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第二部

幸と司 ※

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 コツコツコツコツ……

 事務所に時計の秒針よりも小刻みな音が響き渡る。事務所内の舎弟も腕時計を見て時間を確認している。

 カチ

 時計の長針が6に合わさり、時刻はちょうど午後の二時半になった。

「……行ってくるわ」

「あ、組長……今日は光田も私も用があって院にいけませんので、一人で向かってください」

 町田が印鑑などの貴重品をしまうと引き出しに鍵をかける。組長の背後に回りジャケットを着るのを手伝うと町田は再び作業し始めた。

「あ、そうか……じゃ、行ってくる。また連絡する」

 組長が出て行ったのを確認すると町田は光田へ連絡する。

「おい、俺だ──もう帰っていいぞ。あぁ──」

 町田は電話を切るとほくそ笑む。そのまま組長にプレゼントメールを送信するとそのまま事務所をあとにした。


「あ、こんにちわ」

「おう」

 幸がいつのものように笑顔で出迎えてくれて組長はつられて口元が緩む。

「あれ? あ……一人、ですか?」

「あぁ、なんか用事があるって来なかった」

 幸が視線を素早く動かすと真っ赤になる。

「あ、そうなんですねぇ……あはは」

 幸の様子に気付き組長は幸の額に手を当てる。

「熱、か?──薬は?」

「あの、大丈夫です……その、二人っきりだからちょっと緊張したっていうか……その、ごめんなさい」

 幸の言葉に組長の顔が真っ赤になる。お互いの顔が真っ赤になると組長が額に当てていた手を離す。

「うぉ!……あーなんだ、治療をお願いしてよろしいかな」

「いや、ありがたき幸せです」

 二人とも言葉遣いが現代からかけ離れていることにも気づかない。

 幸と組長は気持ちを確認してから初めて二人っきりになれた。嬉しいけれど緊張している二人だった。

 組長が上半身裸になると幸がその肉体美から目が離せなくなる。

「あぶねぇな……」

 幸が持っていた鍼道具を落としかけている事に気付き、組長がそれをワゴンに乗せる。気付かないうちに斜めになっていたようだ。
 そのまま抱きしめると耳元で囁やく。

「先に、先生をしたほうがいいか?」

 心臓が燃えたのかと思うぐらい熱い。
何も言えないでいると組長が幸の唇にキスをする。触れ合うだけのキスを……。

「先生……好きだ。もう、いいな?」

「くみ、ちょう……」

 幸はコクンと頷く。それを合図に組長が幸の唇にかぶりつく。幸の後ろで縛っていたゴムを外し髪を下ろす。そのままベッドに座らせると首筋にキスを落としながら幸の長白衣を脱がしていく。

 幸の体を支えるタイミングで組長は幸の下着のホックを外していた。あっという間に服の中に手が侵入すると小ぶりな幸の胸に優しく触れる。

「あ……」

 あっという間の展開に幸は戸惑う。
 組長が狭いベッドに幸を寝かせると妖艶な笑みを浮かべている。

 そのまま幸の首筋にかぶりついた。ビリっとした痛みと共に全身に鳥肌が立つ。組長は幸の上の服を脱がしてやる。その動作は辿々しい。
 いつもは女が組長を求めてくるので半裸でヤるか、女が勝手に脱いでいく。

 幸の体から石鹸のいい香りがして堪らなくそそられる。

 やっぱ麻薬だ……甘くて痺れる。

 真っ赤な顔した先生が俺の顔を見た。その瞬間先生の顔がより赤く染まり出す。一体どうしたのか……。

「組長……あの……どうしてそんな、顔赤い──」

 先生に言われて自分の頰に手を当てる。
 驚いた。
 顔が、熱い。
 初めてでもあるまいし何を顔を赤らめてるんだろう。女なんて腐るほど抱いているのに……。

 先生が──特別だからだ。今までの抱いた女とは……全く違う。

 幸は何も覆われていない上半身を腕で隠そうとする。恥ずかしくて組長の視線から逃れようと体を攀じる。そんなウブな反応をする女を見たことがない。

 可愛い、白い肌が美味そう、食べたい

「先生……好きだ」

 組長が耳元で囁くと幸が振り返り組長の唇に軽くキスをする。その顔は相変わらず真っ赤だ。

「私も……好き、です」

 組長の中で何かが爆発した。そのまま幸にキスをしながらなめらかな肌を撫でる。胸から細い腰にかけて手のひらで往復させると幸の目が薄められた。
 胸に口付けて指で遊びながら赤い花を散らす。幾つも幾つも白い肌に置いていく。

「俺のもんだから──」

「ん、あ……ふ」

 幸の口から甘い声が漏れ出す。胸の頂を口に含み胸を掴み上げる。
 より一層高い声をあげたことに組長は嬉しくなる。そっと幸の下半身に手を伸ばす。そこはもう十分すぎるほどぬかるんでいた。

 その事に幸が気づくと羞恥で目を大きく開く。組長が幸のズボンを引き抜くとそのまま幸の入り口に触れていく。

「ああ! ん……く、くみちょ……」

 喘ぎ声だけで組長は自分の下半身が疼くのがわかる。幸の声と愛撫だけでもう限界まで存在を増している。指を増やしその中を堪能していると幸の体が強張った。

「いいよ、先生……イって」

 幸のいいところを探り当て爪でこすってやると幸の腰が浮いた。幸の顔はトロンとして酔っているようだ。まむし酒のことを思い出す。
 幸に覆いかぶさりそのまま深くキスをする。

「あ……あ!…………ふ、んん」

 どうやらイったようだ。先生が真っ赤な顔をして俺の頰に手を当てる。無意識に俺の唇を奪う。
 求められてるのを感じ幸せな気持ちになる。

「先生……可愛いな、やっぱり……」

「何言って、もう恥ずかしい……」

 組長は幸の頰にキスをした。その表情はどこまでも優しくて温かい。

「俺だけの先生なんだ──こんな顔させるのも、俺だけでいい。先生……もう恥ずかしいとか考えられないぐらい溶かしてやっから」

 組長はそのまま幸に口付けながら再び幸の中を探り出す。指の数を増やしていく。イったばかりの体にその刺激は強いようで幸の体が跳ねる。

「や……!ああぁ……」

「ごめん、でも俺のを受け入れるにはこれぐらいしなきゃ……苦しいから……」

 そろそろか

 組長は全裸になるとカゴに入れていた衣類から例の物を出すと準備をした。

 ベッドの上で仰向けのまま目尻から涙を流す幸に覆いかぶさると幸の中に自身の昂りを埋めていく……幸はそれを締めあげていく。

「あああぁ! あ……ん」

「……キツイな、先生……最高だ」

 組長の呼吸が荒くなる。動きたくなるのを必死でこらえているようだ。大切にされているのを感じ胸が熱くなる。幸は組長の胸に手を当てる。心臓の鼓動は早く心臓そのものが暴れ出してきそうなほどだ。

「いい、です。大丈夫です……もう……」

 胸に触れられた幸の指の感覚にめまいがする。無意識に幸の胸に触れると幸の顔が快感に歪む。

「……いい女だな……つくづく」

 組長は激しく腰を打ち付け始めた。その度に幸の体はそれを受け止め快楽の中を彷徨う。

「は、あん! ん! んん──」

抽送しながらも幸のあらゆるところを弄る。
その刺激も加わり幸は一気に高められていく。

「も、だ……だめ──」
「いいぜ、俺も──いっしょに……」

 組長は幸の最奥まで突くと果てた。ほぼ同時に幸の体も震えていた。

 快楽の余韻でめまいがする。二人は目が合うと惹かれ合うようにキスをした。
 まだ繋がったままだがキスをするだけで組長の一部が大きくなるのが分かった。幸ももちろん気付いたようで、みるみる顔が真っ赤になる。

「だめ! だめですよ! 腰を治療しなきゃ……」

「名前、読んでくれたら……考える」

 汗をかいた前髪を搔き上げる組長はエロい、ムダにエロい……くそ……くやしい……。仕方がない……。

「司、今日はもう──ね?」

 幸は首を傾げながら名前を呼ぶ。

 組長は真顔のままフリーズした。カッチコチだ。

ん? んん? どした、コンセント引っこ抜かれたか?

「あの──」
「もう一回だ……抱かせろ」

「……は!? ちょ、ちょっと待って!」

「待たない、待てない」

 組長はを付け替えると逃げようとする幸の腰を掴む。

「悪い……腰の事頼むぜ、先生──」




 その後、二回したので……計三回した。幸はぐったりとなり次の日まで寝込んだ。もちろん腰が痛すぎて立てない。組長は逆にいい運動になったみたいで元気そうだった。恐ろしい体力だ。

 ベッドで真っ赤な顔をした幸を見て町田が苦笑いしていた。

「ごめんね、ちょっと動けなくて……」

「あ、いや、こちらこそ……」

 あの日、組長のジャケットにこそっとを三個仕込んでおいた。組長は幸に出会ってから女と寝なくなり持ち歩くのを止めていた事を町田は知っていた。

 事務所から組長にこそっとプレゼントメールをした。

 三個だけ入れときますから。お楽しみを

 幸の可哀想な姿を見て一個だけにしておけばよかったと後悔した町田だった。

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