始まりは、全てが闇に包まれて

女の悔恨はその地へと

第二十六話

「神話の裏で起きてた事を知ってるのは叶乃ちゃんが巫《かんなぎ》だからだよ」

かんなぎ…？

「やっちゃんが何それ、って顔してるねぇ」

会長は余裕のある笑みを浮かべている。

…さっきまで余裕なんて全く見えなかったような……

うん、さっきの事に突っ込むのはやめておこう…

「稗田、お前巫も分からないのか…」

碧君が呆れた眼をして私を見る。

「知らないものは知らないよ…」

だからそんな眼で見られても困る。

「ああ、大丈夫大丈夫。ちゃんと俺が説明してあげるから」

会長が宥めるように言う。

「いや、真人はよく余計な事を言うから私が説明する」

如月先輩が食い気味で言う。

会長がえ、という顔で如月先輩を見る。

これぞまさに瞬殺。

会長の申し出を一刀両断に…

如月先輩恐ろしや…

「という事で気を取り直して巫について説明するね。巫っていうのは神をその身に降ろす、所謂《いわゆる》神憑り《かみがかり》をする女性の事を言う。で、私がその巫の力を使って神の言葉を代弁したりとかして神話の裏の話を知ったの」

あ、因みに神憑り中の事はちゃんと覚えてるよ、と付け加えて説明は終わった。

端的でかなり分かりやすい説明だったな…

「まだ聞きたい事はある？」

如月先輩が私達を見て聞く。

碧君が少し考える素振りをして口を開いた。

「因みにですが、神の“子”の見当はついているのですか？」

碧君の質問に如月先輩は少し困ったような笑みを浮かべて答える。

「うーん…まあついてることにはついてるんだけどね…」

え、ついてるんだ

「ほら、何も情報が無いって言ったでしょ？だから見当と言うより候補が何名か上がっているの」

如月先輩の答えに碧君がまた質問をする。

「それは誰ですか？」