66 / 70
第二部
65話 破局のプロローグからやり直そう
しおりを挟む
そうして訪れた二度目の王宮での舞踏会。
この舞踏会にシュバルツ様をお誘いした時、彼はどんな反応をするのだろうと思ったのだけれど、驚くほど冷静に「わかったよ、リフィルさん」と頷いてくれた。
彼からは特に何も聞かれる事もなく。
シュバルツ様は何か勘付いているのだろうか。
それとも……。
最近はフレスベルグ邸内でもめっきりと会話をする事が減ってしまったけれど。
きっと今日の舞踏会の後には元通りになれるはずですわよね。
そう、信じていたのに――。
「すまないがリフィルさん。キミのような能無しで醜い女性を愛し続けるのは私には不可能だったみたいだ」
王家主催の舞踏会にて。
私の最愛の旦那様であったはずのシュバルツ様は唐突に大勢の人が周囲で見守る中、今にもその憤りをぶちまけてしまいそうなほど、見せた事のない剣幕でお顔を強張らせてそう言い放ったのである。
「……それで?」
「だからキミとは離婚しようと思う」
ああ。
もう手遅れだったんだ。
とっくにシュバルツ様は私の事なんて見限っていたんだ。
ルーフェンと同じように。
きっとザリアスはこれを予見していたのね。
だから私に舞踏会の前にフレスベルグ邸から追放されてもいいように身支度を整えておけと言っていたのね。
離婚を言い渡された私はシュバルツ様の言葉に逆らう事なく頷き、そして舞踏会場を後にした。
おそらくすぐ帰る事になるからとザリアスに言われ、会場の外には馬車を待機させておいてくれたのもこの為だったのかと理解する。
さあフレスベルグ邸に帰って、アルカードへ帰る準備をしよう。
もう全ては終わってしまったのだから。
「う……うぁ……うぁあぁぁ……いやぁ……」
馬車に乗る前。
私はそこではしたなくうずくまり、泣き崩れた。
こんな、終わり方なんて。
でも、これも全て自分が蒔いた種。
シュバルツ様を裏切ってしまった結果。
そしてこの結末こそが、ザリアスの計画通りで、きっとおそらく私が掛けたシュバルツ様の魔法は解けるだろう。
全てルーフェンの言った通りになってしまった。
シュバルツ様を避けて、嫌うように振る舞う演技のせいで私に向けられていたシュバルツ様からの愛は、消え去ってしまったのだ。
「リフィル姉様」
全てに絶望した私の背後から、私の名を呼ぶ声がした。
「ルー……フェン?」
「……ったく、なんつー顔をしてやがんだ。見てらんねえ」
「……私を、馬鹿にしに来たの?」
「ああ、そうだよ馬鹿姉様」
「そう……」
「だからな、馬鹿な姉様には少し説教をしてやる」
「……好きに罵ってくれて構いませんわ」
「罵る? そんなつまんねえ事するかよ。この大馬鹿たれ。姉様の道は俺がこれから示してやる。だから、黙って俺の言う事を聞いて、アルカードへ帰れ」
別にルーフェンに言われなくたって、元よりそうするつもり。
シュバルツ様に嫌われてしまった私に、居場所なんてどこにもないのだから。
「いいか、姉様? よぉく聞けよ――」
●○●○●
そうして私はその後、ルーフェンの指示に従ってフレスベルグ邸に寄った後、アルカードへとそのまま帰った。
すでに真夜中になってしまっているが、私は構わずアルカードへと向かう事にした。
「あ、ジルベール。そちらではありませんわ。あちらの道へ向かってください」
「え? リフィルお嬢様。アルカードのお屋敷に向かわれるのではないのですか?」
私は馬車の御者であるジルベールに、アルカードのお屋敷の更に南へ向けて馬車を走らせて欲しいと頼んだ。
何故ならそれはザリアスの指示があったからだ。
ザリアスは舞踏会場から出たら、すぐに精霊の森に来いと言われていた。
そこで魔法の確認をするとの事だったからだ。
きっと彼はこうなる事を予見して、私の【魔力提供】が戻っていると踏んでいたのだろう。
そうしてその対象を自分する為に。
シュバルツ様に離婚されてしまう事までを見越して。
「……ザリアス。あなたの言う通りにしますわ」
私は馬車の中でそう呟いた。
この舞踏会にシュバルツ様をお誘いした時、彼はどんな反応をするのだろうと思ったのだけれど、驚くほど冷静に「わかったよ、リフィルさん」と頷いてくれた。
彼からは特に何も聞かれる事もなく。
シュバルツ様は何か勘付いているのだろうか。
それとも……。
最近はフレスベルグ邸内でもめっきりと会話をする事が減ってしまったけれど。
きっと今日の舞踏会の後には元通りになれるはずですわよね。
そう、信じていたのに――。
「すまないがリフィルさん。キミのような能無しで醜い女性を愛し続けるのは私には不可能だったみたいだ」
王家主催の舞踏会にて。
私の最愛の旦那様であったはずのシュバルツ様は唐突に大勢の人が周囲で見守る中、今にもその憤りをぶちまけてしまいそうなほど、見せた事のない剣幕でお顔を強張らせてそう言い放ったのである。
「……それで?」
「だからキミとは離婚しようと思う」
ああ。
もう手遅れだったんだ。
とっくにシュバルツ様は私の事なんて見限っていたんだ。
ルーフェンと同じように。
きっとザリアスはこれを予見していたのね。
だから私に舞踏会の前にフレスベルグ邸から追放されてもいいように身支度を整えておけと言っていたのね。
離婚を言い渡された私はシュバルツ様の言葉に逆らう事なく頷き、そして舞踏会場を後にした。
おそらくすぐ帰る事になるからとザリアスに言われ、会場の外には馬車を待機させておいてくれたのもこの為だったのかと理解する。
さあフレスベルグ邸に帰って、アルカードへ帰る準備をしよう。
もう全ては終わってしまったのだから。
「う……うぁ……うぁあぁぁ……いやぁ……」
馬車に乗る前。
私はそこではしたなくうずくまり、泣き崩れた。
こんな、終わり方なんて。
でも、これも全て自分が蒔いた種。
シュバルツ様を裏切ってしまった結果。
そしてこの結末こそが、ザリアスの計画通りで、きっとおそらく私が掛けたシュバルツ様の魔法は解けるだろう。
全てルーフェンの言った通りになってしまった。
シュバルツ様を避けて、嫌うように振る舞う演技のせいで私に向けられていたシュバルツ様からの愛は、消え去ってしまったのだ。
「リフィル姉様」
全てに絶望した私の背後から、私の名を呼ぶ声がした。
「ルー……フェン?」
「……ったく、なんつー顔をしてやがんだ。見てらんねえ」
「……私を、馬鹿にしに来たの?」
「ああ、そうだよ馬鹿姉様」
「そう……」
「だからな、馬鹿な姉様には少し説教をしてやる」
「……好きに罵ってくれて構いませんわ」
「罵る? そんなつまんねえ事するかよ。この大馬鹿たれ。姉様の道は俺がこれから示してやる。だから、黙って俺の言う事を聞いて、アルカードへ帰れ」
別にルーフェンに言われなくたって、元よりそうするつもり。
シュバルツ様に嫌われてしまった私に、居場所なんてどこにもないのだから。
「いいか、姉様? よぉく聞けよ――」
●○●○●
そうして私はその後、ルーフェンの指示に従ってフレスベルグ邸に寄った後、アルカードへとそのまま帰った。
すでに真夜中になってしまっているが、私は構わずアルカードへと向かう事にした。
「あ、ジルベール。そちらではありませんわ。あちらの道へ向かってください」
「え? リフィルお嬢様。アルカードのお屋敷に向かわれるのではないのですか?」
私は馬車の御者であるジルベールに、アルカードのお屋敷の更に南へ向けて馬車を走らせて欲しいと頼んだ。
何故ならそれはザリアスの指示があったからだ。
ザリアスは舞踏会場から出たら、すぐに精霊の森に来いと言われていた。
そこで魔法の確認をするとの事だったからだ。
きっと彼はこうなる事を予見して、私の【魔力提供】が戻っていると踏んでいたのだろう。
そうしてその対象を自分する為に。
シュバルツ様に離婚されてしまう事までを見越して。
「……ザリアス。あなたの言う通りにしますわ」
私は馬車の中でそう呟いた。
2
お気に入りに追加
1,315
あなたにおすすめの小説
「優秀すぎて鼻につく」と婚約破棄された公爵令嬢は弟殿下に独占される
杓子ねこ
恋愛
公爵令嬢ソフィア・ファビアスは完璧な淑女だった。
婚約者のギルバートよりはるかに優秀なことを隠し、いずれ夫となり国王となるギルバートを立て、常に控えめにふるまっていた。
にもかかわらず、ある日、婚約破棄を宣言される。
「お前が陰で俺を嘲笑っているのはわかっている! お前のような偏屈な女は、婚約破棄だ!」
どうやらギルバートは男爵令嬢エミリーから真実の愛を吹き込まれたらしい。
事を荒立てまいとするソフィアの態度にギルバートは「申し開きもしない」とさらに激昂するが、そこへ第二王子のルイスが現れる。
「では、ソフィア嬢を俺にください」
ルイスはソフィアを抱きしめ、「やっと手に入れた、愛しい人」と囁き始め……?
※ヒーローがだいぶ暗躍します。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
婚約者に犯されて身籠り、妹に陥れられて婚約破棄後に国外追放されました。“神人”であるお腹の子が復讐しますが、いいですね?
サイコちゃん
ファンタジー
公爵令嬢アリアは不義の子を身籠った事を切欠に、ヴント国を追放される。しかも、それが冤罪だったと判明した後も、加害者である第一王子イェールと妹ウィリアは不誠実な謝罪を繰り返し、果てはアリアを罵倒する。その行為が、ヴント国を破滅に導くとも知らずに――
※昨年、別アカウントにて削除した『お腹の子「後になってから謝っても遅いよ?」』を手直しして再投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる