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31.まどろみ
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「さて……と……風呂に入るか」
葵の生活は華子と出会ってから規則正しい。というよりかは、華子の帰ってからの流れに沿うようになっている。いつもどちらかの部屋に泊まるのでいつのまにか互いの合鍵も持つようになった。
シャワーを浴びて、着替えると華子にメールをする。今晩は葵の部屋で眠ることになっている。
行きます
いつもどおりのメールがきた。葵は携帯を持ったままベッドへ横たわった。
もうすぐ華子さんに会える……。
葵はいつもこの瞬間が嬉しかった。
しばらくして華子は携帯を持ち葵の部屋の鍵を開けた。そのまま声を掛けて中に入った。
「お疲れ様!」
あれ?
やけに静かなことに気が付き、そっと奥へと進む。
ベッドの上で葵が眠っていた。スヤスヤと気持ち良さそうだ。
「また寝れてる……」
最近葵の不眠症に変化が現れていた。華子が添い寝しなくても葵は寝られるようになっていた。
規則正しく寝るようになり、睡眠のサイクルが整ってきたようだ。ただ、徹夜の日は華子の力がいるようだが、定時で帰れる日はこうして一人でも寝れる日が多くなってきた。
華子はベッドに座りその頬を撫でる。
嬉しかった。最初の出会いから考えると葵の顔色もいい、クマも随分薄くなった。
──助けてください……もうダメなんです
あの日の葵を思い出す。
死にそうな顔をしていた。切羽詰まった表情と、華子を拉致した時のこと……。本当に色々あった。
「もう、私の力もそんないらないかな……」
少し寂しい。だけど、睡眠じゃなくて葵には自分が必要なんだといい聞かせる。
葵に寄り添うように横になると葵がうっすら目を開けた。口元が緩みそのまま華子へとキスをする。
「華子さん……」
寝ぼけているんだろう。それでも、嬉しい。
そのまま葵の肩を撫でて華子も眠りにつく。
夜中にふと目が醒める。少し肌寒い……。
「華子さん……」
葵が華子の服の中へ手を入れ胸やお腹を撫でていた。くすぐったいような、ずっとそうして欲しいような……。
「葵さん?」
「あ、華子さん……すみません、寝ちゃって──」
「いいんです。よく眠れてよかった……」
葵は困ったように笑う。
「すみません、寝なきゃ、寝れないみたい」
葵の言葉にクスッと華子は笑った。どちらも「寝る」だ。
「さ、寝ましょ……」
二人はゆっくりとキスをした。
溶け合うように体を重ねて、そして葵は再び眠りに落ちた。華子は随分と雪玉づくりが上手くなった。葵が起きていたかどうかは、誰も知らない。
朝になり玄関のドアを開けるとドアノブに紙袋に入った栄養ドリンクがあった。紫まむし極楽一発ドリンクではない、ドラッグストアで売られているものだ。
もう一つ壁際に一本だけ別のメーカーの栄養ドリンクが置かれていた。それを華子は怪しみながらも部屋へと持ち帰った。
お供え物のような感じだが、なぜか全て栄養ドリンクだ。
……まさか、絶倫関係か?いやいや、まさか!
振り返ると葵が寝癖を押さえながら立っていた。下のスウェットだけ履いて上半身は裸のままだ……華子は恥ずかしくなり視線を外す。
「あ、もしかしてドリンクですか?」
「あ、そうそう……初めてじゃないの?」
「最近誰か分からないんですけど、置いていってくれるんですよ。働き盛りの世代に優しいアパートですよね、あ、そういえば昨日なぜかイカ飯の真空パックが朝ドアノブに掛かってましたね。お土産ですかね?」
葵は嬉しそうに微笑むが、華子は嫌な予感がしていた。
絶対……絶倫関係だわ……。
あぁ……やっぱり……。
葵は何も気づいていないようだ。天然な所があるから良かったのか悪かったのか──。
「本当、皆さんいい方達ばかりで……」
華子は何も知らないふりをした。もうここまで来たのだ。あの鰻を受け取った時に、もう絶倫認定の契約書にサインをしたようなものだ。
華子は諦めて、手にしていた栄養ドリンクをぐいっと飲み干した。
「美味い!!」
葵の生活は華子と出会ってから規則正しい。というよりかは、華子の帰ってからの流れに沿うようになっている。いつもどちらかの部屋に泊まるのでいつのまにか互いの合鍵も持つようになった。
シャワーを浴びて、着替えると華子にメールをする。今晩は葵の部屋で眠ることになっている。
行きます
いつもどおりのメールがきた。葵は携帯を持ったままベッドへ横たわった。
もうすぐ華子さんに会える……。
葵はいつもこの瞬間が嬉しかった。
しばらくして華子は携帯を持ち葵の部屋の鍵を開けた。そのまま声を掛けて中に入った。
「お疲れ様!」
あれ?
やけに静かなことに気が付き、そっと奥へと進む。
ベッドの上で葵が眠っていた。スヤスヤと気持ち良さそうだ。
「また寝れてる……」
最近葵の不眠症に変化が現れていた。華子が添い寝しなくても葵は寝られるようになっていた。
規則正しく寝るようになり、睡眠のサイクルが整ってきたようだ。ただ、徹夜の日は華子の力がいるようだが、定時で帰れる日はこうして一人でも寝れる日が多くなってきた。
華子はベッドに座りその頬を撫でる。
嬉しかった。最初の出会いから考えると葵の顔色もいい、クマも随分薄くなった。
──助けてください……もうダメなんです
あの日の葵を思い出す。
死にそうな顔をしていた。切羽詰まった表情と、華子を拉致した時のこと……。本当に色々あった。
「もう、私の力もそんないらないかな……」
少し寂しい。だけど、睡眠じゃなくて葵には自分が必要なんだといい聞かせる。
葵に寄り添うように横になると葵がうっすら目を開けた。口元が緩みそのまま華子へとキスをする。
「華子さん……」
寝ぼけているんだろう。それでも、嬉しい。
そのまま葵の肩を撫でて華子も眠りにつく。
夜中にふと目が醒める。少し肌寒い……。
「華子さん……」
葵が華子の服の中へ手を入れ胸やお腹を撫でていた。くすぐったいような、ずっとそうして欲しいような……。
「葵さん?」
「あ、華子さん……すみません、寝ちゃって──」
「いいんです。よく眠れてよかった……」
葵は困ったように笑う。
「すみません、寝なきゃ、寝れないみたい」
葵の言葉にクスッと華子は笑った。どちらも「寝る」だ。
「さ、寝ましょ……」
二人はゆっくりとキスをした。
溶け合うように体を重ねて、そして葵は再び眠りに落ちた。華子は随分と雪玉づくりが上手くなった。葵が起きていたかどうかは、誰も知らない。
朝になり玄関のドアを開けるとドアノブに紙袋に入った栄養ドリンクがあった。紫まむし極楽一発ドリンクではない、ドラッグストアで売られているものだ。
もう一つ壁際に一本だけ別のメーカーの栄養ドリンクが置かれていた。それを華子は怪しみながらも部屋へと持ち帰った。
お供え物のような感じだが、なぜか全て栄養ドリンクだ。
……まさか、絶倫関係か?いやいや、まさか!
振り返ると葵が寝癖を押さえながら立っていた。下のスウェットだけ履いて上半身は裸のままだ……華子は恥ずかしくなり視線を外す。
「あ、もしかしてドリンクですか?」
「あ、そうそう……初めてじゃないの?」
「最近誰か分からないんですけど、置いていってくれるんですよ。働き盛りの世代に優しいアパートですよね、あ、そういえば昨日なぜかイカ飯の真空パックが朝ドアノブに掛かってましたね。お土産ですかね?」
葵は嬉しそうに微笑むが、華子は嫌な予感がしていた。
絶対……絶倫関係だわ……。
あぁ……やっぱり……。
葵は何も気づいていないようだ。天然な所があるから良かったのか悪かったのか──。
「本当、皆さんいい方達ばかりで……」
華子は何も知らないふりをした。もうここまで来たのだ。あの鰻を受け取った時に、もう絶倫認定の契約書にサインをしたようなものだ。
華子は諦めて、手にしていた栄養ドリンクをぐいっと飲み干した。
「美味い!!」
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