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後日談5 ウェディングドレスの選び方(交互視点)
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かたかたと、音が聞こえる。すごく幸せな夢を見ていたはずなのに、頭に残っているのはパステルカラーの温もりだけで、何を見たのか覚えていない。
誰かが近づいてくる気配がする。枕元が沈む。顔の前に、何かが近づく。――唇に、温もり――
「……おはよう」
ゆっくり目を開いたそこに、優しい垂れ目が私を見下ろしている。私はほぅ、っと慎重に息を吐き出して、気恥ずかしさに布団の中にもぐりこんだ。
「あれ? ちょっと、梢ちゃん?」
笑いを含んだ勝くんの声が、お腹の底をくすぐる。
そんなに優しい声出さないで。ただでさえ、
「――どうしたの? 顔、真っ赤」
容赦なく顔にかけた布団を剥ぎ取った勝くんが、楽し気な笑顔で私を見下ろす。朝日が、窓から差し込んで勝くんの顔を輝かせている。シャツのボタンやネクタイピンに、光がきらきら反射している。
――やっぱり、王子様、だ。
「ふ、ふとん……かえして」
「だってまた隠れるつもりでしょう?」
勝くんが笑う。「せっかく、姫の眠りを覚ますキスをしたつもりだったのに」と言われて、私の顔はますます熱を持つ。
「ひ、姫じゃない」
「違うの? ――じゃあ、何?」
「えっ……」
姫なんて言うには、年が行き過ぎている。ご隠居。それは行き過ぎか。ええと、ええと――
「時間切れ」
目を泳がせていた私の唇に、勝くんの唇が重なる。しっとりしていて、柔らかくて、あたたかい。眠りから覚めるときに触れたのと同じ、優しいキス。
「おはよう、梢ちゃん」
細めた垂れ目に甘く見つめられて、私はこくりと頷いた。
「おはよう……勝くん」
かっこよくて、まぶしくて、まっすぐに見るのは勇気がいる。けど、でも、勝くんは、私の――王子様なんだ。
ぶわっと恥ずかしさがこみ上げて、慌ててごろんと転がった。勝くんに背を向けて顔を覆うと、勝くんが一瞬の間の後でくすりと笑う。
「――そういう恰好すると、昨日の続きしたいのかなぁ、なんて思っちゃうけど――」
私の肩に置かれた手が、つつ、と背中を伝っていく。肩甲骨の間から、腰の上まで――甘い痺れを思い出して、私はぎくりとして身体を起こす。
「し、しない。起きる、起きます」
「えぇ、そう? 残念だな」
勝くんはくすくす笑っている。相変わらず、私よりも年下だなんて思えないくらい、余裕のある笑顔――
それが近づいてきたと思ったら、耳元で囁いた。
「今日も可愛いよ、梢ちゃん。――愛してる」
「ひぇっ」と変な声を出した私に、勝くんはくつくつ笑った。
まるでいたずらが成功したような満足げな笑いに、私は思うのだった。
きっと、ずっと、この人には敵わないんだろう――って。
FIN.
***
今後もSSを投下することはあるかもしれませんが、ひとまずこれにて後日談も完結です。
感想やコメント、とても励みになりましたし、後日談もそのお陰で執筆できました。
ご愛顧ありがとうございました!
松丹子 拝
誰かが近づいてくる気配がする。枕元が沈む。顔の前に、何かが近づく。――唇に、温もり――
「……おはよう」
ゆっくり目を開いたそこに、優しい垂れ目が私を見下ろしている。私はほぅ、っと慎重に息を吐き出して、気恥ずかしさに布団の中にもぐりこんだ。
「あれ? ちょっと、梢ちゃん?」
笑いを含んだ勝くんの声が、お腹の底をくすぐる。
そんなに優しい声出さないで。ただでさえ、
「――どうしたの? 顔、真っ赤」
容赦なく顔にかけた布団を剥ぎ取った勝くんが、楽し気な笑顔で私を見下ろす。朝日が、窓から差し込んで勝くんの顔を輝かせている。シャツのボタンやネクタイピンに、光がきらきら反射している。
――やっぱり、王子様、だ。
「ふ、ふとん……かえして」
「だってまた隠れるつもりでしょう?」
勝くんが笑う。「せっかく、姫の眠りを覚ますキスをしたつもりだったのに」と言われて、私の顔はますます熱を持つ。
「ひ、姫じゃない」
「違うの? ――じゃあ、何?」
「えっ……」
姫なんて言うには、年が行き過ぎている。ご隠居。それは行き過ぎか。ええと、ええと――
「時間切れ」
目を泳がせていた私の唇に、勝くんの唇が重なる。しっとりしていて、柔らかくて、あたたかい。眠りから覚めるときに触れたのと同じ、優しいキス。
「おはよう、梢ちゃん」
細めた垂れ目に甘く見つめられて、私はこくりと頷いた。
「おはよう……勝くん」
かっこよくて、まぶしくて、まっすぐに見るのは勇気がいる。けど、でも、勝くんは、私の――王子様なんだ。
ぶわっと恥ずかしさがこみ上げて、慌ててごろんと転がった。勝くんに背を向けて顔を覆うと、勝くんが一瞬の間の後でくすりと笑う。
「――そういう恰好すると、昨日の続きしたいのかなぁ、なんて思っちゃうけど――」
私の肩に置かれた手が、つつ、と背中を伝っていく。肩甲骨の間から、腰の上まで――甘い痺れを思い出して、私はぎくりとして身体を起こす。
「し、しない。起きる、起きます」
「えぇ、そう? 残念だな」
勝くんはくすくす笑っている。相変わらず、私よりも年下だなんて思えないくらい、余裕のある笑顔――
それが近づいてきたと思ったら、耳元で囁いた。
「今日も可愛いよ、梢ちゃん。――愛してる」
「ひぇっ」と変な声を出した私に、勝くんはくつくつ笑った。
まるでいたずらが成功したような満足げな笑いに、私は思うのだった。
きっと、ずっと、この人には敵わないんだろう――って。
FIN.
***
今後もSSを投下することはあるかもしれませんが、ひとまずこれにて後日談も完結です。
感想やコメント、とても励みになりましたし、後日談もそのお陰で執筆できました。
ご愛顧ありがとうございました!
松丹子 拝
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きぃち様
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