※この作品はフィクションであり実在の人物団体事件等とは無関係でして
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年はご遠慮下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる