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第一章
61.はじめての証拠
しおりを挟む「ご協力ありがとうございました、では──」
木村が店の店主に一礼すると自動ドアから出てくる。先に外に出てタバコで一服していた山形が訝しげな目で木村の持っていたメモを見る。
「これで最後か、これで何も出てこなかった最悪だな」
山形が靴底でタバコの火を消すと車へと戻る。木村が消されたタバコの吸い殻を指で掴むとポケットに入れていた携帯用灰皿に入れる。木村はタバコを吸わないが山形の為だけにこうして持ち歩くようにしている。
「もう、いい加減灰皿を持ち歩いてください! 今こういうのうるさいんですから」
最近は市民からのクレームが多くなってきているらしく、捜査中の態度の改善が求められるようになっていた。もちろん山形に改善する気は無いらしく木村がフォローする羽目になっている。小言の続きを言おうと車に乗り込んだ時木村の携帯電話が鳴る。
「もしもし、はい。……え!? 本当ですか!? すぐ戻ります!」
木村が電話を切るとすぐに車のエンジンをかけると署へと急ぐ。
「警部、《ゴースト》の姿が映った画像がようやく見つかりました!」
「なに!? 本当か!?」
二人は署に戻ると部下から一枚の写真を見せられる。そこには黒のフードを被った人物が歩いている写真だった。撮った時間帯が暗く、その上画質が悪いがこれが犯人の写真らしい。ぼやけ過ぎて何もわからない。鑑識の男が写真を指差すと申し訳なさそうに謝る。
「直接写っていたものではなくて、偶然向かいのガラスに反射したものを伸ばした物です。画素数の加減でこれ以上は綺麗に出せませんでしたが……」
人物の他に写っているものから大体の身長がわかるかと思ったが、斜めに反射されたものらしく詳しい事は分からない。
黒いリュックを持ちフードの下にキャップを被っているようだ。靴に見覚えのあるマークが見える。ラインが何本か入ってあるが普段見るものよりカラフルに見えるが某メーカーの靴に間違いないだろう。この写真は工場跡の殺人現場のすぐそばで撮られたものだ。死亡推定時刻から考えられる逃走ルートの監視カメラや防犯カメラを調べていたらこの写真が出てきた。
他の二件にはこの男は写ってはいなかったが、今回のケースで偶然ガラスに映り込んだらしい。ようやく出てきた手がかりに山形も写真を手にとりご機嫌のようだ。
「とりあえず一歩だな、行くぞ」
「はい!」
二人は先ほどの疲労が嘘のように部屋から飛び出していった。
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