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14.葵さんの赤面

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 カーテン越しに降り注ぐ太陽の光に葵は目を覚ます。気持ちのいい朝だ……。

 横で気持ちよさそうに眠る華子の姿に目をやると思わず愛おしくて額にキスをする。

 夢のような、夜だった。

 いや、正確には眠りに落ちた後に華子さんを抱く夢を見ていた。まさか、それが現実に起こっているとも知らずに……。

 恥ずかしがる華子を見た瞬間、一気に目が覚めた。いつもの夢だと思い込み欲望のままに抱こうとした。頰を赤らめじっと見上げる華子と視線が絡み合い、愕然とした。
 でも、華子さんは……受け入れてくれた。好きだと、言ってくれていたと思う。

 本物の華子さんはもっと甘くて、柔らかくて、良い香りがした。初めて会った時の洗濯物の香りに包まれた気がした。そのまま二人で果てて寝てしまったが、最高に幸せだった。

 果てて……ん!?

 おそるおそるタオルケットをめくりあげ自分の下半身を覗く……ない、ない!アレがない!
 すぐにタオルケットで隠す。
 落ち着け俺、待て待て、無意識に処理をした可能性もあるぞ……。
 ゆっくりとゴミ箱の中をのぞいてみる。丁寧に何重にも包まれていそうな雪玉のような塊が見えた。

 華子さーーーん!!

 心の中で盛大に叫んだ。止められない心の叫びだ。

 おそらく必死で抜き取っただろう。真っ赤になりながら処理する華子を想像し葵は赤面する。めちゃくちゃ恥ずかしい。しかもたぶん体も拭いてくれている気がする……。

「葵、さん?」

 絶妙なタイミングで華子が目を覚ます。
 笑顔が優しい……。可愛い……。葵は恥ずかしすぎて真っ赤になる。

「あの、その、華子さん、昨日──」

「大丈夫ですよ、なんともありませんから」

 華子は腰も痛くないしピンピンしていると言いたかったのだが、葵は処理のことで頭がいっぱいだ。「あ、いや、あ……」と口をパクパクさせながら頭を掻く。

 今日は土曜日だ。華子も葵も仕事が休みだ。葵は華子さんを優しく抱きしめると耳元で囁やく。

「ちょっと……部屋に戻ります。すぐ戻ってくるので待っててください」

「え?あぁ、はい」

 よく分からないが用事があるのだろうと華子は葵を送り出す。服を着ると慌てて部屋を飛び出す。

「シャワー……かな?」

 昨日の処理の事をすっかり忘れている華子はその後、自身もシャワーに行こうとして自分が作った特大雪玉を見て赤面することになる。

 部屋を出ると廊下では多くのマダム達が井戸端会議をしている。今日は土曜日の朝、恒例の行事だ。

「あら、泊まってたのね、お疲れ様」

白髪マダムが葵に気づき近づく。

「あら、あの子……」
「そうよあの……」

 遠巻きに葵のことを見てこそこそと話すマダム達に白髪マダムが一喝する。

「……ちょっと、この子の苦労も知らないでよくそんなこと言えるわね……この子は戦っているのよ!(己の性欲と)」

「おばあさん……」

 葵は自分のことをこんなにも理解し庇ってくれる白髪マダムに感動していた。だた、少し違うエッセンスが含まれていることを知らない。

「気にしないでね、これからも一番に寝ることを考えればいいの」

「ありがとうございます……でも、ちょっと困ったことに……」

 葵が白髪マダムの耳元で囁やく。

「寝るまでの間に色々とやりたくなってしまって……我慢が効くかどうか……」

 白髪マダムは掌で顔に風を送り始めた。

「おふぅ……ほんと、今日は暑いわね」

 あくる日華子の元へ白髪マダムが訪ねてきた。

「頑張ってちょうだいね、これ食べて元気出してね」

 袋の中身はうなぎの蒲焼だった。
 華子は葵が何かを言ったのだろうとは思ったが、白髪マダムには怖くて聞くことはできなかった。
 この最高級品を突き返すこともできない。華子は満面の笑みで白髪マダムの望み通りであろう言葉で返す。

「これで百万馬力ですね、本当に助かります」

「馬力……ふふ、いいわね」

 白髪マダムは手を振り去っていった。
その顔は風呂上がりのようにピンク色に染まっていた。





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