31 / 82
26話 ガーデンパーティ
しおりを挟む
今日はクラスのお茶会の日である。例年一度はクラスの序列1位の女子が主催するのが通例だ。つまり私ことクレマスタ公爵令嬢である。
今日は晴天。どこまでも青い空が続いている。青の空には薄い雲がたなびいている。最近、毎度、空を見上げて思うのは、エバンのこと。どうか無事でいるだろうか。なぜ、彼はシナリオにない戦場行ったのか? いくら考えてもわからなかった。彼の事を考えると……同時に姫になってくれと告白されたことを思い出し胸が僅かに高鳴る。それを恋と呼ぶには微かで淡く、これが恋の始まりなのかもしれない。
爽やかな風が吹く初夏、ガーデンパーティが気持ちいいのではないかと庭に用意した。用意したのは使用人だが。最終確認をと、会場を歩き回る。
テーブルの上には藤の花。庭に植えてある物から取った。この国では珍しいが、前世から好きだったから他国から取り寄せたものだ。他にピンクと紫のスイートピーやヒヤシンス、松虫草がテーブルの中央飾られている。
会場は問題ないみたいだ。
問題あるのは……私はチラリと自室の窓を見た。
「どう? 終わったかしら?」
そう聞けば、レディスメイドが困った視線を向けてくる。
部屋には試着したドレスの山がある。
「えーこれもいい……あっちも良いかも」
夜会用の派手なドレスを着たアンネを呆れた表情で見た。
「クラスのお茶会なんだから、これでいいわよ」
宝石も、刺繍もなく、夜会用のドレスに比べたら地味なドレスを渡した。
「えー、これー? 」
私は思った。こいつ本当になんなのと。
「はぁー、いいから」
メイドに支持を出して着せた。ドレスに着替えたアンネは私の向かいのソファに座った。
そして紅茶入れたメイドを下がらせた。
「これ、ちょっと胸がきついんだけど……」
私は眉間を引つらせた。そう、アンネは私と違って胸が大きい。前世も胸が小さかったから、大きいおっぱい憧れがあるのだ。それなのにアンネは大きくてずるい……くそー、老けて垂れ下がればいいのに。
「そういえば、私……ビクターに会えたんです」
蕩けた顔をしてアンネ。はぁーかっこよかったとしみじみ呟いている。
「へえーおめでとう。ビクターが推しだったの?」
「イケメンはみんな好きです」
きっぱり清々しい顔でアンネは言った。彼女のそういうズバッと言う所、割と気に入っている。
「そう」
「そんなことより、早くアリスフォード殿下攻略してくださいよ」
なんであんたがにニヤけてるのよ。
「だって恥ずかしいじゃない。小さな頃から仲いいのよ」
アリスとなんて……少し想像するだけで顔が熱くなるのを感じた。
「大丈夫。やることは誰とでもそんな変わらないから……」
「えっ……!?」
アンネのビッチ発言に戸惑ってしまう。
「まさか貴方……もう乙女ではないの……?」
「今世ではまだ処女だよ」
「今世って……、前世ではどんだけなのよ」
「そうでもないよ。うーん、正確に数えたことないからわからないけど30人はいなかったと思う」
あまりに経験人数の多さに言葉がでない。私なんて喪女だったのに。そういえば妹も微妙にビッチだった。彼女が引きこもりなったのも誰かの彼氏と寝たから、イジメられたらしい。彼女持ちは面倒で手を出さない主義だったらしいが、彼女がいるのを知らなかったみたいだ。
「お、多いね」
「そう? 高校生じゃないんだから、ある程度の年齢いけば普通でしょ?」
うん……多分、私とは違う世界から転生してきたんだろう。
「そろそろ、クラスメイトが来るから行きましょう」
私達は立ち上がり、玄関ホールに向かった。
クラスの女子は全員やってきた。皆、料理や私のドレスなどに対して賛辞を口にした。一人を除いて。
「紫なんて品のないお色ですわね」
嘲笑を扇子で隠して呟いたのは、ブレンダ侯爵令嬢だ。オレンジ色の髪をゴージャスな夜会巻きにしている。
濃い紫はクレイジーカラーと呼ばれているが、藤色のような薄い紫はそんな事はない。私達喧嘩でもしたら、他の女子が怯えて楽しめなくなるので、私は笑顔で応じた。それなのにブレンダはなおも言ってきた。
「まぁー藤ですの? コワイ、コワイ。こんな毒があるものテーブルに飾るなんて……私のこと殺そうとしているのかしら……?」
「まぁー、藤の花は食べられるのですよ。ご存知ないのですか? それに毒があると言っても、死ぬほどでは無いんですよ。ご存知無いなんて……」
無知ですねっと。ちょっとイラッとしてしまった。私は平和主義だが、売られた喧嘩は買うタイプだ。
「まぁまぁ毒を盛ったいい訳ですか?」
視界の端にクラスメイトが困惑する様子を捉えた。腹が立つが、心の中で深呼吸して雰囲気が悪くならないように怒りを抑えた。
「いいえそんなわけありません。気に触ったなら謝りますわ。でも、ブレンダさんはそんな狭量ではないですよね。だってそんな噂が立ったら、良家のお嫁さんに相応しくありませんもの」
「そ、そうね」
まだ婚約者がいないブレンダは、悪評がたつのを恐れたらしく、引きつった笑みを浮かべている。
「せっかく同じクラスになったのだから、仲良くしましょう」
本当に周りが迷惑するから、表面的でいいから仲良くしてほしい。
私が微笑んでブレンダさんの手を取れば、嫌々ながら了承してくれた。それを見て、周りが安堵の息を漏らし、会場の空気が今日の天気と同じ暖かな日差しのように柔らかい雰囲気に戻った。
「アルセナ様、ただいまよろしいでしょうか?」
一人の令嬢が声を掛けてきた。
今日は晴天。どこまでも青い空が続いている。青の空には薄い雲がたなびいている。最近、毎度、空を見上げて思うのは、エバンのこと。どうか無事でいるだろうか。なぜ、彼はシナリオにない戦場行ったのか? いくら考えてもわからなかった。彼の事を考えると……同時に姫になってくれと告白されたことを思い出し胸が僅かに高鳴る。それを恋と呼ぶには微かで淡く、これが恋の始まりなのかもしれない。
爽やかな風が吹く初夏、ガーデンパーティが気持ちいいのではないかと庭に用意した。用意したのは使用人だが。最終確認をと、会場を歩き回る。
テーブルの上には藤の花。庭に植えてある物から取った。この国では珍しいが、前世から好きだったから他国から取り寄せたものだ。他にピンクと紫のスイートピーやヒヤシンス、松虫草がテーブルの中央飾られている。
会場は問題ないみたいだ。
問題あるのは……私はチラリと自室の窓を見た。
「どう? 終わったかしら?」
そう聞けば、レディスメイドが困った視線を向けてくる。
部屋には試着したドレスの山がある。
「えーこれもいい……あっちも良いかも」
夜会用の派手なドレスを着たアンネを呆れた表情で見た。
「クラスのお茶会なんだから、これでいいわよ」
宝石も、刺繍もなく、夜会用のドレスに比べたら地味なドレスを渡した。
「えー、これー? 」
私は思った。こいつ本当になんなのと。
「はぁー、いいから」
メイドに支持を出して着せた。ドレスに着替えたアンネは私の向かいのソファに座った。
そして紅茶入れたメイドを下がらせた。
「これ、ちょっと胸がきついんだけど……」
私は眉間を引つらせた。そう、アンネは私と違って胸が大きい。前世も胸が小さかったから、大きいおっぱい憧れがあるのだ。それなのにアンネは大きくてずるい……くそー、老けて垂れ下がればいいのに。
「そういえば、私……ビクターに会えたんです」
蕩けた顔をしてアンネ。はぁーかっこよかったとしみじみ呟いている。
「へえーおめでとう。ビクターが推しだったの?」
「イケメンはみんな好きです」
きっぱり清々しい顔でアンネは言った。彼女のそういうズバッと言う所、割と気に入っている。
「そう」
「そんなことより、早くアリスフォード殿下攻略してくださいよ」
なんであんたがにニヤけてるのよ。
「だって恥ずかしいじゃない。小さな頃から仲いいのよ」
アリスとなんて……少し想像するだけで顔が熱くなるのを感じた。
「大丈夫。やることは誰とでもそんな変わらないから……」
「えっ……!?」
アンネのビッチ発言に戸惑ってしまう。
「まさか貴方……もう乙女ではないの……?」
「今世ではまだ処女だよ」
「今世って……、前世ではどんだけなのよ」
「そうでもないよ。うーん、正確に数えたことないからわからないけど30人はいなかったと思う」
あまりに経験人数の多さに言葉がでない。私なんて喪女だったのに。そういえば妹も微妙にビッチだった。彼女が引きこもりなったのも誰かの彼氏と寝たから、イジメられたらしい。彼女持ちは面倒で手を出さない主義だったらしいが、彼女がいるのを知らなかったみたいだ。
「お、多いね」
「そう? 高校生じゃないんだから、ある程度の年齢いけば普通でしょ?」
うん……多分、私とは違う世界から転生してきたんだろう。
「そろそろ、クラスメイトが来るから行きましょう」
私達は立ち上がり、玄関ホールに向かった。
クラスの女子は全員やってきた。皆、料理や私のドレスなどに対して賛辞を口にした。一人を除いて。
「紫なんて品のないお色ですわね」
嘲笑を扇子で隠して呟いたのは、ブレンダ侯爵令嬢だ。オレンジ色の髪をゴージャスな夜会巻きにしている。
濃い紫はクレイジーカラーと呼ばれているが、藤色のような薄い紫はそんな事はない。私達喧嘩でもしたら、他の女子が怯えて楽しめなくなるので、私は笑顔で応じた。それなのにブレンダはなおも言ってきた。
「まぁー藤ですの? コワイ、コワイ。こんな毒があるものテーブルに飾るなんて……私のこと殺そうとしているのかしら……?」
「まぁー、藤の花は食べられるのですよ。ご存知ないのですか? それに毒があると言っても、死ぬほどでは無いんですよ。ご存知無いなんて……」
無知ですねっと。ちょっとイラッとしてしまった。私は平和主義だが、売られた喧嘩は買うタイプだ。
「まぁまぁ毒を盛ったいい訳ですか?」
視界の端にクラスメイトが困惑する様子を捉えた。腹が立つが、心の中で深呼吸して雰囲気が悪くならないように怒りを抑えた。
「いいえそんなわけありません。気に触ったなら謝りますわ。でも、ブレンダさんはそんな狭量ではないですよね。だってそんな噂が立ったら、良家のお嫁さんに相応しくありませんもの」
「そ、そうね」
まだ婚約者がいないブレンダは、悪評がたつのを恐れたらしく、引きつった笑みを浮かべている。
「せっかく同じクラスになったのだから、仲良くしましょう」
本当に周りが迷惑するから、表面的でいいから仲良くしてほしい。
私が微笑んでブレンダさんの手を取れば、嫌々ながら了承してくれた。それを見て、周りが安堵の息を漏らし、会場の空気が今日の天気と同じ暖かな日差しのように柔らかい雰囲気に戻った。
「アルセナ様、ただいまよろしいでしょうか?」
一人の令嬢が声を掛けてきた。
20
お気に入りに追加
784
あなたにおすすめの小説
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
乙女ゲーム王子ルートハッピーエンド役目を終えた悪役令嬢は王太子殿下の溺愛=セックスに………
KUMA
恋愛
ルルーシェは転生者見事悪役令嬢を演じた、そして王子から婚約破棄されヒロインの男爵のマトリーヌ・ラズベリーと王子の結婚は行われた。
そこで騒ぎをお越しルルーシェはその場で、処刑され二人は幸せな生活…何て馬鹿な事は私はしない。
悪役令嬢として婚約破棄されて、自由になれただからもう貴方方は必要ない。
その判断が悪役令嬢ルルーシェのエロ殿下ルートの始まり…
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
未亡人メイド、ショタ公爵令息の筆下ろしに選ばれる。ただの性処理係かと思ったら、彼から結婚しようと告白されました。【完結】
高橋冬夏
恋愛
騎士だった夫を魔物討伐の傷が元で失ったエレン。そんな悲しみの中にある彼女に夫との思い出の詰まった家を火事で無くすという更なる悲劇が襲う。
全てを失ったエレンは娼婦になる覚悟で娼館を訪れようとしたときに夫の雇い主と出会い、だたのメイドとしてではなく、幼い子息の筆下ろしを頼まれてしまう。
断ることも出来たが覚悟を決め、子息の性処理を兼ねたメイドとして働き始めるのだった。
悪役令嬢の許嫁は絶倫国王陛下だった!? ~婚約破棄から始まる溺愛生活~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢の許嫁は絶倫国王陛下だった!? 婚約者として毎晩求められているも、ある日
突然婚約破棄されてしまう。そんな時に現れたのが絶倫な国王陛下で……。
そんな中、ヒロインの私は国王陛下に溺愛されて求婚されてしまい。
※この作品はフィクションであり実在の人物団体事件等とは無関係でして
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年はご遠慮下さい。
18禁の乙女ゲームの悪役令嬢~恋愛フラグより抱かれるフラグが上ってどう言うことなの?
KUMA
恋愛
※最初王子とのHAPPY ENDの予定でしたが義兄弟達との快楽ENDに変更しました。※
ある日前世の記憶があるローズマリアはここが異世界ではない姉の中毒症とも言える2次元乙女ゲームの世界だと気付く。
しかも18禁のかなり高い確率で、エッチなフラグがたつと姉から嫌って程聞かされていた。
でもローズマリアは安心していた、攻略キャラクターは皆ヒロインのマリアンヌと肉体関係になると。
ローズマリアは婚約解消しようと…だが前世のローズマリアは天然タラシ(本人知らない)
攻略キャラは婚約者の王子
宰相の息子(執事に変装)
義兄(再婚)二人の騎士
実の弟(新ルートキャラ)
姉は乙女ゲーム(18禁)そしてローズマリアはBL(18禁)が好き過ぎる腐女子の処女男の子と恋愛よりBLのエッチを見るのが好きだから。
正直あんまり覚えていない、ローズマリアは婚約者意外の攻略キャラは知らずそこまで警戒しずに接した所新ルートを発掘!(婚約の顔はかろうじて)
悪役令嬢淫乱ルートになるとは知らない…
【R18】悪女になって婚約破棄を目論みましたが、陛下にはお見通しだったようです
ほづみ
恋愛
侯爵令嬢のエレオノーラは国王アルトウィンの妃候補の一人。アルトウィンにはずっと片想い中だが、アルトウィンはどうやらもう一人の妃候補、コリンナと相思相愛らしい。それなのに、アルトウィンが妃として選んだのはエレオノーラだった。穏やかな性格のコリンナも大好きなエレオノーラは、自分に悪評を立てて婚約破棄してもらおうと行動を起こすが、そんなエレオノーラの思惑はアルトウィンには全部お見通しで……。
タイトル通り、いらぬお節介を焼こうとしたヒロインが年上の婚約者に「メッ」されるお話です。
いつも通りふわふわ設定です。
他サイトにも掲載しております。
【完結】なぜか悪役令嬢に転生していたので、推しの攻略対象を溺愛します
楠結衣
恋愛
魔獣に襲われたアリアは、前世の記憶を思い出す。 この世界は、前世でプレイした乙女ゲーム。しかも、私は攻略対象者にトラウマを与える悪役令嬢だと気づいてしまう。 攻略対象者で幼馴染のロベルトは、私の推し。 愛しい推しにひどいことをするなんて無理なので、シナリオを無視してロベルトを愛でまくることに。 その結果、ヒロインの好感度が上がると発生するイベントや、台詞が私に向けられていき── ルートを無視した二人の恋は大暴走! 天才魔術師でチートしまくりの幼馴染ロベルトと、推しに愛情を爆発させるアリアの、一途な恋のハッピーエンドストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる