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第三章 凶悪な正義
04 女の復讐
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「なあ、ジョー」
ヨーコさんはふと思い出したようにコップを置いた。
「何ですか?」
半分自暴自棄になりながら、俺は応じる。
ヨーコさんは立ち上がると、俺が彼女の目から隠したローションを手にして戻ってきた。
ええと。何をする気でしょう。
思わず俺が警戒と期待と不安と欲望のない交ぜになった目で彼女を見ると、にこりと優しい笑顔が返ってくる。
「ゴム、あるか?」
あ、ありますけど。
ありますけど……な、何するんですか?
何してくれるんですか?
思わず口から滑り出てしまいそうな期待を飲み込み、小さく頷いて箱を取り出す。
ほとんど在庫が尽きかけたそれは、あと二枚を残すのみだった。
ヨーコさんは銀色の包みを一つ受けとると、にこりと笑って俺に言う。
「脱ぎや」
「え?」
「ええから。裸になって。ベッドに横になって」
言いながらにこにこしている。俺は戸惑いながら、指示にしたがって服を脱いだ。
心臓がドキドキバクバク言っている。胸を占める期待に、下腹部に血が集まりはじめていた。
できるの? ヨーコさんと? また?
二度目の夜を最後に、俺とヨーコさんの身体の関係はない。あれは二月末だったから、もう三ヶ月ちょっと経つ。
四月までは他で息抜きしてたけど、それ以降は自分で慰めることしかしてない。俺にしてはもはや干されたと同じだ。
期待に胸を高鳴らせる俺を余所に、ヨーコさんは服を全く脱がずに、ローションとゴムを手に微笑んでいる。
「ベッド汚れるの嫌やろ。バスタオルある?」
「あ、えと、はい」
普段はフェイスタオルで生活しているので、くしゃくしゃのまま箪笥に入っていた一枚を取出した。
ヨーコさんがベッドに広げる。
「ここ、座り」
「は、はい」
実験台か何かの気分だ。俺は言われるがまま、ベッドに長座した。
ヨーコさんもベッドに乗ってきて、ローションとゴムを横に置くと、俺の膝上に向き合って座った。
期待に胸を高鳴らせる度、俺のムスコがぴくんぴくんと奮え、徐々に存在を主張し始める。
「もうこんなにしてるん?」
優しい声でヨーコさんは言って、俺のそこを指先でつついた。
「ぅ、は、はい」
「いけない子やねぇ」
言われて、すっかり屹立した先に、ぷくりと体液が浮かび上がった。ヨーコさんはくつくつ笑う。
「やっぱり調教モノ、好きなん?」
「ち、違、その、ヨーコさんが」
「うちが?」
黒目がちな目でまっすぐに見つめられて。
「……ヨーコさんが、好きです」
何度も口にした言葉を、本心から言うと、
「あ、そ」
ヨーコさんはまた無関心そうに答えて、俺の内股を撫でた。
「っ、はぅ」
ただ触れただけのその指先から、電流のように痺れが腰に抜ける。
ぴくん、と跳ねた俺自身から、とろりと先走りが伝う。
「ジョー」
それを微笑んで見つめながら、ヨーコさんが俺の名を呼ぶ。
「な、何ですか」
俺が上擦った声で答えると、ヨーコさんが笑っていない目を俺に向けた。
それでもその美しさに、見惚れる。
「後ろを可愛がったこと、あるか?」
俺は、ぎくりと身体を強張らせた。
「自分じゃせえへんやろ。女の子も、なかなかなぁ。よほどやなければ、せえへんやろうなぁ」
言いながら、ローションとゴムを手元に引き寄せる。
「優しくするから大丈夫やで」
全く笑っていない目で、ヨーコさんは優しく微笑む。
「うちの指、細っこいし短いからなぁ。むしろ物足りないかもしれへん」
そう言いながら、開封して取出したゴムを中指で押し出した。
「よ、ヨーコさん、ちょっと待っ……あっ」
俺の先走りをそこにすりつけて、ヨーコさんはゆっくりと指先を尻の割れ目へと持って行く。
「ぜ、絶対痛い、絶対……」
「大丈夫やって、言うたやろ」
ヨーコさんはにこりと笑った。その顔は天使みたいに綺麗だったけど、目の奥に燃える凍りついた感情が、俺の腰にぞくりと響く。
「最初は痛くても、じき気持ちよくなるわ」
ゆるゆると、俺の穴の周りを指の腹で撫でた。
優しいその手つきと裏腹に、目には見惚れるほどの強い感情が燃えている。
「なぁ、ジョー。力入れたらあかんで。痛い思いするからな」
ヨーコさんは、優しい声音で言った。
子どもに言い聞かせるように。寝物語でも読み聞かせるように。
そしてその指は、穴をまさぐる動きをやめない。
頬にヨーコさんの手が添えられたかと思うと、ゆっくりと口づけられた。
「ん……ふぅ、ん……」
ときどき鼻から漏れるヨーコさんの吐息が、俺を溶かしていく。
ぬぷ、と差し込まれた指に、思わず嬌声のような声をあげた。
「よ、ヨーコさぁんっ」
「力抜いてな、ジョー」
ヨーコさんはあくまで優しいキスを俺の顔に降らせる。ちゅ、ちゅ、と音が聞こえる度、俺とヨーコさんの間に猛る俺自身がぴくんぴくんと震えた。
「この子も喜んではるわ」
ヨーコさんは微笑みながら、空いている片手でゆるゆると俺をしごいた。
「んは、ぁ、はぁぁっ……」
与えられる快感と、妖艶な彼女の笑みに、身体の力がだんだんと抜けていく。
緩やかな彼女の手の動きに焦らされ、自然と腰が動く。
「よ、こさぁ、ん……はぁっ、もう、欲し、ぃ……」
俺の喘ぎ声を聞いて、ヨーコさんはくつくつと笑った。
心の底から楽しげな笑顔に、またしても俺がぴくんと反応する。
ヨーコさんは俺の眼前に顔を寄せ、囁くような声で言った。
「まーだ」
言うその手が、俺の精の出口を塞ぐように突起の先端をつまみあげている。
「ぃ、う……ぁあ、あ!」
意識が前に行ったとき、ぬぷぬぷ、と、穴に入っていた指が二本になったのを感じた。
「まだ二本やで」
楽しそうにヨーコさんは笑い、自分の唇をぺろりとなめた。
一瞬見えた舌先の赤さと濡れた唇を目にして、また俺が彼女のナカを求めて跳ねる。
「はぁ、ああ、ぅうっ……」
ヨーコさんにつままれて吐き出せない欲望の代わりに、生理的な涙が出てきた。
「ヨーコさ、ん……はっ、はぁっ……」
余裕をなくした俺の喘ぎに、ヨーコさんはまた笑って、つまんだ先端から一瞬手を離し、またつまんだ。
「ぁああ!」
反った俺の喉に、ヨーコさんが噛み付く。
「ああ! あああ!」
俺はとっさにヨーコさんの手を振り払った。瞬間、白い欲望が散る。
それは服を着たままのヨーコさんにかかった。
彼女は一瞬、ぽかんとしてから、声を挙げて笑い始める。
「あはは、はははははは」
笑いながら、俺の穴から指を引き抜く。臀部にわずかに痛みが走った。
指からゴムを取ると、ヨーコさんはまだ収まりきらない笑いを口に浮かべながら俺の顔を覗き込んだ。
「痛い?」
「……少し」
情けない顔で答えると、ヨーコさんはまた、くつくつ笑った。相当にご機嫌らしいと見て取り、少女のようなその華やかな笑顔に、吐精したばかりの俺がぴょこんと自己を主張する。
それにちらりと目を落として、ヨーコさんはあきれたような顔をした。
「若いなぁ、ほんまに」
言って、元気を取り戻しつつある突起を指で弾く。俺は痛て、と言ったが、息子はますます元気を取り戻した。
「軟膏買うてあげよか。塗っといた方がええで」
やんわりと微笑む彼女に、なぜそんな知識があるのかと聞くのもためらわれた。やり場に困った目を反らす。
「それにしても、これどないしてくれるん。こんな恰好で帰ったら、男どもの餌食にしてくれ言うてるようなもんやないか」
言いながら汚れた服を少しつまんだ。俺が吐き出した精液は、胸元から腹部にかけて彼女の服を見事に汚している。
その服の上品な光沢との差に、また俺自身がぴょこんと反応した。
ヨーコさんは小さく息をつき、おもむろにトップスを脱ぐ。
「ぇっ、えっ」
つい、俺の口から期待するような声が漏れた。
インナーとブラジャーを纏っただけの上体は、見惚れるほどに美しい。
もう、ヨーコさんは服着ないほうがいいんじゃないかな。こんなに芸術的な美を、服で封じ込めておくのがもったいないような気がする。
ああでも、他の男に見られるのは嫌。絶対嫌。
「……する?」
ヨーコさんが、俺を挑発するように見た。
「い、いいんですか?」
俺の声が期待に上擦る。
「ふふ」
ヨーコさんはまた笑った。
「久しぶりに笑かしてくれたお礼や」
言って微笑んだ、その一瞬の笑顔がーー
あっという間に俺を屹立させた。
「……あんた、発情期のウサギみたいやな」
「え、ウサギってそんなんなんすか?」
ヨーコさんは俺を半眼で見やる。
「放っておくとダメになるまでヤり続けるで、あの動物は」
「そ、そうなんすか!?」
俺は驚きつつ言って、おおいに納得したように頷いた。
「すげぇ親近感!」
言う俺に、ヨーコさんはまたあきれたような顔をした後、小さく噴き出した。
顔を反らすと、またくつくつと笑い出す。
どうにも、ツボに入ってしまったらしい。
思って見守るが、なかなか収まる様子はない。
俺はそわそわしだした。
だって、笑う彼女の姿が、あまりに可愛くて。
だ、抱きしめたら、怒るかな……
手を伸ばしかけてやめ、伸ばしかけてやめる。
意に反したことをして、彼女のその笑顔を失うことの方が怖かった。
「はー、ああ、笑ったわ」
俺の葛藤を露知らず、ヨーコさんは呼吸を整えるように胸元に手を当て、息を吸って、吐いてを繰り返した。
ああ、駄目だ。
すげぇ、可愛い。
無理。もう無理。怒られてもいいからーー
俺はそろりと、彼女の背中に手を回した。
びくり、と震えた身体に、一瞬ぎくりと手を引きそうになる。
……が、予想に反して、物言いはなかった。
じっとしているのを了承と取って、そろりそろりと、深く抱き込む。
ヨーコさんは俺にもたれることもなく、身体の力を抜くこともなく、ただじっとしていた。
それまでのヨーコさんとは少し違うような気がした。
少しだけ、心を開いてくれたような。
それが嬉しくて、ますます興奮してーー
「……ヨーコさん」
「なに?」
「……し、したいっす」
ヨーコさんは心底あきれたようにため息をついた。
ヨーコさんはふと思い出したようにコップを置いた。
「何ですか?」
半分自暴自棄になりながら、俺は応じる。
ヨーコさんは立ち上がると、俺が彼女の目から隠したローションを手にして戻ってきた。
ええと。何をする気でしょう。
思わず俺が警戒と期待と不安と欲望のない交ぜになった目で彼女を見ると、にこりと優しい笑顔が返ってくる。
「ゴム、あるか?」
あ、ありますけど。
ありますけど……な、何するんですか?
何してくれるんですか?
思わず口から滑り出てしまいそうな期待を飲み込み、小さく頷いて箱を取り出す。
ほとんど在庫が尽きかけたそれは、あと二枚を残すのみだった。
ヨーコさんは銀色の包みを一つ受けとると、にこりと笑って俺に言う。
「脱ぎや」
「え?」
「ええから。裸になって。ベッドに横になって」
言いながらにこにこしている。俺は戸惑いながら、指示にしたがって服を脱いだ。
心臓がドキドキバクバク言っている。胸を占める期待に、下腹部に血が集まりはじめていた。
できるの? ヨーコさんと? また?
二度目の夜を最後に、俺とヨーコさんの身体の関係はない。あれは二月末だったから、もう三ヶ月ちょっと経つ。
四月までは他で息抜きしてたけど、それ以降は自分で慰めることしかしてない。俺にしてはもはや干されたと同じだ。
期待に胸を高鳴らせる俺を余所に、ヨーコさんは服を全く脱がずに、ローションとゴムを手に微笑んでいる。
「ベッド汚れるの嫌やろ。バスタオルある?」
「あ、えと、はい」
普段はフェイスタオルで生活しているので、くしゃくしゃのまま箪笥に入っていた一枚を取出した。
ヨーコさんがベッドに広げる。
「ここ、座り」
「は、はい」
実験台か何かの気分だ。俺は言われるがまま、ベッドに長座した。
ヨーコさんもベッドに乗ってきて、ローションとゴムを横に置くと、俺の膝上に向き合って座った。
期待に胸を高鳴らせる度、俺のムスコがぴくんぴくんと奮え、徐々に存在を主張し始める。
「もうこんなにしてるん?」
優しい声でヨーコさんは言って、俺のそこを指先でつついた。
「ぅ、は、はい」
「いけない子やねぇ」
言われて、すっかり屹立した先に、ぷくりと体液が浮かび上がった。ヨーコさんはくつくつ笑う。
「やっぱり調教モノ、好きなん?」
「ち、違、その、ヨーコさんが」
「うちが?」
黒目がちな目でまっすぐに見つめられて。
「……ヨーコさんが、好きです」
何度も口にした言葉を、本心から言うと、
「あ、そ」
ヨーコさんはまた無関心そうに答えて、俺の内股を撫でた。
「っ、はぅ」
ただ触れただけのその指先から、電流のように痺れが腰に抜ける。
ぴくん、と跳ねた俺自身から、とろりと先走りが伝う。
「ジョー」
それを微笑んで見つめながら、ヨーコさんが俺の名を呼ぶ。
「な、何ですか」
俺が上擦った声で答えると、ヨーコさんが笑っていない目を俺に向けた。
それでもその美しさに、見惚れる。
「後ろを可愛がったこと、あるか?」
俺は、ぎくりと身体を強張らせた。
「自分じゃせえへんやろ。女の子も、なかなかなぁ。よほどやなければ、せえへんやろうなぁ」
言いながら、ローションとゴムを手元に引き寄せる。
「優しくするから大丈夫やで」
全く笑っていない目で、ヨーコさんは優しく微笑む。
「うちの指、細っこいし短いからなぁ。むしろ物足りないかもしれへん」
そう言いながら、開封して取出したゴムを中指で押し出した。
「よ、ヨーコさん、ちょっと待っ……あっ」
俺の先走りをそこにすりつけて、ヨーコさんはゆっくりと指先を尻の割れ目へと持って行く。
「ぜ、絶対痛い、絶対……」
「大丈夫やって、言うたやろ」
ヨーコさんはにこりと笑った。その顔は天使みたいに綺麗だったけど、目の奥に燃える凍りついた感情が、俺の腰にぞくりと響く。
「最初は痛くても、じき気持ちよくなるわ」
ゆるゆると、俺の穴の周りを指の腹で撫でた。
優しいその手つきと裏腹に、目には見惚れるほどの強い感情が燃えている。
「なぁ、ジョー。力入れたらあかんで。痛い思いするからな」
ヨーコさんは、優しい声音で言った。
子どもに言い聞かせるように。寝物語でも読み聞かせるように。
そしてその指は、穴をまさぐる動きをやめない。
頬にヨーコさんの手が添えられたかと思うと、ゆっくりと口づけられた。
「ん……ふぅ、ん……」
ときどき鼻から漏れるヨーコさんの吐息が、俺を溶かしていく。
ぬぷ、と差し込まれた指に、思わず嬌声のような声をあげた。
「よ、ヨーコさぁんっ」
「力抜いてな、ジョー」
ヨーコさんはあくまで優しいキスを俺の顔に降らせる。ちゅ、ちゅ、と音が聞こえる度、俺とヨーコさんの間に猛る俺自身がぴくんぴくんと震えた。
「この子も喜んではるわ」
ヨーコさんは微笑みながら、空いている片手でゆるゆると俺をしごいた。
「んは、ぁ、はぁぁっ……」
与えられる快感と、妖艶な彼女の笑みに、身体の力がだんだんと抜けていく。
緩やかな彼女の手の動きに焦らされ、自然と腰が動く。
「よ、こさぁ、ん……はぁっ、もう、欲し、ぃ……」
俺の喘ぎ声を聞いて、ヨーコさんはくつくつと笑った。
心の底から楽しげな笑顔に、またしても俺がぴくんと反応する。
ヨーコさんは俺の眼前に顔を寄せ、囁くような声で言った。
「まーだ」
言うその手が、俺の精の出口を塞ぐように突起の先端をつまみあげている。
「ぃ、う……ぁあ、あ!」
意識が前に行ったとき、ぬぷぬぷ、と、穴に入っていた指が二本になったのを感じた。
「まだ二本やで」
楽しそうにヨーコさんは笑い、自分の唇をぺろりとなめた。
一瞬見えた舌先の赤さと濡れた唇を目にして、また俺が彼女のナカを求めて跳ねる。
「はぁ、ああ、ぅうっ……」
ヨーコさんにつままれて吐き出せない欲望の代わりに、生理的な涙が出てきた。
「ヨーコさ、ん……はっ、はぁっ……」
余裕をなくした俺の喘ぎに、ヨーコさんはまた笑って、つまんだ先端から一瞬手を離し、またつまんだ。
「ぁああ!」
反った俺の喉に、ヨーコさんが噛み付く。
「ああ! あああ!」
俺はとっさにヨーコさんの手を振り払った。瞬間、白い欲望が散る。
それは服を着たままのヨーコさんにかかった。
彼女は一瞬、ぽかんとしてから、声を挙げて笑い始める。
「あはは、はははははは」
笑いながら、俺の穴から指を引き抜く。臀部にわずかに痛みが走った。
指からゴムを取ると、ヨーコさんはまだ収まりきらない笑いを口に浮かべながら俺の顔を覗き込んだ。
「痛い?」
「……少し」
情けない顔で答えると、ヨーコさんはまた、くつくつ笑った。相当にご機嫌らしいと見て取り、少女のようなその華やかな笑顔に、吐精したばかりの俺がぴょこんと自己を主張する。
それにちらりと目を落として、ヨーコさんはあきれたような顔をした。
「若いなぁ、ほんまに」
言って、元気を取り戻しつつある突起を指で弾く。俺は痛て、と言ったが、息子はますます元気を取り戻した。
「軟膏買うてあげよか。塗っといた方がええで」
やんわりと微笑む彼女に、なぜそんな知識があるのかと聞くのもためらわれた。やり場に困った目を反らす。
「それにしても、これどないしてくれるん。こんな恰好で帰ったら、男どもの餌食にしてくれ言うてるようなもんやないか」
言いながら汚れた服を少しつまんだ。俺が吐き出した精液は、胸元から腹部にかけて彼女の服を見事に汚している。
その服の上品な光沢との差に、また俺自身がぴょこんと反応した。
ヨーコさんは小さく息をつき、おもむろにトップスを脱ぐ。
「ぇっ、えっ」
つい、俺の口から期待するような声が漏れた。
インナーとブラジャーを纏っただけの上体は、見惚れるほどに美しい。
もう、ヨーコさんは服着ないほうがいいんじゃないかな。こんなに芸術的な美を、服で封じ込めておくのがもったいないような気がする。
ああでも、他の男に見られるのは嫌。絶対嫌。
「……する?」
ヨーコさんが、俺を挑発するように見た。
「い、いいんですか?」
俺の声が期待に上擦る。
「ふふ」
ヨーコさんはまた笑った。
「久しぶりに笑かしてくれたお礼や」
言って微笑んだ、その一瞬の笑顔がーー
あっという間に俺を屹立させた。
「……あんた、発情期のウサギみたいやな」
「え、ウサギってそんなんなんすか?」
ヨーコさんは俺を半眼で見やる。
「放っておくとダメになるまでヤり続けるで、あの動物は」
「そ、そうなんすか!?」
俺は驚きつつ言って、おおいに納得したように頷いた。
「すげぇ親近感!」
言う俺に、ヨーコさんはまたあきれたような顔をした後、小さく噴き出した。
顔を反らすと、またくつくつと笑い出す。
どうにも、ツボに入ってしまったらしい。
思って見守るが、なかなか収まる様子はない。
俺はそわそわしだした。
だって、笑う彼女の姿が、あまりに可愛くて。
だ、抱きしめたら、怒るかな……
手を伸ばしかけてやめ、伸ばしかけてやめる。
意に反したことをして、彼女のその笑顔を失うことの方が怖かった。
「はー、ああ、笑ったわ」
俺の葛藤を露知らず、ヨーコさんは呼吸を整えるように胸元に手を当て、息を吸って、吐いてを繰り返した。
ああ、駄目だ。
すげぇ、可愛い。
無理。もう無理。怒られてもいいからーー
俺はそろりと、彼女の背中に手を回した。
びくり、と震えた身体に、一瞬ぎくりと手を引きそうになる。
……が、予想に反して、物言いはなかった。
じっとしているのを了承と取って、そろりそろりと、深く抱き込む。
ヨーコさんは俺にもたれることもなく、身体の力を抜くこともなく、ただじっとしていた。
それまでのヨーコさんとは少し違うような気がした。
少しだけ、心を開いてくれたような。
それが嬉しくて、ますます興奮してーー
「……ヨーコさん」
「なに?」
「……し、したいっす」
ヨーコさんは心底あきれたようにため息をついた。
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