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イタズラ
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翌朝カーテンの隙間から漏れる朝日の眩しさに目が覚める。一瞬自分がどこにいるのかわからなくなるが布団から香る俊の使っている洗剤らしき匂いに気付き納得する。
ベッドから抜け出そうとして、床に布団を敷き横向きで寝る俊の寝顔を見る。俊は横顔が美しいと思う。瞳は大きくはないが横から見ると鼻から唇にかけてのラインがいいと思う。昔なんかのテレビで美人の黄金比を見たことがあるが、恐らくそれだろう。
起こさぬようにゆっくりと洗面台に向かうと鏡に自分の姿が映る。
「なんだ、これ」
なぜか額に茶色の文字で肉と書かれている。どうやらベッドを取られた腹いせに嫌がらせをされたようだ。チッと舌打ちをすると居間に戻りすやすや気持ちよさそうに眠る俊の太腿を足で蹴る。さっきと同じ寝顔だが今はその横顔が憎々しい。
「起きろっ! 何よコレ! 何で書いたの!」
目をこすりながら体を起こすと琴音の顔を見てぷっと吹き出す。
おいおい、てめぇいいかげんにしやがれ。
「ここまで肉が似合う女は居ないな。琴音が占領するからだ」
俊はティッシュを数枚引き抜くと琴音の横を通り過ぎる。さっと湿らすと琴音の額へとぴしゃりと貼り付ける。
「……ぃてっ」
「琴音の化粧ポーチから拝借したから消えるものだろう。さすがに油性ペンは──」
「もしやったら無事で済むと思うなよ……」
琴音の睨みを受けて俊は嬉しそうに笑った。リキッドアイライナーで描かれた肉はティッシュに滲み消えていった。ふと見るとごしごしと擦っている右の腕に虫刺されのような痕があった。小さな赤みが何箇所かに固まっている。以前もあったが男の一人暮らしで締め切っているからダニの発生は仕方ないのかもしれない。
「俊くん、またベッドにダニいるみたいだよ。今日天気がいいからシーツとか洗ったほうがいいかもね」
「……ああ、そうする。ありがとう」
俊は台所で朝食の準備をしているようだ。その口元はにっこりと微笑んでいた。
ベッドから抜け出そうとして、床に布団を敷き横向きで寝る俊の寝顔を見る。俊は横顔が美しいと思う。瞳は大きくはないが横から見ると鼻から唇にかけてのラインがいいと思う。昔なんかのテレビで美人の黄金比を見たことがあるが、恐らくそれだろう。
起こさぬようにゆっくりと洗面台に向かうと鏡に自分の姿が映る。
「なんだ、これ」
なぜか額に茶色の文字で肉と書かれている。どうやらベッドを取られた腹いせに嫌がらせをされたようだ。チッと舌打ちをすると居間に戻りすやすや気持ちよさそうに眠る俊の太腿を足で蹴る。さっきと同じ寝顔だが今はその横顔が憎々しい。
「起きろっ! 何よコレ! 何で書いたの!」
目をこすりながら体を起こすと琴音の顔を見てぷっと吹き出す。
おいおい、てめぇいいかげんにしやがれ。
「ここまで肉が似合う女は居ないな。琴音が占領するからだ」
俊はティッシュを数枚引き抜くと琴音の横を通り過ぎる。さっと湿らすと琴音の額へとぴしゃりと貼り付ける。
「……ぃてっ」
「琴音の化粧ポーチから拝借したから消えるものだろう。さすがに油性ペンは──」
「もしやったら無事で済むと思うなよ……」
琴音の睨みを受けて俊は嬉しそうに笑った。リキッドアイライナーで描かれた肉はティッシュに滲み消えていった。ふと見るとごしごしと擦っている右の腕に虫刺されのような痕があった。小さな赤みが何箇所かに固まっている。以前もあったが男の一人暮らしで締め切っているからダニの発生は仕方ないのかもしれない。
「俊くん、またベッドにダニいるみたいだよ。今日天気がいいからシーツとか洗ったほうがいいかもね」
「……ああ、そうする。ありがとう」
俊は台所で朝食の準備をしているようだ。その口元はにっこりと微笑んでいた。
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