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第二部

65話 破局のプロローグからやり直そう

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 そうして訪れた二度目の王宮での舞踏会。

 この舞踏会にシュバルツ様をお誘いした時、彼はどんな反応をするのだろうと思ったのだけれど、驚くほど冷静に「わかったよ、リフィルさん」と頷いてくれた。

 彼からは特に何も聞かれる事もなく。

 シュバルツ様は何か勘付いているのだろうか。

 それとも……。

 最近はフレスベルグ邸内でもめっきりと会話をする事が減ってしまったけれど。

 きっと今日の舞踏会の後には元通りになれるはずですわよね。

 そう、信じていたのに――。

「すまないがリフィルさん。キミのような能無しで醜い女性を愛し続けるのは私には不可能だったみたいだ」

 王家主催の舞踏会にて。

 私の最愛の旦那様であったはずのシュバルツ様は唐突に大勢の人が周囲で見守る中、今にもその憤りをぶちまけてしまいそうなほど、見せた事のない剣幕でお顔を強張らせてそう言い放ったのである。

「……それで?」

「だからキミとは離婚しようと思う」

 ああ。

 もう手遅れだったんだ。

 とっくにシュバルツ様は私の事なんて見限っていたんだ。
 ルーフェンと同じように。

 きっとザリアスはこれを予見していたのね。
 だから私に舞踏会の前にフレスベルグ邸から追放されてもいいように身支度を整えておけと言っていたのね。

 離婚を言い渡された私はシュバルツ様の言葉に逆らう事なく頷き、そして舞踏会場を後にした。

 おそらくすぐ帰る事になるからとザリアスに言われ、会場の外には馬車を待機させておいてくれたのもこの為だったのかと理解する。

 さあフレスベルグ邸に帰って、アルカードへ帰る準備をしよう。

 もう全ては終わってしまったのだから。

「う……うぁ……うぁあぁぁ……いやぁ……」

 馬車に乗る前。

 私はそこではしたなくうずくまり、泣き崩れた。
 こんな、終わり方なんて。

 でも、これも全て自分が蒔いた種。

 シュバルツ様を裏切ってしまった結果。

 そしてこの結末こそが、ザリアスの計画通りで、きっとおそらく私が掛けたシュバルツ様の魔法は解けるだろう。

 全てルーフェンの言った通りになってしまった。

 シュバルツ様を避けて、嫌うように振る舞う演技のせいで私に向けられていたシュバルツ様からの愛は、消え去ってしまったのだ。

「リフィル姉様」

 全てに絶望した私の背後から、私の名を呼ぶ声がした。

「ルー……フェン?」

「……ったく、なんつー顔をしてやがんだ。見てらんねえ」

「……私を、馬鹿にしに来たの?」

「ああ、そうだよ馬鹿姉様」

「そう……」

「だからな、馬鹿な姉様には少し説教をしてやる」

「……好きに罵ってくれて構いませんわ」

「罵る? そんなつまんねえ事するかよ。この大馬鹿たれ。姉様の道は俺がこれから示してやる。だから、黙って俺の言う事を聞いて、アルカードへ帰れ」

 別にルーフェンに言われなくたって、元よりそうするつもり。
 シュバルツ様に嫌われてしまった私に、居場所なんてどこにもないのだから。

「いいか、姉様? よぉく聞けよ――」



        ●○●○●



 そうして私はその後、ルーフェンの指示に従ってフレスベルグ邸に寄った後、アルカードへとそのまま帰った。

 すでに真夜中になってしまっているが、私は構わずアルカードへと向かう事にした。

「あ、ジルベール。そちらではありませんわ。あちらの道へ向かってください」

「え? リフィルお嬢様。アルカードのお屋敷に向かわれるのではないのですか?」

 私は馬車の御者であるジルベールに、アルカードのお屋敷の更に南へ向けて馬車を走らせて欲しいと頼んだ。

 何故ならそれはザリアスの指示があったからだ。

 ザリアスは舞踏会場から出たら、すぐに精霊の森に来いと言われていた。

 そこで魔法の確認をするとの事だったからだ。

 きっと彼はこうなる事を予見して、私の【魔力提供マジックサーバー】が戻っていると踏んでいたのだろう。
 そうしてその対象を自分する為に。

 シュバルツ様に離婚されてしまう事までを見越して。

「……ザリアス。あなたの言う通りにしますわ」

 私は馬車の中でそう呟いた。


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