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一章 ”アルバス王国と騒乱” の段

15話~目と鼻の先で

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 麗らかな日差しが降り注ぐ森林。どこの世界でも太陽と言う名の恒星が齎す命の恵みは暖かく、活気溢れる大地には今日も今日とて命の廻り合わせが其処彼処そこかしこで行われている。軽やかにそよぐ風は木の葉を揺らし、空から滴る飛沫は小川となりて万物に恵みと糧を届ける。

 そして……そんな力強い大自然の間から飛び出し地を駆ける影が一つ。

『ヴァア゛ア゛ア゛ァァァァッ!!』

「きゃあぁぁぁっ!?」

「……もう~、本当にしつこい奴に捉まっちゃったもんだね」

 いや、一つ二つ三つと……合わせて三つの影が大地を駆け、岩場の間を飛びまわり旋風つむじかぜの様に駆け抜けて行きました。

「クルルルアァァッ――――」

 先頭を走るは毎度おなじみ”ぽっちゃり少年”こと僕、奏慈。追われている状況で後ろに担いでいるのも心臓に悪いかと風呂敷結界を前抱きにして抱え込み、それでも中で叫び声を上げているのは昨日助けたアルバス王国国王第二王妃のエルヴィーラさんだ。

「――クゥアッ!!」

「ちょっ――あっ熱ぃ~!!」

 そして、僕の頭にしがみ付いたまま巨大な岩塊をも蒸発させる威力の火炎弾を、可愛らしい乳歯が覗くお口から放つ幼竜さんは龍帝さんである。熱波が直に当たって頭が熱いです、はい。

『グゥヴァアアァァァッ!?』

 さらに、その火炎弾を見事顔面で受け止めたのは僕らをしつこく追いまわしている狼型の邪気――――の一匹である。
 岩場の影から次々に現れては僕の霊拳や龍帝さんの火炎弾を受けて浄化される狼型の邪気御一行。元は大きな群れを成す一団であったのだろう、その数は幾ら滅しても限が無いほどにも思える。
 そして、生前の習性だろうけどとにかくしつこくて狡猾に迫ってくるのが特徴だね。

「もしもし、ちょいとそこの龍帝さんや? 幾ら僕でも頭の上で炎を吐かれたら熱いんだからね……!」

「クルルゥ……クィ!」

 僕の頭皮を野焼きにしかけた龍帝さんは”しまった” と言う顔をしながらも素直に頭を下げた。実におりこうさんである。
 が、しかしだ。口から火を吐かれる度にまる焦げにされていては、僕の毛根さんがいずれ御逝きになられてしまう。此処の所はしっかりと注意をしておかないとね、この歳でつるっつるはご勘弁だよ。

「あの、そ、奏慈君? 今襲ってきているのは獰猛な魔物で有名なガエル・ウルフの変異体みたい、だからきっとまだ近くに幾らでも居るから気をつけ――」

『グルルルアァァッ――――ギャンッ!?』

「――きゃあっ!?」

 背後の岩陰から僕の首筋目掛け飛び出てきたガエル・ウルフの邪気の鼻っ面に裏拳をかまして身体を砕き滅し、手早く印を結んで御霊を結界で覆い囲む。
 急いでいるからと走り回っていたのが仇となって、邪気達を調子に乗らせてしまったみたいだね。……先程の攻撃も明らかにエルヴィーラさんを付け狙っていて、事のついでに僕達ごと始末する為の一撃。

 ……そろそろ纏めて片付けますか!

「ちょっと揺れますけど御勘弁……そいやっ!」

「ええっ!?」

 彼女の驚きに満ちた声を聞く間も無く空高く放り上げる。ひゅーんと勢いよく上がっていく結界にはついでと言わんばかりに龍帝さんもくっ付けて置いた。

 獲物目掛け次々と岩陰から飛び出してくる事ニ十七匹の邪気を捉え、両の掌に霊力を集め心静かに親指を二本共に掌へと折り曲げる。左手を胸の前で固定し合掌の形を取りつつ右手を離し、両足を踏ん張らせて素早く左手を打つ。

 瞬間、霊力の波動が拍手を打つ音よりも先に伝播し、僕を中心とした半径四十メートル程を蒼白い光の輪が貫き物質を透過して邪気の身体を打ちのめした。

 次いで小気味の良い破裂音が耳を打ち、それに合わせて右手に岩場から大地の霊力を集め凝縮していく。左手には大空を吹く風の霊力を集め、これまた凝縮しニ打目を決めるべく気合を籠めて言霊を発す。

「……拍手印”滅ノ型”はくしょういんめつのかた 破邪昇天!!」

 右手に集約し圧縮した霊力を岩塊へと変化、左手に集約し高速回転する旋風の中に衝き込む形で拍手印と成す。衝き込まれた超硬度の岩塊は破砕機に掛けられたレンガ屑の様に細かく砕かれ、尚も高速で回転する旋風の中に深く深く溶け込んでいく。

 岩塊の全てが物のコンマ零秒で砕け散ったその時、拍手印”滅ノ型” は完成するのである。

”岩風霊拍手”がんぷうれいはくしょう ――滅っ!!」

 両の掌から解き放たれしは岩の風、全てを砂塵へと帰す破邪の旋風。この力が二打目の拍手によって解き放たれ、僕を中心に大きな岩石の混じった竜巻を形作りガエル・ウルフの邪気達を根こそぎ破砕する。

 断末魔の声を上げる事も無く浄化されていくニ十七匹の邪気達から次々と御霊が飛び出し、それらを手元に引き寄せ結界で囲えば事は終わりだね。

 竜巻の形故にちょうど真上は台風の目の如くぽっかりと青空が覗く。嵐の過ぎ去った後の青空の様に御天道様が輝く姿を影に、先程空へと放り投げたエルヴィーラさんが龍帝さんと共に降ってきた。

 遊園地のアトラクションか、将又お父さんの必勝あやかし技”高い高~い”とでも思っているのか、良い笑顔で小さな両手足を振り回しはしゃぎながら落ちてくる龍帝さん。尻尾をパタパタと振る様はとても愛らしく、今の今まで戦闘があったとはとても思えぬ程ご機嫌だよ。

「――……きゅ~」

 おおう、何と言うお約束なお言葉。きゅ~なんて言いながら気絶している人はこれで通算三人目だよ。

 術の影響かものの見事に意識を手放していらっしゃるエルヴィーラさんが降って来たのを、胸に抱きかかえる形、言わば御姫様抱っこでキャッチ。
 結界の中に手を入れて頬を数回優しく叩き、意識の覚醒を促しつつ目立った怪我が無いか確認を済ませた。

 密かに自慢の結界術で囲っていた御蔭で外傷は無い。むしろ、これで本当に邪気の襲撃を受けたのかと疑われるくらいには服装も綺麗だね。うん、百点満点!









 それから数秒もしない内に無事に目を覚ましたエルヴィーラさんに感謝と少しばかりの抗議の声を頂き、改めて結界術で以って風呂敷担ぎを再開。
 一路王都へ向けて歩を進めるのでありましたとさ。

「でも、このバチム平野には比較的におとなしい獣達しか居ないはずだったのだけれど……邪気に侵されるとこうも攻撃的になるのね」

「へえ~、ガエル・ウルフって大人しい方なんですか?」

 御話によれば岩場であるバチム平野に棲んでいる獣の多くは、生存競争の厳しい森や草原などと違いちょこちょことある資源を分け合って暮らすとの事。僕ら地球の常識で言えば、その貴重な資源の取り合いで逆に生存競争が激しいイメージがあるが、この世界のこの場所では勝手が違う様だ。

 ただ、例外として変異を遂げてしまった個体に関してはその限りではないとの事。この変異と言うのは勿論邪気に変質してしまった事を表すんだって。
 そして、変異を遂げてしまった獣を総じて魔物と呼び、さらに強い個体に関しては瘴気の化け物と言うとの事。所謂、強さの番付みたいなものだろうね。

「クゥア?」

「ほ~ん、成る程ね」

 龍帝さんがフンフンと匂いを嗅いでいるので釣られて見れば、岩陰などに小さな蜥蜴や茶色い角の生えた兎、それに擬態していた昆虫などが少ない湧いている清水を分け合って飲んでいた。
 しかも、ガエル・ウルフ等に至っては狼であるにもかかわらず草花が主な食べ物……それって本当に狼? と突っ込みを入れたくなるね。

 まあ、それは兎も角。少なくともこのバチム平野って地域に生息する獣や昆虫は助け合って共生している様だ。
 もしかしたら、邪気が関わっている所為で作られた環境かもしれないね。

 ちょこちょことこの地域周辺、それもアルバス王国首都グラティエムの周りの事情を聞きつつバチム平野の中を走る。岩から岩の間を跳び、一度思いっきり跳び上がって辺りを確認してみれば薄っすらとではあるが遠くに巨大な人工の石壁を捉えた。

 現在の場所としては平野全体の三分の一半ば……。今少しすればお天道様が真上に上りきる所からして、後一刻もあれば何とか王都の石壁前まで辿り着けるだろうね。

 再び岩場に舞い降りた僕達は一旦お昼休憩を取った後に大自然の厠で一息入れた。簡易的な便器を霊力を使って作り出し、男女別に少し間隔を開けて設置した。
 勿論、便器周りは不可視の結界を張って外からは音も中の様子も窺えない様に配慮しておくのも忘れない。

「これは助かるわ……それじゃあ早速お借りするわね」

「どうぞどうぞ」

 にこやかな顔で即席厠へ入るエルヴィーラさんを見たら、ここで休憩を挟んでおいて良かったと感じる。

 厠って物はやっぱり大事な個人空間だからね。人が近くに居たり、物音が聞こえたり聞かせちゃったりと……。そんな事を気にしていたら出るものも出ない! と、昔あーちゃんと月姉から修行の旅路の先で力説されたからね。十歳の僕が一晩かけて編み出したのがここでも役に立ってる訳だ。

 そう言えば紙が無いから普通の女性にとっては今一だろうけど、彼女は一応先代の巫女さんだからね。入る前に心配無用ですって話していたから、水の魔法でも使ってうまく処理してくれるだろう。

 いらぬ気遣いとは思いつつも足は自然と厠から離れる形で動き出す中、これからの展開を頭で思い描き一つ頷く。
 王都では九ちゃんと志乃さんが上手く忍び込んでいるに違いない。王城か近くに拠点を置く為にもフォルカさん達と連絡を取りたい所だけれど、……こっちは目立つ人と竜が居るからな~。敵が潜んでいる中でおいそれとエルヴィーラさん達を王城へと近づけれるのも危険値が高い、か。

 出来るだけ少人数で気付かれずにとは申しても、現状信義に厚い人達は略全て狙われているだろうから結構絞られてくる。

 今回、志乃さんへの拝謁と助力を賜る旅に出た面子は略略精鋭を集めたといっても過言じゃない、と部隊員の兵士さん達は話していた。唯一の例外が補給要員として従軍してたカリムさんと、入隊暦で一つ先輩の兵士トルパさんだけ。
 何故ですか? と聞いたら、割ける上で扱いやすい人材が現状二人しか居なかったとの返答を貰った。扱いやすいというのは指揮系統上と人格も含めてだそうだけど、やはり人材面で相当にアルバス王国は疲弊していると見ていいかもしれない。

 だとしたらだ。精鋭として集まっていた兵士の方々は其々の部署、もしくは編隊へと戻されちゃう可能性が高いよね。流石に昨日の今日で通常復帰する事は無いだろうけど、急ぐに越した事は無いと言える……。

「ふ~ん、とすれば補給要員の二人から何とか連絡を取り付けてもらうしかないかな?」

 大きな岩に背を預け、独り言のように思案を纏めるべく口に出す。どれこれもが今一つな上に確実性も無いと来たもんだ、やはり一人で動くには厳しいね。

「クィ?」

「ああ、龍帝さん。初めての厠はどうだった? すっきりしたかい?」

 大凡の当てを付けた所で男性用即席厠から龍帝さんが出てきた。これまでの旅路で彼が用を足している様子が無かったが、ここに来て便秘に苦しむ婦女子の皆さんが如く突如便意を催したらしく。お腹を抱えながら苦しい顔で袖を引っ張ってきたんだ。
 そう言う事も相まって今回は厠を作ったんだけれど、どうやら御気に召したご様子。眼を細めて厠後の爽快感に浸ってるね、昔従兄弟のお世話をした時を思い出すよ。

「――奏慈君、私はもう大丈夫よ」

「それは行幸でしたね」

 これまた晴れやかな面持ちで声を掛けてきたエルヴィーラさんに答えれば、満面の笑みでお礼を述べられた。
 とりあえず結界を解く前に中の便器を地面へと還し、体から出た物を岩を砕いて砂上にしたもので包み地中深くへと埋めれば完了。思案の結果をエルヴィーラさんと龍帝さんに伝えつつ僕は自分が用を足すのを忘れていた事を出発まで気付かなかったのでした。

「――さ、さてと、目指す王都は目と鼻の先だ。着いたら先ずは人探しから始めますか!」

「ええ」

「クルルルィ!」

 王都までお尻が持ってくれます様に……急げ!?

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