100のキスをあなたに

菅井群青

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33.物置

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「ちょっと……くっつきすぎじゃない?」

「ふざけんな。こっちだってもうキツキツだ」

 暗闇の中、悪友の智也と物置に隠れている。実は今……大学生にもなって全力でかくれんぼをしている。

 今は夏休みだ、夜中にサークル仲間と集まったのはいいが懐かしい遊びをしたいと誰かが言い出しこうして大学内でかくれんぼをする事になった。

 誰も来ないと思っていたこの倉庫に隠れてしばらくすると誰かがやってきて慌てて物置のドアを開けた。

 ガラッ

「……は?」

「……あ?──やべ、詰めろ!」

「ちょっと! 無理だって!」

 智也は私と目が合うと一瞬驚いたようだが鬼の足音が聞こえたのかあわてて物置に入りドアを閉める。
 元々割と荷物が入っていたので一人でもキツキツだったのに今は智也が入り身動き取れないほどだ。慌てて飛び込んだので向かい合わせで抱き合うような形になってしまった。胸同士がくっつき智也の首筋に私の顔が当たる。
 首筋から智也のシトラスの香りがする。

「あれ? なんか物音しなかった?」

「いや? ここはいないでしょ。蒸し暑いし……」

 鬼の二人が痴話話をしながら立ち去っていく。

 ドッドッドッ──。

 どっちの心臓の音?
 こんなに早く脈打つなんて……まるで、まるで──。

「なぁ……お前俺のこと好きなの? 脈早すぎじゃない?」

 智也の声に声が上ずりそうになりながら舌打ちをする。

「ば、ばっかじゃない? あんたの心臓の音よ!」

「……そうか?」

 智也は物置のドアを開け放つと私の腕を引き外へと連れ出す。私の顔を見て智也が息を飲む。

「お、お前……その顔……」

「え?」

 頰に触れると真っ赤になっているのだろう驚くほど熱い。そういう智也の顔は私の顔を見てからみるみる染まっていく。まるで赤色が色移りしたようだ。

 智也は私に近づくとそのまま顔を傾けキスをする。そのまま何度も角度を変え押し付ける。私は智也の胸元のシャツを握りしめそれに応える。

 智也は私の頭を抱えると舌を出し激しく口付けをする。歯列を割り侵入して深く絡めていく。歯止めが効かない。暗闇の中窓から入る月明かりだけが私たちを照らしていた。

 ゆっくりと智也が離れていく。名残惜しい……。

「そんな顔するなって……止まんなくなるだろが……煽り上手ですかこの野郎」

 いつもの調子で智也が話しかける。
 私はその頰に触れてやるとビクっと智也が反応した。

隠れなきゃね、智也……」

「次の回……またこの物置にかくれるぞ……」

 そう言って智也は笑った。
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