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26話 ガーデンパーティ

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 今日はクラスのお茶会の日である。例年一度はクラスの序列1位の女子が主催するのが通例だ。つまり私ことクレマスタ公爵令嬢である。

 今日は晴天。どこまでも青い空が続いている。青の空には薄い雲がたなびいている。最近、毎度、空を見上げて思うのは、エバンのこと。どうか無事でいるだろうか。なぜ、彼はシナリオにない戦場行ったのか? いくら考えてもわからなかった。彼の事を考えると……同時に姫になってくれと告白されたことを思い出し胸が僅かに高鳴る。それを恋と呼ぶには微かで淡く、これが恋の始まりなのかもしれない。

 爽やかな風が吹く初夏、ガーデンパーティが気持ちいいのではないかと庭に用意した。用意したのは使用人だが。最終確認をと、会場を歩き回る。
 テーブルの上には藤の花。庭に植えてある物から取った。この国では珍しいが、前世から好きだったから他国から取り寄せたものだ。他にピンクと紫のスイートピーやヒヤシンス、松虫草がテーブルの中央飾られている。
 会場は問題ないみたいだ。
 問題あるのは……私はチラリと自室の窓を見た。





「どう? 終わったかしら?」

 そう聞けば、レディスメイドが困った視線を向けてくる。
 部屋には試着したドレスの山がある。

「えーこれもいい……あっちも良いかも」

 夜会用の派手なドレスを着たアンネを呆れた表情で見た。

「クラスのお茶会なんだから、これでいいわよ」

 宝石も、刺繍もなく、夜会用のドレスに比べたら地味なドレスを渡した。

「えー、これー? 」

 私は思った。こいつ本当になんなのと。

「はぁー、いいから」

 メイドに支持を出して着せた。ドレスに着替えたアンネは私の向かいのソファに座った。
 そして紅茶入れたメイドを下がらせた。

「これ、ちょっと胸がきついんだけど……」

 私は眉間を引つらせた。そう、アンネは私と違って胸が大きい。前世も胸が小さかったから、大きいおっぱい憧れがあるのだ。それなのにアンネは大きくてずるい……くそー、老けて垂れ下がればいいのに。

「そういえば、私……ビクターに会えたんです」

 蕩けた顔をしてアンネ。はぁーかっこよかったとしみじみ呟いている。

「へえーおめでとう。ビクターが推しだったの?」
「イケメンはみんな好きです」

 きっぱり清々しい顔でアンネは言った。彼女のそういうズバッと言う所、割と気に入っている。

「そう」
「そんなことより、早くアリスフォード殿下攻略してくださいよ」

 なんであんたがにニヤけてるのよ。

「だって恥ずかしいじゃない。小さな頃から仲いいのよ」

 アリスとなんて……少し想像するだけで顔が熱くなるのを感じた。

「大丈夫。やることは誰とでもそんな変わらないから……」
「えっ……!?」

 アンネのビッチ発言に戸惑ってしまう。

「まさか貴方……もう乙女ではないの……?」
「今世ではまだ処女だよ」
「今世って……、前世ではどんだけなのよ」
「そうでもないよ。うーん、正確に数えたことないからわからないけど30人はいなかったと思う」

 あまりに経験人数の多さに言葉がでない。私なんて喪女だったのに。そういえば妹も微妙にビッチだった。彼女が引きこもりなったのも誰かの彼氏と寝たから、イジメられたらしい。彼女持ちは面倒で手を出さない主義だったらしいが、彼女がいるのを知らなかったみたいだ。

「お、多いね」
「そう? 高校生じゃないんだから、ある程度の年齢いけば普通でしょ?」

 うん……多分、私とは違う世界から転生してきたんだろう。

「そろそろ、クラスメイトが来るから行きましょう」

 私達は立ち上がり、玄関ホールに向かった。
 クラスの女子は全員やってきた。皆、料理や私のドレスなどに対して賛辞を口にした。一人を除いて。

「紫なんて品のないお色ですわね」

 嘲笑を扇子で隠して呟いたのは、ブレンダ侯爵令嬢だ。オレンジ色の髪をゴージャスな夜会巻きにしている。
 濃い紫はクレイジーカラーと呼ばれているが、藤色のような薄い紫はそんな事はない。私達喧嘩でもしたら、他の女子が怯えて楽しめなくなるので、私は笑顔で応じた。それなのにブレンダはなおも言ってきた。

「まぁー藤ですの? コワイ、コワイ。こんな毒があるものテーブルに飾るなんて……わたくしのこと殺そうとしているのかしら……?」
「まぁー、藤の花は食べられるのですよ。ご存知ないのですか? それに毒があると言っても、死ぬほどでは無いんですよ。ご存知無いなんて……」

 無知ですねっと。ちょっとイラッとしてしまった。私は平和主義だが、売られた喧嘩は買うタイプだ。
 
「まぁまぁ毒を盛ったいい訳ですか?」

 視界の端にクラスメイトが困惑する様子を捉えた。腹が立つが、心の中で深呼吸して雰囲気が悪くならないように怒りを抑えた。

「いいえそんなわけありません。気に触ったなら謝りますわ。でも、ブレンダさんはそんな狭量ではないですよね。だってそんな噂が立ったら、良家のお嫁さんに相応しくありませんもの」
「そ、そうね」

 まだ婚約者がいないブレンダは、悪評がたつのを恐れたらしく、引きつった笑みを浮かべている。

「せっかく同じクラスになったのだから、仲良くしましょう」

 本当に周りが迷惑するから、表面的でいいから仲良くしてほしい。
 私が微笑んでブレンダさんの手を取れば、嫌々ながら了承してくれた。それを見て、周りが安堵の息を漏らし、会場の空気が今日の天気と同じ暖かな日差しのように柔らかい雰囲気に戻った。

「アルセナ様、ただいまよろしいでしょうか?」

 一人の令嬢が声を掛けてきた。
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