始まりは、全てが闇に包まれて

女の悔恨はその地へと

第三十三話

『ここはきょうのみやこのたかおかみのかみのおわす、きふねじんじゃだよ』

“きょうのみやこ”…って事は…

「ここ京都か！？」

思わずあげた驚愕の声に狐達が頷く。

『たぶんじっさいにきょうとにきたわけではないとおもう』

四尾の言葉に五尾が続ける。

『けっかいのなかだけだとおもうからたぶんこんかいのことはきふねじんじゃにかんするものなんじゃないかな』

「貴船か……」

京都の貴船と言えば……

「丑の刻参りか…」

『うん、たぶんそうだとおもう』

『きふねでゆうめいなものといえばそれだからね』

「つまり呪詛を行ってるやつが居ると」

馬鹿なやつも居たものだ…

人の命さえも脅かす呪詛を行って、自分がただで済むわけなかろうに

頭の中をリセットするかのように一度息をつく。

「さて、これからどうする。稗田はここらには居なさそうだぞ」

『うーん…ここにいるのはまちがいないんだけど…』

けど？

『なんだか、おかしいんだ。やちのけはいが』

「稗田の気配…？」

『うん、なにか、へんなものがいりまじっているような…』

変なものが…入り交じっている？

「どういう事だ…？」

『わからない…とにかくいじょうだってことしか…』

異常ね…まず妖の結界の中に居るってだけでも異常なのに、それ以上おかしな事が起きてる可能性が高いって言うのか…

思わずため息をつく。

「取り敢えず、勘でも良いから探してみるか」

『そうだね、ここにとどまっててもしかたないし！』

「六根清浄 急急如律令」

念の為五感と第六感を研ぎ澄ます事にした。

人探しには恐らくこれが手っ取り早い。

そして俺達は今居る神社の境内を降りる事にした。

何で降りる事にしたかって？

何もわからない今の状況で頼れるのは己の勘のみ。

つまりはなんとなくだ。

降り始めて数十分経った頃、釘を打つ音が聞こえた。

「俺の勘も、多少は当たるみたいだな」

少し嬉しくなった。

それから十分もせずに音は大きくなった。