32 / 40
32.愛を
しおりを挟む
昨晩、やはり傘一本では豪雨から守りきれず大輝たちはずぶ濡れだった。涼香も白のブラウスが濡れてしまいさすがにこの状態で電車に乗る訳にもいかずそのままタクシーを捕まえて大輝の部屋にやってきた。
大輝は濡れた服を脱いで温まるように言うと涼香を風呂場へ押し込んだ。そのまま部屋で前回貸した服を取り出すと洗濯機の上に置いてきた。大輝はそのまま部屋でスーツを脱ぐ。髪も濡れている。
いい大人がキスに夢中になってずぶ濡れになるなんて何やっているんだろうか……。それほど、キスに酔っていた。
やばい……どハマりしている……涼香ちゃんに……。
告白の返事は、結局聞けずじまいだ。
キスをしたが……涼香ちゃんはあの元彼と色々あったばかりだ、しかも俺の事を心友として思ってくれていたはずで……あれ、キス、してよかったのか?
涼香ちゃんは……俺のこと少しは男として見てくれているんだろうか……。男のくせにとか言われようがしょうがない。恋愛の仕方なんか、忘れた。
もう何年もそんな駆け引きとは無縁だ。考えるだけで動悸がひどいし、キスだけで酔う、今だって涼香ちゃんのシャワーの音だけで焦っている……みんな、どうやって恋愛しているんだ?
ただ、そんな俺でもわかる、涼香ちゃんに手を出してはいけない。欲情してはいけない。無理やり寝るのはドラマの世界だけだ。現実世界でそんなことする男はいない。
「こんなに、難しかったか……」
大輝はタオルを頭から被るとガシガシと拭く。そのままぴったりくっついたズボンを引き抜くとスウェットを履く。そのままタオルを肩から掛け台所へ向かう。
確か買い置きしていた水のペットボトルがあるはずだ。そのまま屈んで探していると風呂場から涼香が出てきた。
大輝と目が合うと涼香は目を開き真っ赤になっている。
どうしたのだろう……風呂上がりだからか?
「早かったな、寒くないか?」
「……い、いや……大輝くんのほうが、寒そうだけど」
涼香の言葉に自分の上半身が裸なことを思い出す。しまった、いつも一人だから当たり前になっていた。
「……あ、ごめ……服──」
大輝が立ち上がり涼香に水のペットボトルを手渡すと服を取りにクローゼットへ向かう。
「待って……」
涼香の手が大輝の腕を掴む。その手は温かかった。
「大輝くん、あの──あの、あのね? ちゃんと言わないといけないと思って……その、私、大輝くんが好きなの」
「え、ええと……え? まじで?」
涼香が真っ赤な顔で頷く。
「最初は、希さんを思う大輝くんに幸せになってほしいって思ってて、話を聞いていて大輝くんが次に恋する人が気になって、それが私ならって、思うようになって、希さんの話を聞いて羨ましいなぁって思ったり、敵わないって思ったり……でも、大輝くんを抱きしめて胸の中に抱きとめてあげられるのは私なんだって、思ったり……今思えば、恋してたんだなって……武人の気持ちで分かんなくなってたけど……いま、私、大輝くんが、好き、です」
涼香ちゃんの必死な思いが伝わって声が出ない。だって、俺と似てたから。ゆっくりと惹かれていったんだ、俺も。
涼香の頰に優しく触れると猫のように涼香がその手に擦り寄る。大輝はそのまま優しくキスをすると涼香は嬉しそうに笑った。
大輝は涼香の腕を取りベッドへと向かった。涼香と大輝はベッドの上で手を取り合い見つめ合ったままだ。
「……怖い?」
「……ちょっとだけ。大輝くんも怖い?」
大輝は涼香の手の甲を親指で撫でる。
「ちょっとだけだ、ほんのちょっと……」
大輝は涼香を抱きしめる。涼香もその背中にそっと手を伸ばす。大輝の背中の筋肉を感じるとそっと撫でる。
大輝はそれだけで欲情する。
さっきまでの一線を越える緊張や不安がどこかへと飛んでいく。涼香を優しく抱きたいと思っているのに本能が蠢くのが分かった。
あ、ダメだ……もう、限界……。
大輝は涼香にキスをした。その瞳は潤んでいた。
「ゴメン、なんか、もう……」
「うん……いいの、大丈夫だよ」
二人はそのまま愛し合った。幸せだった。溶け合うって表現が正しい。涼香も、大輝も、ただお互いの存在を感じあった。
朝方、大輝が目を覚ますと目の前に黒髪が見える。涼香が大輝に背中を向けて眠っている。綺麗な髪に手を伸ばすと曇った声が聞こえた。
「ん……」
一瞬そのまま手を引っ込めたが起きないようなのでそのまま髪を手櫛で解いてやる。そのまま後ろに流すと首から肩が見えた。
明るいところで涼香の肌を見るのは初めてだ。大輝はその首から肩にかけてそっと撫でる。涼香の温もりが愛おしくてそのまま後ろから抱きしめた。肌の温もりが心地よくてそのまま目を閉じた。
大輝は濡れた服を脱いで温まるように言うと涼香を風呂場へ押し込んだ。そのまま部屋で前回貸した服を取り出すと洗濯機の上に置いてきた。大輝はそのまま部屋でスーツを脱ぐ。髪も濡れている。
いい大人がキスに夢中になってずぶ濡れになるなんて何やっているんだろうか……。それほど、キスに酔っていた。
やばい……どハマりしている……涼香ちゃんに……。
告白の返事は、結局聞けずじまいだ。
キスをしたが……涼香ちゃんはあの元彼と色々あったばかりだ、しかも俺の事を心友として思ってくれていたはずで……あれ、キス、してよかったのか?
涼香ちゃんは……俺のこと少しは男として見てくれているんだろうか……。男のくせにとか言われようがしょうがない。恋愛の仕方なんか、忘れた。
もう何年もそんな駆け引きとは無縁だ。考えるだけで動悸がひどいし、キスだけで酔う、今だって涼香ちゃんのシャワーの音だけで焦っている……みんな、どうやって恋愛しているんだ?
ただ、そんな俺でもわかる、涼香ちゃんに手を出してはいけない。欲情してはいけない。無理やり寝るのはドラマの世界だけだ。現実世界でそんなことする男はいない。
「こんなに、難しかったか……」
大輝はタオルを頭から被るとガシガシと拭く。そのままぴったりくっついたズボンを引き抜くとスウェットを履く。そのままタオルを肩から掛け台所へ向かう。
確か買い置きしていた水のペットボトルがあるはずだ。そのまま屈んで探していると風呂場から涼香が出てきた。
大輝と目が合うと涼香は目を開き真っ赤になっている。
どうしたのだろう……風呂上がりだからか?
「早かったな、寒くないか?」
「……い、いや……大輝くんのほうが、寒そうだけど」
涼香の言葉に自分の上半身が裸なことを思い出す。しまった、いつも一人だから当たり前になっていた。
「……あ、ごめ……服──」
大輝が立ち上がり涼香に水のペットボトルを手渡すと服を取りにクローゼットへ向かう。
「待って……」
涼香の手が大輝の腕を掴む。その手は温かかった。
「大輝くん、あの──あの、あのね? ちゃんと言わないといけないと思って……その、私、大輝くんが好きなの」
「え、ええと……え? まじで?」
涼香が真っ赤な顔で頷く。
「最初は、希さんを思う大輝くんに幸せになってほしいって思ってて、話を聞いていて大輝くんが次に恋する人が気になって、それが私ならって、思うようになって、希さんの話を聞いて羨ましいなぁって思ったり、敵わないって思ったり……でも、大輝くんを抱きしめて胸の中に抱きとめてあげられるのは私なんだって、思ったり……今思えば、恋してたんだなって……武人の気持ちで分かんなくなってたけど……いま、私、大輝くんが、好き、です」
涼香ちゃんの必死な思いが伝わって声が出ない。だって、俺と似てたから。ゆっくりと惹かれていったんだ、俺も。
涼香の頰に優しく触れると猫のように涼香がその手に擦り寄る。大輝はそのまま優しくキスをすると涼香は嬉しそうに笑った。
大輝は涼香の腕を取りベッドへと向かった。涼香と大輝はベッドの上で手を取り合い見つめ合ったままだ。
「……怖い?」
「……ちょっとだけ。大輝くんも怖い?」
大輝は涼香の手の甲を親指で撫でる。
「ちょっとだけだ、ほんのちょっと……」
大輝は涼香を抱きしめる。涼香もその背中にそっと手を伸ばす。大輝の背中の筋肉を感じるとそっと撫でる。
大輝はそれだけで欲情する。
さっきまでの一線を越える緊張や不安がどこかへと飛んでいく。涼香を優しく抱きたいと思っているのに本能が蠢くのが分かった。
あ、ダメだ……もう、限界……。
大輝は涼香にキスをした。その瞳は潤んでいた。
「ゴメン、なんか、もう……」
「うん……いいの、大丈夫だよ」
二人はそのまま愛し合った。幸せだった。溶け合うって表現が正しい。涼香も、大輝も、ただお互いの存在を感じあった。
朝方、大輝が目を覚ますと目の前に黒髪が見える。涼香が大輝に背中を向けて眠っている。綺麗な髪に手を伸ばすと曇った声が聞こえた。
「ん……」
一瞬そのまま手を引っ込めたが起きないようなのでそのまま髪を手櫛で解いてやる。そのまま後ろに流すと首から肩が見えた。
明るいところで涼香の肌を見るのは初めてだ。大輝はその首から肩にかけてそっと撫でる。涼香の温もりが愛おしくてそのまま後ろから抱きしめた。肌の温もりが心地よくてそのまま目を閉じた。
1
お気に入りに追加
189
あなたにおすすめの小説
逆襲のグレイス〜意地悪な公爵令息と結婚なんて絶対にお断りなので、やり返して婚約破棄を目指します〜
シアノ
恋愛
伯爵令嬢のグレイスに婚約が決まった。しかしその相手は幼い頃にグレイスに意地悪をしたいじめっ子、公爵令息のレオンだったのだ。レオンと結婚したら一生いじめられると誤解したグレイスは、レオンに直談判して「今までの分をやり返して、俺がグレイスを嫌いになったら婚約破棄をする」という約束を取り付ける。やり返すことにしたグレイスだが、レオンは妙に優しくて……なんだか溺愛されているような……?
嫌われるためにレオンとデートをしたり、初恋の人に再会してしまったり、さらには事件が没発して──
さてさてグレイスの婚約は果たしてどうなるか。
勘違いと鈍感が重なったすれ違い溺愛ラブ。
【完結】伯爵の愛は狂い咲く
白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。
実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。
だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。
仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ!
そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。
両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。
「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、
その渦に巻き込んでいくのだった…
アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。
異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点)
《完結しました》
拝啓、大切なあなたへ
茂栖 もす
恋愛
それはある日のこと、絶望の底にいたトゥラウム宛てに一通の手紙が届いた。
差出人はエリア。突然、別れを告げた恋人だった。
そこには、衝撃的な事実が書かれていて───
手紙を受け取った瞬間から、トゥラウムとエリアの終わってしまったはずの恋が再び動き始めた。
これは、一通の手紙から始まる物語。【再会】をテーマにした短編で、5話で完結です。
※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
【異世界恋愛】あなたを忘れるべきかしら?
長岡更紗
恋愛
愛した者を、未だ忘れられぬ者を、新しい恋をすることで上書きはできるのか。
騎士アリシアは、トレジャーハンターのロクロウを愛していた。
しかし彼はひとつの所に留まれず、アリシアの元を去ってしまう。
そのお腹に、ひとつの種を残したままで──。
ロクロウがいなくなっても気丈に振る舞うアリシアに、一人の男性が惹かれて行く。
彼は筆頭大将となったアリシアの直属の部下で、弟のような存在でもあった。
アリシアはある日、己に向けられた彼の熱い想いに気づく。
彼の視線は優しく、けれどどこか悲しそうに。
「あなたの心はロクロウにあることを知ってて……それでもなお、ずっとあなたを奪いたかった」
抱き寄せられる体。高鳴る胸。
けれどもアリシアは、ロクロウを待ちたい気持ちを捨てきれず、心は激しく揺れる。
継承争いや国家間の問題が頻発する中で、二人を待ち受けるのは、幸せなのか?
それとも──
これは、一人の女性に惚れた二人の男と、アリシアの物語。
何にも変えられぬ深い愛情と、底なしの切なさを求めるあなたに。
*他サイトにも掲載しています。
初恋をこじらせたやさぐれメイドは、振られたはずの騎士さまに求婚されました。
石河 翠
恋愛
騎士団の寮でメイドとして働いている主人公。彼女にちょっかいをかけてくる騎士がいるものの、彼女は彼をあっさりといなしていた。それというのも、彼女は5年前に彼に振られてしまっていたからだ。ところが、彼女を振ったはずの騎士から突然求婚されてしまう。しかも彼は、「振ったつもりはなかった」のだと言い始めて……。
色気たっぷりのイケメンのくせに、大事な部分がポンコツなダメンズ騎士と、初恋をこじらせたあげくやさぐれてしまったメイドの恋物語。
*この作品のヒーローはダメンズ、ヒロインはダメンズ好きです。苦手な方はご注意ください
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
【完結】最愛の人 〜三年後、君が蘇るその日まで〜
雪則
恋愛
〜はじめに〜
この作品は、私が10年ほど前に「魔法のiらんど」という小説投稿サイトで執筆した作品です。
既に完結している作品ですが、アルファポリスのCMを見て、当時はあまり陽の目を見なかったこの作品にもう一度チャンスを与えたいと思い、投稿することにしました。
完結作品の掲載なので、毎日4回コンスタントにアップしていくので、出来ればアルファポリス上での更新をお持ちして頂き、ゆっくりと読んでいって頂ければと思います。
〜あらすじ〜
彼女にふりかかった悲劇。
そして命を救うために彼が悪魔と交わした契約。
残りの寿命の半分を捧げることで彼女を蘇らせる。
だが彼女がこの世に戻ってくるのは3年後。
彼は誓う。
彼女が戻ってくるその日まで、
変わらぬ自分で居続けることを。
人を想う気持ちの強さ、
そして無情なほどの儚さを描いた長編恋愛小説。
3年という途方もなく長い時のなかで、
彼の誰よりも深い愛情はどのように変化していってしまうのだろうか。
衝撃のラストを見たとき、貴方はなにを感じますか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる