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第三章 王国を包む闇編
74話 隠されていたモノ
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「……ふう」
ドルバトスが少し汗をかいて息を吐いた。
「さ、さすがに疲れましたわ……」
ドリゼラも披露の色をその顔に出している。
それもそのはず、二人には七十八冊にも渡る魔導書に魔力反応を起こしてもらったわけだからだ。
休み休みとはいえ、これほど魔力の精製を行なうのは中々に至難の技だ。ドルバトスは年の功もあってそれなりに魔力を蓄えているし、ドリゼラには天才的な魔力量があるからこそ出来た荒技である。
「よくやってくれたドリゼラ、ドルバトス。だがここからが本番だ。ドルバトス、特にお前にはまた水魔力を流してもらわなくてはならない。できるか?」
「ええ、まだなんとか。それよりデレアお嬢様の方はどうでしょうか?」
「ああ、問題ない。全ての魔導書に込められている水魔力量を完全に把握した」
「さ、さすがですわ……お姉様……」
ドリゼラは近くにあった椅子に座り込んで答えた。さすがに十二歳のドリゼラには負担が大きかったか。
「少し休んでいろドリゼラ。さて、それじゃあドルバトス、いいか?」
「はい、デレアお嬢様」
「ではまず上から二段目、左から十二冊目の魔導書に0.001mg/MHを流してくれ。その次は……」
私の指示に従ってドルバトスが術式魔導書をひとつずつ解除していく。
その様子をマーサとドリゼラの二人が見守っている。
それにしてもここまで念入りな量の術式魔導書で鍵を掛けるという事は、この裏にある事実は相当に重大であるという事だ。
私たちは本当にこの闇を暴いてしまっていいのだろうか。
この事がきっかけでドリゼラたちの平和も壊してしまったら……。
そんな不安もよぎったが、しかし私の探究心がこの裏の真実を知りたがっているのもまた事実。
私の脳は……強欲だ。
「よし、次で最後だ」
そんなこんなで七十八冊の魔導書全てを順番通りに水魔力を適正量流す事に成功した。
最後の魔導書にドルバトスが水魔力を流した直後、書架全体が淡い水色の魔力を纏い、そして予測通り棚が右側へとスライドしていく。
「本当にカタリナお母様の書架の裏に隠し通路が……」
「驚きましてございます……」
ドリゼラとマーサが声をあげた通り、ぽっかりと口を開けたような入口が現れた。
「ああ。本当にあったな」
「デレアお嬢様、この隠し通路についてもそうでございますが、私めが何よりも驚かされたのはデレアお嬢様のその記憶力でございます。まさか魔力の感覚をここまで正確に、しかもこの量の本を全て覚えているというのは……」
「ふふん、マーサ! 驚いたかしら!? これがデレアお姉様の実力なんですのよ! デレアお姉様に不可能なんてないんですわ!」
何故か鼻高々にドリゼラが答えている。
「まあ、それくらいしか私には取り柄がないからな」
「いえ、デレアお嬢様。これは取り柄というレベルではなく、一級魔導師と同等クラスに驚異的な能力なのでは……?」
ドルバトスも驚愕し、そんな事を言い出してしまった。やはり少しこれは過剰に力を見せてしまっただろうか。
「……ここだけの話、私は少しだけ記憶力がいいんだ。だが、あんまり目立ちたくないからこの事は他言しないでもらえるとありがたい」
私は適当に誤魔化す。
それよりもこの先だ。
隠し通路は地下へ続くように階段が下っている。
ここからでは底が見えないほどに。
「さあ、早く進もう。あまり長い時間マーサとドルバトスの二人がいないのは他の使用人たちも怪しむかもしれないし、カタリナお母様の部屋の前にいるフランにも申し訳ないからな」
「ええ、お姉様。カタリナお母様が帰ってくるのはおそらく明日の晩ですけれど、書架も元に戻さなくてはなりませんものね」
私たちは頷き、地下への階段を進んでいくのだった。
●○●○●
長い長い石造りの階段は、ところどころ人が通ると反応する魔力石が光り、足元を照らしてくれている。
カタリナお母様の部屋は屋敷の二階だったが、階段の長さを考えるとすでに地下へと潜るほど長く続いているようだ。
薄暗い中、どんどん下へ降りていくとやがて、扉が見えてきた。
まさかこの扉にも鍵が付いていたら、と懸念したがこの扉には鍵はなく、ギギィーという錆びついた音と共に容易に開く事ができた。
そしてその中にあったのは――。
「こ、これはなんとも奇怪な……!」
先頭を歩いていたドルバトスが声をあげ、
「お、お姉様……これって……」
ドリゼラが怯えた声を出し、
「カタリナ奥様、よもやこのような……」
マーサが顔を歪め、
「……想定以上の闇を暴いてしまったかもしれないな」
私も眉をひそめて呟く。
目の前に広がっている光景。
そこはあったのは、数多くのガラスのケージに入れられている大小様々な動物たち。
そしてそれを解剖か拷問でもするような器具や設備。
いくつかのベッドのようになっている木造りの机の上には、染み込んだ血痕。
見た事もないような形状のフラスコやシリンダー、シャーレが数多くの並べられている。
「まるで実験室だな……みんなも気をつけて入れ。何か壊したりしてしまうと後々お母様にバレてしまうからな」
私はそう言いながら部屋の中を慎重に物色していく。
「この部屋は一体なんなんですの……? お母様は一体ここで何をなさっているの……?」
ドリゼラは怯えたままの顔で呟く。
「デレアお嬢様! こちらに!」
そんな時、ドルバトスが部屋の隅の方で声をあげた。
私たちはドルバトスが呼んだ方へと近づくと、そこにあったのは鉄格子のケージの中に眠るように倒れている一人の少女の姿があった。
着せられている服装こそ貴族令嬢が寝巻きとして着る良い素材の物ではあったが、重そうな足枷を付けられている少女はまるで奴隷のようにも見える。歳で言えば私かフランと同じくらいの十代半ばと言ったところか。
それにしても、まさか人までいるとは……。
「そんな……お母様は人攫いでもしていたというの……? 一体ここで何をしているというの!?」
ドリゼラが大きく不安を募らせている。
しかしそれよりも驚愕していたのは、
「な、なんて事でございましょうか……」
マーサだった。
マーサは倒れている少女を見て目を見開いている。
「こ、この子は……この子はリビアでございます」
「マーサ、リビアとは誰だ?」
私が尋ねると、
「リビア・ドルクセン。今からおよそ七年前にリフェイラ家の侍女見習いとして雇い、その数日後、お屋敷の庭にある大井戸に転落し、死亡したとされる子爵家の娘でございます」
マーサは震えながらそう答えた。
ドルバトスが少し汗をかいて息を吐いた。
「さ、さすがに疲れましたわ……」
ドリゼラも披露の色をその顔に出している。
それもそのはず、二人には七十八冊にも渡る魔導書に魔力反応を起こしてもらったわけだからだ。
休み休みとはいえ、これほど魔力の精製を行なうのは中々に至難の技だ。ドルバトスは年の功もあってそれなりに魔力を蓄えているし、ドリゼラには天才的な魔力量があるからこそ出来た荒技である。
「よくやってくれたドリゼラ、ドルバトス。だがここからが本番だ。ドルバトス、特にお前にはまた水魔力を流してもらわなくてはならない。できるか?」
「ええ、まだなんとか。それよりデレアお嬢様の方はどうでしょうか?」
「ああ、問題ない。全ての魔導書に込められている水魔力量を完全に把握した」
「さ、さすがですわ……お姉様……」
ドリゼラは近くにあった椅子に座り込んで答えた。さすがに十二歳のドリゼラには負担が大きかったか。
「少し休んでいろドリゼラ。さて、それじゃあドルバトス、いいか?」
「はい、デレアお嬢様」
「ではまず上から二段目、左から十二冊目の魔導書に0.001mg/MHを流してくれ。その次は……」
私の指示に従ってドルバトスが術式魔導書をひとつずつ解除していく。
その様子をマーサとドリゼラの二人が見守っている。
それにしてもここまで念入りな量の術式魔導書で鍵を掛けるという事は、この裏にある事実は相当に重大であるという事だ。
私たちは本当にこの闇を暴いてしまっていいのだろうか。
この事がきっかけでドリゼラたちの平和も壊してしまったら……。
そんな不安もよぎったが、しかし私の探究心がこの裏の真実を知りたがっているのもまた事実。
私の脳は……強欲だ。
「よし、次で最後だ」
そんなこんなで七十八冊の魔導書全てを順番通りに水魔力を適正量流す事に成功した。
最後の魔導書にドルバトスが水魔力を流した直後、書架全体が淡い水色の魔力を纏い、そして予測通り棚が右側へとスライドしていく。
「本当にカタリナお母様の書架の裏に隠し通路が……」
「驚きましてございます……」
ドリゼラとマーサが声をあげた通り、ぽっかりと口を開けたような入口が現れた。
「ああ。本当にあったな」
「デレアお嬢様、この隠し通路についてもそうでございますが、私めが何よりも驚かされたのはデレアお嬢様のその記憶力でございます。まさか魔力の感覚をここまで正確に、しかもこの量の本を全て覚えているというのは……」
「ふふん、マーサ! 驚いたかしら!? これがデレアお姉様の実力なんですのよ! デレアお姉様に不可能なんてないんですわ!」
何故か鼻高々にドリゼラが答えている。
「まあ、それくらいしか私には取り柄がないからな」
「いえ、デレアお嬢様。これは取り柄というレベルではなく、一級魔導師と同等クラスに驚異的な能力なのでは……?」
ドルバトスも驚愕し、そんな事を言い出してしまった。やはり少しこれは過剰に力を見せてしまっただろうか。
「……ここだけの話、私は少しだけ記憶力がいいんだ。だが、あんまり目立ちたくないからこの事は他言しないでもらえるとありがたい」
私は適当に誤魔化す。
それよりもこの先だ。
隠し通路は地下へ続くように階段が下っている。
ここからでは底が見えないほどに。
「さあ、早く進もう。あまり長い時間マーサとドルバトスの二人がいないのは他の使用人たちも怪しむかもしれないし、カタリナお母様の部屋の前にいるフランにも申し訳ないからな」
「ええ、お姉様。カタリナお母様が帰ってくるのはおそらく明日の晩ですけれど、書架も元に戻さなくてはなりませんものね」
私たちは頷き、地下への階段を進んでいくのだった。
●○●○●
長い長い石造りの階段は、ところどころ人が通ると反応する魔力石が光り、足元を照らしてくれている。
カタリナお母様の部屋は屋敷の二階だったが、階段の長さを考えるとすでに地下へと潜るほど長く続いているようだ。
薄暗い中、どんどん下へ降りていくとやがて、扉が見えてきた。
まさかこの扉にも鍵が付いていたら、と懸念したがこの扉には鍵はなく、ギギィーという錆びついた音と共に容易に開く事ができた。
そしてその中にあったのは――。
「こ、これはなんとも奇怪な……!」
先頭を歩いていたドルバトスが声をあげ、
「お、お姉様……これって……」
ドリゼラが怯えた声を出し、
「カタリナ奥様、よもやこのような……」
マーサが顔を歪め、
「……想定以上の闇を暴いてしまったかもしれないな」
私も眉をひそめて呟く。
目の前に広がっている光景。
そこはあったのは、数多くのガラスのケージに入れられている大小様々な動物たち。
そしてそれを解剖か拷問でもするような器具や設備。
いくつかのベッドのようになっている木造りの机の上には、染み込んだ血痕。
見た事もないような形状のフラスコやシリンダー、シャーレが数多くの並べられている。
「まるで実験室だな……みんなも気をつけて入れ。何か壊したりしてしまうと後々お母様にバレてしまうからな」
私はそう言いながら部屋の中を慎重に物色していく。
「この部屋は一体なんなんですの……? お母様は一体ここで何をなさっているの……?」
ドリゼラは怯えたままの顔で呟く。
「デレアお嬢様! こちらに!」
そんな時、ドルバトスが部屋の隅の方で声をあげた。
私たちはドルバトスが呼んだ方へと近づくと、そこにあったのは鉄格子のケージの中に眠るように倒れている一人の少女の姿があった。
着せられている服装こそ貴族令嬢が寝巻きとして着る良い素材の物ではあったが、重そうな足枷を付けられている少女はまるで奴隷のようにも見える。歳で言えば私かフランと同じくらいの十代半ばと言ったところか。
それにしても、まさか人までいるとは……。
「そんな……お母様は人攫いでもしていたというの……? 一体ここで何をしているというの!?」
ドリゼラが大きく不安を募らせている。
しかしそれよりも驚愕していたのは、
「な、なんて事でございましょうか……」
マーサだった。
マーサは倒れている少女を見て目を見開いている。
「こ、この子は……この子はリビアでございます」
「マーサ、リビアとは誰だ?」
私が尋ねると、
「リビア・ドルクセン。今からおよそ七年前にリフェイラ家の侍女見習いとして雇い、その数日後、お屋敷の庭にある大井戸に転落し、死亡したとされる子爵家の娘でございます」
マーサは震えながらそう答えた。
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